
「百万弗の人魚」 エスターの演じるアネット・ケラーマン

あらすじ
20世紀初めのシドニーで、ケラーマン音楽学校を経営するフレデリック(ウォルター・ピジョン)は、一人娘アネットの足が弱く、歩くのをあきらめていたところ、アネットは一人で水泳を楽しむようになり、競泳では連続して州のチャンピオンになるほどになりました。やがて経済恐慌から音楽学校は閉鎖され、友人を頼って、美しく成長したアネット(エスター・ウィリアムズ)と共にロンドンに向かいます。船中で、父娘はジェームズ・サリヴァン(ヴィクター・マチュア)という興行師に出会い、彼はアネットの美しさに惹かれ、いっしょに水泳を武器に一儲けしようと勧められます。二人は断ったものの、ロンドンに着くと、友人は既に亡くなっており、途方に暮れたアネットのところに、ジェームズが現れました。
アネットとジェームズは、新聞記者に予告してテムズ河の遠泳をしたところ、たちまちロンドン中に知れ渡り、ジェームズはアネットと組んで、ニューヨークの大劇場ヒッポドロームに売り込もうと全財産をはたいて海を渡りますが、支配人のハーパー(デイヴィッド・ブライアン)はすげなく断り、ジェームズたちはボストンのビーチで遠泳を試みるも、ワンピースの水着姿が不謹慎と騒然となり、裁判ざたにまでなりました。その水着で有名になったアネットは、小さなショーをやるようになって人気を博しますが、ある日、ジェームズは飛行機とアネットのショーをミックスした企画をたてる一方、アネットは堅実な道を主張し、喧嘩別れになります。そして、ジェームズが一人で旅立ったところに、ニューヨークから、水上ショーへの出演依頼の知らせが入りました。
ニューヨークでは、父もオーケストラの指揮者に雇われ、アネットのショーは大人気となります。しかし、まもなく父は演奏中に倒れてこの世を去り、アネットはハーバーからの求婚を受けます。ちょうどその頃、ジェームズは大陸横断飛行レースに出場、しかし墜落してしまい、幸い軽傷で済んだものの、再びどこかへ立ち去ってしまいました。アネットのハリウッド進出に合わせて、二人で西へと向かったハーバーとアネットですが、水中レヴュー映画の撮影中、思いかけない事故でアネットは重傷を負ってしまい、ジェームズは病院を訪れ、毎日のように面会を申し入れました。ある日ハーパーも同席して面会。その場で、アネットとジェームズが本当に愛し合っていることを知ったハーバーは身を引き、二人は結ばれるのでした。

水中レビュー映画で活躍したエスター・ウィリアムズの代表作の一つ。エスターと言えば、「私を野球につれてって!」を見ましたが、水中レビューではありませんでした。水中レビュー映画自体見たことが無かったので、楽しみに鑑賞しました。やはり、ヒッポドロームでの壮大なレビューが素晴らしかったです。今でいうと大規模なアーティスティックスイミングですね。ストーリーは、やはり水中レビューや、映画女優として活躍した、オーストラリアの女優、アネット・ケラーマンの半生記。エスター・ウィリアムズとの経歴がダブります。
エスター・ウィリアムズは水泳選手で世界記録保持者。1940年の東京オリンピックに出場する予定がかなわず、スカウトされて女優の道に入りました。ケラーマンもオーストラリアでは無敵の少女でアメリカにわたり、水中レビューやハリウッドで大活躍。この映画の内容の様に、新しいワンピース水着スタイルの先駆者であり、ハリウッドでは人魚役や水中撮影で活躍し、またメジャー女優として初のフルヌードを披露しています。(「神の娘」…残念ながら失われた映画です)。二人とも水泳選手だけあって、がっしりとした体格をしています。
スターの半生を扱った映画は、たくさん作られていますが、ショービジネスの舞台裏も良くわかり、大変興味深いです。また、関連していくつかの作品を見たくなるという効果も持っています。エスター・ウィリアムズは、水中レビューが下火になって女優を引退してしまったのは残念ですが、後年、ザッツ・エンタテイメントPART3などにも出演していますね。エスターとアネットの関係も興味深く、劇中で出てきた「海神の娘」は、エスターも同名の映画を撮影していますし、(邦題:水着の女王)、そもそもこの映画の題名は、アネットの「神の娘」が、上映時間3時間の超大作で、予算が百万弗であったという事も関連していると思います。まさにエスターはアネットの再来であったということでしょうか。「神の娘」が失われていることが大変残念です。
2020.6.7 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞