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「天国と地獄」 87分署シリーズ翻案の黒澤明のサスペンス

黒澤明監督の天国と地獄は、エド・マクベインの小説である、87分署シリーズの「キングの身代金」を原作として製作されました。87分署シリーズは大好きだったので、この映画も一度高校生くらいの時に見た記憶があります。今回、BSで放映されていましたので、改めて録画視聴してみました。1963年の映画です。

あらすじ
ナショナル・シューズの権藤専務(三船敏郎)は、社内の権力闘争に勝ち残るための資金を用意し行動に出ようとしたその時、息子を誘拐したという電話が飛び込んできました。ところが息子は帰宅、誘拐されたのは運転手の息子進一(島津雅彦)でした。権藤は進一のために、自身の将来を左右する資金を流用することを決断。権藤邸に張りこんだ戸倉警部(仲代達矢)も、権藤の立場を知り、犯人への憎しみを倍加させます。そして、犯人から指定された、第二こだまに乗り込みました。

身代金は犯人に奪われましたが、進一は無事に戻りました。しかし、権藤は会社を追われ、かき集めた資金の債権者が殺到、邸宅も差し押さえられます。警察は進一の書いた絵から、監禁された場所を江の島附近と断定、捜査を続けついに監禁場所を特定。そこには、急に純度の高い麻薬を用いたことによってショック死した、男女の死体がありました。一方、戸倉警部は、権藤邸から遠くない病院の焼却煙突から、現金受け渡しの鞄に仕込んだ薬品による牡丹色の煙があがるのを発見。その鞄を燃やした男はインターンの竹内(山崎努)と判明します。

警察は、竹内の犯罪を確定的なものにするため、竹内が殺害したはずの二人の共犯者の手紙を偽装し誘い出すことにします。警察は竹内を尾行し、2人の死体が発見された家にも網をはりました。竹内は横浜で麻薬を買い、高純度のヘロインを伊勢崎町の麻薬中毒の売春婦でテストすると、彼女はすぐにショック死してしまいます。そして、竹内は二人の中毒者を住まわせておいた家に向かいますが、そこには戸倉警部以下が待ち構えていたのでした。



天国と地獄

天国と地獄と言えば、オッフェンバックのオペレッタ…もとい、エド・マクベインの「キングの身代金」の映画化ということになります。ただ、自分の印象としては、キングの身代金の設定である、運転手の子供を間違えて誘拐してしまったという構成をうまく利用した、黒澤明の映画であるというイメージです。87分署のイメージは、やはり「セブン」のような濃厚なイメージなので、この映画でも黄金町あたりでの麻薬中毒者がたむろしている情景などが描かれ、原作の雰囲気に迫っていると思いますが、どうも日本での映画化にちょっと違和感をもってしまいます。

見ながら、面白いなぁと思ったのは、権藤邸での張り込みのシーン。シネスコの画面が端から端までうまく使われ、大きな舞台を見ているような感じで、それぞれの行動が上手く表現されていると思います。その俳優の動きから、心情までもうまく表現され、芸術的ともいえる効果を出していると思いました。この映画はかつてテレビでも見たと思うのですが、当時のテレビではカットされてうまく映されなかったのではないかと思います。大画面のテレビが普及して、今では自宅でもこの雰囲気を味わえるようになりました。

ストーリー展開は申し分なく、緊張感に満ちたものです。やはり権藤邸でのシーンがとても引き締まった雰囲気でいいと思います。後半はちょっとゴチャゴチャするのですが、謎解きと犯人の行動を追うサスペンスアクションです。パートカラーで一気に決着をつけるのも印象的でした。医学生と言えば上流のイメージがあり、もう少し犯行に至る背景が語られればとも思いました。この映画は、当時の誘拐に対する刑の軽さを批判することも製作動機となっていて、警察が刑を盛っていくような行動をするのも、その為のようです。いずれにしても、日本のサスペンス映画の中でも屈指の名作と思います。

2019.11.24 自宅にてNHKBS Premiumの録画鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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