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「オーケストラ!」 ソ連共産党時代の回顧と風刺をこめて

ボリショイ交響楽団を題材にした映画と言うか、かつてのソ連政権下を代表する楽団ということで、名前を使ったという位置づけかと思います。2009年の映画で、フランスの製作。監督はラデュ・ミヘイレアニュ。ゴールデングローブの外国語映画賞ノミネート、セザール賞や、ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞の受賞もあります。

あらすじ
ボリショイ劇場の指揮者だったアンドレイ(アレクセイ・グシュコフ)は、ブレジネフ時代に解雇され、今では劇場で清掃員の身。ある日、支配人の部屋を掃除中、パリからの出演依頼のファックスが入り、アンドレイはそのファックスを奪うと、かつてのオーケストラの仲間を集めてパリで演奏をすることを思いつきます。友人のチェロ奏者のサーシャ(ドミトリー・ナザロフ)に計画を持ち掛け、活動開始。交渉役として、かつて自分を解雇した共産党員ガヴリーロフ(ヴァレリー・バリノフ)にやむなく頼みました。曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ソリストはアンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)を指名しました。アンヌ=マリーは快諾しますが、アンドレイを知るマネージャーのギレーヌ(ミュウ=ミュウ)は、思惑を察知し警戒します。アンドレイは二週間の間に、30年ぶりの昔の仲間を集め、ビザはジプシーのヴァイオリニストが、空港で偽造パスポートを仕上げました。

ホテルに着くと、団員たちはお上りさんなみに大騒ぎ。まずギャラを要求すると、それぞれ行きたい場所へ解散してしまい、アンドレイはリハーサルには来るように叫びますが、翌日来たのはサーシャとスポンサーだけ。現れたアンヌ=マリーは、茫然としますが、サーシャが演奏し、現れたジプシーのヴァイオリニストが演奏すると、アンヌ=マリーは、半信半疑で納得し、リハーサルも行われませんでした。その夜、アンドレイとアンヌ=マリーは予定通りディナーに向かい、その最中、アンドレイはかつて自分が指揮をしていた頃の事を話し始めます。それは、今は無きレアというソリストの話で、最高の芸術を目指していたコンサートで、政府の介入により中止にさせられたのでした。アンヌ=マリーは、それを聞いて、自分はレアではないと話し、キャンセルしてしまいます。

アンヌ=マリーの元へサーシャがやってきて、一緒に演奏会をすれば両親が見つかるかもしれないと話します。ギレーヌに育てられたアンヌ=マリーは両親の秘密を知りたがっていたのです。ギレーヌは手紙と、レアのコメント入りの楽譜を置いて出て行きます。アンヌ=マリーはレアの書き込みを見て会場に向かいました。団員たちの携帯には、「レアのために戻れ」というメッセージが届き、無事全員が揃って開演。ブランク30年後のぶっつけ本番が始まりました。アンヌ=マリー奏でる、レアとアンドレイの音楽に団員たちの30年前の音楽が蘇えります。レアは、アンヌ=マリーの母親で、アンドレイがかばおうとしたユダヤ人演奏家の一人。しかし、コンサートを妨害され、収容所で亡くなりました。当時団員だったギレーヌが、アンヌ=マリーを隠して亡命したのでした。演奏は大喝采を浴び、好評を得て、一行は世界一周公演に向かいました。



オーケストラ!

久しぶりにオーケストラものの鑑賞です。オーケストラの映画は基本的に大好きなので、今回はどんな感動があるのか楽しみ。いろいろな運命を背負った楽団員たちが、まとまっていって感動の音楽を紡ぎだすというのがけっこう好きなのです。で、今回は、指揮者フィリポフの再生の物語。ボリショイ交響楽団といえば、ソ連時代はレニングラードフィルと双璧をなす名オーケストラで、スヴェトラーノフやロジェストヴェンスキーなど、ソ連の重鎮が指揮した、ロシアらしい金管の咆哮が聴かれるオーケストラというイメージが残っています。また、共産政権下でいろいろな逸話もあるのでしょう。

ストーリーは共産政権下の出来事や、共産党の現状のパロディ、そして、ロシアに対するイメージなどをふんだんに取り込んだコメディで、次々といろんなあり得ないことが起こるというところは、フランスのコメディらしくもありました。ストーりー自体は、あり得ないようなことが、ノンストップで次々と起こって笑わせてくれます。真面目なストーリーの部分もありますが、ちょっと霞み気味くらいです。そして、過去の悲劇を乗り越え、亡き母の為に集まった楽団員たちは、その娘をソリストに迎えての、最後の名演奏へとつなげていくという、見始めたら目が離せない、見事な展開です。

マーラーの巨人がこの映画でも出てきますが、本当にこの曲はいろいろな映画でよく使われると思います。出てくれば自己主張して雰囲気を作ってしまうという曲で、改めて凄いなと思いました。ラストのチャイコフスキーは通俗曲の部類ですが、じっくり聞かせて、いろいろなフラッシュバックや、演奏者の表情を映し出し、いい場面を作っていると思いました。ソ連共産党時代への懐古趣味も含めたパロディは、あの時代には戻ってはならないというメッセージも含まれ、更にロシア社会への風刺も詰まった、面白いオーケストラ映画でした。

2020.5.14 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ヘアスプレー」 底抜けの明るさと楽しさのミュージカル

ヘアスプレーと言えば、ジョン・ウォーターズの名前が浮かびますが、この映画は、彼の映画がブロードウェイで舞台化されたものを、さらに映画化した作品です。2007年の映画で、監督はアダム・シャンクマン。ゴールデングローブでノミネートがあるほか、いろいろな賞に輝いています。

あらすじ
60年代のボルチモア。太めの体型の高校生トレイシー(ニッキー・ブロンスキー)は、流行に敏感で、ダンスが大好きな女の子。そんなトレイシーの夢は、ダンス番組、「コーニー・コリンズ・ショー」に出演することです。番組で新メンバーのオーディションがあることを知ったトレイシーは、勇んで受けに行こうとしますが、娘が体型で傷つくことを恐れた母親のエドナ(ジョン・トラヴォルタ)の反対にあいます。父のウィルバー(クリストファー・ウォーケン)に勇気づけられ会場に向かったのですが、番組を牛耳るベルマ(ミシェル・ファイファー)が、一目見て不合格にしてしまいました。

学校の居残り組の教室で踊るトレイシーを見た、番組のレギュラーメンバーのリンク(ザック・エフロン)は、トレイシーを番組に招待し、トレイシーのダンスの才能に、コーニー(ジェームズ・マースデン)は新メンバーに抜擢します。トレイシーは一躍人気者となって、スポンサーのヘアスプレーの売り上げも急上昇。しかし、トレイシーの活躍が面白くないベルマと、その娘のアンバー(ブリタニー・スノウ)は、トレイシーの妨害を始めました。その頃、ショーは、月に1回だけ、黒人だけの日を設けていました。黒人差別に疑問を持つトレイシーは、誰でもいつでも出演できる番組にしようと提案します。そして、人種差別撤廃のデモに参加したトレイシーは、ベルマの通報により警察に追われることになってしまい、友達に匿われていました。その頃ショーでは、「ミス・ヘアスプレー」ダンスコンテストが始まろうとしていました。

コンテストでは、ベルマの裏工作もあって、アンバーの票が順調に伸びていました。しかし、会場に潜入したエドナや、黒人たちの働きで、トレイシーは会場に入ることに成功します。そして、ベルマを締め出して、トレイシーが舞台に登場し、喝采をあびます。舞台にいた、黒人の日を仕切るメイベル(クイーン・ラティファ)の娘アイネス(テイラ・パークス)も登場し舞台を沸かせました。いよいよ結果発表で、優勝したのはアイネス。不正が露見したベルマは首となり、トレイシーの父母も参加して、舞台では盛大なダンスが行われました。もうこの流れは止められないと…。



ヘアスプレー

ジョン・ウォーターズという名前から連想するのはピンク・フラミンゴなのですが、ヘアスプレーはまともな映画なのです。そして、舞台化されたヘアスプレーの再映画化というこの作品は、どこをとっても歌と踊りで楽しい映画なのでした。まずは、トレイシーがとても自然で可愛いことが、この映画の最大の見どころです。どこをとっても前向きで明るいトレイシー。そんな彼女の父母は、クリストファー・ウォーケンジョン・トラヴォルタという超強力コンビ。ジョン・トラヴォルタの太った母親役もまた必見です。この二人、パルプフィクションで共演しているのですが…。

そうは言っても、前半は少々古いタイプの歌と踊りが延々と続くので、すごくインパクトがある訳でもないかな?と思っていたら、通常の日と同じ曲をアレンジした、黒人の日の歌と踊りで、一気に迫力が増しました。同じ曲をぶつけて見せたという設定ですが、グレードアップしています。やはり、クイーン・ラティファの迫力が凄い。その迫力は、シカゴのママ・モートンを思い出します。それがテーマでもありますが、この映画は、黒人の日の場面から一気に怒涛の展開に入った感じがしました。

この映画が素晴らしいと思ったのは、白人と黒人が混じったコメディにありがちな、妙な忖度が一切感じられないことです。そんなものは通り越して、ストーリーはさておき、徹底的に歌って踊っていました。それを演出するのが、トレイシーの底抜けの明るさでした。世界はこれだけ楽しくなれるのだということを表現したような映画でした。そのあたりは、超越しているジョン・ウォーターズの影響も入っているのでしょうか。ジョン・トラヴォルタの台詞の「男心もわかるのよ」は良かったです。

2020.5.12 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「運河の底」物悲しい感じの、亡霊の住む家がテーマのホラー

AmazonにB級ホラーが出ていたので、久々にという感じで見てみました。IMDbの評価をチラ見すると、あまりひどくも無かったので、地雷ではないでしょう。2014年の映画で、アイルランドの製作。監督はイヴァン・カヴァナー。トライベッカ映画祭がワールドプレミア。2015年ファンタスポルトで、作品賞ノミネートされ、主演のルパート・エヴァンスが男優賞を受賞しました。
原題:The Canal (2014)

あらすじ
映像記録局に勤めているデイヴィッド(ルパート・エヴァンス)は、5年前に妻も気に入って買った古い家に住んでいました。購入時、人影と少し蓋の開いたマンホールが少し気になっていました。そして現在。デイヴィッドは毎日運河の横を通って息子のビリー(カラム・ヒース)を学校に送っていきます。職場で、同僚のクレア(アントニア・キャンベル=ヒューズ)に、警察から送られてきた、1902の記録フィルムを見るように頼まれますが、それは当時の殺人現場の記録で、なんと現場は自分の家でした。ある日、夫婦でパーティに出かけると、デイヴィッドは妻のアリス(ハンナ・フークストラ)が、他の男と親密に話しているのが気になります。夢で、昔の殺人現場の惨劇を見てしまったデイヴィッドは、妻に早く帰るように言います。

その夜、妻と男が運河沿いの道を歩いているのを見つけ、尾行すると、二人はとある運河沿いの家に入っていきました。息子を迎えに行った後、妻が夜になっても帰らないため、妻の入った家へ向かうと、中で男とセックス中の妻の姿を見つけました。何もできず外に出ると、運河沿いのトイレで嘔吐しますが、その時、男の亡霊に妻を渡せと言われ、遠くにデイヴィッドに命乞いする妻の声を聴きます。その後も妻は帰らず、警察に捜索願を出し、担当のマクナマラ刑事(スティーブ・オーラム)から事情聴取を受けますが、警察はデイヴィッドを疑っているようです。そして、アリスには愛人がいて、夫と別れるつもりだったことを知らされます。やがて運河の底から、妻の遺体があがり、事故死と判定されました。

ディヴィッドは葬儀の後、クレアにその日夜に見た男や、男が妻の首をしめていたち打ち明け、運河周辺の過去の事件を調べ始めました。付近では過去にデイヴィッドの家を中心に、様々な殺人事件が起きており、映写機を持ち出して、家の中の様子を撮影して見ると、不思議な人影が映り、また壁の向こうから声がしたりします。デイヴィッドは息子を守ろうと、ビリーやベビーシッターをあちこちに移したりしますが、その行動は異常性を帯びていき、ついにベビーシッターは退職。クレアに話しても信じてもらえません。そして、ビリーと運河を歩いていた時、現れた亡霊を撮影し、現像をクレアに依頼しました。

朝になると、マクナマラが現れ、妻殺しの証拠が上がったということで警察に連行されます。いったん釈放されますが、警察が監視している中で、クレアが現像したフィルムを持って現れ、二人で見ていると、亡霊が具現化し、クレアを壁の向こうに連れ去ります。悲鳴を聞いて警察隊が突入しますが、デイヴィッドはビリーとともにマンホールに逃げ込み、その中で、亡霊に追われながら、自分が妻やクレアを殺している場面の映像を見ます。自分が殺したと自覚すると、妻の亡霊に追われ、ビリーともに運河に飛び込み、ビリーはマクナマラに助けられましたが、デイヴィッドは妻に運河の底に引き込まれてしまいました。数日後、ビリーは妻の母に連れられ、家を売りに出すを交渉をしている時、壁の奥から父の呼ぶ声を聴きます。そして、走行中の帰りの車の中から飛び降りたビリーは亡霊となって父や母のいる家に戻ったのでした。



運河の底

家に憑いた亡霊のおかげで、精神状態が不安定になって殺人に至っていく物語。最初の殺人は、亡霊の影響と不貞への怒りが混じったような感じもしますが、記憶にないということから、亡霊に操られていたというのも事実でしょう。そして、事実を調べていくごとにおかしくなり、亡霊の影響が強まり、しかも自分は殺人を自覚していないという状況になります。彼が実際に妻を殺したことは、見ている方は、その時の妻の声で示唆されていますが、それを知らない本人と、奇妙な現象の調査の進行で、何が真実だろうと疑いながら見ていくという形になりました。こういった家に霊が憑いたストーリーは数多ありますが、シャイニングにも似た感じがしました。

古い記録映像を取り混ぜながらの、映像展開はよくできていると思います。恐怖度はかなり低く、不気味な雰囲気や、むしろミステリードラマ的な展開で惹きつけている映画だと思います。恐怖感を醸し出す撮影もありますが、雰囲気を出すだけで、怖がらせることは主眼に置いていないようです。そういった意味で、ストレスなく映画を見られますし、回収できていないと言ったことも無いので、ドラマ的にもまとまっていて、見た後でも満足感がある佳作だと思いました。

ほとんどの場面に出てくる、ルパート・エヴァンスがいい演技だと思います。狂っている時の顔の差はあまり無く、あくまで自然に進んでいます。女優の中では。アントニア・キャンベル=ヒューズに興味を惹かれました。小柄でキュートな感じが良かったです。デイヴィッド本人以外は、デイヴィッドが犯人だと判っているような展開で、延々とひとり相撲を演じるルパート・エヴァンス。自首を勧めるクレア、そして、あくまでも父母についていく、ビリー。ラストまで来て、大変物悲しい感じが残るホラーでした。

2020.5.16 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「透明人間(2020)」 リブート第2作の現代版透明人間

こちらでは、コロナで映画館が閉まる前から公開されていましたが、しばらく映画館は閉館。やっと再開されると、まだ上映されていました。という事で、久しぶりの劇場鑑賞です。ダーク・ユニバースのリブート作品。マミーでこけて危ぶまれていたダーク・ユニバースが、単発リブートの形で継続されていくこととなりました、本作は好評のようで何よりです。2020年の映画で、監督は、リー・ワネルになります。

あらすじ
新作です。ネタバレご注意ください。
セシリア(エリザベス・モス)は、光学技師のエイドリアン(オリバー・ジャクソン=コーエン)の豪邸に閉じ込められていましたが、姉のエミリー(ハリエット・ダイア)の助けも得て、脱出に成功します。幼なじみの刑事ジェームズ(オルディス・ホッジ)と、その娘シドニー(ストーム・リード)の家に匿われ、その2週間後、エイドリアンに遺産を残して自殺したという知らせが入り、兄弟の弁護士のトム(マイケル・ドーマン)がこれを処理しました。しかし、その後セシリアは家の中に誰かいるように感じ、おかしな出来事が次々と起こり始めます。ジェームズに相談しても、まだ幽閉された時の精神的な傷が癒えてないのではと言われ、取り合ってくれませんでした。

トムに、エイドリアンの自殺は偽装ではと質しますが相手にされず、さらにセシリアを貶めるような事件が次々と起き始め、彼女は単身調査に乗り出し、エイドリアンの家に侵入、光学スーツを見つけます。しかし、エミリーが目の前でナイフで喉を切り裂かれ、セシリアは犯人とされて、精神病院に拘束されてしまいました。そこで、妊娠を告げられたセシリアに、トムが訪れ、エイドリアンの元に戻り、子供を育てる条件で、罪を消すことができると持ち掛けますが、彼女は拒否。病室で透明人間を引き寄せ、ペンを体に突き立てると、光学スーツが時折誤作動するようになりました。そして、透明人間を追って、二人とも病院から逃走します。

セシリアがジェームズの家に戻ると、ジェームズとシドニーを透明人間が襲っていたので、セシリアは消火器を噴射し実体化させて射殺。スーツを取ってみると、中はトムでした。エイドリアンは幽閉されているところを発見され、すべてトムの仕業だと証言しますが、セシリアは二人の共謀だと主張。証拠を得るため、カメラとマイクを仕掛けてエイドリアンの家に向かいます。セシリアは真実を質しますが、エイドリアンは譲りません。しかしその行動から透明人間だと確証を得たセシリアは、一旦席を外し、その間にカメラには自殺するエイドリアンが映り、音声はセシリアが戻って来て泣き叫ぶ声が記録されます。駆け付けたジェームズはセシリアの持ち物の中に光学スーツを見つけますが、何も言わず、セシリアはエイドリアンの家を去っていくのでした。



透明人間 (2020)

1933年の透明人間のリブートで、ベースに対しかなり翻案して、元の透明人間のイメージとはかなりかけ離れた、現代的なストーリーになっています。元来、地味な部類のSF作品で、それをサスペンスやドラマ的要素を加え、125分の長さに仕立てています。元々がそう複雑な話でもないだけに、前半はちょっと長く感じてしまいました。なかなか透明人間が出てこないなと…。ラストも二転三転要素を入れています。ダーク・ユニバースには、そのままで、120分といった形になる話はあまりないと思うので、今後どういった展開をしていくのか、ちょっと期待と不安が入り混じります。

透明人間の見どころは、透明人間との格闘シーンや、物が勝手に動くところなのですが、そのあたりは、良くできていたと思います。格闘シーンはちょっとおかしな感じもしますが、一人格闘みたいな感じで頑張っていました。物が動くシーンと言えば、ナイフの切り裂きシーンですね。ちょっとグロいですけど…。ギミックは薬ではなくて、光学スーツに進化しています。これが最大の進化と言ってもよく、誰でも着れば透明人間になれるという設定が、この話を面白くしています。透明人間が固定された人間から、汎用的な道具に変わったのです。また、前作のような雪のシーンは無く、その代わりに土砂降りのシーンはあります。インビジブル2にも雨で透明人間が判るシーンがありましたが、ここでは、そういった使われ方はしていなかったように思いました。

やはり、宇宙戦争やタイムマシンと比べてしまうと、ぐっと地味な感じになります。そこは、サスペンス性やドラマ性を盛り込み、ぐっと面白い話に仕上げていると思います。地味と言えば、エリザベス・モスも、ほとんど地味なオバサン的な演技で通してますが、ラストはしっかり決まっていました。この映画では、透明人間は見えないので主役になりづらく、いかにエリザベス・モスの演技が透明人間を代弁するかにかかっていて、それがよく表現されていたと思いました。さて、次は何が来ますかね?ドラキュラやフランケンシュタインや有名なのがいっぱいあります。個人的にはソフィア・ブテラのマミーも、こけたとは言え、キャラクターとしては好きなんですけどね…。

2020.5.16 HCMC CGV Vincom Dong Koi にて鑑賞

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「誰もがそれを知っている」 登場人物の整理に苦労しました

イランのアスガル・ファルハディ監督によるスペイン映画です。2018年の映画で、カンヌのコンペティションでプレミア上映されました。ファルハーディー監督の映画、最近ではセールスマンを見たのですが、人間模様の描写が素晴らしく、今回も期待しての鑑賞です。

あらすじ
ラウラ(ペネロペ・クルス)は、娘のイレーネ(カルラ・カンプラ)と、幼い息子ディエゴ(イヴァン・チャベロ)を連れて、妹アナ(インマ・クエスタ)の結婚式のため、アルゼンチンから故郷のスペインにやってきました。ラウラは、父アントニオ(ラモン・バレア)や、ホテルを営む姉のマリアナ(エルビラ・ミンゲス)とその夫フェルナンド(エドゥアルド・フェルナンデス)、その娘ロシオ(サラ・サラモ)たちと、再開を喜びます。結婚式にはラウラの幼馴染で元恋人のワイナリー経営者パコ(ハビエル・バルデム)と、その妻ベア(バルバラ・レニー)も参加し、ベアの勤める更生施設の少年たちが撮影係を務めました。しかし、結婚式の後のパーティーで、イレーネが停電の中、姿を消していまします。

翌日、ラウラのもとに誘拐犯から脅迫メールが届きました。ラウラたちは、フェルナンドの知人で元警官のホルヘ(ホセ・アンヘル・エヒド)に相談すると、ホルヘは身近な人物の仕業ではないかと推測します。やがて誘拐犯から身代金を要求するメールが届き、ラウラの夫アレハンドロ(リカルド・ダリン)も駆け付けてきました。しかし、今は到底払える金額ではありませんでした。その頃、パコは農場を売ろうと考えていました。ラウラはイレーネの実の父はパコだったと告白し、農場を売るように頼みます。パコは売る決意を固めますが、ベアはラウラに騙されていると反対。誘拐も土地目当ての狂言ではないかと疑い始めました。ベアはラウラを訪ね、金が欲しくて嘘をついているなら、アレハンドロにこのことを話すと迫りますが、ラウラは夫はこのことを知っていると答えます。

ホルヘは、なぜ幼いディエゴでなくイレーネなのかを疑問に思い、パコの存在から内部事情に詳しい者の犯行と断定します。イレーネの父の件は、実は誰もが知っていたのです。パコは、ベアの反対を押し切って農場を売ってしまいます。夜になって、ロシオは密かに、森の廃墟へと向かっていました。そこには、ドイツに仕事を探しに出たはずのロシオの夫ガブリエル(パコ・パスター・ゴメス)の姿がありました。ロシオ夫婦が、誘拐犯だったのです。ガブリエルはロシオの頼みで、イレーネを翌朝に開放することに決め、ロシオは自宅に戻ります。しかし、マリアナはロシオの靴に泥がついているのに気づいてしまいます。翌朝、イレーネから電話を受けたパコは、金を持って指定された場所に向かい、交換にイレーネを連れ戻しました。ラウラはイレーネを抱きしめ、アレハンドロはパコに必ず金は返すと約束します。しかし、パコの家にはもうベアの姿はありませんでした。ラウラ一家はアルゼンチンへと戻っていき、フェルナンドは一家を見送ります。そして、居合わせたマリアナは、フェルナンドに真相を語り始めるのでした。



誰もがそれを知っている

最初は、なかなか物語に入っていけませんでした。登場人物がいっぱい出てきて、それも親類関係が複雑で、日本人にとってみれば、誰も髭を生やし、顔が似ている気がして、なかなか関係性や性格、役割が入ってきません。正直言ってこの手の一気にたくさんの登場人物が展開していくスタートは苦手です。そして、物語が展開して、犯人が解ってと続きますが、あれ、この人誰だっけ…という風になりました。順を追ってしっかり考えてみると、ああそうか、ということなのですが、頭がフル回転してしまいました。たぶん映画館で見ていると、もっとこの世界に集中できるので、そうはならないのでしょう。映画館で見るべき映画でした。

しかし、見終わってみればなかなか面白かったことは間違いありません。イレーネが誘拐されてから話は急展開していきますが、次々と微妙に変わっていく人間関係や過去の暴露話が噴出し、ついになかなか言えない告白まで。それが、静かな展開の中で突き刺すように語られていきます。このあたりは、ファルハディ監督の得意とするところと思います。ラウラの一族のおかげで、破壊されたてしまったのはパコの家族で、家庭も生活手段も破壊されてしまいました。そもそも血縁関係が無いこの家庭は今後どうなってしまうのでしょうか?

微妙なラストが決まっています。これもやがて誰もが知っている事実となって、ある時また亡霊のように表にでてくることでしょう。そのような、一族の中でのタブーと、疑心暗鬼になる心情を細かくとらえていて、大変よくできたストーリーになっていると思いました。テーストはセールスマンと同じで、家庭や人間関係の崩壊の瞬間を切り取っていく映画です。覆水盆に返らずという諺を、非情に映像化していくようなストーリーの中で、ペネロペ・クルスハビエル・バルデムの演技は良かったと思いました。この難しい心情の吐露を、いかにも自然に演じていて素晴らしいと思います。

2019.11.25 JL759 NARITA-HCMC にて機内鑑賞

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「紐育(ニューヨーク)の天使」 白黒でもリタ・ヘイワース

リタ・ヘイワースの出演する1940年の映画です。彼女がちょうどスターに上り詰めていっている頃の作品になります。監督は、むしろ脚本家のベン・ヘクトで、この年のオスカーの脚本賞にノミネートされました。リタ・ヘイワース自身はアカデミー賞とは無縁だったのですが…。

あらすじ
チャールズ・エングル(ジョン・クアラン)は雇い主に横領がバレ、翌朝までに全額返金を求められたことから、遺書を書いて街を彷徨い、高級クラブに入ってきました。金持ちを物色していた詐欺師のビル・オブライエン(ダグラス・フェアバンクス・ジュニア)は彼のなりを見て金持ちと思い込み、今夜のカモとして賭場に連れていくことに決めます。酔っぱらった脚本家で妻と離婚調停中のジーン・ギボンズ(トーマス・ミッシェル)はエングルの実情を察知、切り抜けるためにいろいろと提案を始めました。居合わせた、パトロン探索中のニーナ(リタ・ヘイワース)も加わると、嫌がるオブライエンを説得し、彼が手引きする賭博場に行き、一定の額を稼いで逃げ出すことを計画します。

いざ、ポーカーが始まると、敵の策略にのり、エングルは最初勝ち続けます。そして、返金すべき金額が溜まったところで中座し、逃げようとしますが、見張りの男にとがめられ、窓から脱走する羽目に。ちょうど警察が通りかかったこともあって、なんとか逃れることができました。すべてはうまくいきましたが、賭場を欺いたうえに、自分には実入りも無く、仕事も失ったオブライエンは失意に沈みますが、ニーナから、日陰者だった彼が、ひと時でも人を助けようという良心を持ったことを指摘されると、詐欺からは足を洗うことを決め、ニーナに駆け寄るのでした。



紐育(ニューヨーク)の天使

それほど、大きなインパクトはなく、比較的都合よく流れていく映画で、ストーリーは平凡なものと思います。高級クラブを舞台に、上流階級やお金持ちに混じって、小銭を掠めとろうとする、あるいは機会を見つけて成り上がろうとする2人に、自殺に追い込まれた男と、離婚訴訟中で泥酔した劇作家が加わって織り成す一夜のドラマでした。

酔っぱらいの劇作家は、酔った勢いでいろいろと都合のいいアイデアを出し、説教もしますが、酔いが醒めるとすっかりアイデアのことは忘れ、奥さんに救いを求める電話をし受け入れられるところが微笑ましく、その姿を見つめるリタ・ヘイワ―スの穏やかな優しい表情も良かったです。そしてまた、詐欺まがいの金もうけに生きるオブライエンに、少しでも人の為になろうと思ったことを指摘する彼女ですが、このこじんまりとした映画に暖かなものを添えています。

ギャングとの対決などはあるものの、実際にはほのぼのした小品的映画で、リタ・ヘイワースは、派手な夜の女性を演じてはいますが、気持ちとしては良心的な普通の女性を演じていて、そのような穏やかな表情の彼女を見ることができたのが良かったと思いました。彼女の比較的初期の作品でもあり、当時の美しい表情があちこちで見ることができる作品だったと思います。

2019.9.17 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「ニキータ」 未だに鮮烈さを失わないベッソン監督の名作

絶対見た事あると思うのですが、最近、フィフスエレメントとか、レオンとか見たので、ものはついでという事で、鑑賞です。1990年の映画で、リュック・ベッソン監督作品。ゴールデングローブで外国語映画賞のノミネート。セザール章では、アンヌ・パリローが女優賞を受賞しました。

あらすじ
ニキータ(アンヌ・パリロー)は薬を求めて、仲間と薬局を襲撃し、警官隊と銃撃戦になります。隠れていたところに、話しかけてきた警官を射殺し、終身刑となったニキータは大暴れ。薬を打たれて意識を失い、気が付くとボブ(チェッキー・カリョ)という男が現れ、死亡を偽装されたニキータに、秘密工作員の訓練を打診、ニキータはしかたなく承諾しました。反抗的な態度のニキータをボブは我慢強く指導し、なんとか軌道に乗せ、あらゆる技術をマスターさせます。そして、3年後の誕生日に、初めてボブ同行で外出を許されたニキータは、レストランで卒業試験として、暗殺指令を受け、見事任務を成功させました。ボブとニキータには特別な思いもありましたが、任務の為一旦お別れとなりました。

ニキータはマリー・クレマンという看護師を装い、一人で生活を始めます。スーパーのレジ係の、マルコ(ジャン・ユーグ・アングラード)という青年と恋に落ちたニキータは同棲を始め、婚約して幸せな生活を築きながらも、容赦なく入って来る任務をこなしていきます。そしてボブから、ソ連大使が本国へ送っている機密情報を暴く任務を与えられ、ニキータがメンバー選定をし、取り組み始めました。そんな中、マルコはニキータの行動に不信を抱き始めます。そして決行の日、ニキータはソ連大使に近づくことに成功しますが、状況が一変。本部が清掃人ヴィクトル(ジャン・レノ)を送りこみ、強引なやり方に転換させられます。ニキータは大使館に潜入し、機密情報入手に成功したものの、銃撃戦となり、犠牲者が多く出たことにニキータは動揺しました。

その夜、心身ともに疲弊したニキータに、マルコは仕事を辞めるように話します。マルコはニキータの仕事に気付いていたのです。ニキータはマルコの深い愛情に涙し、一人でマルコのもとから逃亡します。機密情報と共に消えたニキータを捜しに、ボブはマルコの家に訪れます。事情を知っているマルコは、ボブにニキータを守るように依頼しますが、ボブは機密情報を持っている以上は、危険な状況だと話します。マルコはニキータから預かったマイクロフィルムを差し出し、ボブあての手紙は捨てたと話します。手紙の内容が気になるボブは、内容を尋ねますが、マルコはお互い寂しくなりますねと返すのでした。



ニキータ

たぶん、前回見てから、25年くらい経過していると思います。妻が借りてきた貸しビデオを一緒に見たというのが最後でしょう。そして、この映画、今見ても鮮烈さを保っています。やはり、薬局の襲撃と、警官の射殺、それに続くニキータの訓練シーンが素晴らしいと思います。完全に壊れた演技に、どんどん引き込まれています。これまで徹底して描くからこそ、後半の話が生きてくるのでしょう。素晴らしい、導入部と展開です。

一転、ヴェネツィア旅行は、幸せいっぱいという感じです。しかし、当然組織がただで航空券を渡す訳がありませんね。お約束通り、指令が飛び込んできました。バスルームからの狙撃は、緊張感のあるいいシーンです。そして、最後はジャン・レノの乱入です。ぐちゃぐちゃになりますが、なんとか脱出し一息ついたと思ったら、ジャン・レノが…。さすがに、自分が進めてきた作戦を、こうも死体の山にされてショックを隠し切れないニキータでした。ここは、ちょっと秘密工作員の活動としては、暴れすぎですね。

ヒロインのアンヌ・パリローですが、最近見たフィフスエレメントのミラ・ジョヴォヴィッチと、似たような雰囲気の演技のような気がしました。純粋で壊れている感じ。リュック・ベッソン監督の好みでしょうか。この物語の後半に登場したジャン・レノを引き継いで、レオンが製作されますが、私としてはニキータの方が断然好きです。引き締まって無駄のない、筋の通った娯楽作品になっていると思います。そして、勿論アンヌ・パリローが素晴らしいのは謂うまでもありません。

2020.5.11 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「ウインド・リバー」 サスペンスで鋭く描く保留地の現状

随分前に予告編を見てチェックしていた作品ですが、やっと見てみました。あの、「ボーダーライン」の脚本を書いたテイラー・シェリダンの初監督作品です。2017年の映画で、テイラー・シェリダンは、カンヌで「ある視点」部門の監督賞を受賞しました。

あらすじ
ワイオミング州のウインド・リバー保留地で、野生生物局のハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、雪の中で少女の遺体を発見します。その少女はナタリー(ケルシー・アスビル)といい、裸足で走って来て凍死したもので、レイプの痕跡もありました。ナタリーは3年前にやはり山中で凍死の状態で発見されたコリーの娘エミリーの親友で、コリーはナタリーの死因から、FBIIのチームを呼べなくなってしまった、FBI捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)の依頼を受けて、部族警察署長ベン(グラハム・グリーン)とともに、捜査に協力することにします。

ナタリーの父親マーティン(ギル・バーミンガム)を訪ねると、事件の日、ナタリーは恋人のところへ行っていたことが解ります。マーティンは、息子もドラッグ中毒になって家に寄り付かず、憔悴した様子で、コリーは彼に復讐を約します。コリーたちは、地元の問題児の家に踏み込み、そこにいたマーティンの息子のチップ(マーティン・センズメアー)を拘束。さらに、雪深い森の中で、掘削所で働くマットの死体を発見しました。そしてマットは、チップの証言から、ナタリーの恋人であることが解りました。翌日、コリーたちは行動を開始。応援の保安官も加えて、掘削所の寮に乗り込みます。コリーだけは、手掛かりを追って裏手の山から向かい、ジェーンたちは、不自然な言動をする寮の警備員たちと、緊張した雰囲気になります。そして、ジェーンはトレーラーハウスをノックしました。

事件当日、マットとナタリーが寮にいるところに、予定外で酔っぱらった同僚たちが帰って来て喧嘩になり、ナタリーはレイプされながらも逃亡し、マットは殺されていたのでした。ジェーンのノックに対し、中にいた犯人がいきなりドア越しに発砲。結果、全員で銃撃戦になり、山から下りてきたコリーは、犯人たちを射殺しますが、生き残ったのは、重傷を負ったジェーンと、犯人の1人だけでした。コリーは山に逃げ込んだ犯人を追い、捉えて真相を話させて、雪の稜線で解放。ナタリーと同じように凍死させます。コリーは街に戻ってジェーンやマーティンのもとを訪れ、犯人が死んだことを報告。チップがマーティンの元に帰ってくることもわかり、二人は亡き娘への想いを胸に寄り添うのでした。



ウインド・リバー

素晴らしい、雪の中のサスペンスでした。ノンストップで緊張感が持続します。犯人探しというところに重きを置いている訳ではなく、捜査とドラマが主な要素です。ネイティヴ・アメリカンの現状も赤裸々に描かれ、問題提起をしていきます。ハリウッドのようなインターナショナルな感じではなく、これがアメリカの映画だという感じがしました。初監督のテイラー・シェリダンが見事だと思いました。映像も素晴らしく、ワイオミングの自然を存分に感じることができます。

テイラー・シェリダンが脚本と監督を兼ねていますが、全体に全く無駄のない展開になっています。そして、セリフがいちいち素晴らしい。大事なことばかり言ってます。それもこの映画の迫力を増していると思います。ボーダーラインもやはり、若手の才能のある女性の担当官が、ベテランの中で右往左往する展開でしたが、この作品も似たような雰囲気があります。これは、テイラー・シェリダンの特徴なのでしょうか?

大自然が素晴らしいとはいえ、すべてを奪われて、辺境に追いやられた格好のネイティヴアメリカンにとって、制度上も特別扱い、かといって政府のケアもなく、放って置かれているという事を伝えています。そこに住む人々は未来に希望を持つこともできません。そのような現状が、全編から主張されてきました。テーマ、緊張感、映像と全てが揃った素晴らしい映画だと思いました。

2020.5.10 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「ハクソー・リッジ」素晴らしい映像で見せる戦争アクション

ハクソー・リッジは、2016年の映画で、アメリカ・オーストラリア合作映画。この時期、劇場でいろいろ映画を見ていたと思いますが、戦争映画はあまり見なかったので、スルーしていました。監督は、メル・ギブソン。オスカーで、録音賞と編集賞を受賞しました。

あらすじ
戦場で負傷していて担架で運ばれているデスモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)。時は16年前に遡ります。ヴァージニア州に住む、デズモンドとハルの兄弟は腕白盛り。父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第一次大戦で多くの友を失い、酒に溺れる生活でした、トムが墓地から帰ると、兄弟は喧嘩の最中ですが、やがてエスカレートし、デズモンドはハルをレンガで殴打してしまいます。デズモンドは母から「殺人は最大の罪だ」と諭され、呆然としていました。ハルは事なきを得ましたが、この事件はデスモンドの将来に影響を与えたのです。

月日が流れ、第二次大戦が勃発。その頃、デスモンドは病院の看護婦、ドロシー(テリーサ・パーマー)と恋をします。一方、真珠湾攻撃が全米を揺るがせ、ハルもデスモンドも、家族に相談なしに志願兵として入隊することになりました。ドロシーは怒りますが、デズモンドにプロポーズされて承諾。彼の出発を見送ります。デズモンドは、衛生兵志願で、絶対に銃を持たない主義でしたが、これが元で、上官からは疎まれ、仲間からものけ者にされます。そして、命令に従わない事により、軍法会議にかけられましたが、父のトムが、准将となった昔の仲間の支援を得て、デズモンドの権利は認められ、銃を持たずに戦場へ行くこととなりました。

45年5月、米軍は沖縄のハクソー・リッジを攻めあぐねていました。グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)率いる隊は絶壁を登り、敵陣を目指しますが、頑強な抵抗にあい、死傷者の山を築きます。日が落ち、高地からひとまず撤退した部隊の中で、デズモンドは一人残り、敵の監視をくぐりながら、負傷兵を敵味方問わず手当てし、崖から降ろしていきました。朝になってデスモンドは崖下に降りると、グローヴァー大尉は今までの非礼を詫び、その翌日、立て直した舞台で最後の突撃に参加。最後に負傷したデズモンドは、仲間に担架で降ろされますが、戦いには勝利し、デスモンドは名誉勲章を受けるのでした。



ハクソー・リッジ

なるほど。いろいろな見方ができる映画だと思いました。過激な戦闘シーンが売りですが、華々しいアクションは見られるものの、戦略が無いですね。実話とはいえ、ここでの戦闘アクションは、激戦で負傷者続出の状況を作るためのもので、お互いの戦略や攻防の妙については、この映画では描かれません。ですから、テーマはデスモンドの人間ドラマという事で、信念を徹底的に曲げないのは、あまりにも頑固であり、また立派であるとも言えます。一人でも多くの人を助けるためには、銃を持たない方がいいという事も、何となく納得できました。

良心的兵役拒否者という表現の表す意味が分かりづらいですが、真珠湾攻撃に触発されて兵役に志願した兵士が、兵役拒否者として扱われるということは、敵を倒すという意味での戦争への参加を拒否したという事なのでしょうか。真珠湾攻撃で敵への憎しみで参加する訳ではなく、敵味方問わず、大きな犠牲を生む戦争から、少しでも命を救うために、戦争に参加したというのであれば、何となくわかります。実際人間の行動は、いろいろとあいまいで、名誉勲章を受けるという事象も伝記的に扱っていましたので、戦功を上げたものを称える映画にもなっています。勲章を断り続け、それでも英雄として称えられるなら、もう少し納得がいくのですが…。

戦闘シーンの撮影は素晴らしいものだったと思います。切腹シーンは、これを見ると喜ぶ人がいるから入れたのだと思いました。デスモンドと大尉を、物陰から撃ってきた狙撃者がいたりとか、大挙して銃剣で勝負を挑むような攻撃パターンとか、雰囲気が違うものが混ざっていたり、何をしているかわからない、日本軍の司令部が映ったり、アクションでサービスしながら、面白くドラマ仕立てにしていますが、一貫性がなくスッキリしないのは、やはりベースに戦略が無いからでしょう。そのあたり、少し惜しいなと感じました。

2020.5.9 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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<短編> 'Departures' (2019)

最近Amazonに出ていた短編映画です。雰囲気的には良さそうなドラマみたいで、ちょっと期待していました。これも、お年寄りをテーマにした短編と思われます。邦題の旅立ちという所からも、なんとなく想像できます。
Amazon 邦題:旅立ち

あらすじ
テーブルの前で考え込む老紳士(Giorgio Colangeli)は、意を決してグラスの水の中に薬品を入れると、水がワインの様に赤く染まります。老人は、グラスを置いた盆を運ぶときに、一輪の花を添えます。
丘の上の展望台から、先ほどの老紳士と娘(Alessandra Masi)が町を見下ろしています。年老いた父は娘に、いままで自由を束縛していたことを詫び、これからはこの街を離れ、好きなようにしてもかなわないと告げます。娘は町に残ると言いますが、父は恋人との約束でもあるのかと問いかけます。

老いた妻(Valeria Cavalli)はベッドの上で起き上がってアルバムを見ています。老紳士はグラスと鼻を脇に置くと、今までのことを振り返り、変わらぬ愛を語ります。妻は、あの音楽をかけてと頼み、老人がレコードに針を載せて振り返ると、グラスが空になっていました。夫は、妻の体を横たえ、自分もその隣に横になりました。
丘の上で、父は娘に、母親と初めて会った時のことを語ります。この高台のベンチで、本を読んでいると、母親が隣に来て、多くのことを語り合ったのです。そして、妻のいう事は何でもかなえてきた、最後の願いもと…。父と娘は展望台で抱き合い、娘が振り返ると、そこに確かに、若き日の父と母の姿を見るのでした。



Departures (2019)

17分の短編映画。内容は素直なお話です。安楽死の補助を夫に頼んだ妻と、おそらくこれを期に町を出ていこうとする娘のそれぞれの旅立ちの瞬間を描きます。こういった老いのテーマをショートストーリーにすると、だいたいいいお話になり、この映画も然りです。そして、妻が薬を飲む前後の映し方は、大変良くできていると思いました。時に、レコードをかけに行って振り返ると、グラスが空になっていたという映像は、ハッとするようなシーンで心に残ります。

あとは、あまりにも素直な展開で、もうひとひねり欲しいなと思ったのが、見た時の正直な感想です。旅立ちという言葉に表される夫婦の別離と娘の旅立ちを表現していて、十分以上に成功していますが、更に突き抜けるものが欲しいなと思いました。あと、妻が物語の性格以上に、若く元気に見えるところも引っかかります。ただし、彼女の演技自体は素晴らしいと思えるものでした。もっともっと良くなる可能性があるのではないかと思いました。

この作品は様々な映画祭に出品されたようです。監督のことはわかりませんが、その中で、"Best Student Film"という賞を受賞しているので、きっと学生の作品だと思います。そうしてみると素晴らしい出来であると同時に、伸びる余地を大いに感じる映画であることも頷けます。俳優さんは、イタリアのテレビ等でも活躍するベテランの方々と思います。堅実な演技です。映像表現は素晴らしいので、さらに経験の裏打ちが積み重なれば、飛躍が期待ができるのではと思いました。

Data
監督:Nicolas Morganti Patrignani
脚本:Stefania Autuori
製作国:イタリア
公開年:2019
時間:17 minute
スペック:カラー
Imdbリンク:Departures

2020.5.10 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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