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「わが母の記」 60年代の家族の成長と和解の物語

引き続き、キネ旬ベスト10を見るシリーズなんですが、今回は2012年の日本映画部門の第6位「わが母の記」を見てみました。井上靖の自伝的小説で、樹木希林が出演している映画になります。井上靖の小説は好んで読んでいる訳ではないですが、さすがにいくつか読んだことがあります。さて、どんな感じでしょう。2012年の映画で、監督は原田眞人です。

あらすじ
小説家の伊上洪作(役所広司)は、湯ヶ島で父を見舞ったあと東京に戻ると、父の訃報が入ってきた。その後、湯ヶ島では、妹の桑子(南果歩)が母・八重(樹木希林)の面倒を見ることになったが、八重の物忘れはどんどんひどくなっていく。そんな中で桑子の夫が交通事故に会い、しばらく伊上が東京で引きとることになるが、八重に翻弄されて家族は混乱し、八重は軽井沢の別荘で暮らすこととなった。洪作は、幼少の頃祖父の妾のおぬいに一人預けられて育ったことから、母から捨てられたと思い確執を持って生きてきたが、ある朝、八重の口から意外な言葉を聞く。周囲の証言も聞いて母の想いを悟った洪作は、母との確執を乗り越えるが、洪作のもとに八重が突然いなくなったという知らせが届く…。



父の死から始まって、3年おきぐらいにエピソードがつづられ、家族の歴史が脈々と語られていきます。その内容はかなりぎっしり詰まっていて、しっかり辿ると長くなるので、ポイントだけ、書き留めておきます。

冒頭雨宿りをしている家族。母と、娘2人と息子1人の4人でしたが、息子のみ道の反対側にいて、その様子を心配そうに気遣う母がいました。おそらくこのシーンが、洪作と家族の関係を象徴し、話の筋の根幹になっていきます。洪作には3人の娘がいました。長女の郁子(ミムラ)、二女の紀子(菊池亜希子)、そして三女の琴子(宮崎あおい)。父が亡くなった時、琴子は思春期で家族に協調せず、洪作も手を焼いている様子でしたが、琴子は思ったことをはっきりと言う女性に育っていきます。

母の面倒は、妹・桑子が見ていますが、八重はだんだん認知症が進行していき、おかしな言動がでるようになってきます。しかし、洪作は幼い頃一人だけ、祖父の妾のおぬいの家に預けられて、兄弟と離れて育ったことを、仲のいい家族を演じても、未だに心の中に大きなしこりとして抱えていました。当時から母に捨てられたと考えていて、時々おぬいに連れられて実家に帰っても、おぬいをいつも気づかい、実家とは距離を置いている子供でした。そんな中で、唯一の男の兄弟として、その母の面倒を妹に代わって見ざるを得なくなり、いろいろと騒動が持ち上がってきます。

ある日、洪作の横に来て、おぬいに息子を奪われたと話す八重の言葉に、ついに感情を抑えられなくなった洪作は、初めて母と対峙し、「息子さんを置き去りにしたんですよね」と問いつめます。しかし、八重の口からこぼれたのは、洪作が子供の時に作った思い出の詩で、それを八重は今でもすべて覚えており、洪作が書いた紙片をお守りのように持ち歩いていたのです。こらえきれず、母の前で嗚咽し、洪作は自分の妻から母から離された事情を聴いて、母との確執を乗り越えます。そして、晴れ晴れとして紀子を送るハワイ行きの船に乗りこむ洪作でしたが、そこに八重が突然いなくなったという電話が入りました…。

わが母の記

話の流れは、10年以上の月日に及び、その間の家族の成長の過程が併せて描かれるので、なかなか中身の濃い話になっています。主題は、認知症が進行している母と洪作の話がベースですが、それに琴子の成長の過程を添えて進んでいくので、エピソードを思い出してみても、盛沢山です。認知症と言っても悲惨な話ではなく、いわゆるボケをうまく利用して語らせているような造りになっています。それはそれで、成功しているのではと思いました。感動の中心は、やはり母との確執と母との思いになる訳ですが、今まで突っ込んだ会話をしなかったのか?とか、妻も聞いていて今までなぜ黙っていたの?とか、妙な不自然さが気になりますが、こういうこの時代の上流階級の家庭では、そういったことを話すのはタブーなのかな?と思った次第。

1960年代と言えば、私も幼少の時なので、いろいろと気になるのですが、地方都市に育った私としては、川奈のホテルでパーティーとか、軽井沢の別荘とか、想像しただけで超ブルジョワな世界に見えます。このあたり、早く東京に出たもの勝ちみたいな部分もあるのではと思いますが、親類の中で早くから東京に出た人が、たまに帰ってくると、妙に眩しく見えたものです。アクセントが違っていたりして…。で、書いている方は、そういう意識はないと思いますが、この時代ずっと地方都市にいたものとしては、おやおや、上流階級の暮らしなのですね。いいこと…なんて色眼鏡が入ってしまいました(笑)。

そういう、部分部分で引っかかりがある映画ではありますが、じっくりと心の動きを描いていき、ある家族の歴史を解き明かしていく映画で、60年代の風物も良く描かれ、登場人物の性格もきっちりしているので、そこは立派だと思いました。もちろん演技も素晴らしいと思います。話も十分感動的でした。と思うのですが、先に書いたように、なにか個人的に割り切れないなという感は残っています。

しかし、キネ旬ベスト10を続けて見ていると、内容が濃い映画が多くて、ついつい見る目も厳しくなってくるもんですかね?

2018.7.21 HCMC自宅にて Huluのパソコン鑑賞

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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