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「鍵」 1959年のエロスの描写と成人指定

引き続きの、大人の大映祭無料配信は、今回は「鍵」です。前回の「しびれくらげ」の時に、1974年の神代辰巳監督と書いてしまいましたが、違っていました。あれは、日活でした。さて「鍵」は、市川崑監督、1959年の映画です。その後も、何度か制作されている「鍵」ですが、原作が日記調の文学だけに、それほど原作に固執しない映画化という形になっていると思います。小説が書かれたのが1956年なので、ホットなタイミングでの映像化です。

あらすじ
鑑定家の剣持(中村鴈治郎)は、大学病院のインターンの木村(仲代達矢)を娘の敏子(叶順子)の婿にしたいと考えていた。妻の郁子(京マチ子)は、夫を嫌っていたが、ある夜、木村が剣持の家でを訪問し、酔って浴室で眠ってしまう。剣持は、裸体の郁子を木村に手伝わせて寝室に運び、診療を頼むと言って剣持は姿を消す。そんなことが繰り返されるなか、敏子は現場を目撃してしまう。敏子もすでに木村と関係を持っていたのだ。母と木村が関係を持っていること、それは父が、嫉妬で興奮したいがために仕向けていることを知る…。



大学病院の一室で、木村が老いに抵抗することについて語るところから始まります。そして、木村が言うところの抵抗している患者が、その場に座っている剣持です。さて、その剣持は有名な鑑定家で句会のメンバーと、なかなかの文化人ですが、台所は火の車。屋敷も抵当に入っている状態です。自慢の妻郁子と、それほど器量の良くないと思われている敏子の3人暮らし。そして通いの女中のはな(北林谷栄)、屋敷の中はこういった構成です。

木村と敏子はつきあっていますが、木村の敏子との結婚は打算の産物で、欲しいのは剣持家の名声。郁子は、剣持が好きでは無いようですが、完全に猫を被って、いいなりに過ごしているタイプ。剣持はその郁子を性的に目覚めさせ、木村とギリギリの関係を持たせることを演出し、自分が興奮するという倒錯嗜好を持って接しています。木村と郁子の関係は徐々に進展し、夫が死の床にある時に、木村を部屋に誘い込む程になっていきます。そして、郁子はむしろ木村と敏子の結婚により、木村と同居できることを喜んでいるようです。敏子も木村が好きではなく、この状況を知りながらも、この機会を逃すと今後苦労しそうだとの打算の産物。

以上は、物語の筋という訳では無く、進展に従って明かされてくる背景です。そして、こういうお互いに牽制しあうような、三すくみの状態を、いろいろなエピソードを交えて描いていくという筋立てになっています。これを毎日見ているお手伝いのはなは、愛想が尽き、剣持の死に至っても、悲しみもせず、まだまだ胸の奥で打算を抱えている3人を見て義憤にかられ、3人を毒殺してしまいますが、警察にいくら自白しても、妄言として扱われ、自殺として片付けられたのでした。

以上、順を追ったストーリーでは無く、要約です。

鍵

1959年という年代の製作と言う事もあり、この映画は成人指定となったそうです。今の時代に見ると、なんという事も無いのですが、倒錯愛と殺人という内容自体が衝撃的だったと言う事でしょう。古い映画の演技は今のセリフの自然さと感じが異なり、固い仰々しいしゃべり方が目立つことがありますが、この映画はさらによそよそしさが半端なく入ります。主要な登場人物はすべて奥歯にものの挟まったような、本心とは異なる発言を強いられる。そんなストーリーです。表現も控えめながら、愛欲の表現はいろいろとありますが、貨車の連結器を写し、蒸気機関車のロッドが動くのを写すという暗示は、ちょっと笑ってしまいました。

主人公が、嫉妬により興奮するというのは、今で言うといわゆる「ネトラレ」で欲情するタイプですね。そして、臨終のときの要求も、なるほど言っていいのか。ポランスキーの「欲望の館」にもこんなシーンがありました。でも、より隠微な表現になっていると思います。構図も素晴らしいと思います。そして、カンヌの審査員特別賞を受賞という快挙を成し遂げた市川崑監督ですが、時代が下って横溝正史の映画をたくさん撮っていた頃は、文芸作品から娯楽映画を量産しているイメージが強くなっていました。

谷崎潤一郎の鍵ですが、昔読んだ記憶はあるのですが、詳細までははっきり覚えている訳ではありませんが、日記文学なので直接的に映像に結び付くという感じでは無いような小説だったと思います。しかし、これだけ映画化されるということは、想起されるものが強烈なんですね。そして、なんとティント・ブラスも映画化しているのですね。ポルノ映画の巨匠にとっては、格好の題材でもあったのでしょうか?音楽が、モリコーネというのも興味津々です。さて、おとなの大映祭もあと3作となりましたが、次回作は氷点で、山本薩夫監督です。もちろん期待しています。
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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