FC2ブログ

「黒の試走車」 60年代のエンターティンメントに惹きつけられる

最近、立て続けに古めの邦画を見ています。続けて見ていると、次々に興味がわく映画が広がってきてしまうので、ついつい嵌ってしまいました。まぁ、これはいつものことなんですが。今回は久しぶり(といっても3ケ月くらいですが)の増村保造監督の映画です。「黒」シリーズの初回作品となった1962年の映画で、大映製作です。

あらすじ
テスト中の覆面車が横転して炎に包まれる。翌日、自動車業界紙は、「タイガー試作車炎上」のスクープ記事が上がった。タイガー自動車では、競争相手のヤマトに試作テスト情報が洩れ、写真まで撮られたことが問題となった。小野田企画部長(高松英郎)はこのスポーツカー「パイオニア」にすべてを賭け、朝比奈部員(田宮二郎)とともに、あの手この手の諜報戦を展開するが、立ちはだかるのは関東軍出身のヤマトの馬渡企画本部長(菅井一郎)。そしてヤマトもタイガーの情報をいち早く入手し、入手したタイガーのデザインを流用し、同時期にスポーツカーを上市しようと極秘裏にテストを重ねていた…。



公道を加速する覆面のテストカーがカーブで横転、その姿はしっかり写真に撮られ業界紙にすっぱ抜かれてしまいます。タイガー自動車では、テストの情報が事前に漏れたことが問題になりましたが、スポーツカーの上市に熱意を燃やす小野田企画部長は、これに怯まず開発を続けることを主張し、成功の鍵を握るライバルのヤマト自動車との駆け引きを推進していくことになりました。相手と目するところは、ヤマトの馬渡企画部長で、小野田の腹心の朝比奈部員とともに、新スポーツカー「パイオニア」を大衆車に見せかける作戦にでますが、すべて関東軍特務部隊出身の馬渡に見破られていました。

馬渡がバー「パンドラ」の常連と知ると、朝比奈に彼の恋人の昌子(叶順子)をホステスとして働かせ、馬渡の身辺を探っていきます。その結果、ヤマトでも秘密裡にスポーツ・カーを製作中であり、しかもタイガーが高額を費やしてイタリアのデザイナーに作らせたデザインまで盗まれていることが判明。虚々実々の駆け引きの中で、ついに朝比奈は昌子に馬渡と寝るように説得。昌子は渋々承知し、朝比奈に決定的な情報をもたらしますが、二人の間に破局が訪れました。そして、迎えた発売日。昌子の得た情報により、タイガー自動車は勝利を勝ち取りますが、それもつかの間、新車で納入された車が当日に故障が原因で列車との衝突事故を起こし、形勢は一気に逆転されてしまいました。

事故をヤマトのヤラセだと睨んだ小野田は、徹底的に情報漏洩ルートを洗い出し、社内外の数々の関与者を摘発。そしてついに小野田の同期の企画部員である平木(船越英二)をスパイの黒幕と突きとめ、彼をオフィスに閉じ込めて糾弾。平木は小野田から追い詰められ、小野田の目の前で飛び降り自殺をしてしまいました。平木を追い詰める一部始終を見ていた朝比奈は、小野田の非人道的なやり方を責め、小野田と袂を別ち退社します。一方、すべての証拠をつかんだタイガー自動車は、ヤマトを告発、馬渡も辞任に追い込まれ、タイガーの完勝となります。そして、誰もいない砂浜に佇む二人。朝比奈と昌子は、昔の自分たちに戻って仲直りし、お互いの愛を確認。そして道路に出た二人の横を、今や二人にとって穢れた車となったパイオニアが乱暴にすり抜けていくのでした…。

黒の試走車

これは、面白かったです。さすが増村保造監督、ストーリーもよかったと思うのですが、画面に引き付けられていました。産業スパイの話で、タイガー自動車の社員のとる行動には、それほど違和感を感じさせません。でも、やっていいというわけではありません。生き馬の目を抜く世界で生きる愛社精神旺盛なサラリーマンなら、頭の中で考えてみることはあるだろうというような展開。あくまでも妄想の世界としてです。それに対するヤマト自動車はその世界の悪役。関東軍出身というおまけ付きで、悪役ぶりを高めています。その間で二重スパイを実行していた的場(上田吉二郎)たち。いろいろとネタは揃っています。

一方で、最も普通の人らしい朝比奈は、恋人を抱かせて情報を得ようとします。勿論これは異常な行動ですが、それを一番まともだと思わせるほど、周囲の状況が濃いのです。さすがに昌子は、一般の女性というわけではなく、客商売経験のある女性。そのあたりが、エクスキューズになって、若干の良心を保ちますが、だからと言ってこれでいいというものではありません。逆に、いろいろと経験豊富な女性であることから、別れ方もキッパリしています。そして、ふと正常に戻った朝比奈は反省し、よりを戻します。結局都合のいいラストになってしまったのですが、見ている方としてはある意味爽やかなハッピーエンドです。

そういう訳で、フィクションの世界で構築された産業スパイ映画、重ねてなかなか楽しかったです。それをうまく娯楽として見せてくれた、監督スタッフに感謝です。私の増村保造監督の同時代体験は、「スチュワーデス物語」と「少女に何が起こったか」であって、逆に、この二つが抜きんでていて、これ以外のドラマは、今ではそれほど印象に残っていないくらいなのですから、きっとエンターティンメントの世界では、私にとってたぶん一番相性がいいんでしょうね。今になって色々見てみて、なんとなくそんな感じがします。まだ見ていない増村監督の映画、もっと見てみます。

2018.11.11 NCMC 自宅にてパソコンで鑑賞
スポンサーサイト



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR