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「丹下左膳餘話 百萬両の壺」 よく練られた時代劇コメディ

名画を見る8月その9。何か著名な賞を取ったという事では無いのですが、2009年選出のキネ旬の日本映画オールタイムベストで第7位。1999年の同じような企画で55位でしたので、急上昇となっています。1935年の映画で、監督は僅か3本しかフィルムが残されていない、伝説の天才監督である、山中貞雄です。

あらすじ
柳生対馬守(阪東勝太郎)は、祖先の隠した百万両の在りかの地図が「こけ猿の壺」に仕込まれていると知りますが、壺は既に江戸の道場に養子に出した、弟の源三郎(沢村国太郎)に餞別として渡してしまっていました。急遽使いを出し、源三郎から壺を取り返そうとしますが、養子の弱みで妻の萩乃(花井蘭子)には頭が上がらず、汚らしい壺しか相続させなかった兄に恨み言を言う毎日の源三郎は、使者を問い詰め秘密を聞き出します。しかし、萩乃に話すと、既に通りかかった屑屋に売り払ったあととの事。そして屑屋は、隣に住む七兵衛(清川荘司)の子の安吉(宗春太郎)に、金魚の入れ物として、壺を譲っていたのでした。

七兵衛は、毎晩お藤(喜代三)が営む矢場に出かけていました。ある晩、難癖をつける客と騒動になり、用心棒兼お藤のヒモの丹下左膳(大河内傳次郎)が収めて、七兵衛を見送りますが、七兵衛と家の手前で別れた為、直後七兵衛は討たれます。その頃、壺探しと称して毎日解放され、外出を楽しんでいた源三郎は、矢場通いにはまっていました。左膳とお藤は七兵衛の家から、一人残された安吉を矢場に連れ帰りますが、源三郎は店のお久(深水藤子)に夢中で、安吉の壷がそれと気付きません。安吉のために、左膳と源三郎とお久は連れだって金魚釣りに出かけると、現場を萩乃に望遠鏡で目撃されてしまいます。源三郎はその後、屑屋を見つけたことから、安吉の壺がそれと気づきますが、外出の自由を失いたくない為、事実は隠したままにしておこうと決めました。

源三郎は、翌日から浮気を怒った萩乃に一切の外出を禁止され、無理に塀を乗り越えようとしたところ、門弟たちに泥棒と思われ、袋叩きにあい、免許皆伝の肩書も疑われ始めます。その頃江戸屋敷では、壺を買い集める作戦を始めました。ある時、安吉は大金を盗まれてしまい、お藤の店に両替商が60両返せと怒鳴り込んできます。左膳の金策は万策尽きて、道場破りを決行。それと知らずに訪れた源三郎の道場で、門弟を次々と倒し、萩乃に責められ嫌々出てきた源三郎と出会い、左膳が負ける代わりに60両貰うと示し合わせ、源三郎に打ち取らせます。安吉の壷が探している壺だと聞いた左膳は、せめてもの足しにと、壺を売りに出かけた安吉を追い、間一髪止めることに成功。源三郎は道場での面目も回復し、外出も許され、再びお藤の矢場を訪れるようになりました。そして、源三郎は、壺が見つかってしまっては浮気が出来ないと、当分壺は左膳たちに預けると告げるのでした。



丹下左膳餘話 百萬両の壺

冒頭のちょっと既視感のあった壷の話して、この映画は、壺の争奪戦のコメディなんだなと判り、面白そうな話に期待が湧いてきます。ストーリー展開は、盛りだくさんのエピソードが関連しながら続いていくので、無駄のない目が離せない展開でした。そこで展開されるコメディの面白さは、漫才のようにも見え、見栄っ張りではあるが、人情味あふれる人の行動に、悪ぶりながらも結局は善意の行動にでてしまう。やっぱい、やるんかーぃ、と言うような笑いが繰り返されていきました。大河内傳次郎を中心とした立ち回りもキレが良くて、たぶん、最後に安吉を追いかけるところで展開されたはずの立ち回りが無くなっているのが残念でした。

大河内傳次郎の相手役を務めた喜代三は、鹿児島の芸者からスタートし、芸を積み重ねて大成した人。芸者としては勿論ですが、歌手や女優として成功しました。その歌が聴けるのも見どころです。歌を聞くと頭が痛くなるとしか言えない、大河内傳次郎が可愛らしくもあります。カットの切り替わるところや展開も見事で、特に前半は小さなプライドとのはざまで逡巡するような行動が強調され、その雰囲気に慣れていくような仕掛けになっていました。金魚釣りを望遠鏡で眺められるシーンも楽しいです。望遠鏡は見る人によって違うものを見せてくれるようで。そんなシーンの積み重ねがいろいろと面白かったのでした。

昭和10年代の前半までは、日本の文化が一つのピークを迎える時代。ハリウッドでは、或る夜の出来事が1934年。競い合っていると思います。若干残念なのは、音声が音に埋もれて聞き取りづらいこと、あとはもう少し役者さんたちのアップが欲しいなと思いました。せっかく美しい女優さんや、大河内傳次郎のメイクもしっかり見てみたいので。この時代の映画はそう頻繁に見る訳では無いですが、見ると大変面白く感じます。今や、残された作品はそう多くは無いと思いますが、いろいろと体験してみたいと思いました。

2020.8.8 HCMC自宅にてパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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