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「小さいおうち」 昭和10年代の生活と、包み込まれた真実

キネ旬ベスト10シリーズです。今回は、2014年日本映画第6位の「小さいおうち」です。中島京子の直木賞受賞小説の映画化で、黒木華が、ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞しました。2013年の映画で、監督は山田洋次。松竹配給になります。まぁ、山田洋二・松竹ということで、雰囲気は想像できます。

あらしじ
東京郊外で女中として働いていたタキ(倍賞千恵子)の回想として語られる物語。昭和11年、タキ(黒木華)は上京し、時子(松たか子)夫婦が暮らす平井家で働き始める。優しい時子やかわいらしい息子のいるその家での穏やかな暮らしは、夫の会社の社員である板倉(吉岡秀隆)の出現により変化する。時子の気持ちが揺れ、当時の世相では風当たりの厳しい恋愛事件へと発展する気配が漂う中、タキは思い切った行動にでる…。



健史(妻夫木聡)は、大叔母であったタキが亡くなり、遺品の整理に立ち会います。その中には健史宛ての品々があり、晩年タキがノートに書き記していた自叙伝がありました。そして、時代は昭和11年へ。タキのナレーションによって物語が語られていきます。タキは山形から上京し、小説家の女中になりますが、その後、小説家の妻からの紹介で平井家へ奉公に上がることになりました。東京郊外にあり、最近建てられたばかりのモダンな赤い瓦屋根の小さい家でした。そして、平井(片岡孝太郎)と妻・時子、そして、息子・恭一(秋山聡)との穏やかな暮らしがはじまりました。

ある日、夫の会社に入った芸大卒の青年・板倉(吉岡秀隆)が訪ねてきます。その後も板倉と時子は何度か出逢い、映画や音楽の話などで二人の関係は盛り上がっていきました。そんな時、夫は会社の存続のために板倉を政略結婚させようと、時子に板倉の説得を依頼しますが、時子は説得に板倉の下宿に通ううちに、深い関係になり、タキはその狭間で悩むようになります。しかし、ついに板倉も徴兵されることとなり、出発前日、餞別を贈りに行こうとする時子を、このままでは危ないとタキが説得し、板倉から来てもらうよう時子にて手紙を書かせ、その手紙をタキが渡しに行きますが、ついにその日、板倉は時子の元に現れませんでした。

戦火が激しくなるとともにタキは帰郷しました。後に空襲で時子夫婦は防空壕で抱き合って焼死したことを知り、その後のことについては、タキはいつもこの場面で号泣してしまうため、語られることはありませんでした。タキの遺品に未開封の手紙があり、健史は板倉の消息を辿る中で、時子の息子の恭一(米倉斉加年)の所在を突き止めます。恭一の前で手紙を開封すると、それは時子がタキに託した板倉への手紙でした。恭一は健史たちと海岸を歩きながら、昔よく板倉とタキに江ノ島に連れて行ってもらった、二人はお似合いだったよ、とポツリとつぶやき、その時の様子を思いやるのでした。

小さいおうち

昭和11年から、戦火が激しくなるまでの市井の生活を舞台になります。東京近郊のモダンな赤い屋根の家で繰り広げられる家族のストーリー。経済制裁前の華やかな世相から、苦しい時代までの間、一般的にはかなり楽観的な感覚だったのが伺えます。雰囲気は松竹の伝統のホームドラマを受けつぎ、過度な表現は無く、日常の暮らしがきめ細やかに描かれていました。この時代を生きてきた人々にとっては、今の時代では想像できないようないろいろな人生がそれぞれにあり、どれをとっても一つのドラマができるのではないかと思います。そういった人々はすでに過去の人となり、良く語られたその人生は、物語で知るほかは無くなりました。

この回想録は、真実を書くようにと健史がしきりに要求していましたが、やはり真実は隠されています。映画の中では示唆するにとどまり、明確に表現されませんが、いろいろと謎を残します。大きなポイントは、なぜタキが手紙を渡さなかったかということですが、それは晩年の恭一の発言でも示唆されます。その他仕掛けとしては、タキの家にあった、赤い屋根の家の絵はどこから来たのかなども気になるところです。一方で、時子の男のような友人が、誰も時子を独占したがると言ったことも気になります。つまりは、そのあたりは、真実は藪の中でどうとでも解釈できるようにしたのでしょうか?全部正解みたいな(笑)。

それはさておき、松たか子黒木華の演技はなかなか良かったと思います。倍賞千恵子も良かった。吉岡秀隆は今一つはっきりした性格を演じていないと思いました。というか、中途半端などっちつかずの感じで、結局何なのかよく解りませんでした。演技によるものか、役そのものによるものかよく解りませんが。いや両方かな?あとは、普通というかそつ無くということで。最近、昭和10年代前半の映画をよく見るような気がしますが、この時代はもっといろんな角度から描かれていいと思います。劇中にもありましたように、戦争とひとまとめにして暗い時代と思われている部分が多いと思いますが、生活者の感覚としてはそうでは無いということ。多様な観点から再現してみることは大切なことだと思います。

2018.7.22 HCMC 自宅にて Huluをパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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