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「髪結いの亭主」 永遠に続く愛と幸福の絶頂

キネ旬ベストテンが発表されましたが、これにちなんでGyao!にて、過去のキネ旬ベストテン作品特集が組まれていました。全部で45本ありますが、半分までは見ていないようので、この機会に見て見ようと思います。まずは、「髪結いの亭主」。1990年の映画で、監督はパトリス・ルコント。キネ旬6位でした。
原題:Le mari de la coiffeuse (1990)

あらすじ
アントワーヌは、少年時代(ヘンリー・ホッキング)に理髪師のシェーファー夫人(アンヌ=マリー・ピザニ)に魅かれ、頻繁に店に通っていました。そして父親(ローラン・ベルタン)に将来は理髪師と結婚することと言ってしまい、張り倒されます。ある日、アントワーヌはシェーファー夫人が店の中で亡くなっているところに出会ってしまいます。そして、時は経ち、中年の域となったアントワーヌ(ジョン・ロシュフォール)は、一人で理髪店を切り盛りしているマチルド(アンナ・ガリエナ)に一目惚れしてしまい、一回目の来店でプロポーズそして、2回目でマチルドは承諾します。その条件は、「愛しているフリは絶対にしない」ということでした。

結婚式の出席は身内3人だけ。その後、助け合いながら毎日をずっとその小さな理髪店で過ごし、お互いは深い愛に結ばれました。実際、二人は子供も望まず、二人だけの愛の世界を過ごしていたのでした。そのような10年にわたる結婚生活の中で、一度だけ些細な喧嘩をした事があります。すぐに仲直りすると、二人はオーデコロンのカクテルを飲んで酔っ払い、朝まで店で過ごします。ある日、アントワーヌとマチルドは、老人ホームに入所した友人を訪問すると、友人は、老人ホームは死者の場所で、長居するところではないと早々に帰されました。

ある雷雨の夕方、マチルドは早めに店を閉め、積極的にアントワーヌを求めました。そして、買い物に行くと言って、傘を差さず雨の中に出ていくと、増水した川に飛び込んでしまいます。マチルドの遺書には、幸せの絶頂にあるうちに自ら命を絶つ、とありました。マチルドがいなくなった後も、アントワーヌは理髪店のソファに腰掛けて一日を過ごしていました。ある日、客が入ってくると、アントワーヌは洗髪をし、アントワーヌはいつもの踊りで客を喜ばせ、妻はもうすぐ戻ってくる、とだけつぶやいて、再びソファに腰かけ、クロスワードパズルに取り組むのでした。



髪結いの亭主

女性の理髪師と言えば、自分にも子供の頃の記憶があります。ある理髪店で一人だけ女性の理髪師がいて、その人に刈ってもらいたいと思っていたことや、何度目かの来店でその人にあたったこと。結果は何も変わりありませんでしたが…。ただそれだけなんですが、アントワーヌの気持ちは何となくわかります。やはり女性と直接触れる場面が生まれるので、ときめくものがありました。そしてそのまま大きくなったアントワーヌはついにマチルドを射止め、子供の時の思いを100%満たした幸せな生活を送り始めました。中盤は、そのアントワーヌ視線を意識したマチルドが美しく描かれます。

カメラは、マチルドの美しい肢体、そのすべてのパーツを舐めるように撮影しています。女性の美しさをじっくりと愛でる、この上ない耽美的な映像でした。アントワーヌの愛に満ちた目線が良く表現さています。そして、そのアントワーヌの心は子供の時のままのアントワーヌでもあります。しかし、時を経て、天井にひび割れができ、タバコを吸い始め、徐々に変化が訪れていきました。マチルドは幸せの絶頂をそのままに、アントワーヌの心に愛の絶頂を残したまま、命を絶ちます。アントワーヌの時間はそこで止まり、いつまでも最高のマチルドと過ごしているのでした。

幸せの最中にいると、その幸せをなくしてしまうのが恐ろしくなります。この映画で表現されているのはその様な絶頂と、そこで一気に時間を止めてしまったマチルドのお話。アントワーヌにはその絶頂の思い出だけが残されました。そのアントワーヌは子供の頃のときめきのままに、すべての時間を女性の理髪師の記憶と共に過ごしているのでした。人生の中の愛と幸福を切り取って、最大限に表現した映画。素晴らしい映像と構成だと思いました。

2021.2.4 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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No title

映画鑑賞の愛好者です。先日、偶然にあなたのブログを知りました。大変によくできていて、充実している内容に感動しました。今後とも、素敵な映画紹介と解説をお願いします。

Re: No title

ひつじさん
ご訪問とコメントいただきありがとうございます。大変励みになります。
嗜好も偏り、視聴経験も多くないので、なかなか考えも及ばないところ
もありますが、頑張って書いていきたいと思います。
またのご訪問お待ちしております。これからもよろしくお願いします。
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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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