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「愛のめぐりあい」 アントニオーニだからできること

手元にあったDVDの消化といっても、さすがにこれは気合が無いと見られないと思ったので、長らくそのままになっていたものです。1995年の映画で、フランス・ドイツ・イタリア制作。「愛のめぐりあい」原題は「Al di là delle nuvole(雲の向こう)」。ミケランジェロ・アントニオーニ後期の作品になります。出演者も錚々たるメンバーでした。このDVD買ったのはきっと10年以上前で、今回が初見。心して見ましょう。

あらすじ
飛行機で移動中の映画監督の私(ジョン・マルコヴィッチ)は、作品を完成したばかり。次の映画にすべてを頭の中から消し去り、外部からの干渉を避け、次の映画のアイデアを醸成していく。そんな状況での旅であった。その為に、かつて、小さな愛のエピソードを聞いたことがあるフェラーラの街に移動中であった。
第1話 フェラーラ、ありえない恋の物語
第2話 ポルトフィーノ、女と犯罪
第3話 パリ、私を探さないで
挿 話 エクス・アン・プロヴァンス、日曜画家と友人
第4話 エクス・アン・プロヴァンス、死んだ瞬間
雨の中を去る第4話の青年の後ろ姿を見送り、雨の街を眺める。町には様々な人が住み、様々な愛がある。作家として、描いたこれらの映像に真実に近いものがあり、その裏にさらに真実に近いものがあり…。そして謎に満ちた真実は誰にも見えない。


あらすじ、というか構成です。それでは、一つ一つのエピソードを簡単に紹介します。

プロローグ 私(ジョン・マルコヴィッチ) 
これは、あらすじの通りです。飛行機の中から外の雲を見つめる私は、次の作品に思いを巡らせ、霧深い街に降り立ちます。

第1話 フェラーラ、ありえない恋の物語 技師シルヴァーノ(キム・ロッシ=スチュアート)、カルメン(イネス・サストレ
技師のシルヴァーノは、出張先の霧の村でカルメンという女性に出会いました。二人はたまたま同じ宿に宿泊しており、散歩の途中に接吻を交わしますが、夜お互いを気にしつつも、それぞれ自分の部屋で眠ります。翌朝彼が目覚めると、彼女はすでに旅立っていました。数年後、二人はフェラーラの街で再会。寡黙が素晴らしいというシルヴァーノに、カルメンは女には言葉が必要と言い、最近まで同棲していた男の手紙を一字一句諳んじて見せます。興ざめして出ていったかに見えたシルヴァーノですが再び部屋に戻り、二人は裸でベッドに横たわります。しかし、彼の手も唇も、彼女の肌や唇にスレスレになりながら、触れることはできませんでした。シルヴァーノは立ち上がり、そのまま去りました。彼はその後もずっと、この一度も自分のものとすることの無かった女を愛し続けたのでした。

第2話 ポルトフィーノ、女と犯罪 若い女性(ソフィー・マルソー)、私(ジョン・マルコヴィッチ
私は、冬のポルトフィーノの路地から出てきた女性(ソフィー・マルソー)の後を追いました。彼女は海辺のブティックの店員で、私が店に入ると訝しげに眺め、その後カフェで読書していると、彼女が自分について話したいと言ってきました。彼女は、自分は父親を12回刺して殺し、裁判で無罪になったとのこと。その午後、私は彼女の部屋で激しく抱き合いましたが、なぜ殺したかなど、それ以上の話はしませんでした。私はそれより、12回という回数が2~3回というよりも、より真実らしく聞こえることに惹きつけられました。映画では、どうしても3~4回にしてします。それはその方がより現実的に受け取ってもらえるという思っていたからです。

第3話 パリ、私を探さないで 愛人(キアラ・カゼッリ)、アメリカ人の男(ピーター・ウェラー)、妻(ファニー・アルダン)、妻に逃げられた男(ジャン・レノ

パリのカフェで、イタリア娘がパリに住むアメリカ人の男に、魂の話で話しかけてから3年間、男の妻は夫の不倫に耐えてきましたが、我慢の限界に達していました。男は愛人と別れると言いながら、アルコールに溺れる妻を慰め、さらに体まで求めました。しかし、別れを告げに来たはずの愛人宅では、また愛人の体に溺れてしまい、一向に話が進展しない様子です。一方、パリのモダンなアパルトマンに、男が出張から帰ってくると、家具も妻もなく途方にくれています。そこに電話が鳴り、出ていった妻が「私を探さないで」とだけ言って切れました。そこへ例の夫に裏切られ続けた妻が来訪。男の妻から部屋を借りて一人で越してくる約束になっていると告げます。二人は互いの境遇を知り、お互いに同情しますが、そこに彼女の夫からの電話が鳴り、妻は「私を探さないで」とだけ告げ、受話器を置きました。

挿話 エクス・アン・プロヴァンス、日曜画家と友人 日曜画家(マルチェロ・マストロヤンニ)、友達(ジャンヌ・モロー)

南仏を走る列車で、私と同じコンパートメントに同席した婦人(エンリカ・アントニオーニ)の携帯が鳴ります。女は「私を探さないで」とだけ言って切りました。
エクス・アン・プロヴァンス郊外の丘で、日曜画家(マルチェロ・マストロヤンニ)がセザンヌを真似て絵を描いていました。彼の友人がそれを見て、セザンヌの真似をするとは、最近は何でもコピーすればいいという世相だね。自分の絵をかきなさい。とからかいます。私は、その彼女が営むホテルに泊まっていました。

第4話 エクス・アン・プロヴァンス、死んだ瞬間 青いコートの娘(イレーヌ・ジャコブ)、青年(ヴァンサン・ベレーズ)
そのホテルのフロントで、青年が建築研究所の住所を聞き、向かいの建物に入っていきました。しばらくして、そこから青年が青いコートの娘を追うように現れます。青年は娘を追いかけて急ぎ足で歩きながら、しきりと話かけます。彼女は口数は少なく、同行を断るものの、余裕をもった応対をしています。彼女は教会のミサに行くところだったのですが、青年も執拗に食い下がり、ついに教会に到着。祈る彼女の横顔に見とれながら、青年はいつしか眠ってしまいました。目を覚ますと教会には誰もいず、慌てて外に出ると彼女を広場の噴水の脇に見つけます。激しい雨の中で青年は彼女を家まで送り、別れ際に、明日も会えるかと尋ねると、彼女は「明日、修道院に入るの」と答えました。青年は茫然として彼女の家を去っていきました。

エピローグ 私(ジョン・マルコヴィッチ) 
は、あらすじの通りです。

この映画の監督は、ミケランジェロ・アントニオーニですが、プロローグ、挿話、エピローグは共同監督のヴィム・ヴェンダースによるものです。

愛のめぐりあい

アントニオーニは、なかなかはっきりと物語を見せてくれませんので、細かいところを見逃すまいと心しての鑑賞です。機上のジョンマルコヴィッチから、霧の中の街のシーンに映り、どこか異世界へ行ったような雰囲気になってからの最初のエピソード。これが、原題の、雲の向こうに繋がるのでしょう。じっくりと第1話の映像を見ながら、長い大きな建物に沿って、イネス・サストレが歩くシーンを見つつ、「赤い砂漠」の工場の横を行くシーンを思い出し。この構図は健在だなぁと楽しくなります。最初の2つの話は、あまりセリフがありません。それだけに、役者の一挙手一投足が雄弁に物語を語ります。映像と演技で見せてしまう。映画館という空間で鑑賞すれば引き込まれそうな映像です。

第3話は、ストーリーがはっきりしていますが、目を奪われたのは、愛人のキアラ・カゼッリが、ピーター・ウェラーの上に乗るシーン。とにかく、極上の映像で、カゼッリの赤いブラウスと、背景の青い壁と、モスグリーンのソファー。そして、短い黒のスカートから延びる、カゼッリの白い足。これほど美しい映像のラブシーンは類まれなものだと思いました。素晴らしい!!そして、このシーンでのカゼッリの体のわずかな微妙な動きに、強烈なエロスも感じられます。

この映画のラブシーンは、どれもこれも強烈です。第1話の体に触れないギリギリのところで、体全体を舐めまわすようにたどるもの。第2話のお互いに相手を求めるようないわゆる濃いもの。第3話の激情型。激しが、どれも演技に気品が漂う。とにかく演技が上手いと思いました。いやらしくなく、いろいろな形の愛を感じるラブシーンです。

蓋をあければ、ヨーロッパの名優たちのオンパレード。極めつけは、ジャンヌ・モローと、マルチェロ・マストロヤンニの友情出演的なシーン。アントニオーニの復活に名優が敬意を表したという感じでしょうか。

ストーリーは、納得がいくもの。愛の罠に陥り、もがく人々の姿が画面からどんどん伝わってきます。いろいろな人生を滅ぼしかねない愛の形が、静かな中に強烈に語られています。ここまでオムニバス形式で並べ立ててもらえれば、言うことはありません。そして、あまり触れませんでしたが、第4話のイレーヌ・ジャコブが清楚でとても美しく、またそれだけに喪失感も強いものがありました。青いコートのファッションも素晴らしく、さすがイタリアです。

ということで、手放しで感動してしまいました。絵を見ているだけでも楽しいので、時々取り出してみたくなるDVDです。アントニオーニの作品、4作目の鑑賞で、見るのにこちらの心も充実していないと跳ね返されてしまうので、それほど見ている訳ではありませんが、もう少し振り返ってみたいと思いました。とり急ぎ、砂丘とか見てみたい…

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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