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「セールスマン」 久しぶりのイラン映画に、上質の物語と演技を堪能

以前、劇場で予告編を見て気になっていた映画をやっと鑑賞できました。アカデミー賞外国語映画賞受賞。2016年の映画で、イラン・フランス製作です。アスガル・ファルハディ監督は、これが2度目に受賞になります。

あらすじ
小さな劇団に所属する夫婦のエマッドとラナの夫婦は、やむを得ず転居したばかりの家で、ラナが何者かに襲われてしまう。エマッドは警察に届けないというラナに納得がいかず、自ら犯人を捜し始めるが、それを境に二人の生活は一変してしまう…。



エマッド(シャハブ・ホセイニ)とラナ(タラネ・アリドゥスティ)夫妻は、小さな劇団に所属し、セールスマンの死の舞台の練習に余念がありません。二人は、今まで住んでいた住居から引っ越さざるを得なくなり、劇団員の紹介で新居に引っ越しますが、その中の一つの部屋には前の住人の荷物が残ったままでした。ある日、妻が一人でいるときに、玄関のチャイムがなり、夫と思って鍵を開けて、シャワーに向かった妻は、そのまま暴漢に襲われてしまいます。近所の人の話では、前の住民はいかがわしい商売をしていた女で、犯人は彼女に会いに来た人間ではないかと推測されました。

部屋の中にあった忘れ物の自動車のキーから、近所にずっと駐車中の車に目星をつけた夫は、警察に連絡しようとしますが、妻はこれを拒否。それをすると2人に破局が訪れると話します。夫は納得がいかず、その車から持ち主を割り出し、ある日、その男を以前に住んでいた、今は廃墟になっている家に呼び出しました。そこに現れたのは、心臓が悪いという年老いた男でした。エマッドは事件のことを問いただしますが、男は否定します。しかし、その様子から犯人だと断定。家族を呼んですべて懺悔させると問い詰めますが、舞台の時間が近づいたため、部屋に閉じ込めてエマッドは一旦劇場に出かけます。

ラナを連れて再び戻ったエマッドは、男が心臓の発作で倒れているのを見て、男の家族に連絡。男の車から心臓の薬を探し出して服用させると、男は何とか持ち直します。妻は、彼を許すようにエマッドを説得しますが、エマッドは微妙な表情です。そこに現れた男の家族は、事件の背景は何も知らず、男の命を救ってくれたことにエマッドに心からの礼を言います。家族が男を連れ帰る前に、エマッドは男と2人だけで別室に入り、男が侵入した時に部屋に置いて行った金の額を聞き、答えられないと顔面を殴り、忘れ物と適当な金額を渡して返します。男は、呆然としてその家から出る途中、再び発作を起こし倒れてしまいました。

ラナは、呆然と救急車を見送り、エマッドとの間にはもう言葉はなく、心もどこかにかき消えてしまいました。

セールスマン


妻を襲った犯人を見つけてからの展開が凄かったです。そして、最後の行動。金を置いていった意味。それが、すべてを語り、すべてに影を落とすということになります。妻が警察への通報を拒否した理由。それを夫が暴いてしまいました。そして、もう元には戻れないという絶望感に支配されていきます。犯人にとっては、家族を前に、直接告白させなくとも、言葉以上に、心に深く突き立てた一撃でした。そして、再起不能となってしまいます。絶望的な結末ですが、あまりにもうまく決まっており、このラストはお見事というほかありません。

前半から中盤までは、行ったり来たりの展開で、少しづつエピソードを積み上げていきます。そもそも、冒頭の家を崩してしまうような工事がすごい。ここでは、こういうことが当たり前に起こるのでしょうか?それに対してさして抵抗する場面が無いのは、ちょっと不思議でした。そして、物語の舞台はイランのイスラムの戒律が厳しい世界。倫理観がしっかりしている世界ですので、堕落してしまう事は、すべてを失うことに繋がる、ということになるようです。

イランの映画を見るのはいつ以来でしょう。たまたま巡り合わなかったということですが、21世紀初頭にみた、キアロスタミの「風が吹くまま」以来と思います。そして、今回「セールスマン」を見て、イランの映画のクオリティの高さを改めて実感しました。自分の映画体験がまだまだ貧しいなと実感する次第です。そもそもファルハディ監督の映画自体初めてですので、いろいろと見ていきたいと思いました。この映画、俳優さんの演技がどれをとっても素晴らしいと思いました。

2019.3.8 HCMC自宅にて、Amazon Prime Videoよりパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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