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「木石」 過去の出来事に束縛されてしまった女性の悲哀

「木石」という珍しい名の日本映画。今ではあまり聞かない言葉ですが、木や石のように感情の無い様子を現わした言葉です。主人公の及川初の様子を現わします。題名からは、かなりとっつきにくい感じのする映画ですが、時間がある状況だったので、じっくりと取り組みました。1940年の映画で、五所平之助監督の作品。松竹大船の製作でした。

あらすじ
伝染病研究所の医師の二桐(夏川大二郎)は、北アルプス登山の為に、山小屋を出発したところで、急用で呼び戻されました。併設の病院に入院している少年が、研究所の看護婦である及川初(赤木蘭子)の検査によって重篤な病気であることが判明したとのこと。ところが、病院側の医師は無断の検査でメンツをつぶされた格好で、初と仲たがいしていました。二桐は双方をとりあえず宥めますが、病院の医師と、40代のベテラン看護婦の初との溝は深くなっていきます。

初は未婚でしたが、父のいない娘の襟子(木暮実千代)を育てていました。年頃になった娘に仕事の経験をさせようと、初は二桐に頼み、助手として使ってもらうことにします。しかし、未婚の初に子供がいたことが解った病院の職員の間には、襟子の父親が、かつて初が仕えていた有馬博士ではないかという噂が広がります。一方、二桐は明るい襟子に一目ぼれしてしまい、二人の仲が深いものになっていくと、母の及川初は徹底して二人を遠ざけようとしはじめます。そんなある日、有馬博士の訃報が入りました。

初は、有馬博士の弔問から帰ると、ますます関係が深まる二桐と襟子を頑なに別れさせようと、出勤まで止めようとしますが、襟子を愛した二桐は、付き合いを認めさせようと正式に初と向き合います。そして初から、襟子は初の子ではなく、有馬博士がある高貴な令嬢との間に作ってしまった子を、その令嬢の世間体から初の子という形で引き取ったというとを告白します。初は自分の経験から、医師の愛など信じられなくなっていたのですが、真剣な二桐の気持ちを理解し、二人の間を認めます。しかし、初は研究所の事故で感染症に罹り、すぐに息を引き取ってしまいました。臨終の初は、二桐に「及川初は処女でございました」と一言言い残したのでした。



木石

木石(ぼくせき)とは、木や石のように、情も感覚もないものこと。この映画の主人公、赤木蘭子が演じるオールドミス、及川初を表現した言葉です。そして、なぜ彼女がそうなったかということが、彼女の助手として研究所に連れてきた、襟子(木暮実千代)の出生の秘密を通して語られるという内容です。今の時代に見ると、ちょっと古風な話で、現実感に乏しいですが、この時代の女性の立場の一面をうかがい知ることができる作品でもあります。

やはり、主人公である赤木蘭子が素晴らしいと思います。木石の題名通り無表情で徹底する冷たい女性の、その情念の強さと寂しさがよく表演されていると思いました。夏川大二郎も好演でした。監督の五所平之助は、元々は松竹の小市民映画系の監督さんですが、この映画を見ていると、主題は小市民というようりは、普通の映画と融合して、人情をゆったりとした流れの中で描き出していくような感じがしました。この一つ前に見た「わかれ雲」のおせんにも、及川初と似たようなものを感じます。

冒頭の北アルプスの風景が素晴らしいです。黒菱ということから、白馬ですね。高原の草花の美しさが目に浮かびます。山岳のシーンは、冒頭とラスト。冒頭のこれから山に向かっていく、期待感高まるようなシーンは、見ていてもわくわくします。

2019.10.12 HCMCからDONG HOIへの旅行中に、機内及びホテルにてスマホ鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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