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「真昼の暗黒」 振り切った迫力を感じる進行中の裁判の映画化

名作を見る8月その3。いつまで続くのかと、もう疲れてきていますが、今回は「真昼の暗黒」。1956年の映画で、今井正監督、橋本忍脚本の作品です。この映画は、この年のキネ旬1位に輝きました。当時共産圏の映画祭という色が強かった、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でノミネート作品となっています。

あらすじ
瀬戸内の小さな村で、老夫婦が惨殺される事件が発生。発生後間もなく、服の血痕や指紋を証拠に、遊廓に潜んでいた小島武志(松山照夫)が逮捕されました。証拠をつきつけられ、小島は犯行の詳細をすぐに自白し始めましたが、現場の状況から複数犯であると確信していた警察は、更に小島を厳しく追及していきます。そして長い拷問の末、小島の土工仲間である、植村(草薙幸二郎)、青木(矢野宣)、宮崎、清水の四人が共犯であるとの自白を得ることになりました。植村は、恋人のカネ子(左幸子)との結婚の許可を得るために、彼女の実家を訪ねていたところを逮捕され、他の三人も次々と捕まり、激しい拷問で、殴る蹴るの暴行を長時間加えられると、全員自白してしまいます。

一年後、食堂のウエイトレスをしていたカネ子は、事件を担当する近藤(内藤武敏)、山本(菅井一郎)両弁護士に出会いました。事件当日の実情を話し、植村の無罪を勝ち取るよう懇願。弁護士、検事(山茶花究)、判事たちも、村の中で、直接証人たちの証言を聞き、事件の詳細を理解していきます。しかし、真摯に真実を述べるのは家族や関係者が主体で、キーとなる西垣巡査(下元勉)は、警察の組織と保身の為、ポイントとなる事実を言わなかったり、ごまかしたりという始末でした。四人の被告の家族(飯田蝶子北林谷栄、他)も、ずっと肩身の狭い思いをしながらも、お互いに励まし合って過ごし、高裁の最終弁論の日を迎えました。

一審通りの複数犯を強調する、検事に対し、一つ一つの矛盾を突き、弁舌さわやかに反論する近藤弁護士。彼は、小島の遊興費欲しさの単独犯と主張し、小島の証言の矛盾を次々といて、検察側の主張を覆していきました。その内容から、誰しも小島の単独犯で、四人は無罪となると思った判決の日。母親たちも楽しげに裁判所に向かいますが、一審の判決よりは僅かに軽減されたものの、植村は死刑、小島は無期、青木は十五年、清水と宮崎は十二年の懲役が宣告されてしまいます。打ちひしがれる家族たちは、被告との面会に臨みますが、植村と母は顔を見合わせて声も出ず、黙って去る母に向かって、植村は「まだ最高裁判があるんだ」と絶叫するのでした。



昼間の暗黒

この映画は、実話ベース。それも現実に公判中で、罪状が確定しない段階での、思い切った冤罪の告発という作品でした。この八海事件の裁判は、この後も最高裁と高裁の間を2往復し、結審したのはこの映画の11年後になります。そういった事情から裁判が進行中の事件の映画製作に関し、裁判所から中止要請もあり、国会でも物議をかもしたといういわくつきの映画でもありました。内容は、完全に冤罪という結論に振り切れており、警察の違法捜査の場面をこれでもかと流し続け、権力の横暴を訴え続ける形になっており、この映画の果たした役割も一定のものがあったことと思います。

そういった、決意と気合の入っている映画だけに、凄まじい迫力を感じます。前半は、拷問の場面の迫力や、警察の捜査の人権を無視した違法性が次々と描かれ、後半に入ると冤罪を受けた家族の苦しみや、それでも警察組織の為に偽証をする巡査の葛藤など、心情に迫って来るエピソードで固められていきました。クライマックスは、近藤弁護士の最終弁論。ここだけは雰囲気が変わって、弁舌さわやかに、矛盾点を論破して行き、被告たちからも笑いが出てくるといった雰囲気。その流れで無罪を確信する母親たち…。という展開でした。そしてラストの飯田蝶子の力強い映像は、昔のソ連のプロレタリア映画のような、心情に突き刺さって来る迫力を思い出しました。

俳優さんたち、被告の5人は劇団出身の新人俳優で固められています。草薙幸二郎が主人公格ですが、松山照夫が面白い演技をしています。ベテラン俳優陣から、女優陣では飯田蝶子北林谷栄が凄いですね。北林谷栄の目力はさながらジュディ・デンチみたいです。若手では何と言っても左幸子が可憐な姿を見せていました。男優では悪役の刑事陣が前半大活躍ですが、後半に入ると検事の山茶花究がいいですねぇ。ちょい憎まれ役が上手いです。そして、少しだけ出てくる豪華俳優陣。芦田伸介、山村聡、夏川静江などなど、ちらりと出演されていました。映画史を見るような側面もありますが、社会派の迫力に触れたという感じがしました。

2020.8.3 HCMC自宅にてパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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