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「儀式」 次第に消えていく古い日本と残された者

名画を見る8月その5。今回は、大島渚監督の「儀式」。1971年度のキネ旬ベストテンで1位を獲得しました。大島渚さんの映画はひところいろいろ見たのですが、難しいので最近ご無沙汰していました。創造社製作、ATG配給の1971年の映画です。

あらすじ
桜田満洲男(河原崎建三)は、輝道(中村敦夫)から自らが死んだという電報を受け、内容を訝しみながら、律子(賀来敦子)とともに故郷の南の島に向かいます。そして、新幹線、夜行、船と乗り継ぐ長い旅の中で、過去を回想し始めます。

昭和22年。満洲生まれの満洲男が、母と共に桜田家に引き上げてきた日は、満洲男の父の一周忌が営まれていました。父は、敗戦前に日本に戻っていましたが、前途に絶望して自殺していたのでした。法事には、公職追放中の祖父一臣(佐藤慶)、祖母しづ(乙羽信子)、父の従弟にあたる、守(戸浦六宏)、勇(小松方正)、叔母の節子(小山明子)とその子供の律子、しづが可愛がっている輝道など、大勢で複雑な血縁関係を持つ親戚一同がが列席し、母と二人で生き抜こうと決心した満洲男は、祖父の命令で桜田家の跡継として、この血縁のなかに引き込まれていきます。

昭和27年夏、甲子園で活躍していた満洲男は、準々決勝戦の前夜、母の危篤を知り、翌日の試合で致命的な失投をした頃、母は息を引きとりました。公団の総裁に就任した祖父の力で、母の葬儀は盛大に行われ、その通夜の晩、滴洲男は節子から父の遺書を手渡され、父と節子が愛し合っていたことや、その仲を祖父が引き裂き、節子を政治的野望の犠牲にしたことを知ります。そして、その夜満洲男は、憧れの的の節子が、輝道の愛撫を受けているのを見てしまい、その後律子にキスをしてしまいます。

昭和31年、共産党の党員である勇の結婚式が行なわれた時、中国から戦犯としての刑期を終えて帰国した叔父の進(渡辺文雄)も出席していましたが、黙して何も語りませんでした。その夜、満洲男は自分の気持を律子に言いだせず、律子には満州男の想いの方向が節子であると思われたうえ、促されて節子の部屋を訪ね、節子に護身用に日本刀を渡して戻ります。部屋に帰ると、輝道が律子を抱いているのを見て、愕然とし一人慟哭しました。そして翌朝腹を日本刀で刺され、節子が死体となって発見されると、自殺として片づけられました。

昭和36年、要人を集めた満州男の結婚式。花嫁は疾走し、形式だけの披露宴が行われた時、その虚飾に怒りをぶつけた忠は、そのまま交通事故死。その夜満州男は狂態を演じ、輝道は家出。その後、満洲男は輝道が自分の父の許嫁と祖父との間にできた子であることを知りました。旅の終り。満洲男と律子は輝道の海辺の小屋に着きますが、そこには全裸で横たわる輝道の死体と遺書。桜田家を継ぐのは私で、死をもって桜田家を終わらせるとあります。律子は、その横に沿うように、満州男の前で服毒自殺したのでした。



儀式

戦後25年の清算の映画ということでしょうか。満州産まれで、初めて日本の土を踏んだ、満州男の目から見た、日本の戦後の歴史を、冠婚葬祭を期に定期的に集まる親戚の様子から追っていきます。直接歴史を語るわけではなく、その間の日本人の意識や心中の変遷をたどったという風に見られます。1970年頃まで、大人たちはほぼ戦争を体験者と言って良く、戦争の回顧からくる話題が会話に満ち溢れていました。大人たちが口ずさむ歌も、この結婚式で歌われているような、軍歌や寮歌などをよく聞きました。そのあたりは、比較的同時代の体験として身に染みています。

名家とも思われる桜田家の家族構成。大きな家ではこういった複雑な家族関係はありがちでした。私も身近なところで密接に接していました。今見るとバッシングを受ける関係です。そのような時代背景から、25年間でどう変わっていくかが見どころです。中盤に、日本は戦前の反省をもとに進んでいるという言葉があります。ここでいう反省とは、悪かったから改めようという単純なニュアンスではなく、敗戦のトラウマの中で、罪悪感を植え付けられ、行動を統制しながらて生きている日本人です。そのような日本の社会の中で、崩壊していく古い日本。その慟哭が地の底から聞こえてくるようです。

日本の戦後史を、精神的な部分で辿る作品。語るのは、日本で育っていない満州男の、純粋は葛藤で語られます。輝道は伝統的な日本人にみえ、自らを消してしまいました。当時が戦後25年で、現在はそれからさらに50年。すでに、この時代を知る人でさえ、引退しようとしています。世代が変わっていった時、これからの日本はどういうアイデンティティーが育っていくのでしょうか。とふと思ってみる、そんな気分にさせてくれる映画でした。

2020.8.6 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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