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「砂の女」 私のトラウマ小説のひとつである砂の女を見てみる

若いころ読んで、私にとってトラウマ的な存在の「砂の女」ですが、その映画版については、準備はしてあったものの、なんとなく見るに至っていませんでした。ちょっともったいなくて…、というような感じです。最近、しばらく映画を見ていなかったので、そういった飢えている時であれば、じっくり見られるだろうと思って、自宅で見始めました。さて、あの原作の映像化はどんな感じなのでしょうか??


あらすじ
一人の教師(岡田英次)が、昆虫採集のため、砂丘地帯にやって来たが、いつの間にか夕暮となり、村人の勧めで砂丘の集落の寡婦(岸田今日子)が一人暮らしをする、穴の底の家で一夜を過ごすこととなる。翌朝男は裸で寝ている女を残し、家の外に出ようとしたが、家から地上に出るための縄梯子が外されていた。男は自分が砂かきの労働力として捕らわれたことを知り、どうにかして逃げようとするが、なんとか穴から外に出ても、監視員に連れ戻されてしまう。やがて、二人は夫婦のような生活を始め、男はある時穴の外にでる機会を得る。しかし男は、その場にとどまることにした。男にとってすでに逃げる理由がなかったのであった。



有名な小説の、その忠実な映画化になります。男が3日間の休暇をとり、昆虫採集のためやってきた砂丘。そこで彷徨ううちに、終バスに間に合わないと言う事を、村人に告げられる訳ですが、冒頭の砂丘の風景や砂の描写は大変美しく、また凝ったものになっています。一夜の宿を進められて、家のある巨大な穴の底に降り立った男は、勝手の違う不自由な一夜をを過ごすことになり、その翌日女が全裸で寝ている間に出て行こうとしますが、上に上がるための縄梯子はすでになく、脱出が不可能な状態になっていました。

女の言うには、夫と子供を砂嵐で無くしてしまい、女手一人では、砂のかき出し作業が出来ないとの事。そして、男はその労働力として拉致されたことを悟ります。この環境の中で当たり前のように淡々と生活している女の唯一の物質的な望みはラジオが欲しいということだけ。そんな場所から男は逃亡しようと手を尽くしますが、結局逃げ切れず、元の場所に戻ってしまいました。

狭い空間の中での男女は、やがて当たり前のように関係を持ち、時がたって女は妊娠しています。しかし、子宮外妊娠のため、病院に搬送されてしまいます。その後に残された男は、誰もいない中で縄梯子が残されているままになっているのを見ます。しかし、男は最近発見した毛細管現象による水のろ過装置にご執心で、外へはいつでも出れる。まずはこの発明と今の生活だと思うようになっていました。そして、外界では男は、長期の失踪により、死亡認定されていたのでした。

というようなお話でした。

砂の女

さて、この小説を若き頃初めて読んだ時の不思議な感覚は忘れがたい物でした。決して不条理な小説に慣れていなかったのではなく、むしろ好んで読んでいた方なのですが、結局はその後の自分の価値観に大きな影響を与えた小説の一つだと思っています。世界的にも有名な小説なので、いろいろな角度から評され、実際に社会的な面に於いてもいろいろなメッセージを秘めた小説なのですが、自分が主に読み取ったのは、男女のこと。特に女性の怖さのようなものでした。じっと自分の生まれ育った場所に固執し、何か強行することもなく、男をからめとって、縛り付けてしまう女性の姿。大変健気に見えて、じつは最強である。世の中はそんな風に成り立っているのだな。ということを若き時代に真理のごとく悟ってしまったということでした。

映画化された砂の女は、小説のように色々な情景が自分の想像によって頭を去来することなく、監督によって示された映像を見ることになるので、小説で読む程のトラウマになるようなところは感じませんでしたが、映像は大変美しく、賞賛に値するものだと思います。岸田今日子の淡々とした演技と、時々ここぞという時に見せる妖艶さが大変すばらしく、この砂の女という役に大変あっていると感じました。いろんなタイプの砂の女がいるのでしょうが、これも一つの姿なのかなと思います。

第17回カンヌ国際映画祭審査員特別賞、第37回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートなどなど数々の栄誉に輝いたこの映画ですが、やはり素晴らしい作品と言っていいと思います。この映画の登場は当時としてもかなりのインパクトがあったのではないでしょうか。また武満徹の音楽も素晴らしいので、この映画は当時の日本映画の一つの到達点だとも思いました。

さて、安部公房と勅使河原宏の失踪三部作。あとは、まだ「燃えつきた地図」を見ていないので、これも早晩見てみたいと思います。60年代から70年代の映画は、自分の少年時代の、まだ映画が娯楽の大きな位置を占めていた時代であり、スタッフがいろんなやりたいことを追求できた時代だとも思うので、今でも見ても印象に残る作品が多いと思います。また、素晴らしい作品と出会えますように。

2018.5.14 ホーチミンの家にてパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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