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「みかんの丘」戦場となったみかん農家を通り過ぎる兵士たち

ジョージア・アブハジア紛争を舞台とした、2013年の映画で、エストニア・ロシア・ジョージア合作作品です。監督は、ジョージアのザザ・ウルシャゼ。ワールドプレミアのワルシャワ国際映画祭では、ノミネート作品で観客賞と監督賞を受賞。その後多くの映画祭に出品されました。ジョージア関連の映画はずいぶん久しぶりに見ます。「独裁者と小さな孫」以来かな…。

あらすじ
エストニア人はコーカサスに100年前に移住しましたが、1992年のジョージアとアブハジアの紛争勃発により、そのほとんどが帰国。今、このアブハジアの小さな村に残っているのは、みかん農家のマルゴス(エルモ・ニュガネン)と、木箱をつくるイヴォ(レムビット・ウルフサク)のみとなりました。マルゴスはみかん畑を見捨てられず、イヴォは理由を語りませんでした。

イヴォの作業中に、二人のチェチェン人傭兵が訪れ、イヴォは彼らの要求に応え、食料を渡します。兵士から前線が近寄っていると聞いたイヴォは、マルゴスとみかんの収穫を早く終えなければと語り合いますが、銃声と爆音が響き、駆け付けるとイヴォが食料を渡したアハメド(ギオルギ・ナカシゼ)が怪我を負って倒れ、もう一人のチェチェン人とジョージア兵たちが死んでいました。イヴォは、アハメドを連れ帰って手当し、他の兵士の遺体を埋葬しようとしましたが、一人のジョージア兵のニカ(ミヘイル・メスヒ)が、まだ生きていることに気付き、二人は彼をもイヴォの家へ運び、アハメドとは別の部屋で治療することにしました。

イヴォが仕事場から戻ってみると、友人を殺されたアハメドが仇を討とうと、ニカの部屋の前で刃物を構えて座り込んでいました。イヴォはこの家の中では殺しは絶対許さないと命じ、アハメドは従うことを誓います。やがて、ニカも意識を取り戻し、リビングで同居するようになると、激しい諍いが絶えなくなりますが、最終的にイヴォが暴力を止めていました。ある日、知人のアブハジア人兵士たちがイヴォの家を訪れたので、ニカをなだめたあと、アハメドも気を利かせてニカを紹介し、一致団結してその場を切り抜けます。その夜、4人はBBQを囲み、再びいがみ合うアハメドとニカをイヴォはなだめ、皆でみかんの収穫を手伝うと話がまとまった時、大きな爆発音が響き、先ほどのアブハジア人たちが全滅し、マルゴスの家も焼け落ちてしまいました。

翌日、イヴォはニカが俳優だと知り、戦争が終わったら皆でトビリシに見に行こうと談笑します。その時、アブハジア側の兵士たちが通りかかり、外で薪割りをしていたアハメドは問い詰められ、彼らに歯向かうと、ジョージア人だと決めつけられ、兵士から狙撃されそうになります。その時、家の中に隠れていたニカが銃で応戦し、ニカから銃を渡されたアハメドも加わって兵士を撃ちました。しかし銃撃戦に巻き込まれたマルゴスが命を落とし、倒れた兵士たちに近寄ったニカも、まだ生きていた兵士に撃たれ息絶えました。イヴォは二人の棺を作り、マルゴスを彼のみかん畑に、ニカは亡くなったイヴォの息子の傍に埋葬します。そして、アハメドはイヴォに心からの礼を言うと、ニカが大事に持っていたカセットテープをカーステレオで流しながら、家路へと車を走らせるのでした。



みかんの丘

戦場となったみかん農家での、ワンシチュエーションのアクションドラマ。映像のほとんどは、イヴォの家と、マルゴスの農園及びその周辺の道で完結しています。そこを通過する3組の登場人物。いずれも兵士で、イヴォとマルゴスの運命を大きく左右します。メインは、チェチェン人の傭兵アハメドと、敵対するジョージアの兵士ニカの邂逅と確執、和解、離別のストーリーでした。敵兵同士なので、強烈ないがみ合いが発生し、その間に立つのは中立で年長者のイヴォという形でした。イヴォの達観した物腰は、これまでの長い人生の出来事から出来上がったものと理解できますが、その内容は明かされることはありませんでした。

ニカが俳優と知り、イヴォとニカが、戦争が終わったらアハメドを連れてニカの演技を見に行こうと談笑し合う場面。ここでフラグがたちました。この後悲劇が訪れるな…と。どういう形で起こるかはわかりませんが、意味もなくこんな明るい話題を挿入する訳はないと思いました。そして、その直後…という展開です。残された二人。ニカの遺体を息子の墓のそばに埋めたあとのアハメドとイヴォの会話は秀逸です。機知に富み、寓意をも表し、いい場面だと思います。ラストもニカのテープをかけてチェチェンに向かう。いいエンディングです。

女性が出てこない映画なので、全体が殺風景に感じますが、さすがに仕方がないですね。そして、ストーリーはとても面白いのですが、なんとなく雑な感じがして、もう少し締まらないかなぁとも思うのですが、ずっと同じ場面で、同じ面々が演じているので、そう思ってしまうのでしょうか。ちょっと望みが贅沢なのかもしれません。この映画は数多くの映画祭で賞を獲得した映画です。そして、オスカーとゴールデン・グローブの両方て、外国語映画賞のノミネートとなりました。エストニアの俳優、レムビット・ウルフサクの滋味あふれる素晴らしい演技が楽しめる映画です。

2020.3.25 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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特集記事一覧②

いままでの特集記事を集めたページです。(その2)

リンク 特集記事一覧①

<特集> ハリウッド黄金期のコメディ (6/15-19)

久しぶりに特集にしてみました。ハリウッド黄金期は、1930年代から1940年代にかけてと言われますが、いろいろなタイプの映画が百花繚乱のように現れていて、後世の映画に大きな影響を残しています。コメディにおいても、ロマコメやスラップスティックなど、現在のコメディの基本となった作品が多く現れてました。そんなコメディの中から最近見たものを中心に5本ならべてみました。いずれも一見の価値ありの名作です。

6/15 チャップリンの独裁者 (1940) チャールズ・チャップリン
6/16 毒薬と老嬢 (1944) フランク・キャプラ
6/17 桃色の店 (1940) エルネスト・ルビッチ
6/18 赤ちゃん教育 (1938) ハワード・ホークス
6/19 サリヴァンの旅 (1941) プレストン・スタージェス

「サリヴァンの旅」では、コメディ映画を作る事に関して、意思が明確に示されていました。素晴らしい作品だと思います。

<特集> 母をめぐるサスペンスとドラマ (4/27-5/1)

ある時期、「母親」がテーマの作品をいくつか見ました。特に意識せず、似た作品を順に追っていったという感じではありますが、結果として、いろいろと特徴のある母親が出てきました。「いつまでも一緒に」家族との関係に揺れる母親。「ジュリエッタ」は知らず知らずのうちに子供と心が離れてしまった母親。「母親たち」母親同士の静かなバトル。「ダブル/フェイス」は代理母を巡るサスペンス。「母という名の女」は母と娘が母親としてまた女としてぶつかります。いろんな母親の姿が、激しいサスペンスとドラマが展開されています。

4/27 いつまでも一緒に (2015) リトアニア リトアニア映画賞主演女優賞
4/28 ジュリエッタ (2016) スペイン  ゴヤ賞主演女優賞
4/29 母親たち (2018) ベルギー    マグリット賞作品賞
4/30 ダブル/フェイス (2017) アメリカ
5/01 母という名の女 (2017) メキシコ カンヌ映画祭 ある視点審査員特別賞

個人的には、やはり「ジュリエッタ」が一番好きですね。後ろの3本は、正直母親というか、女性が怖くなります!

<特集> ミラ・ジョヴォヴィッチ (4/20-24)

最近、ミラ・ジョヴォヴィッチの映画をいくつか見たので、まとめてみました。ミラ・ジョヴォヴィッチといえば、バイオハザードのイメージが強く、怖いお姉さんという印象が定着しており、バイオハザード以外は見ていなかったのですが、Amazonの会員特典で、まとまった本数が見られるのが判ったので、この際いろいろ見てみました。やはりアクションに寄りますが、それでもいろいろな表情が見られました。1975年にセルビア人とロシア人の間に生まれた彼女は、モデルとしてのキャリアを積み、「フィフス・エレメント」でブレイクしました。発音は、ヨヴォヴィッチが正しいとのことでした。もう40歳も過ぎていますが、これからはいろいろと落ち着いた役もこなしていくのでしょうか。

4/20 フィフス・エレメント (1997)
4/21 ウルトラヴァイオレット (2006)
4/22 パーフェクト・ゲッタウェイ (2009)
4/23 フェイシズ (2011)
4/24 サバイバー (2015)

<特集> 鬼畜なヴァイオレンス映画 (4/13-4/17)

あまり上品な映画ではありませんが、世の中には鬼畜な映画がひっそりと人気になっていたりします。レイプ・リベンジものという分野もあり、その他、サスペンスやスリラー、ホラーと形態は様々です。その手の映画の代表である「セルビアン・フィルム」は幸か不幸か未見ですので、ここには出て参りません。いずれも Amazon Prime の無料特典で見ることができた範囲内ですので、超絶的なものは少ないと思いますが、それでも理不尽な残虐シーンなどいろいろありますので、閲覧注意ということで…。

4/13 アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ (2010 アメリカ)
4/14 ペット 檻の中の乙女 (2016 スペイン アメリカ)
4/15 フルリベンジ (2014 アメリカ フランス)
4/16 ザ・インフェルノ (2017 チリ)
4/17 マーターズ (2015 アメリカ)

ここに挙げた映画って、5本中3本がリメイク作品なんですね。一つは古い作品のリメイクで、2つは他国の映画のハリウッドリメイクでした。そうしてみると、このタイプの映画はけっこう需要が多いってことでしょうか?

<特集> ファンタスティック映画祭 (4/6-10)

ファンタスティック映画祭に出品される作品は、要するに面白いので好きです。ただし、内容はかなり幅広いようです。世の中に三大ファンタスティック映画祭というのがあって、シッチェス・カタロニア国際映画祭・ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭・ポルト国際映画祭とのこと。シッチェスが規模が大きく、出品作品も幅広いようで、ブリュッセルはあまりイメージがなかったのですが、最近では、「アイ・アム・ア・ヒーロー」とか、「いぬやしき」とか、日本の作品がグランプリに輝いているようです。いかにもファンタスティックという作品が多いような気がします。その中で、私はポルトが一番なじみがあるかな。選ばれる作品が独特の味があってすきなのです。「Miss ZOMBIE」とか、「ゆれる人魚」とか、大好きですね。

4/06 EVA〈エヴァ〉 (2011) シッチェス2011 特殊効果賞/ポルト2012 特殊効果賞
4/07 武器人間 (2013)    シッチェス2013 スペシャルメンション
4/08 CUB/カブ 戦慄のサマーキャンプ (2014) シッチェス2014 監督賞
4/09 ミラーズ 呪怨鏡 (2015)         ポルト2016 審査員特別賞
4/10 スイス・アーミー・マン (2016)      シッチェス2016 作品賞・男優賞

<特集> 日本の名女優 昭和20年代 (3/30-4/3)

終戦間もない昭和20年代。映画も復興の中で暗い雰囲気を吹き飛ばし、国民の心に希望の灯りを灯すべく、いち早く復興を遂げていきます。その中で、戦前から活躍するスターも含めて、華やかな女優さんたちが銀幕を彩るのでした。そのような昭和20年代の映画を5本。それぞれ違う女優さんで並べてみました。

3/30 銀座カンカン娘 (1949)     高峰秀子・笠置シヅ子
3/31 この広い空のどこかに (1954)  久我美子・高峰秀子
4/01 高原の駅よさようなら (1951)  香川京子
4/02 誘惑 (1948)          原節子
4/03 獣の宿 (1951)         岸惠子

最初の3本はラブストーリー、「誘惑」は不倫劇、「獣の宿」はサスペンスです。
出色は、「誘惑」の原節子。この妻子ある男性への上目遣いと、杉村春子のホラー。昭和23年の映画です。忘れられません。必見です!

<特集> フランス映画 (3/23-27)

フランス映画と言うあまりにも漠然としたお題になっていますが、ほんとはもっと細かく特集したいところですが、見た映画のストックに乏しいもので…。フランス映画はそこそこ好きです。そして、やはり映画発祥の国でもあり、フランスの文化に根付いた映画が沢山制作され続けていて羨ましい限りです。日本はかつては映画先進国であったはずなんですが…。という訳で、脈絡もなく見た作品をならべているという形です…。

3/23 オルフェ (1950)
3/24 女は女である (1961)
3/25 ぼくを葬る(おくる) (2005)
3/26 ボヴァリー夫人とパン屋 (2014)
3/27 小間使いの日記 (2015)

「オルフェ」は、ジャン・コクトー、女は女であるは、「ジャン=リュック・ゴダール」と、フランスの文化を牽引してきた巨匠。「ぼくを葬る」のフランソワ・オゾンは、現代の名匠。「ボヴァリー夫人とパン屋」はフランス文学の名作の翻案。そして、 「小間使いの日記」は4度も映画化されたフランスらしいエスプリに富む名作のレア・セドゥによる演技と、まずまず粒ぞろいだと思います(笑)。

<特集> 大映ドラマ 50-60年代 (3/16-20)

大映の50-60年代のドラマを選んで見てみました。時代劇とかではなく、あくまでドラマ。この時代の大映のドラマは、エンターテインメント性も高くて、とても好きです。なんか、大人のドラマみたいな感じで。この5本は、ちょっと偏りがあるかもしれませんが、今見てもなかなか楽しめるものだと思います。

3/16 暖流 (1957)        増村保造 左 幸子/野添ひとみ
3/17 お嬢さん (1961)      弓削太郎 若尾文子/野添ひとみ
3/18 女は二度生まれる (1961)  川島雄三 若尾文子
3/19 閉店時間 (1962)      井上梅次 若尾文子/野添ひとみ/江波杏子
3/20 黒の超特急 (1964)     増村保造 田宮二郎/藤由紀子

やはり、若尾文子と野添ひとみが多くなりました。でも、いいですね。この時代の女優さんたち。

<特集> 劇場未公開 DVD未発売の映画 アメリカ編 (3/9-3/13)

今週は、日本での劇場未公開で、かつ日本ではまだDVDの発売のない映画を集めてみました。ただし、そのほとんどはNET配信で見ることができます。未公開映画は、かつては、ビデオスルー、DVDスルーという形か、テレビ放映という形で見ることができましたが、新作映画でも、AmazonやNETFLIXで公開されるケースも出てきています。そのほか、未公開映画の飛行機内の機内鑑賞というのもあります。そんな映画たちの中で、最近作のアメリカ映画を集めてみました。

3/09 女怪盗エイミー (2016)
3/10 クラウン・ハイツ (2017) サンダンス映画祭 観客賞
3/11 ナイトスクール (2018)
3/12 スチューバー (2019)
3/13 ブリタニー・ランズ・ア・マラソン (2019) サンダンス映画祭 観客賞

4本が、Amazonで鑑賞、1本が飛行機です。インディペンデント映画の割合が高くなっています。サンダンスは、インディペンデントの映画祭ですね。今や、NET配信の映画は、アメリカ映画だけでなく、いろんな国の映画が登場するので見逃せません。

<特集> 歌と踊り、レビューの時代 (2/17-21)

始めた特集も、だんだんストックが無くなってきて、苦しくなってきました。今週はなんとか舞台裏ミュージカル的なものなど、往年のミュージカル作品など、歌と踊りが楽しめそうな作品を集めてみました。かつては、ブロードウェイのスターから映画スターへというルートでたくさんの映画スターが誕生しましたが、一方でそのブロードウェイのスターを扱った映画も多数ありました。今回は、それらも含めて並べてみました。ちょっと寄せ集め気味です(汗)。

2/17 ルムバ (1935)
2/18 ショウ・ボート(1951)
2/19 ブルースの誕生 (1941)
2/20 あのアーミン毛皮の貴婦人 (1948)
2/21 喝采 (1929)

音楽は、その土地土地でいろいろとありますが、どんな音楽でも感動することは万国共通と思います。

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「サリヴァンの旅」 笑える楽しいコメディながらも社会派です

サリヴァンの旅は、コメディ映画の名作として、アメリカ国立フィルム登録簿にも登録されました。1941年の映画で、プレストン・スタージェス監督の作品になります。

あらすじ
映画監督のジョン・サリヴァン(ジョエル・マクリー)は、コメディ映画監督として、ハリウッドで成功を収めていましたが、自身は現実の矛盾を抉り出す、社会派作品を取りたいと考えていました。そこで、映画会社の重役たちの反対を押し切り、実際の貧困を体験するために、浮浪者に扮装して旅に出ると言い出します。ところが、重役たちは宣伝用にトレーラーに乗って彼の跡をつけ、取材させることにしました。サリヴァンは、少年の運転する自動車を拾い、振り切ろうとしますがうまく行かず、ラスヴェガスで落ち合うことを決めて、一人で行動を始めます。

トラックをヒッチハイクして、車から降りるとなんとハリウッドに戻ってしまいました。浮浪者姿で入ったカフェで、俳優を諦めて田舎に帰ろうとしている女性(ヴェロニカ・レイク)と出会い、サリヴァンを貧しい浮浪者だと思った彼女は、彼にコーヒーをふるまいます。サリヴァンは身分を明かして一旦自宅に戻ると、二人で旅を再開することにしました。そして、本物の浮浪者として貧しい人々の生活を共にしてきた二人ですが、だんだん耐えられなくなり、ハリウッドに戻ると、自らの体験に、貧困の悲惨さを感じたサリヴァンは、街の浮浪者に紙幣を配り始めます。

ところが、一人の浮浪者に逆に強盗に会ってしまい、遠くの街に運ばれ、たまたま警官を殴ってしまったことから、6年の強制労働を宣告されてしまいます。外界との連絡も取れないまま、奴隷のように働かされ、その頃ハリウッドでは、サリヴァンを大騒ぎで捜索。身元不明の死体が上がると、サリヴァンだと断定されてしまいます。ある日、サリヴァンは慰安として、囚人たちとコメディのアニメを見て、コメディがすべての人を幸せな気分にさせることに気づくと、自分がサリヴァンを殺したと名乗り出て新聞に写真を載せ、ハリウッドのメンバーがそれに気づき無事帰還。成果としての社会派作品の計画を立てる重役たちの前で、再びコメディ映画を撮ることを宣言するのでした。



サリヴァンの旅

成功したセレブであるサリヴァンが、社会派の映画を撮影しようと、浮浪者に扮して貧困を体験しようというプロット。そんなの、体験はしても、本当の所は解るはずがないと思うのですが、まずは、うわべから入って何度もサポート部隊に助けられ、実質失敗し、やがて軌道に乗ると、一通り貧困生活を過ごして、耐えられなくなって、ここらが潮時と帰還します。そして、自ら金を配るという暴挙に出て、解ってないのよねと思っていたら、今度は偽装貧困でなく、本当に奴隷のように強制労働させられました。そして、自分の役割に気づくというお話です。最後はかなり感動的でもありました、

ジョエル・マクリーと言えば西部劇というイメージですが、ここでは映画監督というコメディドラマの主人公であることが、新鮮でした。この映画では、強制労働させられているあたりが逆にジョエル・マクリーの雰囲気が出ています。そして、ヴェロニカ・レイクが美しくて、凄く雰囲気が良かったと思いました。ノワール映画が有名らしいのですが、残念ながら見ていないので、私には「奥様は魔女」のジェニファーのイメージしかありません。あの映画のヴェロニカ・レイクも大好きですが、これも良かったです。追っかけてみたくなりました。

前半のカーチェイス場面はなかなかの見ものでした、そして、二人の貧困体験の旅がセリフもなく続いていく場面は、かなり迫力があると思います。プレストン・スタージェスも、ワイルダーやマンーウィッツと同様、脚本家出身の監督。コメディが持ち味と言う意味ではワイルダーとイメージが被ります。プレストン・スタージェスの映画は数本見ただけなのでよく解らないのですが、今のところ、ワイルダーのコメディは柔らかなお洒落な感じがするのに対して、こちらは硬質でドラマチックなコメディのイメージを何となく持っています。どの映画も安心して見られる監督と思うので、こちらも追っかけてみたい監督さんなのです。

2020.6.12 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「赤ちゃん教育」 彼女はホークス的女性像の一つの典型

名前はよく聞く映画でしたが、今まで縁がなく、Amazon Primeに出現したので見て見ました。1938年の映画で、ハワード・ホークス監督作品です。RKO製作のスクリューボール・コメディです。

あらすじ
若き動物学者デイヴィッド・ハックスリー(ケーリー・グラント)が、3年を費やした雷龍の骨格の組立ては、残り肋間鎖骨1本となり、ちょうど、発掘隊から発見の連絡があったことから、助手のアリス(ヴァジニア・ウォーカー)と翌日結婚することにしました。その日は、博物館に百万ドル寄付を考えている未亡人の弁護士である、ビーボディ(ジョージ・アーヴィング)とのゴルフの約束に出かけたところ、ゴルフ場でわがまま娘(キャサリン・ヘプバーン)に邪魔されて、ゴルフも会話もできず、レストランで再び会食することとなります。ところがそこでも、かの令嬢が来ていて、デイヴィッドは上着を、彼女はスカートを裂くはめとなり、食事どころではなくなってしまいました。

彼女・スーザンに言われるまま、夜半にビーボディに会いに行くと、彼女はビーボディを起こすために石を彼の頭に当ててしまいます。翌日デイヴィッドのところへ肋間鎖骨が届き、喜んで博物館へ行こうとしたところ、スーザンから豹がいるから助けて、という緊急電話が入り、出かけてみると、ペットのために慣らされた豹で、ベイビーという名までついていました。スーザンはデイヴィッドを気に入ってしまい、ベイビーも連れて、彼をコネチカットの伯母(メイ・ロブソン)の家に連れていきます。到着してシャワーを浴びるデイヴィッドの服を隠して帰れなくし、仕方なく女性用の部屋着を着た彼を、伯母はおかしな人と思ってしまいました。

ところが、その伯母が百万ドルの寄付を考えている未亡人とわかり、デイヴィッドは素性を隠します。そして、雷龍の肋間鎖骨を犬のジョージが隠してしまい、デイヴィッドとスーザンは、広い庭を掘り返すはめに。夜になるとジョージもベイビーも失踪してしまい、一方その頃サーカスの人食豹も脱走。デイヴィッドとスーザンは、捜索中に不審者と思われ、留置場に放り込まれてしまいました。スーザンは、看守の目を盗んで抜け出すと、人食豹をベイビーと間違えて連れ帰ります。ちょうど、サーカスの捜索隊や、ベイビーとジョージも現れ、問題は無事解決。アリスは二人の仲を見て結婚を取り消してしまい、翌日肋間鎖骨を発見したスーザンが博物館に現れ、デイヴィッドは雷龍完成と喜んだのも束の間、スーザンが雷龍にかけた梯子から落ちそうになった弾みに、雷龍はバラバラに分解してしまいました。そして、スーザンは無事デイヴィッドの腕にしっかりと収まっていたのでした。



赤ちゃん教育

「赤ちゃん教育」という、何やらホームドラマみたいな邦題に、敬して通り過ぎていた映画でしたが、よくチェックして見るとスクリューボール・コメディであったので、なんだそうなのか…と鑑賞してみました。赤ちゃんとは、ペットの豹をベイビーと呼んでいるだけのことで、赤ちゃんはどこにも出てきません。直訳したらこうなったのですかね。ということで、キャサリン・ヘプバーンと、ケーリー・グラントの掛け合いを楽しむコメディなのでした。

このコメディの登場人物は、かなりキャラが立っています。強烈です。特にスーザンの奔放さや天然さ、イケイケ感は突出していて、見ている方も、やりすぎを感じるくらいですが、それが憎めないのがこのコメディの妙というところでしょう。映画理論には、「ホークス的女性像(Hawksian woman)」というのがあるそうで、これが一つの典型なのだそうです。機知とカリスマ性を持つ強気な女性で、セックスシンボルとはまた違った、魅力的な女性。ホークス自身もこのような女性が好きらしいです。なんとなく気持ちが解ります。

キャサリン・ヘプバーンって、それほど好みのタイプでもないのですが、このまさに体当たりの演技という感じは凄いと思いました。ケーリー・グラントは、最近「毒薬と老女」で見たのと同じような雰囲気で、振り回されて右往左往する役柄が板についています。鑑賞中は、何度も爆笑できるシーンがあり、大いに楽しみました。例えば、アップルゲイト氏が食事中に豹の物まねをするシーン。何かやらかすぞという前振りも十分で、実際音を聞いたときは爆笑ものでした…。

2020.6.8 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「桃色の店」 ルビッチによるご機嫌なロマコメの古典

エルンスト・ルビッチの映画が出ていたので、さっそく見てみました。ルビッチやワイルダーはその名前を聞くだけで雰囲気が想像され、みるのが楽しみになります。1940年の映画で、原作は、ハンガリーの劇作家ミクローシュ・ラースローによる戯曲。その後、リメイクもされた作品です。
原題:The Shop Around the Corner
ビデオ邦題:街角 桃色の店


あらすじ
ブタペストの街角のとある雑貨店。オーナーのマトチェック(フランク・モーガン)は、この商売一筋に打ち込み、35年になりました。若いクラリク(ジェームズ・スチュアート)は、9年前に丁稚に来て以来の従業員で、今では最古参になりました。マトチェックも彼を信頼し、その意見には一目置いていました。ある日、クララ(マーガレット・サラヴァン)という女性が職を求めて現れ、その場で上手く商品の客に売り込んだため、マトチェックは気に入って雇い入れます。クララが店員として活躍し始めると、クラリクは穏やかではなく、クララと、ことごとくいがみ合う日々が始まり、その上、主人のクラリクに対する態度もよそよそしくなっていきました。

クラリクはその頃、新聞広告で見つけた匿名の女性と文通し、彼の中で想像は膨らみ、いまや理想の女性となっていました。そして、初めて面会を約束した日、理由もなくクラリクはクビになってしまいます。失業してしまって会う元気もなくなったクラリクですが、同僚のピロヴィッチ(フェリックス・ブレサート)に励まされ、約束の店に行くと、なんとそこにいたのはクララでした。クラリクは相手を待つクララに、事情を隠して語り掛け、クララは現れない文通相手にやきもきします。ちょうどその頃、マトチェックの店に私立探偵が現れ、彼の妻の浮気の相手は、店のマネージャーのヴァダス(ジョゼフ・シルドクラウト)だと告げ、相手がクラリクだと勘違いして首にしてしまったマトチェックは、妻の浮気が確定したことにも失望し、自殺を企てました。

そこに、丁稚のペピ(ウィリアム・トレイシー)が現れ、マトチェックを救うと、ぺピの知らせを受けて、クラリクは病院へ見舞いに行きます。そして、マトチェックは誤解を詫び、クラリクをマネージャーに任命し、ヴァダスを解雇するように指示。ペピも販売員に昇格しました、新支配人クラリクは、文通相手に会えず失意の底にいたクララを見舞うと、再び文通相手として手紙を書いて元気づけ、勢いを取り戻した店員たちの頑張りで、クリスマス商戦は大成功。クリスマスの日、文通相手と再び会う約束をしていたクララは、店を出るとき、クラリクに文通相手は自分だったと告白され、二人は無事結ばれるのした。



桃色の店

ルビッチのコメディということで、楽しみに鑑賞です。この映画のリメイク作品である、ユー・ガット・メイルは、見たような見てないような…。メグ・ライアンの映画が、いろいろと頭の中でごっちゃになっていて、記憶が定かではありません。この映画の文通が、メールに変わったのがリメイクです。文通と言えば、経験はあまりありませんが、昔よく、雑誌の最後の方に、文通希望とかよくありました。ペンパル募集とか言って。かつての懐かしい時代の、男女の知り合いになる手段の一つでした。もちろん、男女には限りませんが…、

これも、典型的なロマコメ展開で、登場人物もみな雰囲気が良く、じっくり楽しむことができました。設定が、ハンガリーのブタペストということですが、元来原作がハンガリーの戯曲であることで、登場人物の名前がハンガリーらしいところを別にすれば、ロンドンでもニューヨークでも、どこでもいい感じです。ジェームズ・スチュアートがかなり若いです。顔も細くて精悍な感じで、ロマコメの男役が似合っています。最後は、クリスマスのデートの場所で終わるのかな?と思ったりしたのですが、そうでもなかったですね。店主のクリスマスの相手が見つかるのは微笑ましいおまけでした。

ロマコメと言えばヒロインで、ここではマーガレット・サラヴァンジェームズ・スチュアートとは何本か共演があるようです。舞台中心で、映画出演はそれほど多くないようで、この映画は代表作にあたるのでしょうか?ルビッチ監督にとっては、ニノチカの次にあたる作品。絶好調です。まさに、今に続くハリウッドのコメディの王道を行っている感じです。見れる映画は見ておきたいと思っている監督の一人です。

2020.6.3 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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<短編> 'Confirmation' (2018)

Amazonに出ている短編映画を気軽に1本という感じで鑑賞です。8分のものなので、どんな趣向があるかなという期待。白いジャケットがちょっとアート感を漂わせています。
ネット邦題:確認

あらすじ
ホテルにチェックインした、スクープのあだ名を持つ記者のジョン・テトリー(グレゴリー・サノン)は、家族に電話をすると、部屋の中で同僚のバディ(ミコ・デフォー)と、テレビで放送している、地元で蔓延し始めた疫病について会話をします。死者はうなぎのぼりに増えており、二人はいったい何が起こっているのかと不安そうでした。二人は、明日のインタビューの予定を確認してと別れ、ジョンは、疫病管理予防センターのウィリアムズ博士に明日の面会のコンファーメーションのために電話をし、相手が出るまでの間に水を飲もうとします。

備え付けのペットボトルが12ドルもすることに驚いたジョンは、水道の水を飲みます。そして、予約の確認が取れると、シャワーを浴びる準備をします。そして、浴びようとしたところで急にふらつき、同時にテレビの音声が流れました。水道に致死性のバクテリアが入ったことが確認され、水道の水を飲んだり、入浴したりしてはいけないという…。ジョンはなんとかベッドまで戻ると座り込みましたが、そのまま倒れてしまうのでした。



Confirmation (2018)

8分の短編映画で、あらすじの通りの単純なストーリー、仕掛けもオチもありませんでした。素直なストーリーで、映像は美しく撮られています。一つのシチュエーションを捉えており、ホラー映画のワンシーンのような部分とも言えます。水回りはことさら強調され、何のしかけもありませんが、蛇口やコップなどがローズアップされました。

一つの映像としては完結してはいますが、ちょっとアートに撮影したワンシーンを見たというだけの印象です。家族と電話をして、そのまま死んでしまうという可哀そうな一コマですが、8分のお話にしても、ストーリーをなぞるだけでなく、もう少し仕掛けて語って欲しいと思いました。

Data
監督:Derick Halliman
脚本:Anita Williams and others (7 credits)
製作国:アメリカ
公開年:2018
時間:8 minute
スペック:カラー
Imdbリンク:Confirmation

2020.6.15 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「毒薬と老嬢」 ケーリー・グラントと死体とおかしな人たち

ジョセフ・ケッセルリングの同名戯曲を脚色したコメディで、ブロードウェイの舞台はロングランとなり、その後に映画公開されました。フランク・キャプラ監督による1944年の映画で、陸軍入隊前の最後の作品となりました。
原題:Arsenic and Old Lace

あらすじ
モーティマー(ケーリー・グラント)はブルースター家の隣の家に住むエレーン(プリシラ・レーン)と結婚し、その報告にブルースター家に住む伯母たち(ジョセフィン・ハル/ジーン・アデーア)を訪れました。ところが、偶然伯母たちの部屋で死体を発見してしまいます。伯母たちに尋ねると、誇らしげに、孤独な老人を天国に送ってあげたいという思いから、部屋を借りに来た老人を次々と毒殺していると答えました。伯母たちには、三人の甥があり、その一人テディ(ジョン・アレクサンダー)は同居しており、自らを大統領と信じ、地下室に運河を開削中で、そこは伯母たちが殺した老人が埋められていました。他の二人のうち、一人はモーティマーですが、もう一人はジョナサン(レイモンド・マッセイ)で、極悪殺人鬼で入獄中です、

伯母たちはテデイを呼んで運河の掘削を命じ、黄熱病の犠牲者が発生していると信じたテディは地下に降りて掘削にかかります。テディは、この事態を収拾しようとし、テディを療養所に送って連鎖を断ち切ろうと画策し始めます。ところが、そこに脱獄してきたジョナサンが、殺したばかりの死体を運んでやってきました。そして、家の中でモーティマーを訪ねて来たエレーンと出くわし、ジョナサンはエレーンとモーティマーの口を封じようと、二人をしばり上げてしまいます。ジョナサンが二人の処刑方法を考えていると、この地域を受持つ警官のオハラ(ジャック・カーソン)が訪れ、上司のルーニー警部(ジェームズ・グリースン)までもやって来ました。

警官たちは、ジョナサンを見ると殺人犯であることを認め逮捕します。そこへ療養所長のウイザースプーン(エドワード・エヴァレット・ホートン)が、テディを収容するために現われます。テディがいなくなってしまうと寂しくなる二人の伯母も、テディと共に行くことを、ウイザースプーンに願い出て受け入れられました。伯母たちは、去るにあたってモーティマーに耳打ちし、モーティマーは実の甥ではなく、預かって育てた他人の子であることを明かし、モーティマーは、自分がブルースター家の狂気の血を引いていないことを知って胸なでおろし、安心してエレーンを抱きよせるのでした。



毒薬と老嬢

同名の戯曲をもとにした映画で、ブロードウェイの舞台版と並行して製作されたということです。舞台版もロングランとなり、この映画も好評であったとの事。実際、一つ片付けば二つ問題が発生するという、次々連鎖的に展開していく感じの、今見てもなかなか面白い、ブラックコメディでした。そして、いかにも舞台演劇のような雰囲気の映画で、全編にわたって見られる、主役のケーリー・グラントの誇張された、コミカルな演技がなかなかの見どころです。

この一連のコメディの発信源は、ブルースター一家の壊れぶりです。ジョセフィン・ハルと、ジーン・アデーアの二人の演じる老婦人姉妹が天然で、次々とおせっかいな殺人を行っていくというもの。家を借りに来た孤独な老紳士を、孤独を憐れみ、解放してあげようと、次々と悪気なく「安楽死?」させていたというのが背景。そして、その墓穴を掘るテディは、自分が大統領と思いこみ、パナマ運河の掘削事業と思い込んで墓穴を掘るという、憎めない設定になっていました。

この問題を、穏便に解決しようとするケーリー・グラントが、右往左往するという展開で、面白いコメディの題材を、きっちり仕上げましたという感じの、安定感のある映画でした。フランク・キャプラにとっては、第二次大戦前の最後の作品。その後は、陸軍に入隊して、戦場プロパガンダ映画を撮り続け、戦後復帰第一作「素晴らしき哉、人生!」で、歴史的な名画を製作しながらも、興行的に大失敗し、以降下降線をたどることになります。この作品はハリウッド黄金期と重なる、絶頂期の彼の、普通に撮影した最後に作品、ということになりますか。

2020.5.31 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「チャップリンの独裁者」 第二次大戦前夜の歴史的コメディ

この映画は、超有名なコメディなんですが、昔からテレビでも繰り返し放映されていましたので、通して見ずとも部分部分においては、記憶に残っているシーンが多々あります。今回、久しぶりに全編通して見てみました。監督は勿論チャールズ・チャップリン1940年の映画になります。オスカーは受賞は逃していますが、作品賞以下5部門ノミネートです。

あらすじ
第一次大戦で、床屋のチャーリー(チャールズ・チャップリン)は、トメニアの陸軍砲兵部隊に所属。負傷した士官のシュルツ(レジナルド・ガーディナー)を救出。重要書類を届けましたが時すでに遅く、トメニアはすでに降伏していました。

チャーリーは墜落のショックで記憶を失い、病院で20年間を過ごしたのち、ゲットーにある自宅の床屋に帰って来ました。そのころ、トメニアでは独裁者のヒンケル(チャールズ・チャップリン:二役)が政権を握っており、偶然にもチャーリーと顔が似ているのでした。チャーリーはこの間の経過を理解しておらず、ヒンケルの突撃隊が自分の店にペンキで書くユダヤ人を表す落書きを消そうとして、突撃隊にと争いになります。そこに、かつて命を助けた突撃隊長のシュルツが通りかかり、事なきを得ました。

ヒンケルはオストリッチ侵略を企て、ユダヤ資本から金を引き出すため、ユダヤ人抑圧を一旦緩和します。ゲットーの住人たちは、平和が戻るのではと淡い期待を持ちますが、資金援助を断られたヒンケルはユダヤ人迫害を再開、シュルツにゲットーの破壊を命じました。そして、これにシュルツが反対したため、シュルツは失脚します。突撃隊は、失脚の原因となった床屋のチャーリーを襲撃し、弾圧が厳しくなったことから、隣人のハンナ(ポーレット・ゴダード)たちは、隣国オストリッチへ亡命を決めます。一方、脱走したシュルツはゲットーに逃げ込み、ヒンケル体制の転覆を計画しますが事前に発覚。チャーリーとともに収容所に送り込まれました。

ヒンケルはオストリッチへの侵略計画を進めまる中で、隣国バクテリアの独裁者であるナパロニ(ジャック・オーキー)との駆け引きとなり、二人の独裁者は妥協するものの、ヒンケルは即座に反故にしてオストリッチ侵攻を決行。ハンナたちも、再びヒンケルの支配下に置かれ、絶望の淵に追いやられました。シュルツとチャーリーはトメニアの軍服を奪って、収容所を脱走。トメニアの将兵たちは、チャーリーを本物の、「シュルツを従えたヒンケル」と間違え、丁重に迎え入れます。同じころ、ヒンケルは国境付近で単身で待機していたところを、脱走したチャーリーと間違えられて逮捕されてしまいました。

チャーリーはヒンケルとして、トメニア占領下のオーストリッチの首都に到着。大勢の将兵を前に演台に立ったチャーリーは、自由と寛容、人種の壁を越えた融和を訴え、兵士たちの拍手喝采の中、ハンナにラジオを通じて語りかけるのでした。



チャップリンの独裁者

きっとこの映画は、約30年ぶりに通して見ます。昔、テレビでやっていたのをビデオに録画したという記憶もあり、数本あった、VHSのエアチェックコレクションの一つ。だいぶん細かいところは忘れていますが、見ているうちに思い出してきます。特に、先の大戦の場面での、チャップリンの映画らしいコメディが面白く、そして、独裁者の日常を描く、地球の風船をもてあそぶ場面は、大変シニカルな映像で、これこそ超一流の風刺と言えると思います。

時代は、ホロコーストがこれから本格的に進行しようとする時代。これから起こることを考えると、それどころじゃないという感じもあります。危機感を持ちながらも、いまよりひどいことは回避されるという希望もまだあったのでしょうか。オーストリア併合が1938年、ポーランド侵攻が1939年。この映画の公開が1940年ですから、大戦が勃発したばかりのころの製作という事になります。上海事変は起こっていますが、太平洋戦争には至っていません。まさしく破滅への前夜です。

ラストは、まさにチャップリンからの世界への呼びかけですが、現実を考えるとむなしく響きます。普遍的な内容の演説ですので、この映画のあと、起こったことを考え、またこの映画を見るという事で、その2つの間を考えてみるという事だと思います。チャップリンの映画としては、手放しで見れない重い内容を、軽妙なストーリーに包み込んだ、人類へのメッセージということができるでしょう。時々見返してみるべき映画ですね。

2020.5.28 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「仮面ペルソナ」 幻想的な映像表現で綴る二人の女性の人格

名画のリストによく選ばれる「仮面ペルソナ」は、1966年の映画で、監督は、巨匠イングマール・ベルイマン。実は、ベルイマンの映画は、お恥ずかしながらあまり見ていないのですが、Amazonにいろいろと出ていたので、この際いろいろ見てみようと、心して鑑賞にかかりました。

あらすじ
舞台の本番中に、突然セリフが言えなくなった女優エリサベート(リヴ・ウルマン)は、精神的にも肉体的にも問題なく、病院で療養していました。若き看護士のアルマ(ビビ・アンデショーン)は、エリザベートの看護を命じられますが、エリサベートは一言も喋らず、無表情のままです。心身ともに問題ないため、エリザベートの変化を促すために、海辺の別荘で過ごすこととなり、アルマは彼女に同行することになりました。二人での別荘生活はの中で、相変わらず一言も喋らないエリサベートと、喋り続けるアルマ。アルマは一人語りの中で、友人と海辺で過ごした時の、性的なエピソードまでも話します。
 
ある日、アルマはエリサベートが先生に書いた手紙を見てしまい、それにアルマの話の内容や、観察していると面白いというようなことが書かれていました。傷ついたアルマは、その日からエリザベートにきつく当たるようになり、ついに喧嘩になってしまいます。さすがに怒ったエリサベートに、今度は必死で許しを請うアルマ。しかし、エリザベートは聞き入れませんでした。ある日、別荘にエリサベートの夫が訪ねてきます。夫はアルマを見て「エリサベート」と呼び、間違いだというアルマですが、エリサベートがアルマの後ろに現れると、アルマは夫と抱き合い、最後に「なにもかも嘘と芝居よ!」と言うアルマに、エリサベートがハッとします。

二人になったアルマとエリサベートは、エリザベートが子供の写真を破った理由を尋ねます。しゃべらないエリザベートにアルマは自分が語るからと、その一部始終を話し、最後の二人の顔が半々に合成され、ひとりの女性の顔となります。そして、看護士の制服を着たアルマが、エリサベートに、私はあなたとは違う。などと叫び、何度もエリサベートを殴りました。朝、アルマが目覚めると、エリサベートが荷物をまとめていました。そしてアルマも、エリザベートがいなくなった別荘をきれいに片づけて、一人でバスに乗り、戻っていくのでした。



仮面ペルソナ

冒頭は、なにやら奇怪なフィルムの連続で始まりました。かなり不穏でミステリアスな空気に包まれます。そして、病院で女優の看護にあたることを命じられるアルマですが、この時点で何となくフラグがたちます。これは、2人が同一人物であったとか、あるいは逆にアルマが病人だったということになるのかなど…。いろんな映画を見てくると、この雰囲気でつい勘繰ってしまうのですね。そして、物語の前半。尺にしてもだいたい半分くらい。平穏に別荘の日々が過ぎ、エリザベートの手紙を見た段階で、再び奇妙な映像の断片が挿入され暗転。修羅場はさみながら物語は展開していきます。

この映画の解釈は、正直自信はないです。とりとめもなく書けば、最初の断片も含め、全体として虚構の中ということを示しながら、人間の持つ2つの性格、内面と外面の対立を表現していっているということでしょうか。虚構については全体の雰囲気が幻想や夢と混じりがちになるような映像や、象徴的な部屋の造形、最後に撮影シーンを入れているところなど、現実とはかけ離れた心象風景で表された世界の中のイメージです。外面と内面については、2人がそのどちらかとも思え、また、それぞれ二人とも、外面と内面を持っているということですかね。あとは、希薄な家族のつながり。最初のベッドの上の男の子はエリザベートの息子が、輪郭のまとまらない母の映像を追っているのかな?夫もどちらでもいいみたいだし…。

そういった、難解かつ理論的な物語を、素晴らしい映像表現でまとめています。やはり、この映像構成や音楽を感じると立派な映画だなぁと思ってしまいます。このような話を凡庸な表現でされてしまうと、とても作品として成立しないでしょうし、現在こういった映画をこれほど立派に製作することも、なかなか難しいのではと思いました。映像表現や演技の素晴らしさに魅了された映画と言ってもいいと思います。素晴らしい映画遺産です。

2020.2.16 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「魔術師」 ベルイマンのストーリー展開の力強さを感じる

イングマール・ベルイマンの名作映画の鑑賞です。魔術師は1958年の映画で、1959年のヴェネツィア国際映画祭のコンペティションでは、審査員特別賞を受賞しています。その他ニューシネマ賞とPasinetti賞も受賞しました。ベルイマンの映画は、いつもなかなか手ごわいので、ちょっと構えた感じで、心して鑑賞しました。

あらすじ
魔術師の一座、魔術師ヴォーグレル(マックス・フォン・シドー)、祖母(ナイマ・ウィフストランド)、助手のアマン(イングリッド・チューリン)とシムソン(ラーシュ・エクボルイ)、司会のテューバル(オーケ・フリーデル)の5人が、森の中を進んでいくと、倒れている男を見つけました。その男はアル中の元役者(ベント・エケロート)で、助け起こして馬車に乗せますが、途中で死んでしまいます。馬車は町に入る前に、領事の館へと連れていかれます。館には、領事(エルランド・ヨセフソン)、警察署長(トイヴォ・パヴロ)、医師(グンナール・ビョルンストランド)が待ち構えていました。彼らは魔術興行がまやかしであると怪しみ、特に医師は、超常現象はあり得ない事と考えていました。署長は、翌日の昼間に魔術を披露する条件で興行を許可するとし、一座は館に宿泊することになりました。

その夜、テューバルは、館の料理番のソフィーア(シフ・ルット)を誘惑し、シムソンもメイドのサラ(ビビ・アンデショーン)をものにします。そして死んだはずの元役者が、一旦蘇生して皆を怯えさせ、本当に死んでしまいました。翌日、館では魔術が披露され、署長は一度は仕掛けを暴いて一座を笑いものにしたものの、ヴォーグレルは次々と魔術を披露し、逆に署長を笑いものにします。しかし、魔術に導かれた館の使用人(オスカー・ジャング)が、ヴォーグレルを殺してしまい、医師が検視をすることになりました。いざ検視にかかると、ヴォーグレルが医師を翻弄し始めます。ヴォーグレルは、役者の死体とすり替わっていたのでした。

混乱の中で、再度警察署長に見とがめられる前にと、一座は早々に出発しようとします。テューバルはソフィアと生活する為、祖母は十分金が貯まったということで一座を離れ、代わりにサラがシムノンについていくことになりました。しかし、サラの支度が遅いせいで、署長が現れてしまいます。署長は再び館に一行を導くと、国王の前で魔術を披露するようにと、命が下り、一座は華々しく出発するのでした。



魔術師

ベルイマンの映画という事で、少々難しい映画というイメージで見始めたのですが、なかなか面白いという部類の映画でした。ラストはなんかフェリー二みたい。雰囲気はちょっと違うけど、ただこの音楽が…。そして、このプロの魔術師のパワーがすごかったです。そして、ラストに向けての豹変ぶり。いったい彼の本当の性格やパワーはどこまであるのだろうかと思うほど、いろんな性格を演じておりました。このいろんな仕掛けは前日に仕込んでおいたのだろうか…。凄すぎる。

舞台となったこの館の人々の、一人一人の性格描写も秀逸です。魔術や呪術を信じる者や、科学以外を一切拒絶する医師。ご都合主義の警察署長。そして、いろんな性愛を語り実践する男女。権力には逆らえない上流階級と、そんなものには頓着しない、常に反骨で生きる下層の劇団。一夜の劇に本当にいろんなものが詰まっていました。それらの要素が緊密に交錯し、構築されている感じです。ベルイマンの映画は、このスタイルがすべてではないと思いますが、この力強い表現力は素晴らしいと思いました。

やはり、魔術師を演じるシドーの熱演ぶり。まさに、性格俳優とはこういうものだという感じで、演技の変化も面白い。髭ありの時と、髭なしの時と。そして、媚薬を売るおばあさんがアクセント。性愛がこの世で一番売り物になるらしい。なるほど、それはわかります。また、ビビ・アンデショーンは、奔放で冒険を求める開放的な女性を楽しく演じています。そして、この時代のパワーも感じます。戦後の1950年代は、映画にとっても幸福な時代だったのだとしみじみ思いました。日本では黒沢明とか、映画大国でない国から出てきた映画のパワーを感じました。

ウディ・アレンはベルイマンを知らない人に勧める5作品のうちの1つとして『魔術師』を挙げた。とWikiに書いてありました。それで、そのTIME誌の記事を見てみると、「第七の封印」「野いちご」「魔術師」「叫びとささやき」「仮面ペルソナ」…。いやま、そうですよねという感じでした。

2020.2.18 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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