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「午後の遺言状」 素晴らしい名女優さんたちに感謝を捧げたい

名作を見る8月その7.大女優杉村春子と、乙羽信子の共演。杉村春子にとっては、これが最後の映画出演となり、乙羽信子はこれが遺作となりました。夫、新藤兼人監督と共に、覚悟の上で撮影に臨んだと言われています。1995年の映画で、キネ旬ベストテン1位となりました。その他、日本アカデミー賞の最優秀作品賞、モスクワ国際映画祭でのロシア映画批評家賞など受賞は多数です。

あらすじ
大舞台女優・森本蓉子(杉村春子)は、今年も別荘にやって来ました。管理人・豊子(乙羽信子)とその娘・あけみ(瀬尾智美)の出迎えを受けると、庭の手入れをしていた、ろくべえの自殺を聞かされます。ろくべえが棺桶の釘を打つ石を残して死んだことから、蓉子は川原から石を持ち帰り、部屋に飾りました。翌日、別荘にかつての仲間だった牛国登美江(朝霧鏡子)と夫の藤八郎(観世栄夫)が訪れます。登美江は認知症を患いながらも、蓉子に会いたいと口にすることから、藤八郎が連れてきたのでした。蓉子がチェーホフの「かもめ」の一節を演ずると、登美江は自然に合わせてセリフを暗唱するのでした。。

ある日、脱獄囚(木場勝己)が別荘に押し入ってきますが、警官隊が駆け付けて取り押さえられます。蓉子たちは逮捕に協力したとして感謝状を贈られました。翌日、牛国夫妻は二人の故郷を訪れるとして旅立っていきます。二人だけになった時、豊子は蓉子に今度結婚することになった娘のあけみは、蓉子の亡き夫・三郎(津川雅彦)の子供だと告白します。豊子と激しい口論となった蓉子ですが、夫の子であれば自分の子でもあると思いなおし、豊子を許すと、地元に伝わる、婚約の儀式「足入れ」に参加しました。その翌日、記者の矢沢(倍賞美津子)が突然訪れ、牛国夫妻が心中したと知らせます。衝撃を受けた蓉子は豊子と共に、矢沢の案内で牛国夫妻の最期の足取りを辿っていきました。

牛国夫妻は持ち金の全てを持って、松本の高級旅館で過ごしたあと、故郷の村を眺め、最期は二人で手を取って海に入っていったのでした。蓉子と豊子は二人を忍び、海に向かって手を合わせました。蓉子は自分は死まで女優を全うすると思いなおし、豊子に来年の再会を誓うと、別荘を出発します。その時、自分が死んだらこれで棺桶の釘を打つようにと石を渡します。そして、蓉子が去った後、豊子は、預かった石を河原に戻すのでした。



午後の遺言状

この映画を見るときに、どうしても出演者や監督の背景が頭に浮かび、その目で見ていくことになりました。新藤兼人監督の愛妻で、新藤監督の前妻の生前からずっと寄り添ってきた乙羽信子。監督も彼女の最後の映画になると知りながら脚本を書き、制作に臨みました。杉村春子も当時89歳。これが最後の映画出演となり、二年後に最後まで女優を全うし、亡くなります。まさに、この映画の通りの大女優です。朝霧鏡子はこれが45年ぶりの芸能界復帰となり、この後数本の作品に出演後、4年後に亡くなりました。いろいろな思いの詰まった映画なのでした。

杉村春子も、乙羽信子も一瞬ですが、津川雅彦を巡って若い頃に扮した場面が見られます。このあたりに、老いてもなお美しい女優を感じます。杉村春子の張りのある声は健在で、演劇でずっと現役で通してきたことを感じます。対して朝霧鏡子も、認知症の老女を熱演。大きな存在感を出していました。ほぼこの3人と観世栄夫で構成された映画で、その他エピソードはありますが、影が薄いものとなっています。この映画を見ながら、杉村春子や乙羽信子のかつての名演技を思い描かずにはいられないという、結局そういう見方になってしまいました。

映像からは、死を意識しつつも、死が迎えに来るまで活動し続ける躍動感に溢れていると思います。ここでの乙羽信子は、ただただ女優の乙羽信子であり続けています。最後の諧謔的な音楽を聴きながら、人間として躍動し続けることの尊さを、改めて教えられたような気がしました。映画としてどうこうというよりも、作り演じる人の想いが溢れている映画でした。また、この3人の女優さんたちの古い映画を掘り出して見ていくと思います。そんな楽しみを残してくれた名女優さんたちに感謝する次第です。

2020.8.8 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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