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「悪い女」 性依存者のいる日常

「悪い女」原題は「The Slut」(痴女)。何やらいわくありげなタイトルが興味をそそります。監督・主演をつとめるハガル・ベン=アシャーの初の劇場向け長編映画。2011年エルサレム映画祭初回作品賞、カンヌ国際映画祭批評家週間出品と、何かのインパクトが期待できます。

あらすじ
タマールは、田舎に住む美しい女性で、女手ひとつで、2人の娘を育てているが、自分の欲求を抑えきれずに、複数の村の男性と関係を持っている。一方、シャイは、財産を整理するために村に帰ってくるが、タマールをひと目見て恋仲になり、結婚するが、周囲にも不穏な空気が漂い始める。



冒頭は、馬が車にはねられるシーンで始まり、不穏なムードが漂います。そして、タマールと村の男の屋外での絡みのあと、あどけない2人の娘の母との戯れ。崩れた雰囲気のタマールですが、母の役目はしっかりとしているようです。

そこに現れたシャイは、獣医でしょうか。時折村の男を誘い、みだらな行動を続けるタマールを知ってか知らずか恋に落ち、タマールも結婚を承諾しました。その後も隙を見て村の男がやってきますが、拒み続けているようです。やがて、タマールは妊娠。貞淑な生活をしていますが、一方で禁断症状が出て気もそぞろ。卵の生産に携わっていますが、2度ほど卵を故意に割ってしまう場面があり、情緒不安定になっています。それを見つめる、今まで彼女を楽しんでいた男たちの目も不穏な様子でした。

ある日、タマールはシャイに子供を堕ろしてしまったと告げます。シャイはがっかりした表情を見せますが、怒るでもなく複雑な心境になっているようです。そしてタマールは堰を切ったように、再び村の男たちを誘うようになります。それを目撃したタマールは、怒りに任せつつ家に帰り、子供を寝かせつけると、そのうちの一人を自分のベッドに運んで、自分も服を脱ぎ…(さすがに映像ではこの先は映りません)

それを窓からみたタマールは、村の男の家に駆けこみます。(何をしていたかは写されません)翌日シャイは村人にボコボコにされ、それを愛おしく介抱するタマールの姿があるのでした…。

悪い女

この映画は、セリフが極端に少なく、ほぼ静かに動作と表情で語られる部分が多いので、なかなか読み取りづらいところもあるので、筋を追って文字にしてみると、どう考えても乱れた関係で、究極の背徳行為をひたすら描いた様にも見えます。そいう面では、静かな思わせぶりな映画のフリをして、ただただ下衆な映画のように見えなくもありません。

一方で、静かな緊張感も男たちの間に漂います。みんなで共有していたタマールが独占されてしまった状況での、言葉に出さないが異様なぎらつき。そして、依存症のため耐えきれず中絶までしてしまい、我が子が夫にいたずらさせられているのを見て、自分も他の男のところに走る?そこでそのことを言ったか言わなかったか解りませんが、翌日みんなに無言でボコボコにされ、それを介抱する。

一つは、共有物であった彼女を取られた男たちの静かな葛藤と爆発を描いたようにも見えますが、それだけですか?という気もします。そして、タマールは性依存症。普通のセックスだけでなく、口でいかせてみたり、手だけでいかせてみたり。セックスはせずとも、何らかの性的行為に関する依存症ということのようです。重度であれば、本人あるいは周囲に問題が起こることもあるので、精神疾患として、社会の中で保護され、治癒に向けて支援すべきところですが、田舎の閉ざされた世界では、ただ男たちに利用されるだけ。そんなタマールが、娘にいたずらされても、最後にシャイを介抱するシーンは、男たちの身勝手さを蔑む以上に、一方ならぬ強烈な愛おしさと侘しさを感じさせられる。そういう部分もあります。

結局、この映画は、あまりにも起こっていることを淡々と流しているので、どの点に力点が置かれているというものがない気がします。あるとすればラストシーンでちょっと言いたいことを表現した感じでしょうか?全体的に、どう感じるかは見るもの次第。田舎の閉ざされた世界の中で性依存症の人がいる日常と、必然を捕らえた佳作といえるのではと思いました。
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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