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「グリプスホルム城」 トゥホルスキ-による自伝的恋愛小説

ドイツのユダヤ系風刺作家である、クルト・トゥホルスキーは、ナチスの迫害を危惧して国外に逃れ、最終的にスウェーデンへで亡くなりました。クルト・トゥホルスキーという人物については今まで知りませんでしたが、この時期ナチスから迫害を受けた小説家であり、知識人の一人です。この映画は、その逃避行の出来事を扱った、自伝的要素を持つ1931年の恋愛小説「Schloß Gripsholm」が原作となっています。2000年の、ドイツ・スイス・オーストリア合作作品で、クサヴァー・コラー監督の作品です。スイス代表としてアカデミー賞外国語映画賞に出品されましたが、ノミネートには至りませんでした。

原題:Gripsholm

あらすじ
クルト(ウルリッヒ・ネーテン)は、ユダヤ系ドイツ人でベルリンでジャーナリストとして活躍していましたが、ナチスに批判的であったため、ナチス勢力の増大に伴って干渉が増え、ある夏休みに、編集者に恋愛小説でも書くことを約して、恋人のリディア(ハイケ・マカチュ)と一緒にスウェーデンに脱出することにしました。支援者であるスウェーデンの貴族の計らいで、グリプスホルム城に住み、2人だけの愛の日々を送っていると、ある日親友の空軍パイロットのカールヒェン(Marcus Thomas)が飛行機に乗って現れ、またしばらくしてベルリンのクラブ歌手のビリー(Jasmin Tabatabai)も現れて4人の生活になります。

城での再会を祝し、4人の休暇が始まる一方で、本国のドイツではさらにクルトの「すべての兵士は殺人者である」などの言動に対するに法的な措置も執行されるとの情報が入り、クルトは元々覚悟していた通り、帰国しないことに決めます。同じドイツの愛国者でありながら、ユダヤ人作家と、空軍パイロットという親友の二人の葛藤は増大し、ついに衝突してカールヒェンは去り、3人の生活になると、打ち解けた愛の日々を送った後、ベルリンに活躍の場を求めるビリーは、復帰するために去っていきました。

城の近くには寄宿学校があり、その中で一人の娘アダ(Sara Föttinger)が教師たちから厳しくしつけられていました。学校になじめない彼女は半ば虐待のような仕打ちを受けており、ある日2人のところに逃げ込んできます。2人は学校長と徹底抗戦し、娘の母親と連絡をとり、ついに、娘を虐待から遠ざけ、母親のところに返すことに成功します。やがて、休暇が終わると、リディアはベルリンに戻り、クルトは一人残されました。1932年ナチスの勢力は増し、ビリーの歌うクラブもナチスの旗がひらめき、この夏の様な日々は二度と戻りませんでした。クルトはこの夏の物語を1冊の小説として出版し、数年後この地で亡くなったのでした。



グリプスホルム城

ドイツの風刺作家クルト・トゥホルスキーの書いた、自伝的な小説が原作で、主人公のクルトは作者自身の体験をもとに創作されています。クルトは、ドイツを愛し、ナチスの台頭によるドイツの変貌を憂いますが、ナチスの台頭に警鐘を鳴らすことにより、当局からの迫害が激しくなったことから、危険を感じた彼は、スウェーデンの城に逃避しました。起訴されて、すでにドイツに彼の居場所はなくなり、葛藤の中で、意欲をなくしていき、集まってきた旧友たちも、ベルリンやドイツ空軍へと帰っていきます。そのような一夏の経験が、耽美的に描かれた物語です。

クルトは、この体験を小説に書きましたが、3年後死亡。彼の葛藤は癒えることはなく、帰った3人はナチスの台頭の中で、それぞれの生活を送っていくことになります。それぞれを送り返すクルトが最後に描かれます。エピソードの一つで、アダの状況とも対比されています。アダは、厳しい寄宿学校から逃避。クルトはドイツから逃避します。その中で、最初はクルトの対応がおざなりに描かれますが、リディアが積極的に対応し、クルトも真剣になります。最終的にアダを勝ち取り、教条主義者から救うことになりますが、切れた学校長に、パレスティナに返れとも怒鳴られる始末です。

クルトの苦悩は深く、リディアからも攻撃されますが、彼の苦悩は解決するすべがありませんでした。長年ドイツを愛し、ジャーナリストとして深くドイツと付き合い、風刺作家としても体制批判をしてきました。1932年にナチスが政権をとり、ユダヤ人である彼は、どんどん居場所がなくなっていきました。その中でのあまりにも美しい一夏の逃避。友情、愛が幻想的に描かれている物語です。少し、小さくまとまった感じで、出口もない物語なので、パワー不足かなと思うところはありますが、事実は重く、かつ美しい友情と葛藤を描いた物語でした。

この小説は、1963年に、クルト・ホフマン監督により、当時の西ドイツで最初に映画化されています。クルト・トゥホルスキーは、ドイツでは記念切手にも登場する人物であり、著名人の一人のようです。1963年の映画ももし見る機会があれば見てみたいと思いました。

2019.11.9 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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