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「あさがくるまえに」 素晴らしい叙情表現を体験する時間

雰囲気のよさそうな、フランス映画があったので、見てみました。2016年の映画で、フランス・ベルギー合作作品。監督はカテル・キレヴェレ。これが、長編3作目になります。ヴェネツィア国際映画祭では、オリゾンティ部門にノミネートされました。

あらすじ
夜明け前、シモン(ギャバン・ヴェルデ)は隣に眠るガールフレンドと目を交わし、窓から外に飛び出していきます。そして友人と合流し、サーフィンを楽しんだ帰途、友人の居眠り運転で脳死となってしまいました。臓器移植コーディネーターのトマ(タハール・ラヒム)は両親に、臓器提供を求めますが、父親は声を荒げて帰ってしまいます。父親が帰る途中、渡された息子の携帯に恋人からの電話が入ります。そして、家についた両親は、息子を思い出しながら決意を固め、再びトマの元を訪れて、目以外の移植に同意するのでした。

音楽家のクレール(アンヌ・ドルヴァル)は心臓が末期的症状であると自覚していました。二人の息子のうち、兄が母親を支え、弟は遠くから時々帰ってくるだけです。そして、生きるには心臓移植しかないと告げられ、人の心臓を使ってまでと悩むのでした。クレールはあるコンサートにやって来て、演奏が終わると、かつての同性の恋人である奏者と言葉を交わし、彼女は病気を知らせてくれなかったと憤りますが、クレールは「私といたら、今のあなたの成功は無かった」と答えました。夜もふけた頃、クレールの主治医のもとに、あるドナー仲介者から連絡が入りました。

トマは、降り立った医師を飛行場で迎えます。クレールにも連絡が入り、息子を待つので待ってほしいと話します。もしかして二度と会えなくなるかもしれないと、クレールは涙を浮かべます。シモンの心臓摘出手術が開始され、「血流遮断」と医師が告げた時、トマは、シモンの耳にイヤホンをはめました。恋人が選んだ波の音が流れていました。摘出された心臓は、飛行機で運ばれていきます。トマはシモンの体を丁寧に拭き、母親にメールを送ります。そして、母親は、メールを夫に見せ長い間寄り添いました。クレールの移植手術も順調に進み、心臓が動き出しました。翌朝、手術室の前では、クレールの息子たちがもたれ合って眠っていました。手術から目覚め、眩しそうに目を開けたクレールの目から、涙が今にもこぼれ落ちようとしていました。



あさがくるまえに

脳死となってしまった青年と、移植手術を受け入れる女性の物語。その一連の動きが順を追って丁寧に描かれていると思いました。前半は、恋人の部屋を抜け出した青年が、早朝のサーフィンの後交通事故で脳死状態に。そして、その両親が息子の臓器移植を受け入れる葛藤が描かれています。後半は、心臓に疾患を抱え、歩くこともままならない女性の話。重大な手術を受け入れる家庭が丁寧に描かれています。そして、それをつなぐ医師や関係者の行動があります。

表現の方法が秀逸と思いました。核心の場面を直接語ることをしません。前後の様子から、その葛藤を想像させる手法です。どう想像するかは、見るものにゆだねられています。事故の場面は実際のクラッシュは描かれず、極度に詩的な表現でその悲劇が表現され、迫力があります。両親の判断の場面もなく、前後の事実があるだけですが、その前後の俳優の言動でその葛藤を表現します。そして、手術の時に息子が現れない情景で、これでもう会えないかもしれないという大きな不安が表現されます。

こういった間接的な表現ですべてが語られていく映画。ラストの目覚めの表情も含めて、これは上手いなと思いました。すべてを見終えた後でも、映画の中で流れる情感に漂いながら、独特の世界に連れて行ってもらった感じがしました。そして、コーディネーターが波の音を聞かせる場面は大変感動的でした。クレール役のアンヌ・ドルヴァルさんは、なかなか雰囲気があって良かったと思います。カテル・キレヴェレ監督は、これが日本初公開とのこと。いろいろと見てみたいと思いました。

2020.02.12 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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