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「エデン、その後」 前衛が通俗化し芳醇になったメタ映画

アラン・ロブ=グリエ監督の4作目の作品で、いよいよここからカラー作品となります。原題はL'éden et aprèsで、邦題と同じです。1970年の作品で、ベルリン国際映画祭では、金熊賞ノミネートとなりました。

あらすじ
大学のカフェ「エデン」では、学生たちが毎日仮想演技を繰り返していました。外に出れば平凡な日常、エデンが射殺、毒殺、葬儀といろいろな疑似体験ができる場所という位置づけです。そこに現れた一人の男性デュシュマン(ピエール・ジメール)が、学生のヴィオレッタ(カトリーヌ・ジュールダン)に怪しげな薬を与え、ヴィオレッタは異国の地での異様な体験にトリップします。また、ヴィオレッタは画家である伯父の高価な青と白の抽象画を持っており、高値で売却できると話します。そして、ヴィオレッタの家の鍵を使った演技を行った後、皆は解散。ヴィオレッタは一人だけ男に誘われました。

待ち合わせ場所は、建設中の工場近くの桟橋で、ヴィオレッタは行く途中に複数の男女に襲われ、工場の中を彷徨うことになります。そこにいたメンバーは、襲ってきた人間も含め、いつもの学生メンバー。いつしか朝になり、待ち合わせ場所に行くと、男が海に落ちて死んでいました。男のポケットには抽象画の題材となったと思われる、北アフリカの絵ハガキが。男の死に驚き、いつもの学生たちを連れてくると、男の死体は消え、自分の部屋の鍵が無くなっていることに気づきます。その鍵はエデンで発見され、家に帰ると、絵が無くなっていました。

そして、絵の題材となったアフリカへ、その絵のモデルとなった建物を訪ねていきます。男は画家になっていて、複数の女性を幽閉し、エロスの倒錯した饗宴に浸っていました。背景は、地中海の美しい風景、白い砂と青い空。そして、絵の隠し場所を求めて戦う男たち。すべてエデンの学生メンバーです。誘拐され、幽閉されるなど翻弄されるヴィクトリアですが、男たちの殺し合いの末、最後にデュシュマンは車にはねられ堤防から転落、工場の時と同じような形の死を再現します。そして、絵とヴィオレッタが残されます。

エデンに帰ったヴィオレッタと疲れた仲間たちは、外から一人の男がじっとこちらを見ているのに気づきました。



エデン、その後

4作目にして、初のカラー作品となりました。全体は三つの場面で構成され、導入は奇を衒った観念的な入り方をします。始まってみると、いままでの作品で慣れ親しんだメタ映画的な展開になりました。第一部のエデンの内容は、これまでの映画の思想を詰め込んだ感じです。そして、外の世界は平凡、カフェで虚構を演技し体験するという、さながら小さな劇団の舞台のようです。次々と起こる展開は、もともと虚構であることが解っているので安心ですが、それなりに次の展開を待ち構えるように作られてドキドキするのは流石と思いました。また、エデンのアートな感じはなかなかいいと思いました。

建設中の夜の工場に舞台が拡大します。学生仲間も揃っていて、これも虚構であることが解ります。この場面は繋ぎ的な要素も多いと思いました。そして、舞台がチュニジアに移り、一気に風景や映像がアートになって美しく、画像に魅せられるようになってきます。すばらしい体験で、きっと、不滅の女のイスタンブールの風景もカラーにすればこんな効果を持っていたのではと思いました。半面、ストーリーは一気に屋外に出て、普通の平凡な話になった印象を持ちます。アートな映像とポルノグラフィに頼り、絵は美しいが、これじゃないぞという感じが漂いました。部屋の中の感じも、従来のロブ=グリエの映像と同じようなアートなスタイルです。エロスだけは、容赦なく激しくなっています。

1作目から順にみてきて、3作目までは白黒作品で思想が凝縮された感じがしていましたが、カラーになってそれらが分散し、華やかになったけれども、平凡になった感じがします。比較の問題でもあり、前衛的な映像と展開はそのままではあるのですが。前衛は、一つ一つの思想であり、それは深めることはできますが、基本思想は変わらず、いくつも持つわけにはいけないと思います。その上、いつまでも同じことはできないということから、前衛の寿命と昇華が現れてくると思いました。ロブ=グリエのエッセンスは直接的には、1~3作に凝縮されていたように感じます。

カラーになっての新たな挑戦を開始。劇映画の虚構性を強調しつつ、象徴的あるいは挑発的な画像をカラーで挿入しながら、普通のストーリー展開をはめ込んでいます。売りは、色彩とポルノ映像ということでれば、成功には限界があるかもしれません。そして、最後はいつもの通り循環した回収で終わっています。慣れてきたということもあると思いますが、これ以降の作品は、今までの思想をベースにどう展開していくかが見ものでは無いかと思いました。

余談ですが、これを見ながら、「イメージの本」の様な構成だなぁと思いました。まさか、これが影響しているとは思わないので、一つの構造の類型ということでしょうか?ロブ=グリエの映画は、このあとに、この映画を再構成したという「Nは骰子を振った……」という実験的映画があるようですが、そちらの方がもっと好きなことをやってそうで、興味深いです。

2019.11.12 HCMC自宅にて Amazon Prime よりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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