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「妖僧」 日本の様式美と市川雷蔵の迫力

時間があれば毎日何かしら見ていると、だんだん食傷気味になってきて目先を変えて見たくものるのですが、それも限界かなと、ダラダラとネットを見ていました。その中で、こういう映画はきっと見たことがないなと目についたのが、「妖僧」。1963年の映画で、衣笠貞之助監督、市川雷蔵主演によるものです。私にとっては馴染みがない分、新鮮でもあります。

あらすじ
厳しい山岳仏教の修業を耐え抜いた行道(市川雷蔵)は、法力を獲得、その力で病人を治す。その噂は朝廷に及び、病に伏せる女帝様(藤由紀子)の治療を頼まれ成功。女帝は行道を厚遇し、行道の唱える慈悲の政治で、太政大臣・藤原良勝(城健三朗)の不正をあばき失脚させる。女帝の信任をあつくした行道は、権力に近づいていくが、やがて時の権力者に疎まれるところとなっていく…。



山岳地帯で修行する行道が目を開けるシーンからスタートです。厳しい修業は3600日あまりに及び、それを耐え抜いた行道は、魔力を秘めた法力を獲得していました。彼はその力を試すと山を下り、困窮する庶民を見て、病人を治し、奴隷を解放し、そして役人に謂れなく成敗された死者を蘇生させます。やがてこの噂は宮中にも伝わるところとなりました。

宮中では、女帝様が長らく病床に伏せており、東大寺で恢復の祈祷が続けられていますが、帝の権力が振るわないことをいいことに太政大臣・藤原良勝が権力をほしいままにし、東大寺も多額の仏像の建立資金を求めてきます。役人たちは朝廷に資金が無い事をたてに断りますが、実は藤原良勝が私利を得ているのが実態の様です。そんな宮中に極秘に行道は呼ばれ、女帝様の病気恢復を頼まれ、行道は仏の前では身分差はないと言いつつ、法力を発揮。すっかり治癒しました。

女帝様は、行道を重用しその助言に耳を傾けます。藤原良勝に反感を抱く藤原清川(小沢栄太郎)らは、行道に良勝の不正を密告。追いつめられた良勝は、市原の皇子(成田純一郎)と語らい謀反の兵を挙げますが、法術で事を知った行道は、女帝をかくまい、無事難を逃れました。そして、この時女帝様と行道はその戒律に反し、お互いを愛するようになりますが、その禁じられた世俗の恋に激しく悩み、行道は道鏡と名を改めます。

新たに大政大臣になった藤原清川は、女帝の寵愛を受ける道鏡の慈悲の政治を次第に疎むようになり、道鏡に刺客を送ります。その時、女帝は病が再発、重篤な状況となり、道鏡は必死に法力を発揮しようとしますが、すでに世俗化し衰えた道鏡の法力は効果無く、女帝は崩御。仏の前で懇願する道鏡の背後から、清川刺客がこれを討ち、道鏡はやっとのことで、女帝の亡骸までたどり着くとその手をとり、崩れおちるのでした。

妖僧

この映画は、重祚した称徳天皇の治世の道鏡の物語をベースとしています。史実とは多少のずれはありますが、この時代の話を道鏡の立場から創作したものです。日本史でも古代に属する話で、現在では大河ドラマでもあまり扱われることの無い時代の話、とても新鮮でした。そして、なによりゆったりした物語運びと、執拗なまでの日本的な様式美の追及が、見る者を圧倒します。特に驟雨が襲い、それが屋根瓦や庭を濡らす場面など、心の底にある懐かしさを感じてしまったのでした。

冒頭から、最初に宮廷を訪れるまでの、市川雷蔵の演技はなかなかの迫力でした。ゆったりとした身のこなしから繰り出す法力は周りを圧倒する威圧感もあります。冒頭では小動物が法力により一瞬に骨だけになるという特撮も入っています。その後女帝との愛が生まれてくると、迫力が落ちてくるのも面白いところです。そして、もう一つの特徴が政治劇。太政大臣良勝の不正と、それをねたむ清川。道教の正論に不正は正され、清川が太政大臣となるが、今度は正論の道教が鬱陶しい。そして、今の腐敗した政治を変えるには道教しかいないという若手官僚たち。その中で、仏の道と愛情の相克に悩む道教。このような構図が明瞭に描かれています。

やはり、この映画は、日本古代の美が新鮮でした。そして、その映像が力強く重厚な雰囲気すら出しています。日本の映画にもこういう世界があったのかと、改めて感じ入った次第です。この時代、大映はこういう作品も作っていたんだなという驚き、その数年後に一気に崩壊してしまいますが…。また、映画を見る楽しみが増えたという1本でした。
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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