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「妻(1953)」 高峰三枝子 VS. 丹阿弥奈津子と夫婦の倦怠期

金曜日は「テーマは監督」成瀬巳喜男監督の作品、第21回です。「妻」は1953年の映画で、高峰三枝子を主演に迎え、たくさんの女優さんが登場します。原作は林芙美子の「茶色の目」です。

あらすじ
会社の課長職である中川(上原謙)は、長年連れ添った妻美穂子(高峰三枝子)と二人暮らしでしたが、既に倦怠期に入っており、会話もあまりはずみません。給料も決して多くはない中で、妻は内職をし、家は松山夫妻(中北千枝子・伊豆肇)や、美術学校に通う谷村(三國連太郎)を下宿人として住まわせていました。松山の夫は就職活動に励む毎日ですが仕事がなく、妻の栄子がバーに働きに出て家計を助けているのを谷村が見つけます。そして、松山夫婦の間で騒動に発展し、ついに栄子は夫に愛想をつかして出て行ってしまいました。そして、その様子も他人事には感じられない中川でした。

中川は愛想のない妻に飽き飽きしており、会社のタイピストで絵や音楽も心得ている会社の部下で、未亡人の相良房子(丹阿弥谷津子)に惹かれていき、デートを楽しみますが、房子は深入りを自制し、亡き夫の実家の大阪へと移っていきます。しかし、出張で大阪を訪ねた中川は、さっそく房子に連絡をとり、ついに一夜を共にしてしまいました。家に戻ると美穂子は、大阪からのはがきや、服のポケットのマッチなどから感づき、中川を問い詰めると、中川はすべてを打ちあけてしまいます。美種子は友人の桜井節子(高杉早苗)に相談しますが、かえって節子から夫への態度の冷たさや、色気のない態度を批判され、結局喧嘩別れしてしまいます。

美穂子は中川の勤務先や交友関係を調べ、房子へは関係を詰問する手紙を出したうえ、実家に戻ってしまいました。中川は妻の実家の父から、話をはっきりさせたいので今夜来るようにと言われますが、その日の夜は中川は東京に出てきている房子と待ち合わせしており、実家に行くのをすっぽかしてしまいます。翌朝妹(新珠三千代)たちに背中を押されて戻って来た美穂子ですが、中川が房子と会っていることが判ると、房子の滞在先に乗り込んで別れろと迫ってしまいました。房子はその夜も中川と会う予定でしたが、二度と会わないと手紙だけ残して大阪に帰ってしまいます。そして翌日出勤する中川をいつものように美穂子は見送りますが、いつものように何も言葉を交わさず、中川は出ていくのでした。



妻(1953)

えっ!というようなラストを迎える映画でした。映画だったらもう少しサービスしてくれよ…と言いたくなるところですが、これでいいのでしょう。この後の日々は地獄にしか見えないのですが、このラスト以外にどんな明るい終わり方を見せても嘘くさくなりますし、そんなラストに納得感を持たせるよう、作り込んでいった演出が凄いと思いました。冒頭から緩みない細かな演出でじっくりと見せていく95分が堪能できる作品でした。そして、決して大ヒットしないようなストーリーでもあります。

高峰三枝子は35歳。戦前の初々しさは影を潜め、いかにも中年に片足を突っ込んだ女を演じています。冒頭の食器を下げるとき、皿に残った何かをつまんでしまう、そんな細かなところで、いわゆるトウの立った女を表現します。そして、箸で歯をほじったり、お茶で口を濯ぐのは、中年オヤジの専売特許です。家事もけっこう適当のようです。そんな高峰三枝子も、後半に入って高杉早苗に怒って見せるあたりから、往年の女性らしい美しさや可愛さを見せ始めます。名演だと思います。そして、一途に丹阿弥奈津子を追い込んでしまいました。

前半は中北千枝子が素晴らしい。もう男なんてこりごりという女性を演じます。中北千枝子が成瀬監督の映画で活躍すると、全体が盛り上がっていく感じがします。高杉早苗も捌けた好かれるタイプの女性を好演してますし、本間文子も裏切られ執着する女性の姿を表現していきます。丹阿弥谷津子はいかにも好かれる女性ですが、子供もいるし仕事も始めるし、もうこれ以上面倒はいらないという事のようです。新珠三千代坪内美子、馬野都留子はあまり強い性格を与えられていないようですが、女優さんたちのオンパレードという形で、いろんなタイプの女性をじっくりと描きだしていて、それぞれに見ごたえがありました。戦争で伴侶を失った女性が多い時代に、しがみついても離さないことを選んだ高峰三枝子の寂しげなラストが印象に残りました。

2022.5.3 自宅にてパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりでしたが、ベトナム在住時代に、時間があるので映画を集中して見ながら始めたブログ。帰国しても続けています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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