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「ポルノグラフィア」 戦時下のポーランドを描く文芸作品

GYAO!無料配信で、なんとなく見始めた「ポルノグラフィア」ですが、多少扇情的な名前ではありますが、ポーランド映画ということで、東欧の暗い雰囲気のドラマではないかと予測。GYAO!の表題には、「ポルノグラフィア 本当に美しい少女」と副題がついていて、確かに、DVDにも小さく副題がついています。この手のDVDの邦題にはもう騙されません。煽情的な副題やジャケットは、目を引くための常套手段であり、内容は異なる物。それは、知ってます。ある意味それが効果があることも知ってます。私がこうして見始めている訳ですから。

あらすじ
ナチス占領下のポーランド。ワルシャワのとある部屋に集まり、芸術談議に暮れるインテリの人々。そこで出会ったフレデリク(クシシュトフ・マイフシャク)と、ヴィトルド(アダム・フェレンツィ)は、南部の友人の農園で共に過ごすことにする。戦火が絶えない中ので農園での生活で、その家の娘へニア(サンドラ・サモス)と幼馴染のカロル(カジミェシュズ・マズール)の姿を見て、すでに、弁護士と婚約しているへニアと、カロルを結び付けようと画策するが…。



ナチスの占領状態にあるワルシャワ。知識人たちの会話は、かつてオープンなカフェで行なわれていましたが、今ではどこかの部屋で行なわれています。そんな中にやってきたフレデリクに出会ったヴィトルドは、彼を南部の農園を営む友人ヒポリトの農場での滞在に誘い、そこで過ごすことにしました。しかし、南部の田舎といえど、ナチスの影は濃く、時折周囲では銃撃戦も起こっているようでした。

ヒポリトの家族は、妻と年ごろの娘へニア。へニアを見たフレデリクは、彼女が弁護士のヴァツワフと婚約していることを知り、また、へニアと美男子の管理人の息子であるカルロが幼馴染であることを知った時、へニアとカルロを結び付けようという策略を思いつきます。いろいろな手を使って、お互いの隠された思いを、顕わにして恋に変えようとものでした。そして、フレデリクは映画の脚本を書いていることにして、その検証のために二人にラブシーンを繰り返し演じさせ、ついに、ヴァツワフにそれを演じているところを、演技と告げずにのぞき見させ、彼の心を混乱させます。

ちょうどその頃終戦を迎え、今までの自分のやってきた行いに、すっかり恐れをなして神経をやられてしまった将校が、ヒポリトの元に助けを求めてやってきますが、相手にしきれずに幽閉し、役所の判断を待つことにしました。ヒポリトの妻も戦争ですっかり参ってしまっていて、あちこちに酒を隠しては飲み続け、アル中状態でした。フレデリクはそんなヒポリトの妻に、物語を語ります。ワルシャワでユダヤ人との娘を持っていた男は、外出のたびに娘を押し入れに隠して出かけていた。男の帰りが遅かったので、娘は大丈夫だろうと街に出てしまい、捕まってしまう。男はその光景を発見し近寄ろうとするが、娘に「パパ!」と叫ばれたとき、思わず身を隠してしまった。そして、娘は収容所に連れ去られて行った。それは、フレデリク自身の話でした。

囚われた将校を殺せという命令が下り、だれが実行するか話し合いますが、最終的にはカルロにやらせることに。そして、将校にドアを開けさせる役をへニアが行い、見事に事を成し遂げます。そしてフレデリクは、娘の形見を使用人の少女ベロニカに残し、一人農園を去っていくのでした。

ポルノグラフィア

といった、重苦しいストーリーです。その中で若いへニアやカルロ、ベロニカの姿が、奔放に描かれ、ポーランドの田園風景の美しい生活が背景となっています。この時代、ドイツ占領下でのポーランド人の犠牲者は、600万人を数え、全人口の20%に達したとのこと。ユダヤ人をかくまうといった反ドイツ的行為のほか、許可なく家畜を飼うなどの微罪でも即座に銃殺とされたということです。そのような時代背景の中でのストーリーとして見た時、正気を保つということ自体いかに難しいことか。それは、ヒポリトの妻の行動を見ても、容易に見て取れるものです。

この原作は、ポーランドの亡命作家、ヴィトルド・ゴンブローヴィッチによるもの。この映画の語り部でもあるヴィトルドには、自分の名前を付けています。映画は、あえてコミカルに装いつつ、戦中の重い雰囲気を伝えています。その中で、農園の生活が明るいものであるのがせめてもの幸せですが、それでも人の死の場面が当たり前のように語られます。明るいピアノのメロディーが全編に登場しますが、フレデリクの心情は一度だけ弾いたショパンのプレリュードの哀愁を帯びた響き。それをへニアに暗いと一蹴されて、楽譜を放り投げてしまうシーンがありますが、優しい知識人を装っている客人の苦しい心境が静かに噴出した場面のように思います。

そういった映画にもかかわらず、Amazonにあった、映画の内容紹介。これは配給元?からのものによっていると思いますが、引用しておきますと…

ミステリアスな美少女とその少女を密かに姦視する男たちとの倒錯した欲望を描いたロリータ・エロスドラマ。1943年、ナチス政権下のポーランド・ワルシャワ。インテリ同志たちとの会合に訪れたヴィトルドは、謎の男フレデリクと出会う。意気投合した二人は共に友人の家に向かう。友人宅には美しい娘ヘニアがいた。家の近くの牧場で働く少年カロルもまた美しかった。幼馴染だという二人だが、すでに一線を越えた関係だった…。



さすがに、これは恥ずかしい。冒涜です。「ポルノグラフィア」という小説からくる原題がそうさせているのかもしれませんが、副題も内容紹介も非なるもの。ここまでずれているのも珍しいと思いました。

2003年第60回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門ノミネート作品
この年の金獅子賞は、「父、帰る」(ズビャギンツェフ)、銀獅子賞は、「座頭市」(北野武)でした。
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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