
「裸のキッス」 西部劇のような展開を思わせるサスペンス

原題:The Naked Kiss (1964)
あらすじ
娼婦ケリー(コンスタンス・タワーズ)は、自分の髪をそり落としたうえ、ピンハネしていた売春の元締めを殴り倒して立ち去りました。そして、髪が元の長さに戻った頃、グラントビルという小さな町にやってきます。そして昔の商売をしようとしていたケリーは、刑事のグライフ(アンソニー・ビスリー)に声をかけられ、自分の管轄内では困ると、管轄外にあるキャンディの店を紹介されました。しかし、ケリーは障害児施設の記事を見て更生を考え、施設で看護師として働き始めます。ある日、町の有力者で富豪のグラント(マイケル・ダンテ)のパーティに招かれたケリーは、グラントに見初められ、やがてプロポーズされます。ケリーは売春婦だったことをグラントに告白しますが、グラントは過去は気にしないと言うので、ケリーは承諾しました。
結婚式を控え、グラントの屋敷を訪れたケリーは、少女が屋敷を出て行くところを目撃。そこにいたグラント見て、ケリーは彼が小児性愛者であることを知ります。見とがめられたグラントは、自分のパートナーは元娼婦が適役だと話し、ケリーは思わずグラントを撲殺してしまいます。逮捕されたケリーはグライフに釈明しますが元娼婦の言葉は信じてもらえず、窮地に陥ります。ところが、留置場の外で、あの時屋敷を出ていった少女を見つけ、グライフも証言を聞くうちに、ケリーが信用のおける人物と判りはじめ、ついに少女を探し出し、一連の子供がいたずらされた事件も、グラントの犯行だったことが判明します。ケリーは釈放され、功労者として町の人々も態度を一変させますが、その偽善的な様子に冷たい目を向けると、一人グラントビルの町を後にするのでした。

サミュエル・フラー監督の映画、初めて見ます。とにかく、「映画は戦場だ!」というコメントが残されているように、熱い監督さんのようです。いいですね。さて、いきなりちょっと驚くような激しい場面でスタート。ヒロインのケリーが、売春の仲介役をボコボコにしていました。それだけであればありそうな映像なんですが、その映像がいわゆる主観映像みたいな感じで、音楽が濃いので迫力満点です。そして、ストーリーはテンポよく進むというほどでは無いのですが、役者のアップが多く、かつ濃厚な音楽で味付けされ、かなり特徴的な雰囲気で進んで行きました。
最後まで見て思ったのは、これって女性版の西部劇みたいな構造になっているということ。どこかから流れてきた元娼婦の女性が、刑事(保安官)と駆け引きしながら、町の女性が悪の道に入るのを防ぎ、女性の悪役(キャンディ)と決闘し、ついには町の顔役の巨悪を発見。殺してしまって逮捕されますが、困難を乗り越え無事放免されて、どこかの街に向けて去っていく…。流れ者のガンマンが、元娼婦に変わったという、典型的な西部劇展開を見せていると思います。そのヒロインのコンスタンス・タワーズが素晴らしいです。特に、あの子供たちに歌う歌声が素晴らしい。(本人ですよね、きっと)
その子供たちに歌う青い鳥で始まる歌が大変感動的でした。歌の内容もそうですが、黒人やネイティブアメリカンの子供たちが、均等に混じって、同列に参加しています。今でこそ当たり前で、むしろ要求されていることですが、この時代には珍しいのではないでしょうか。これも、フラー監督の特徴だと思います。人種問題に限らず、いろいろな社会問題を織り込んでいった先駆者でしょう。そして、アメリカの製作会社と決別し、ヨーロッパに拠点を移してしまいました。ちょっといろんな作品を見てみたいですね。一つ新しい課題が増えた感じです。
2021.2.12 HCMC自宅にてGayo!よりのパソコン鑑賞