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「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」 辛辣なマスコミ批判と純愛と

本屋さんのレジ前に、アウトレットBDの籠がありました。1000円くらいで売っているので何か一つ買おうかと眺めていましたが、ハリウッドのアクション映画が並ぶ中で、1枚だけ目を惹いていたこのBD。全く予備知識なしですが、「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフ監督の作品のようで、これで決まりです。ジャケットのあらすじを見つつ、重い映画かなと思い、心して観ました。

あらすじ
1975年の2月のある日、ライン地方の小さな町はカーニバルの真最中だった。仮装舞踏会を手伝っていたカタリーナ(アンゲラ・ヴィンクラー)は、舞踏会にやって来たゲッテン(ユルゲン・プロホノフ)に会い、意気投合して何回も踊った。カタリーナのアパートに帰った2人は、その夜を共に過ごす。ところが、翌朝、物々しく武装した警官隊がカタリーナの部屋におし入り、彼女の部屋を取り調べた。ゲッテンは過激派の銀行強盗で、仮装舞踊会の前から警察に尾行されていたのだった。しかし、ゲッテンの姿はもうすでにそこにはなかった。重要参考人として連行されたカタリーナは厳しい取り調べを受け、新聞はその内容を報道し、彼女の離婚した過去などを書きたてた。中にはでたらめの記事までがでっちあげられ、家へ帰ったカタリーナは、いたずら電話や下卑た手紙に悩まされた…



いや、これは激しい映画でした。思想・主題を最大限効果的に表現してグイグイ押してきます。ノックアウト状態です。この映画について語るのは、ちょっと敷居が高い。そんな作品でした。

一番の印象深いのは、テトゲスの描かれ方でしょう。これは、マスコミの暴力を描いていますが、ここまでやるとマスコミは下衆の極みである、というような描かれ方です。あることないことを書き立て、発言には都合のいい解釈(解釈もしていない、ただのでっち上げ)を行い、立ち入り禁止区域に侵入し、その影響でカタリーナの母親が死ぬことになり、それをもカタリーナの犠牲者として、転嫁して書き立てる。大したものです。
おまけに、チャラい格好をして、顔が濃くて、若造がふんぞり返って、弱者に対する侮辱発言を堂々と行い、ありとあらゆる害悪の根源のような人物として描かれています。マスコミの暴力を描いた映画は数ありますが、ここまで描き切った映画は数少ないのではないでしょうか?

マスコミの次に槍玉にあげられるのは警察ですが、こちらは若干公平感をもって描かれているような気がします。比較の問題ですが、しかし、これでは簡単に冤罪が作り上げられてしまうなぁと思うような描かれ方をしています。

この当時の世相は、ドイツでは極左勢力やそれによるテロが台頭し、それに対してマスコミや警察が無条件に世論形成し戦っていた背景があります。日本でも、学生運動から過激派への道がありましたが、同様のようです。ましてや、東ドイツと分裂し、冷戦の最前線です。ヒートアップするのはわかります。その中では、少しでも怪しい行動があった場合、魔女狩りのように攻撃され、一般大衆も一緒になって攻撃する。そういったことが行われていたようです。

その他にも、自分の行動を棚に上げ、保身を第一とする知識人や、彼らに会合場所を提供する修道院など、世の中の矛盾が次々と槍玉にあげられます。きわめてで辛辣で過激な描き方です。

カタリーナ・ブルームの失われた名誉

それに対する、主人公のカタリーナ。マスコミや警察、大衆の犠牲となる形ですが、その中にカタリーナにはもう一つのテーマがありました。彼女はなぜ、あれだけ警察に尋問されても、マスコミから攻撃されても毅然とした態度をとっていられるのか?この映画はそのカタリーナの性格、行動を組み上げていくパズルのようにも進行していくのです。それは、マスコミの暴力に目を奪われていく中で、ある程度物語が進行して気づかされます。このカタリーナの描き方と演技が、思想的色彩が強烈な中で、映画としても大変奥が深いものにしていると思います。そうしてみると、ブローナ博士の発言から、ブローナ博士夫妻がカテリーナの最大の理解者であり、社会の良心であることが解ります。

この映画を見て、戦後冷戦時代のドイツの一面がまた一つ知識としても加わったような気がします。極左勢力や無政府主義者への攻撃対象には、元ナチス党員はならないとか、なかなか考えさせられる言葉です。ちょっとドキッとさせられる感じです。

この映画を見ていると、世の中を見る絶対的な公平性というものは何だろうか?という疑問に苛まれます。そういうものは本当にあるのか?思想・利害が対立すれば、どちらにも言い分はある訳ですから、永遠の課題であり、常に問いかけていかないといけない課題でしょう。現在こういう映画が作られるのかというと甚だ心細い気がします。常に問いかけることが重要であり、それをやめた時、一方的な勢力への偏向による破たんが起こる可能性がある。そういうことを改めて教えてくれる映画ではなかったかと思います。
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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