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「レクイエム ミカエラの肖像」 実話に見るドイツ山村の因襲


「裸の診察室」を見た後、サンドラ・ヒューラーの「レクイエム」の情報をネットで仕入れていたら、ニコニコ動画で見られることがわかりました。成り行き上、さっそく観てみます。彼女のベルリン映画祭の女優賞受賞作品でもあります。ストーリーはドイツのバイエルン州で起こった、アンネリーゼ・ミシェルの事件(てんかんを発症している彼女が、最後に悪魔祓いに頼り死亡した事件)をモチーフに制作された映画です。

あらすじ
南ドイツの小さな町。信心深い両親のもとで育ったミカエラ(サンドラ・ヒューラー)は、意識障害の持病を抱える内気な少女だった。大学入学を持病の再発を理由にためらう両親だったが、ミカエルは意思が固く、父の応援も得て進学。しかし、一人暮らしを始め、青春を謳歌し始めた彼女だったが、再び発作が起こるようになる。今までの病気との闘いや世間体から、精神病院への通院を拒み、病気を神が与えた自分への試練ととらえ、薬も放棄し信仰に頼るうちに、彼女の病状はますます悪化していった…。



ミカエラは、自転車で家路を急いでいます。家にたどり着いて両親に見せたのは大学の合格通知。母親は、また発作が起きたらどうするのとたしなめますが、父親は少し寛容のようでした。ミカエラは、大学の寮に入り、高校の時に一緒だったハンナ(アンナ・ブロマイアー)を見つけ、友達づきあいをしているうちに、ステファン(ニコラス・ラインケ)という恋人も見つけ、しばらくは青春を謳歌する日々が続きます。しかし、ある日家族と行ったカトリックの聖地でもらったロザリオを触れなくなってしまいます。これは、彼女にとっては何者かが触るのを妨害しているという感触でした。そして、寮に帰ってからも、そのような現象が時々起こるようになりました。

ハンナの勧めで病院で検査を受け、父親のもとに精神病院への入院が必要との診断書が届きますが、それを拒むミカエラ。ミカエラは原因をむしろ「悪魔が憑依している」ことに求めます。信仰の篤い彼女は、地元の神父に相談に訪れますが、あまりにも常識的な対応に失望もしてしまいます。その後、ハンナの勧める病院にも行かず、薬を飲むのもやめ、ステファンともうまくいかなくなり、孤独に闘病する日が続きました。心の支えとして、聖カタリナを信奉し、信念に基づき殉教した聖女を模範に、神の与えられた宿命を受け入れ、その時間を最大限に有効に活かすという考えに取りつかれていました。

病状はますます悪化、ステファンはハンナに頼まれて彼女を車に乗せ、ハンナからは必ず病院に連れて行くように念を押されます。しかし、ステファンが向かったのは彼女の両親の家。そこで彼女の破壊的な発作が始まり、最終的には神父に悪魔祓いの儀式をしてもらって落ち着きました。この儀式によって心の落ち着きを取り戻したミカエラは、しばらくしてハンナの訪問を受け、村の田畑を一望できる丘の上で語り合います。病気の回復の為には病院に入院することが必須だと説得するハンナに、ミカエラは自分の宿命を受け入れ、そのままのやり方を続けることを宣言しました。

そして、その数か月後ミカエラに死が訪れました。

レクイエム ミカエラの肖像

ミカエラは、入院治療を要するてんかん患者でしたが、当時の風習や、ドイツの地方に根差した因襲と伝統の中で、悪魔祓いによる回復を選び、結果として死に至ります。このあたりの詳しい事情は、Wikipediaの「アンネリーゼ・ミシェル」のページで読むことができます。おおむね実際の事件に沿って作られているのが解ります。これをミカエラ本人の視点から制作された映画ということになります。ミカエラは元来カトリックに対する深い信仰心を持っており、病状が進む中でさらに信仰に傾倒していったという風にも見て取れます。

登場人物の描き方も見事でした。父母、特に母はかなり厳しい性格で描かれます。ハンナは現実的であり、進歩的な女性。ステファンは、優しいのですが、最後は人任せにした感があり、本当にミカエラを大事にしたのかは疑問です。そして、大学に入学して青春を謳歌するミカエラは、十分に表現され描かれていたと思いました。

ストーリー的には事実に沿っていますので、何とも申し上げようなないのですが、映画としてはどちらかといえば暗いイメージで統一されている感じで、いつ何が起こっても不思議ではないような緊張感が付きまとっています。ミカエラの発する言葉は、悪魔の言葉ではなく、それまでの厳しい経験から発する心の叫びであることは言うまでもないことですし、それは、ドイツの地方の生活の中で積み重ねられたものでした。

女優賞のサンドラ・ヒューラーですが、当時は20代後半ですか。東独ズール市の生まれ。当時は西独国境に近い街ですが、東独時代の名残が残る街のようです。という訳ではないでしょうが、彼女の演技を見ていると、何か古い保守的なドイツの雰囲気を感じてしまうのですが、これは穿った見方でしょうか。
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テーマ : 映画レビュー
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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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