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「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」 小市民映画に見る至上の幸福感

ネットを見ていて、戦前の小津作品があったので、さっそく視聴しました。あまり詳しくないのですが、一定の人気を保つ作品のようです。私にとっては、なじみのない無声映画なのですが、どういった映画なのでしょう。第9回キネマ旬報ベスト・テン第1位、1932年松竹(蒲田)の作品です。

あらすじ
2人兄弟(菅原秀雄、突貫小僧)と両親は、家族4人で専務の岩崎(阪本武)の近くに引っ越してきた。転校した2人は、早速地元の悪ガキグループにいじめられ、小学校をずる休みする。そのうち、悪ガキ仲間となったが、その中には岩崎の子供(加藤清一)もいた。ある日、皆で「うちの父ちゃん」自慢の話になったが、兄弟も自分の父親(斎藤達雄)が一番偉いと信じて疑わなかった。そして、岩崎家の映写会に行った2人は、自分の父が、岩崎のご機嫌取りに道化役で映っているのを見る。失望して怒った二人は食事も取らず抗議するが、母(吉川満子)のとりなしで食事をとり、父と仲直り。そして何時もの様に父と学校に向かうのだった。



良一、啓二の2人は父と家財道具を載せたトラックで、東京郊外に引っ越してきました。父は、重役の岩崎の近くに引っ越して出世のチャンスを伺っているところです。そして、引っ越し早々、近所の悪ガキグループに目を付けられ、喧嘩した揚句いじめられます。そんな悪ガキグループがいる学校には行く気になれず、2人は小学校をずる休みし、学校の課題の習字を外で書き上げ、いい点数をつけて家に持って帰りますが、結局担任からの連絡で、学校に行っていないことが父に知られ、大目玉を食らってしまいました。

ある日、2人は酒屋の小僧(小藤田正一)に頼み、悪ガキグループのボスを泣かせます。そして、彼にとって代わりグループを仕切っていくようになりました。そして、その中に岩崎家の息子もいました。ある日、みんなは自分のお父ちゃん自慢をして、その特技や持ち物を各々自慢しますが、2人は自分の父が一番偉いと信じて疑わない様子です。岩崎家で映写会があるというので、岩崎の息子に頼んで連れて行ってもらうと、そこには父や会社の部下たちも来ていました。そして、その映像に移っているのは、専務の岩崎のご機嫌を取るために、変顔をして道化ている父の姿。すっかり2人の前では厳格な父の滑稽な姿を見て失望し、父に怒りが湧いてきます。

早々に家に戻った2人は癇癪を爆発させ父に抗議しますが、父の怒りにふれ徹底的に怒られてしまいます。子供たちをこっぴどく叱った父は、反省し疲れて眠る2人の床に行き、夫婦で寝顔を見ながら子供たちの将来を思い、複雑な気持ちで微笑みます。翌朝、まだハンストを続ける2人に、母はとりなし、父も語りかけ、やっとご飯を食べて仲直りした2人と父は、何時もの様に学校に向かいました。途中で専務の車に同乗する父を見送った2人は、専務の息子とともに、学校に向かうのでした。

大人の見る繪本 生れてはみたけれど

いわゆる、松竹蒲田の小市民映画です。なんだか、小市民映画というと卑下したような響きに聞こえますが、庶民の日常生活に題材を求めた、今でいうホームドラマといったところでしょう。戦後の小津安二郎の作品でも、脈々とこの雰囲気が生き続けています。そして、この映画はまさに、「小市民映画」の響きがぴったり合うような典型的な作品。内容も充実していました。自分の父が偉いと信じて疑わない兄弟。それが、上役にこびへつらう姿を見た時の失望と怒り。純粋な子供たちの世界と、打算的な大人の世界の間にある葛藤を見事に描いていると思いました。

寝静まった2人を見る父母の姿が、至上の幸福感を出しています。これがまさに「小市民」の幸福感ということなんでしょう。あまりに微笑ましくて、ノックアウトされました。「こいつらも一生侘しく爪をかんで暮らすのか」という言葉に込められた父の優しさや、翌日の「お前たち大きくなってお父さんより偉くなればいいじゃないの」という母の言葉。大人からしてみれば、あまりにも幸せな風景で、いかにも小市民的に心にしみるてくる訳です。確かに「大人の見る繪本」とは、言いえて妙という気がしました。日常の何気ない機微を切り取ってみせた小津安二郎の素晴らしい世界でした。

公開は、昭和7年ですが、その後の歴史を知っている我々としては、ちょうどこの子供たちが成人するころの世界を考えてしまい、ちょっと侘しくなります。しかし、それは言っても詮無い事。ここは名演技の4人家族を愛でましょう。中でも吉川満子が、いかにも母という役割を演じてとても感動的でした。頻繫に走る電車は池上線(池上電気鉄道)とのこと。何か構図が面白く、スピード感を感じます。日本が活気があって輝いていた時代の映画。この時代の映画を観るたびに、ますます興味が湧いてくるのです。
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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