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「裸の診察室」 静かなアートをみながら性愛を考える

GYAO!を眺めつつ選んだこの映画ですが、オランダ作品で、いろいろと期待できそうな怪しい題名です。ただし、邦題は「裸の診察室」ですが、原題は、「ブラウン運動」です。ブラウン運動とは、学生時代以来に聞く言葉なのですが、浮遊する微粒子が、ランダムに運動する現象で、分子の不規則な衝突によって引き起こされる、ということ。原題の方からしてみれば、高尚なドラマのようです。という訳で、内容はエロチックな感じを含むドラマ、邦題は殿方の注目を惹くための題名という図式が簡単に成立してしまう訳ですが、いかがなものでしょうか。ちなみに、先に言ってしまうと、診察室で裸になる訳ではありません。

あらすじ
女医のシャルロットと建築技師のマックスはブリュッセルで息子と一緒に暮らしていた。幸福な生活の傍らで、シャルロットは病院の患者を自分で賃貸したアパートに連れ込み性行為を行っていたが、これが知れ渡ることとなり、二人の間に試練が訪れる。 その後、シャルロットはカウンセリングを受けるようになり、医師資格も剥奪されてしまう。マックスの仕事のため二人はインドに移り、新たな二人の子供も設け、再び平穏な生活が戻ったかに見えたが、マックスはシャルロットが毎日外出していることを知り…。



映画はパート1からパート3に分かれています。タイトルロールはぼやけた黄色いバックの後ろから喘ぎ声が聞こえている不穏な感じでスタートです。そしてまずパート1から。

シャルロットは、きれいに整ったアパートを借りるところからスタート。アパートの住人になると、少しですが美しい肢体をを見せてくれました。そして、幸せそうな夫婦生活の場面、病院でのシャルロットの活躍などの場面を挟みます。そして、医師として巡回中に目を付けた患者に近寄っていく姿。その患者たちはそれぞれシャルロットの部屋を訪れ、性行為の場面となります。連れてくる男性は毛むくじゃらだったり、老人だったりと、基準は不可解です。ある日、夫の建築現場を訪れた時、かつて部屋に連れてきた男に遭遇。男に声をかけられたシャルロットは突然金切り声を上げて暴れだし、気を失ってしまいました。シャルロットは病院で目を覚ましますが、彼女の行為は公のものとなったようでした。

パート2は、ほぼカウンセリングの場面。カウンセラーは行為の理由や心境についていろいろと質問をして、シャルロットは穏やかに答えます。最後には、夫のマックスも同席のもとカウンセリングを受けますが、マックスは穏やかながらも責めるような口調が含まれているようでした。そして、シャルロットは医師資格の剥奪を宣告されます。

パート3は、インドにて。夫婦は平穏を取り戻し、新たに二人の子供を設け、幸せな生活を送っていました。時折夫の建設現場を訪れていたシャルロットですが、ある日建設現場は移動していて無人の状態になっていました。シャルロットはその後も一人でその建設現場に通っているようでした。ある日マックスは家政婦から、シャルロットが毎日外出していることを知らされ、疑惑が心に芽生えてしまい、シャルロットを尾行します。そしてたどり着いた建設現場には、シャルロットが一人でたたずんでいました。そして、車の中の二人。マックスにもたれかかるシャルロットと、複雑な表情で受け止めているマックスの場面でこの映画は終了します。

裸の診察室

この映画はストーリー以上に画像や音響の特徴ある映画でした。会話は極端に少なく、表情も大写しになるが、その時間が非常に長い。そして、その表情の皺の1つの動きみたいな微妙さで心情や背景を語らせるような映画です。画面は常に芸術写真のようにアート感があり、そこには、サンドラ・ヒューラーがいつも微妙な表情で写っている。常に静かで、構図もいろいろ。普通に正面で捉えるときもあれば、画面の端に映って、しかも外を向いているような構図も多く、その位置関係で心情や状況まで語らせようとする感じです。説明されることはごく限られています。が、よく伝わってくる。そんな不思議な映画でした。

ということで、テクニカルな面で、大いに気に入りました。というか、こういう映画はけっこう好きです。絵と雰囲気だけで、あとは感じてくださいみたいな。それでも、ストーリーは簡単なので、難しい映画ではないようです。パート1で連れてくる患者は、どれも醜いタイプ。そこでセックスをするシャルロットの心はどこにあるのでしょうか?結果として、性依存者という分類が正しいようにも思えますが、その欲求の根源は何か?これはカウンセラーの質問の中でも出てきますが、明確に語られることはありませんでした。パート3の生活では、彼女は一人、建築中の誰もいない建物の屋上でたたずみ、横になりという日を過ごしています。何がそうさせているのか?説明はありません。それは、原題にあるように、流れのままにブラウン運動をしているだけということでしょうか?

理想的な結婚生活の中での、男女の関係。シャルロットが爆発するのは、建設現場でかつて連れ込んだ男と会った一場面のみ。あとは、笑みをたたえ、何をするにも平穏な様子で、過激なことをやっている。そういう2時間のゆったりしたアートを見せられて、いろいろなことを考えさせる。その中には、自分を振りかえざるを得ない一瞬もある。そういう映画だと思いました。

主演のサンドラ・ヒューラーさん。東独出身で、2006年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞しています。日本公開映画はあまり無いようですが、最近日本公開されて、ちょっと好評らしい「ありがとう、トニ・エルドマン」で主演をしていますね。この映画、なかなか魅力的な演技だったので、銀熊賞の「レクイエム ミカエラの肖像」も見てみたいと思いました。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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