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「地獄門」 絢爛たる平安文化と力強い映像美

見たいと思っていた地獄門を見つけたので、楽しみに見てみました。第7回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール、第27回アカデミー賞で衣裳デザイン賞などを受賞した、に日本映画の名作。衣笠貞之助監督の1953年の作品になります。この映画は、日本初のイーストマン・カラー作品で、大映にとって初の総天然色映画でした。

あらすじ
平清盛の厳島詣の留守を狙った平治の乱で、上西門院を救うため身替りとなった袈裟(京マチ子)を護る盛遠(長谷川一夫)は、彼女をかくまうことになる。その後、盛遠は包囲を突破して厳島に急行。その報を受けた清盛(千田是也)は謀反の軍を鎮圧。その後、袈裟に再会した盛遠はその美しさに心を奪われ、論功行賞に「望み通りの賞を与える」と言われると、速座に袈裟を乞うが、彼女はすでに渡辺渡(山形勲)の妻だった。しかしあきらめきれない盛遠は、とりつかれたように袈裟と会おうとするが…。



御所では、謀反の反乱軍に焼き討ちを受け、大混乱の最中でした。そんな中で、上皇と上西門院を救うため、おとりとして車に乗った袈裟と、その車を引っ張る盛遠は、敵の襲撃を潜り抜け、兄の盛忠(澤村國太郎)の家までやってきます。そこに帰ってきた、兄の盛忠は敵方に寝返っており、盛遠にも翻意を促しますが、忠義の意思の固い盛遠は翻意せず盛忠一派と睨み合いにになります。しかし、情勢が変り盛忠はその場を離れました。袈裟を守り、騒動が静まりると、信西が地獄門にさらし首にされ、反乱軍が支配するようになります。盛遠は京を離れ清盛のいる厳島に急行し、京の急変を告げました。取って返した清盛は反乱軍を鎮圧し、再び清盛が京に入り、今回の一戦で功績のあった者の論功行賞を行うこととなります。

再び平穏になった京で、以前の生活を取り戻していた袈裟を見た盛遠は、その美しさにますます心が惹かれるようになりました。そして、「論功行賞で好きなものを与える」と清盛から言われた盛遠は、迷わず袈裟を妻に欲しいと告げます。しかし、袈裟が渡辺渡の妻だということがわかり、清盛から拒否されますが、盛遠は激しく食い下がり、この件は京でも大きな噂となってしまいました。

そんな噂の広がる中で、加茂の競べ馬で渡と偶然同じ組になった盛遠は、渡に勝利します。その夜の宴席で、噂になって可哀そうな盛遠をわざと勝たせてやったのではないかとしきりにからかう同僚に、渡はそんなことはない真剣勝負だとはねつけますが、それを聞いて我慢ならない盛遠は、場所柄もわきまえず今ここで勝負してやろうと真剣勝負を挑み不興を買うことになりました。

そして、袈裟を思うあまり狂気にとりつかれた盛遠は、袈裟の屋敷に会いに行きますが門前払い。刀を手に袈裟の叔母(毛利菊枝)を脅し、袈裟を呼び寄せます。そこで、盛遠は袈裟を脅して手に入れようとし、これ以上逆らっては夫の命も危ないと悟った袈裟は、この夜自分が手引きし、夫を殺させることを承諾。袈裟は家に帰ると、何も知らぬ夫と最後の盃を交わし、夫を別の場所に寝かせて明かりを消しました。遠巻きに見ていた盛遠は、明かりを消えたのを合図として渡の寝室に侵入。一思いに切りつけますが、そこには夫の身代わりとなった袈裟が倒れていました。

動転した盛遠は、自らの行いを反省し、渡の前に姿を現し、茫然としている渡に自分を切るよう促しますが、渡はこれに応えず、盛遠は、自ら髷を切り落とし、僧となって苦行に出ていくのでした。

地獄門

時は、平安時代の平治の乱のこと。この物語は、「平家物語」などで古くから語り継がれてきた、袈裟と盛遠の物語が題材となっており、実際の原作は菊池寛の戯曲「袈裟の良人」となります。従って、原作は日本の古典的な物語であり、ストーリーよりもそれをどう表現するかがポイント。言わば、オペラや古典劇を見るようなもの。そういえば、最近こういう映画は無いですね。あるとすれば、歌舞伎やバレエなどの実写映画くらい?でも、またそれは意味合いが違うような気もします。

さて、まず最初から目を見張るのは、色の饗宴です。平安時代の宮廷の衣装を豪華絢爛な色彩で描いた映画で、それを見ているだけでも素晴らしい映像です。色彩指導に洋画家の和田三造氏を起用したこの色は、平安時代の色を求めて制作したとのこと、原色をも多用した、大変カラフルな時代だったということになります。しかし、色彩は衣装だけでなく、夜の風景を出す淡い色など、いろんなところにこだわりが見てとれ、絵巻物を見ているような豪華なものでした。

俳優陣の所作なども、微妙な動きや表情を最大限に生かし、この物語の美しさを引き出しています。特に、素晴らしいと思ったのは、夫と最後の盃を交わし、盛遠を待つまでの京マチ子の演技。これは画面に魂を奪われてしまいましたよ。そして、この映像の美しさは、色だけでなく、やはり、衣笠貞之助監督の持つ独特の力強さや、隙のない映像が、さらに素晴らしさに力を与えていると思います。そして、渡辺渡役の山形勲も好演です。

この映画を見る前は、カンヌの受賞は西欧人の異国趣味の産物ではないかという疑惑を若干持っていましたが、実際見てみると、これは受賞も頷ける内容と思いました。パルムドールですから、そもそも並みの映画で受賞できた訳はないのでした。当時の一連の古典や大衆文学を題材にした作品群は、今では見られなくなった日本の伝統を思い出させてくれます。この文化と伝統は、受け継がれ、誇りに思うべきものだと思いました。
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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