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「めし」 原節子をとりまく女優たちによる当世女性群像

金曜日は「テーマは監督」成瀬巳喜男監督の作品、第17回です。やっとここまで来ました。「めし」は1951年の映画成瀬巳喜男監督が彷徨を終えてひとつの転機となった作品で、ここから快進撃が始まりました。たぶん、これ以降の作品のベースになるのではないかと思います。キネ旬2位でした。

あらすじ
大阪の南の外れの路地で、東京から越してきて夫の初之輔(上原謙)と暮らす三千代(原節子)は、三年間の変わりばえのしない日々に、当時の希望や夢も消え失せ、台所と茶の間を行ったり来たりの生活でした。そんなところへ初之輔の姪の里子(島崎雪子)が、縁談が気に入らないのを理由に家出をして転がり込んできます。三千代は若い里子の明け透けな物言いや、自信に満ちた態度が気になっていき、三人で行こうと計画した大阪見物も止めてしまいます。ある日、夕飯の支度を里子に頼んで同窓会に行くと、親しい堂谷(花井蘭子)と遊んで遅くなり、一方里子は家で居眠り。初之輔が帰ってきて起こしにいった間に、玄関の靴まで盗まれてしまいました。三千代が帰って様子を見てうんざりし、初之輔がまんざらでもない様子も気になります。そして自由奔放に振る舞う里子に、三千代は東京へ帰るよう勧めました。

そんな三千代の気持ちも知らず、初之輔が酔っぱらって向いに住む二号さんの金沢(音羽久米子)に送られて帰ってくるに至って、三千代は我慢の限界に達し、東京に帰る事にした里子を送るといって、自身も実家に帰ることにします。従妹の竹中一夫(二本柳寛)の家から借金をして、一夫に惹かれるものを感じながらも東京に向かい、母親(杉村春子)と妹夫婦(小林桂樹杉葉子)が待つ実家に戻りました。母たちは優しく接しますが、滞在をあまり良くは思わず、早く帰ることを勧めます。残された初之輔は家事もままならず、その間に金沢が訪ねてきますが、深入りは断ります。初之助は、竹中の家を訪ねた時、高い報酬と竹中の経営する会社に転職を勧められ、初之輔は三千代に相談してから決めます、と返事をしました。

嵐の晩、三千代の実家にまたも里子が転がり込んできました。映画を観てて遅くなったとか、父親に怒られたという理由で、遠慮もしない里子に、妹の夫の信三がそういう迷惑な人間は大嫌いだと突き放します。やがて、初之輔が出張と言いつつ、三千代を迎えにやってきます。少しも変わらず飄々とした夫をみて、三千代は自分がやってきたことが馬鹿馬鹿しく感じ、夫との生活を懐かしくも思いながら、一緒に大阪に帰ることにしました。二人で汽車に揺られ、夫を見ながらこれからの生活や夫との生活の幸福とはと、思いを馳せるのでした。



めし

林芙美子の未完の小説を映画化した「めし」は、この年大好評を収め、キネ旬では「麦秋」に敗れはしましたが、これは相手が悪かったということですか。作品を見て、いろいろなシーンが記憶に残り、何度も見返してみたくなります。でも、決して完璧な作品という訳ではない感じもします。キャスティングは素晴らしいと思いました。もちろん演技を引き出しているのは成瀬監督であり、また関係者やスタッフの力も大きいと思います。いろいろな力が結集されているのを感じます。冒頭はナレーション(いらないかな…)や浮いた感じの音楽が耳につきます。そして前半は、島崎雪子の登場を契機とした、原節子の演技や表情の変化で語っていきます。ほとんどそれだけが記憶に残りました。

原節子に絡む島崎雪子ですが、大変色っぽいのですね。もちろん衣装やセリフが危ういものなので、尚更そうかもしれません。「消えた中隊」で主人公が通う娼館の女性を演じていたのを見たことがありますが、惹かれるなぁと思ったものです。ここでは浮気に至らず男を惹きつけていきます。そして後半に入るとよくできた母親の杉村春子の登場。原節子はこれが東宝専属第一作ということですが、二人の組み合わせからは、小津監督作品などのフリー時代の作品が頭によぎります。この後半は素晴らしいものでした。それぞれの登場人物が絡み合って、それぞれ役割を発揮しています。それを一刀両断にしてしまう小林桂樹の朴訥さには拍手。島崎雪子に対してだけでなく、原節子にも刺さってますね。

細かいエピソードがいろいろあって、思わせぶりで回収されないかな?というところもあるのですが、音羽久米子は、上原謙の実直さの引き立て役。中北千枝子がいい雰囲気で、原節子に良くも悪くも当たり前に生きていくことを示しています。花井蘭子はコメディタッチですが、原節子の揺れる思いを表現しています。杉葉子、滝花久子、浦辺粂子と世代は違いますが、普通の妻の姿をいろいろな角度から表現しています。そんなこの時代の女性たちの姿が沢山出て来て、原節子を育てていくような感じです。その幅の広さから、女性たちを中心に世代が引き継がれていく姿を感じ、この時代に登場する女性たちの群像劇のように感じました。

2022.1.1 自宅にてパソコン鑑賞
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりでしたが、ベトナム在住時代に、時間があるので映画を集中して見ながら始めたブログ。帰国しても続けています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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