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「山の讃歌 燃ゆる若者たち」 劔岳に立った日のことを思い出しつつ

最近でこそ、仕事やその他の関係上山に足が向かなくなってしまいましたが、実は30代、40代はかなりの時間を山の中で過ごしました。中高年の登山ブームが訪れるちょっと前の時代。今ほど山は華やかでもなく、にぎわってもいなかったと思います。そんな山の情景も楽しめる映画を見てみました。1962年松竹の製作になります。

あらすじ
官僚の広岡(山村聡)は三人の息子があったが、長男の省一(山内明)は冬山の単独行で遭難。次男の進吾(田村高廣)はエリートコースを歩み商社に勤め、三男の栄介(早川保)は一浪で受験勉強の最中であった。広岡は出世が遅れ、その原因が妻のたか(山田五十鈴)と恋愛結婚をしたためだと思い、その屈辱感を息子たちには味わわせないようにと、出世第一主義を息子達に押しつけていた。広岡は、進吾に省一の婚約者であった、同期で出世頭の高橋の娘美沙(岩下志麻)を押し付けるが、当人たちはこれに抵抗し話を断っていた。そんなある日、進吾は劒岳ジャンダルムの登攀に挑戦するが、失敗し右足切断という結果になってしまう。一方、栄介は大学に合格後、偶然見つけた省一の日記から、出世主義の中で歪められてゆく自分を、人間らしく復活させたいという思いから山に向かったことを知る。そして両親の激しい反対を押し切り、登山道具を買って山に向かう。そして、絶望の淵にいた進吾も栄介の姿に自分を取り戻し、新宿駅に見送りに向かうのだった。



雪原を行く単独行者の映像から。そして雪崩の映像と捜索隊。捜索に参加した父親と弟たちに捜索中止の悲報が入ります。そしてタイトルバックに雪を纏う劔岳の雄姿。こうして物語は始まりました。

広岡は万年課長で、同期の高橋(清水将夫)とは大きく差をつけられ、高橋からは広岡が妻のたかと恋愛結婚したためだと言われています。高橋は次官の娘と結婚し、今や出世コースを登り詰めているのです。一方妻のたかは突然長男を失い茫然自失の状態が続いていました。そのような中で、出世頭の省一を失った広岡は次男進吾と三男の栄介に山に行くことをきつく禁じますが、すでに登山家となっていた進吾は抵抗します。

広岡は、元々省一の婚約者であった高橋の娘美沙を進吾にあてがうよう高橋に掛け合い了解を得ますが、その話を聞いた美沙は抵抗し、進吾に突然激しく断わりを入れにいき、進吾も親たちの勝手な行動に憤慨します。そんな中栄介が念願の大学に合格、その夜進吾は山岳会のミーティングで親の禁止にも関わらず劔岳ジャンダルムの登攀を決定しました。

広岡家に省一の」遺体が出たという連絡が入り、再び広岡家は悲嘆に包まれます。そして進吾は家族や会社に無断で登山を決行、失敗し右足切断の怪我を負いました。再び悲嘆にくれる広岡は、高橋に進吾と美沙との婚約の話を取り消し、栄介に期待をかけるようになっていきます。栄介は偶然兄の部屋で省一の日記を発見。そこには出世競争や家族の重圧から、人間性を取り返そうと山に向かった省一の心情が書かれていました。そして現れた父にただ一人満足な息子として残ってしまった栄介は出世コースに乗ることを託されますが、栄介は抵抗します。

栄介の恋人の節子(倍賞千恵子)は登山用品店で働いていました。二人で富山の病院に入院している進吾を見舞いに行きましたが、そこには美沙が来ていました。美沙は足を失ってしまった進吾に対し、いつしか恋心を抱いていましたが、足を失って屈折した心情の進吾は追い返してしまいます。それを知った栄介と節子を応援しようと決め、二人を結び付けようと世話を焼き始めます。そして、栄介は雪を纏う山々を見て登山を目指そうという意識が湧き始めました。

栄介は、父から入学祝として祝金をもらうと、登山用品を買い求めます。一方、屈折したままの進吾に、正気に戻って美沙に心を開くよう説得します。美沙も家出までして進吾のもとに向かおうとしますが、親に見つかり止められてしまいます。節子も閉じこもってしまった美沙を説得、栄介は厳しく制止する両親を押し切って、山に向かう決意を固めました。母のたかは、節子に頼んで栄介の山行を止めてもらうように頼みに行きますが、きっぱり断られてしまいます。そして、出発の新宿駅、そこにはやっと自分を取り戻した進吾も現れ、その後美沙も現れて二人は見つめ合うのでした。そして、家に残された広岡とたかは若者たちの行動をみて、人間的な生き方に思いをはせるのでした。

山の讃歌 燃ゆる若者たち

別山乗越の方向からみた、劔岳の雄姿を貼り付けてみました。定番の構図ではありますが、いつ見ても美しい劔岳の様子です。さて、あらすじを長々と書いてしまいましらが、この物語は実に締まっていると思います。非常に典型的な話ですが、このごく普通に展開する、素直な物語を力強く映像化した映画。そんな感想を持ちました。ちょっと照れてしまって恥ずかしくて言えないようなことを、それぞれの役で、堂々と言っている。そんな感じです。

さて、1960年代といえば、日本隊によるマナスル登頂のあと、登山ブームに沸き返る時代だったと聞いています。そして、新しいルート、より難しいルートへの登攀競争で、著名な山岳会はしのぎを削っていた時代です。それだけに遭難者も続出したのですが、しかし、当時の遭難はより厳しい山への挑戦に敗退した遭難がクローズアップされるのに対し、現在は登山も一般化し、多様化した中で、道迷いを中心に中高年の遭難が最も多いという事の様です。時代は変わりました。

そういった訳で、劔岳の映像を中心に、楽しく見てしまいました。私が登ったのは別山尾根からの一般ルートを一度だけという、ごく普通のものですが、それでも印象に残っている山です。そして、この映画の安心できるしっかりと構築されたストーリ-を楽しませていただきました。岩下志麻が凛として美しく素敵でした。この映画に出てくる好日山荘は、いかにも当時の山道具屋という感じ、今や、アウトドアブームの中で、あちこちに店舗のある大チェーン店になっています。やはり、いろいろ感慨深いです。

2019.12.25 HCMC自宅にてパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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