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「ディア・ハンター」 戦場での体験を経て変わっていく心

名画を見る8月その22。何をいまさら見てるの?と言われそうな映画の鑑賞です。アカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞、音響賞、編集賞の5部門受賞。キネ旬ベストテンでは第3位でした。マイケル・チミノ監督の作品で、1978年の映画です。

あらすじ
ピッツバーグ郊外のクレアトンにある、製鉄所で働く6人、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)、スタン(ジョン・カザール)、アクセル(チャック・アスペグレン)、ジョン(ジョージ・ズンザ)の仲間たち。ある日の終業を迎え、その後マイケル、ニック、スティーヴンの3人は、ベトナム戦争に出征することになっていました。その夜出征を前にスティーヴンは結婚式を挙げ、そのまま披露宴兼壮行会が華々しく開催されます。ニックはその日リンダ(メリル・ストリープ)にプロポーズし、帰還後の結婚を、彼女は喜んで承諾しました。その翌日彼らは揃っていつものように鹿狩りに向かい、マイケルは一頭の鹿を仕留めました。

戦地に向かった3人は、激戦の末捕虜となり、収容小屋に閉じ込められます。そこでは、監視兵にロシアンルーレットを強要され、恐怖でスティーヴンは錯乱してしまいます。マイケルは計略を練ると、監視兵に拳銃に弾を3発挿入させ、隙をついてマイケルは監視兵を一掃。3人は脱出しました。途中ヘリコプターに発見されましたが、ニックは救出されたものの、マイケルとスティーヴンは落下してしまい、マイケルは、けがをしたスティーヴンを通りかかった自軍のジープに託すと、徒歩で町に向かいました。ニックは病院で療養し、町に出てロシアンルーレット賭博の現場に遭遇。そこにはマイケルもいましたが、ニックは彼に気づかず、ブローカーからプレーヤーになると大金を稼げると言われ、呼び止めようとするマイケルの声も届かず、男と闇の中へ消えていきました。

マイケルは復員し、仲間たちに迎えられますが、以前とは雰囲気が変わっていました。久しぶりに鹿狩りに出かけても、故意に外してしまいます。そして、リンダと再会したマイケルは、いつしか夜を共に過ごすようになっていきました。ある日、マイケルは、スティーブンが両脚を失って陸軍病院に入院していることを知り、見舞ったところ、サイゴンから謎の送金があったことを聞かされます。マイケルは、ニックの存在を確信し、陥落前夜のサイゴンへ。ロシアンルーレット賭博の現場に踏み込み、自我を失ったニックを発見。マイケルはプレイヤーとして登場するニックと対峙し、過去の記憶を呼び起こそうとしますが、ニックの心が少し動きかけた時、ニックの拳銃が頭部を打ち抜き、マイケルに抱えられて絶命しました。クレアトンではかつての仲間が参列してニックの葬儀が行われ、酒場に集まった一同は、「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌いながらニックに乾杯するのでした。



ディア・ハンター

今さら初見で見ている訳ですが、ロシアンルーレットが登場する、戦場の映画とばかり思っていました。しかし、戦争場面はごく一部で、ベトナムに出征する前のロシア系移民の仲間たちと、戦争で過酷な体験を経て復員した人間の、心のずれを描く人間ドラマだったのですね。そのずれは、いろいろな言動によって表現されていきますが、はっきりしたものから微妙なものまで丁寧に描かれています。前と後の対比ということで、前半の結婚披露宴を執拗に長く撮り、その中でもエピソードを積み重ねて行っています。そして、その転機として使用しているのが、収容所でのロシアンルーレットのシーンでした。

ロシアンルーレットが転換点と、ラストの締めに使われるほか、帰国後友人に対しても銃が向けられます。この多用がどうも、現実味を感じさせず、メインのストーリーがあまり響いてきませんでした。戦場では、もっと現実的な体験が積み重なっていると思います。最後の賭博場もサイゴンだと言われてもどこか中華系の別の町みたいな感じ。マイケルはリンダとくっついたんで、こういう風に終わらせたんだなと思ってしまいました。ただ、話題性も含めて、精神状態の変化を決定的に動機づける、端的でインパクトの強い設定としては、有効であったと思いました。

きっとこの映画のメインテーマだと思う、出征前と出征後の心の変化は、大変見どころが多かったと思います。この映画のかなりの時間はそれに費やされています。ロシア系移民という集団の中にあっての流儀や、ニックが病院で名前を聞かれた時の反応。帰還後をイメージさせるグリーンベレーの男は、マイケル自身の未来の姿。出征したものと残ったものとの間の違和感や、帰還の歓迎会をスルーしてしまう心情。経験や経歴が人を変えてしまっていくことが、丁寧に描かれていました。派手な映画のようで、静かな心の動きを見つめていく群像絵巻だと思いました。チャック・アスペグレンは俳優ではないようですが、並みいる俳優たちが名演を繰り広げる中で、コミュニティの良心のようないい演技をしていると思いました。

ところで今、サイゴンの戦争証跡博物館の近くに住んでいるのですが、コロナ前はたくさんの欧米人の方が訪れていました。お年を召されたご夫婦も多いので、もしかして戦争に関わった方もいるのかなといつも勝手に想像しています。展示物はけっこうインパクトが強いです。戦場の写真もさることながら、ダイオキシンの被害の写真が生々しいと思います。

2020.8.23 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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