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「快楽の漸進的横滑り」 思い入れもあり傑作と呼びたい作品

アラン・ロブ=グリエ監督6作目の作品です。この一つ前は再構成作品なので、実質的には5作目。私がアラン・ロブ=グリエを知った思い出深い作品でした。しかし、その時は見たわけではありません。1974年の作品で、原題は(Glissements progressifs du plaisir)。邦題と同じと言っていいと思います。

あらすじ
アリス(アニセー・アルヴィナ)は、同居しているノラ(オルガ・ジョルジュ=ピコ)がハサミで心臓を刺されて殺されたことから、警察(ジャン=ルイ・トランティニヤン)から尋問を受けます。無実を主張し、外部から侵入した男の犯行と主張しますが聞き入れられず、感化院に入れられます。感化院では、シスター・牧師(ジャン・マルタン)・弁護士(オルガ・ジョルジュ=ピコ/二役)・治安判事(マイケル・ロンズデール)それぞれと会話し、アリスの過去や、ノラとの関係、事件の時の様子などを語りますが、強気で背徳的かつ無垢な受け答えに誰もまともに対応できず腹を立てるという状況でした。

弁護士は、ノラとそっくりでした。会話を重ねるうちに親しくなっていき、また地下牢には罰を受けた収容者が、裸で虐待されていることを知ります。その倒錯の虐待に性欲を刺激された弁護士は、地下牢に滞在するようになっていきます。また、アリスを教化しようとした牧師は、アリスの背徳的な言葉に逃げ惑う始末でした。そして、関係者が集まり事件を再現することになります。自分の部屋に戻ったアリスと弁護士は、他の参加者を待つ間に二人で再現を始めます。その日ノラにしたようにベッドに弁護士を縛り付けるアリス。弁護士はすっかりM性が開花し、光悦の表情を迎えています。しかしアリスは誤って瓶の破片で弁護士の手首を切って失血死させてしまい、そこに警察が真犯人が見つかったので、再現検証は中止になったと知らせに来ましたが、現場を見て、ああ、また最初からやり直しだと嘆くのでした。



快楽の漸進的横滑り

これまでの作品と同様に、日本では長らく公開されていませんでしたが、かつて座右の書にしていた、現代映画作家を知る17の方法という本のトップの章に、この映画の衝撃的な写真が出てくるので、ずっと気になっていました。そして数年前、ヨーロッパでBDが発売されていることを知って早速取り寄せ、英語字幕で見たものです。さすがにこの映画を英語字幕で見るのはハードでした(笑)。そして、今回は日本語字幕で見ております。

日本語だと楽ですね。スイスイ進んでいきます。これも、今まで見て来たロブ=グリエの映画と傾向は同じなので、すっと入っていきました。作られた世界観の中で、劇中の演技やアートを楽しんでいきます。アニセーは、言わば「嘘をつく男」のトランティニャンの役割で、いろんな話題を提供していきます。「エデン…」でちょっと浮いた感じだったエロスは、地下牢に封じ込められ、ここでエロスの為のエロスを演じ、地上の部屋では裸ではありますが、物語の中のエロスなので別物でしょう。ノアと重複する弁護士は、地下に墜ちて染まっていきました。

アニセーは、無垢な人間としての主張と、客観が混ざった感じで、周囲に流されずに一貫しています。聖職者への冒涜的発言とも捕らえられますが、アニセーは一貫して自己主張で攻撃、これは聖職者からは魔女として排除されるものととらえられますが、普通なだけに説得力あり、無垢の魂が魔女と繋がると言えそうです。小道具はいろいろ、青い靴、赤いペンキ、色彩に戯れずうまく使っていると思います。今まで、ロブ=グリエの映画でいろいろ見てきたものが融合して、素晴らしい作品の世界を作っていると思いました。

最後はいつものように、循環しておしまい。結局すべて元に戻ってきます。観客を基の世界に戻して、お別れとなるという感じです。彼らの世界に旅行に行っていたようなものかもしれません。大変充実した時間でした。

セリフとして象徴的だったのは、
「類似、繰り返し、置き換え、模倣、遊びすぎよ」…自分で言っちゃってますね。
「誰が喜ぶの? さあ、たぶん観客では」…SMシーンでの被虐の少女の言葉。虚構の演技であることを明言してますね。

やはり、この映画が集大成のように、うまく組み合わさって出来上がっていると思います。この後の作品はむしろ通俗的になった分、逆に割り切れなさが残る感じがして、これが完成形では無いかと思いました。
(個人的な思い入れかもしれませんが…)

2019.11.13 HCMC 自宅にて Amazon Prime よりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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