
「ストレンジャーズ6」 キューバ民衆の抵抗とアメリカ人

あらすじ
ティナ(ジェニファー・ジョーンズ)は銀行員で、反政府グループに加わる弟がいました。その弟が、政府側の暗殺者に目の前で射殺され、彼女は復讐を誓います。葬儀の時に、アメリカ人のトニー(ジョン・ガーフィールド)は、彼女に反政府組織に加わるように誘い、ティナの家が墓地に隣接していることを利用して、警戒が厳重で近寄れない独裁者の暗殺計画を作り上げました。それは、ティナの家の地下から墓地までトンネルを掘り、その墓地に墓を持つ要人を暗殺して爆弾を仕掛け、独裁者が葬儀に参列した時に爆発させるというものでした。トンネルの掘削が進む中で、メンバーの一人は無関係の者まで巻き添えにする計画に悩んで精神に異常をきたし、また政府側として、組織の壊滅を目指すアリエテ(ペドロ・アルメンダリス)は、ティナとトニーの行動を注視しており、ティナの家を訪れ、脅しながら誘惑します。
トンネルの準備が整い、要人を暗殺したものの、要人の家族はこの墓地を葬儀の場所に選びませんでした。すでにアリエテから厳しくマークされていたトニーは、キューバを脱出する計画を立てます。 ティナは彼女の銀行にあるトニーの口座から現金をおろしてトニーと合流する予定でしたが、アリエテの配下の者により阻まれます。すでに愛し合っていたトニーとティナ。トニーはティナを残して去ることができず、ティナの家に戻り、そこで政府側の勢力との銃撃戦となりました…。

キューバの命がけの反政府運動の物語。といってもカストロによる革命ではなく、バティスタ政権の誕生のさらに前段にあたるもの。この映画ができた時期は、まだカストロは活躍しておらず、アメリカの傀儡政権のバティスタの時代。そういう意味では、キューバの当時の体制はアメリカにすんなり受け入れられるものだったのでしょう。アメリカの巨大企業やマフィアと政府上層部が深い関係を持ち、実質彼らに富みが集中するという状況の中での、民衆の抵抗の物語です。
そういった地下抵抗組織の活動を描いた映画ですので、一貫してかなりの緊張感がありました。ジョン・ガーフィールドとジェニファー・ジョーンズの活躍は勿論、他の組織の登場人物もよく描き分けられており、精神を病みながら掘削に難渋していく様子など素晴らしい演技になっていると思いました。ジェニファー・ジョーンズが機関銃を持ってぶっ放しているところなんか、なかなか見られないです。 最後は二人の愛と犠牲、そしてその上にやってくる民衆の勝利と続く幕切れです。
敵役としてペドロ・アルメンダリスの演じるアリエテですが、ジェニファーを口説く場面を見ていると、手放しで100%悪だと憎めなくもなります。もちろんひどい奴には違いないのですが、発言の中にもキューバ人としての複雑な忸怩たる心情などが見え隠れしており、ささやかながらも、富める国と搾取される国の葛藤が感じられました。キューバに生まれ、その政府で上を目指し、反体制派を潰していきながら、異国で動き回る反体制派のアメリカ人とそれに加担するキューバ人の美しい女性という構造は、どのように映るのでしょうか。その対比がこの映画の味わいを増しているものと思いました。
2019.9.18 HCMC自宅にてパソコン鑑賞