FC2ブログ

「サーミの血」 故郷との決別を決意したサーミ人少女の生涯

これは、予告編で見て気になっていた映画の一つですが、Amazonの会員特典で見つけたので、早速見てみました。2016年のヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズに選出され、独立部門で2つほど受賞があり、東京国際映画祭ではグランプリノミネートとなり、審査員特別賞と女優賞を受賞しました。2016年の映画で、ノルウェー・スウェーデン・デンマーク合作作品。監督はアマンダ・ケンネルです。

あらすじ
老婦人・クリスティーナ(マイ=ドリス・リンピ)は、息子のオッレ(オッレ・サッリ)たちと妹ニェンナの葬儀のため久しぶりに故郷を訪れました。村人たちはクリスティーナを気遣いますが、彼女は彼らを突き放し、過去とは決別しており今は全く関係ないという態度をとり続けます。そして、彼女は少女時代の思い出に浸ります。

1930年代のスウェーデン北部。サーミ人のクリスティーナことエレ・マリャ(レーネ・セシリア・スパルロク)と、妹のニェンナ(ミーア・エリカ・スパルロク)は、幼少のころからトナカイの放牧を手伝っていましたが、二人は寄宿学校で勉強する年齢となり家を出ます。学校で優等生となったエレ・マリャは、女教師のクリスティーナ(ハンナ・アルストロム)に気に入られ、研究員を出迎える生徒の代表にも選ばれましたが、研究員は生徒を集めて全裸にして身体検査をし、動物のようにサーミ人を扱いました。ある日、エレ・マリャは通りすがりの男の子たちにパーティーに誘われ、そこでニクラス(ユリウス・フレイシャンデル)という男の子と惹かれあい、ダンスを踊ります。この時彼女はサーミ人であることを隠すためにクリスティーナと名乗りました。しかし探しに来た妹と学校関係者たちに連れ戻されてしまい罰を受けます。ある日、エレ・マリャは進学の推薦状をクリスティーナに頼みますが、クリスティーナはサーミ人の脳では文明に適応できないと断ります。パーティーの件以来サーミ人からも疎外されるようになった彼女は、一人で都会に出て行くことを決意しました。

都会に住むニクラスを訪ねたエレ・マリャは、ひとまず泊めてもらえることになりますが、翌朝には両親から放り出されてしまいます。ある学校の図書館に入った彼女は、新入生と間違われそのまま授業に参加。運よく入学できることになりましたが、授業料の200クローネを要求されました。エレ・マリャは学費の工面のため故郷に戻りますが、ワンピース姿で帰ってきたエレ・マリャを、家族は冷たい眼で迎えます。母親に授業料の支払いを頼みますが拒否され、彼女は、父親の形見である高価なベルトを売ればいいと言いますが、母親は怒り出してしまいました。エレ・マリャは自分のトナカイを殺して売ることを思いつき、トナカイを捕まえて殺したあと、そのまま眠りこんでしまいます。翌朝、ニェンナと母親は、無言で父のベルトを渡して去っていきました。

現代のスウェーデン。クリスティーナは誰もいなくなった葬儀場に一人やってきて、棺の中で眠っているニェンナの遺骸に寄り添い、許してほしいと涙を流します。そして、トナカイの放牧地に向かい、クリスティーナは母と妹の存在を感じながら、遠くを見つめるのでした。



サーミの血

サーミ人と言えば、その血をひくレネー・ゼルウィガーによって、身近な存在であるわけですが、そういった興味もあって鑑賞してみました。この映画では、その迫害された北方の遊牧民族の立ち位置が赤裸々に描かれていました。主要部分は主人公の少女時代のお話で、成績優秀だったエレ・マリャが、原住民の異民族ということで、数々の迫害を受けながら、都会の生活に憧れ、家族やサーミの生活と決別し、一人都会へと旅立っていく物語です。

少女時代のサーミ人に対する差別は、あからさまな劣等民族扱い。希少種のような扱いで研究対象とされ、人権は無視されています。残念ながら、差別するスウェーデン人側にとってもそれは至極当たり前のことで、何の呵責も感じていない様子がリアルに描かれています。外部の我々から見ると酷いことですが、その時の当事者にとっては、普通の行動だったのでしょう。面と向かって民族の劣等性を告げる美人教師も悪気があるようには描かれておりません。

都会にでても珍しがられ、ヨイクを歌うように求められます。エレ・マリャはそのような状況にあって、サーミの伝統そのもの総てが、自分が差別される元凶であり、それらと自分とは一線を画したものという考えに身を置きます。そして、劇中では語れらませんが、少女時代からサーミの外で過ごしてきた長い年月を経て、老年になって初めて、妹の葬儀に参加するために自分の村に帰ってきました。

それでも、若き日に決別したサーミとの距離を置きたがるエレ・マリャですが、サーミ人の地の丘の上で過去を回想し、母が最期に学資として与えた銀のベルトと、妹との最後の別れ。エレマリャは、自分のルーツをあたらめて思い出し、別れて長い年月を経て、妹の亡骸に頬を寄せるのでした。差別と迫害、そしてそれによって自分の出自に対して心を閉ざしたエレ・マリャの長年の苦悩が解放されます。抑制された表現の中で、離れた故郷や家族に対する強い想いや、民族のアイデンティティなどが表現された素晴らしい作品だと思います。

2020.2.1 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
スポンサーサイト



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR