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「嘘をつく男」 虚構の中の嘘と、演技と見せる為の演技

アラン・ロブ=グリエの三作目の監督作品です。原題は、L'homme qui ment で、邦題は直訳になっています。この映画は、ボルヘスの伝奇集にある「裏切り者と英雄のテーマ」をベースにしているとの事で、題名からして難解さが漂います。1968年の作品で、ベルリン国際映画祭では金熊賞ノミネート。ジャン=ルイ・トランティニャンが男優賞(銀熊賞)を受賞しました。

あらすじ
大戦末期、ナチス進駐下のスロバキアの小さな村。男(ジャン=ルイ・トランティニャン)が、森の中を敵の銃撃を逃れて逃げ惑っています。そして、男は自分をジャン、またの名をボリスと語り始めました。村にたどり着くと、ジャンの同志のボリスだと語って、ジャンの妻ローラ(Zuzana Kocúriková)や妹シルヴィ(Sylvie Turbová)たちの住む館に出入りを始めます。男はまず、館の女中のマリア(Sylvie Bréal)に、レジスタンスの活動中に囚われたジャン(Ivan Mistrík)を救出する話をし始め、ジャンの隠れ場所や伝言のことについて語り始めますが、いつも話は肝心のところで終わってしまいます。村の墓地には、どうやらボリスの墓もあるようです。

要領を得ない男の話が進む中、館の妻や妹、旅館のメイドたちに、次々とジャンを救出したり、あるいはジャンは裏切り者だったりと、それぞれ、あるいは時によって異なる話を騙っていき、村の薬屋の裏がレジスタンスの潜む地下迷路に通じていることが解ると、男はジャンが地下迷路の中でジャンを救出しようとしたが、転落死したと話し始めました。館の主人であるジャンの父はテラスから転落死し、男は女たちに、この館に残って女たちを守ると主張し始め、彼女たちを誘惑します。シルヴィと関係をもち、さらにローラに迫りますが、そこにジャンが現れ男を射殺。しかし、それは演技で、ジャンは自分について、ジャンまたの名をボリスと同じように話し始め、森の中で何かに追われるような男の場面で終わります。



噓をつく男

アラン・ロブ=グリエの三本目。傾向は変わりません。あらすじを読んでもなんのこっちゃ?という感じですが、映像自体は常に何かを演じているような形で表現され、撃たれても血も出ませんし死にもしません。現実味が無く、すべて虚構の世界の様な雰囲気で話が進んでいきました。冒頭のトランティニャンは、大勢の軍勢に包囲された中を脱出しますが、とても生還しえない状況で、一度死んだ演技までして見せ、映像作品そのものの虚構を表現します。その後も彼の話は二転三転、饒舌なジャンに虚偽の拍手の音が響き…。という具合に、真実でないぞ!と主張しながら、話を延々と真摯に語り続けるスタイルです。

女たちはの方も、そもそも日々目隠しでかくれんぼをしている女たちという表現で、積極的な意思はあまりなく、そこは情報の無い中で生きている人間たちという位置づけでもあるのでしょうか。終始観客は、嘘をついている男を見続ける中で、その虚構の話が進んでいくという形でした。

という訳ですので、男の語ることがに真実はあるのか、すべて嘘なのか。そもそも男は存在したのか、誰かの妄想なのかなどは示されず、話がぐるぐる回っていくので、すべて妄想虚構の世界ということでしょう。我々はその中から真実を見出そうとするわけですが、そもそも映画にしろ、芸術にしろ虚構だという立場で迫られます。その中で虚構の演技をトランティニャンがいろんな立場で演じ切るという映画でした。音楽は現代音楽風。映像にマッチして心地よいと思います。そして、場面の繰り返しの構造や、倒錯趣味も健在で、多少進展もしているような感じでした。

これで、白黒時代の三作を観終わりました。これ以降はカラー作品となりますが、いろいろエスカレートしていきます。

2019.11.12 HCMC自宅にて Amazon Prime よりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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