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「盲獣」 監禁状態での異常性愛で当時の風俗を慮る

増村保造監督の「盲獣」は、非常に個性的な作品として語り継がれているようです。たぶん、好きな部類に入ると思うので、休日の午後に見てみました。いや、なかなか、こういうドラマって、今ではいろんな意味で見られないでしょう…という作品でした。けっこう衝撃的です。1969年の映画です。

あらすじ
モデルの島アキ(緑魔子)は、自分のヌード写真が展示してある個展会場で、アキをモデルにした石膏裸像を丹念に撫で廻している男(船越英二)を目撃する。数日後、アキが呼んだマッサージ師は、なんと例の個展会場にいた男だった。アキはクロロホルムを嗅され、彼の彫刻のアトリエに連れ去られてしまう。彼にとっては、外界を知るには触覚が最高であり、特に女性の体が最高に素晴らしく、理想の女性でるアキをモデルに作品を作りたいという。早く監禁状態から解放されたいアキは、いろいろな策を講じていくが…。



この映画は、モデルであるアキの独白から始まります。まず、自身の芸術的ヌード写真が次々と出てきて、その個展会場へ。早い時間に会場に着いた時に客は一人。しかしその客は、アキをモデルにした裸像を舐めるように撫でていました。そして数日後、撮影旅行から帰ったアキは疲れを取るためにマッサージ師を呼びますが、来た男はあの個展会場の男でした。そして、その執拗な撫で方に気味悪さを感じたアキは、彼を返そうとしますが、クロロホルムをかがされて、人里離れた倉庫のような建物の中に拉致されてしまいました。

連れ去られた場所は、壁に人体のパーツの彫刻がたくさん埋め込まれ、中央に大きな女性の石膏裸像のある部屋でした。連れ去った男は盲人で、彼にとって、この世で一番素晴らしいものは女体であり、その彫刻を制作しつつ理想の女性としてアキを連れ去ったのでした。視覚の不自由な彼にとって、最も重要なのは触覚であり、その研ぎ澄まされた感覚を彫刻に実現しているとのこと。彼は、この密室でモデルになることを要求します。抵抗して一夜を過ごしたアキですが、翌日にはモデルになることを受諾、ポーズを取りますが、お腹が痛いので薬を買いに行って欲しいと頼み、その隙に逃げようとしますが、母親(千石規子)につかまってしまいます。

再び、製作に戻った男をアキは誘惑し、母親と男の関係を破壊して、それを利用しようとします。ついに母親は、アキを追い出そうとしますが、今度はこれが男に見つかり、もみ合いになって母親は亡くなってしまいました。男は母を死に至らしめたのはアキだとして、復讐のようにアキを犯しますが、そんな日が続くうちにわずかながら愛が生まれてくるようになります。そして、地下に埋められた母親が腐り始めるころ、暗い密室で甘美な触覚だけの世界に過ごすようになった二人は、より強い刺激を求めて、お互いを噛み合い、傷つけ合い、SMの世界に没入。二人は徐々に衰弱して行き、満足に動けなくなった二人は、死を意識します。そして、アキは、最後の快楽として男に手足の切断を頼み、男はアキの四肢を切断したあと、自らの胸に包丁を突き立てました。

触覚の世界の快楽の先にあったのは、暗い死の世界でした。

盲獣

なかなか評価しづらい作品でした。

耽美的といえばそうであり、背徳的といえばそうであり、猟奇的でもあり、ちょっと表現が難しいですが、昭和44年頃、こういうストーリーが、どうとらえられたのかな?と考えてしまいます。こういった内容は過去から古今東西脈々と存在し、日本では「奇譚クラブ」が昭和の後半の長きにわたって刊行を続けているので、風俗の中では確かに存在していました。一方で、アダルトビデオが氾濫するほど、解放された現在において、逆にタブーになってしまった物もたくさんあります。この時代に普通に公に存在するもので、今では持っているだけでも手が後ろに回る物もありますし、この映画の中で話されている言葉も使用できないものが沢山あります。

という事ですので、同時代の常識的観点からこの映画を見るという事はとても出来ないのですが、こういった分野において芸術的、普遍的な価値を求めたものという事ではないかと思います。緑魔子さん自身が脱ぐのは厭わないが、芸術的嗜好が強かったというキャラクターだったらしいので、それがこの映画の熱演になって現れているのかもしれません。冒頭から、ヌード写真の芸術や、触覚でつくる芸術、人間のパーツの彫刻で埋め尽くされた部屋など、かなり芸術を意識した造りになっている映画でした。

船越英二の演技は、素晴らしいと思いました。よくこんな雰囲気を出せたと感心してしまいます。この映画の登場人物は僅か3人。それぞれが強烈な個性を放っており、異常な人間の心理の一面を良く表現していると思います。そういった意味で、この映画自体は演技や表現など、素晴らしい作品と思います。そして、そういう嗜好もあるということを、公然と耽美的に描いたものとして理解しました。一方で、四肢切断までをここまで芸術的に高めるというのも、今の感覚だと、ちょっとやりすぎでは無かろうかとも思ってしまう次第です。アングラな物や、そういう映画だと思ってみれば、気にせず見てしまうのですが…。
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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