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「赤の涙」 (Migas de pan) ウルグアイ軍政の弾圧と抵抗

ウルグアイは、発表された最新の民主主義度で言えば、イギリスについて世界15位。遠い南米の国で、サッカー以外はあまりなじみがないのですが、世界有数の民主主義国家と言えそうです。そのウルグアイは20世紀末に軍政の時代がありましたが、その時代を描いた作品。2016年のスペイン・ウルグアイ合作映画で、監督はマナーネ・ロドリゲスです。
原題:Migas de pan (パン粉) パン粉は収容所の中のエピソードに登場します。

あらすじ 
2010年。息子のディエゴの結婚式に付添人として出席した写真家のリリアナ(セシリア・ロス)ですが、少し浮いて見える感じです。それを機に親類や旧友うたちと交流しますが、どこか彼女には彼らとの間には異質なものがありました。そして、友人からの連絡で、政府の平和維持軍の兵士が少年を虐待している動画がアップされていることを知らされ、その動画の当事者が逮捕されないことを憤り、必ず報いを受けさせると誓う2人でした。彼女にはそうする理由がありました。

1975年、軍事独裁政権下のウルグアイ。21歳のリリアナ(Justina Bustos)は、結婚・出産後も学生運動に参加し「独裁政治をぶっ潰せ!」と、 声高に叫び市民対してアピールします。しかし、軍事政府は彼らのアジトを見つけ出し、次々と仲間を検挙。かろうじて一度はその場から逃 げることができたリリアナも、数日後には誘拐同然に兵舎に連れ去られてしまいました。そこでは、目を疑う地獄絵図が繰り広げられていて、囚われたすべての学生たちは全裸にされ軍人たちによる拷問や性的暴行が繰り返し行われていたのでした。

拷問の日々は終わっても、長い収容所生活が待っていました。家族の面会を心待ちにしていたある日、まだ小さな息子が父と尋ねてきます。リリアナは小さな手作りの縫いぐるみを息子のディエゴに渡しました。収容所では、かつて拷問に加わった軍人に脅かされながら暮らす毎日。同室の者も自殺します。先に出所する人を見送ったりします。そして、曲がったことが嫌いなリリアナは軍人に反抗し、独房に入れられたこともありました。

1982年出所出所したリリアナは、家族に会いに行きますが、歓迎はされるものの応対は少し距離を置いたような冷たいものでした。ディエゴとは一緒に生活できず、学校で塀の外から息子を眺めるリリアナですが、先生に遠くに連れ去られてしまいます。釈放後も、かつて虐待に加わった軍人にも付きまとわれ監視されるリリアナは、意を決してブラジルに出国します。

2012年。モンテビデオに戻ったリリアナは、かつて虐待した軍人たちを、収容所の仲間たちと一緒に告訴することにします。家族や親類に類が及ぶのを恐れ、ているディエゴや妻はその行動に猛反対しまが、リリアナの意志は固く決行。リリアナたち原告団は一人一人順番に赤裸々に拷問や度重なるレイプの実態を告発。傍聴席で母の告発のを聞いていたディエゴは、その内容にいたたまれず席をはずすのでした。ある日、孫を連れて突然母を訪ねてきたディエゴ。幼い頃母に貰った小さな縫いぐるみを母に渡すと、感動したリリアナはそのぬいぐるみを孫に渡し、小さな手でしっかりと握りしめるのでした。



赤の涙

2010年。現在、彼女は軍による虐待映像がアップロードされていることを知り、過去を思い出し、悪夢の再来を予感します。そして、映画は過去の彼女に戻ります。ここで主人公が、セシリア・ロスから、Justina Bustosに交替。反政府活動家の彼女が当局に拘束されてしまい、激しく拷問されます。拷問シーンは結構ガチで、SMものと言ってもいいくらいの強烈さです。裸でつるされた多数の男女が、音楽が流される中で痛めつけられます。そして、収容所の中の情景に移行。この部分は、いろいろとエピソードは語られていますが、ちょっと冗長な感じがします。

そして、釈放、家族との再会と和解と続きます。母子の再開は大変感動的で、獄中で作った小さなぬいぐるみを息子が持っていたところがいいアクセントになっています。最後に刑務所での収監者一同が軍の関係者を提訴し、過去の清算をして一連の物語の幕を閉じます。苛烈な戦いを戦い抜いた女性たちの伝記的映画として、説得力のある映画。ウルグアイの情勢や、南米では一番の民主的な国家と言われているらしいのですが、そのウルグアイの民主主義の伝統は、彼女たちの戦いの上にあるということを事実として伝える映画。はっきり物を言う女性たちが神々しくもあります。もう少し引き締まった構成になると良かったと思いました。ちょっと中間部が惜しい気がしました。

セシリア・ロスと、Justina Bustosの2人が、若いころと現在を2人で演じ分けています。繋がりも悪くなく、それぞれに大変雰囲気のあるいい演技だと思いました。セシリア・ロスの演じるリリアナは、過去にJustina Bustosの演じた若いころのリリアナの経験をしっかりと受け継いで、その上にある孤高の崇高さを漂わせる演技でした。二人ともアルゼンチン生まれで、スペイン語圏の名優と思います。

2019.12.01 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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