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「フォレスト・ガンプ 一期一会」 ジェニーの肖像を想う…

もちろん、この有名な映画のことは知っているつもりで、でも不思議と今まで見なかったんだよねと思っていました。ところが…。1994年のアメリカ映画で、ロバート・ゼメキス監督作品。オスカー6部門受賞、その他数々の賞を受賞した、90年代の名作です。

あらすじ
バス停のベンチでフォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)は、バスを待つ人々に半生を語り始めます。50年代のアラバマでの少年時代。知能指数劣るフォレストは、母(サリー・フィールド)の後押しで一般の公立校へ入学。初日にフォレストはジェニー・カランという少女と出逢います。ジェニーはいじめに遭うフォレストをいつも助け、ある日ジェニーの指示で走り出したフォレストは、驚異の脚力を身につけました。高校生になってもフォレストはジェニー(ロビン・ライト)とは仲良しで、相変わらずいじめも受けていました。ある日追いかけられたフォレストは、アメフトの試合中のグラウンドに割って入り、驚異の脚力を見せつけると、アラバマ大学へスポーツ推薦で入学。遂には全米代表に選出されるまでになります。

ベトナム戦争の時期に卒業したフォレストは、陸軍に入隊。出会ったババ(ミケルティ・ウィリアムソン)と意気投合します。ババの夢はエビ漁師を継ぐことでした。出征前にフォレストは、大学を退学となって、ストリップ劇場で働くジェニーに暫しの別れを告げます。戦場では、ダン中尉(ゲイリー・シニーズ)の小隊に配置されますが、敵の攻撃で壊滅状態に。ババも戦死し、ダンは両足を失ってしまいました。フォレストは野戦病院で卓球を始めたところ才能を開花し、全米チームに選出されます。そしてフォレストは、反戦運動に加わっていたジェニーと再会しますが、立場の違う二人は一緒になれませんでした。除隊後、賞金を元手に、ババの夢を叶えるためエビ会社を設立。生気を取り戻したダンとエビ漁の事業を始め大成功。しかし、故郷の母が癌に倒れ、その後故郷で過ごすことになりました。ジェニーが突然帰ってきて、しばらく幸せな日々を過ごしますが、フォレストが告白し体を併せた翌朝、突然ジェニーが姿を消してしまいます。放心状態になったフォレストは、理由もなく走り続け、マスコミにも取り上げられます。走り疲れたフォレストは突然走るのを止め、家に戻ると、ジェニーから手紙が届きました。

バス停で今までの人生を話し終えたフォレストは、その町に住むジェニーを訪ね、再会を果たします。ジェニーにはフォレストとの間の息子、フォレストが誕生しており、しかもジェニーは不治の病に侵されていました。フォレストはアラバマにジェニーを連れて帰り、結婚式を挙げると、ダンも婚約者とともに現れます。その後、フォレストの看病のかいなくジェニーは亡くなり、かつて一緒に過ごした思い出の木の下にジェニーを埋葬。我が子を育て上げる決意をするのでした。



フォレスト・ガンプ 一期一会

この映画を見終わっても、以前に見たことがあるという事実に、全く気が付かなかったのす。つけていた、過去記録を見て、はじめて気がづきました。ここ最近は、ずっと未見の作品と思っていました。見た時の状況もあると思いますが、これほどの有名作品を見たことが、なぜ全く記憶から消えているかちょっと不思議です。全く印象に残らなかったのでしょうか?何故?確かに、今見ても同種の映画は沢山あるし、同じような雰囲気の映画も沢山あるしで、おまけに見た当時に興味をあまり持っていなければ、埋もれてしまったのかもしれません。

この映画は、フォレストのわらしべ長者的な成長記をアメリカの近代史に寄せて作り上げたストーリーです。でも、見ていて一番のポイントと思うのは、彼が劇中に常に思いやるジェニーの話と思いました。現れては、成長して消え、数奇な運命をたどっていくのは、まるでジェニーの肖像のようでした。常にジェニーを思い続けるというセリフが何度も出てきて、見ている方は次の再会を待ち望みます。これだけ出てくるのだから、絶対再会できると応援し、待ち望む形になります。そして、ジェニーは妊娠し自分の死を知り、二人の息子を彼に託すためにも再会を選んだと思いました。

フォレストは自分の生涯を語り、その親友たちとの交流も丁寧にエピソードとして描かれていきます。ところが、ジェニーの方は、要所要所で変遷は解るのですが、彼女の苦悩は断片的に描かれているまでで、あとは想像の世界になっています。ここがなかなかうまいところだと思いました。片思いの男の状況をうまく描いています。そう思うと、より印象が強い映画になっていきます。フォレストのストーリーだけを追ってはだめなんですね。ジェニーの生涯を想像して組み立ててみるところに、この映画を楽しむポイントがあるのではと思いました。そう考えると、とても印象深い映画です。

2019.12.22 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
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「インセプション」 心の深層まで作り込んだ夢の世界へ

IMDbチャートの上位作品を見ていこうと思い立ちました。少しでも最近の時流にキャッチアップしていこうという試みです。所謂、欧米の読者ランキングの様なものなので、比較的現在の流行が追えるのではと思いました。まずは、「インセプション」。2010年のクリストファー・ノーラン監督による作品です。

あらすじ
海岸に流れ着いたコブ(レオナルド・ディカプリオ)は浜辺で遊ぶ小さな子供を見つめていました。コブとサイト―(渡辺謙)は、大きな部屋で会談。コブはサイト―の頭の中のアイデアを盗もうとしますが、逃げられてしまいます。ここはサイトーの夢の中なのでした。コブは夢の中で彼を追いますが失敗。そこで、コブと仲間のアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)は、サイトーからライバル企業の会長の息子にインセプション(無意識領域への植え付け)を依頼されます。限りなく難しい依頼に最初は断りますが、犯罪歴の為、当局から追われ、家へも帰れない状況に置かれているコブは、犯罪歴を消して子供の元へ帰れるようにできるというサイトーの提案を受け、承諾しました。

コブは、偽装師イームス(トム・ハーディ)、調合師ユスフ(ディリープ・ラオ)、設計士の女子学生アリアドネ(エレン・ペイジ)を仲間に加え、作戦にサイトーも参加することになりました。目的は、エネルギー市場を独占するライバル企業のトップが死の床にあり、跡継ぎの息子のロバート(キリアン・マーフィー)に父の帝国をつぶさせようというものです。そして、コブが家へ帰れない理由は、自殺した妻(マリオン・コティヤール)が「夫に殺されそうになっている」と言い残して死んだこと。妻はコブと共に夢の何層もの最下層で二人だけの愛の世界を構築していましたが、妻は現実と夢の区別がつかなくなり、現実に戻っているにかかわらず、死ねば現実に戻れると思い込み、自殺したのでした。

コブたちは、ロバートの夢の第3層まで行き、「父親とは違う、独自の道を進む」というインセプションを行うという計画をたて、ロバートを眠らせ夢の中へ入っていきます。ロバートの夢の中で、武装勢力の攻撃を受けますが、ロバートは記憶への侵入に対する防衛の訓練を受けていたようです。第1層では、この攻撃にてこずり、目覚めるための衝撃を得るために、車を川に落としその落下時間を利用して、さらに時間の流れの遅い第2層に入ることにします。第2層は、ホテルの一室、そして更に第3層の雪の要塞へ。ここで、インせプション成功の直前、ロバートの背後にコブの妻が現れ、銃撃してしまいます。作戦失敗と判断したコブは、帰還しようとしますが、アリアドネの提案で、さらに深層に向かいます。第4層はコブと妻モルが作り上げた世界。コブはずっと夢の中でモルと過ごしていました。コブはこれを断ち切る決心をし、この世界を崩壊させて、負傷して深層で彷徨うことになったサイトーを探します。第3層ではロバートは父に出会い、自分の道を進むよう言われます。サイト―も救出し、最後には全員現実世界で目を覚まし、生還を果たしました。そして、コブは家へ帰り、子供たちと再会するのでした。



インセプション

最初はなかなか取っつきにくくて、頭をフル回転して見る羽目になりました。何か、現実と夢が一緒になっていて、何が起こっているか解らない感じです。そうでした。クリストファー・ノーラン監督は、あの「メメント」を作っていたのですね。なかなか仕掛けに手が込んでいます。この物語は、夢の深層に入っていって、秘密を盗むだけではなく、今度は植え付けようとする物語。夢の世界は、第1層、第2層、第3層・・・・と、夢のまた夢の世界へ入っていきます。なかなか奥が?深いのでした。

夢といっても、全くの不条理なものではなく、かなり個人が意図して創造したような恣意的な雰囲気です。心の中や願望を投影しているという形でしょうか。かといって、恣意的な自分勝手な願望や妄想ではないというのが微妙なところ。そして、時間の経過の速度が各層毎に違うところが、大きなキーポイントになっていました。この設定が面白さを倍加させていると思います。そして長居してしまうと、夢と現実が解らなくなってしまうという悲劇が訪れるのでした。

一言でいえば構想の勝利だと思いました。古いハリウッド映画や、普通のドラマやコメディを見続けてていると、こういう映画は結構面食らってしまいます。果たして、ここまで凝らないといけないものかなと…。もっと単純で、それでも人間の喜怒哀楽を上手く表現できて、感動するのが映画では無かったかと…。この映画、あまりにも仕掛けが凄いので、人情などはその構想の中に埋もれてしまっている感じがします。逆に構想の中に組み込まれているということかもしれません。妻モル関連のエピソードは、そういう部分なのですが、やはり仕掛けに呑まれているように感じました。パズルとアクションを突き詰めて作りこむとこうなるという回答。すごく面白いけど、古い頭では、そこまで?という疑問がついて回るのも事実でした。まさにファンタジーの極北とも言える作品ではないかと思います。現代の人気作品ですが、ノーランにしろ、フィンチャーにしろ、捻りにひねったという感じの映画が今の時流なんですかね…。

2019.12.21 HCMC自宅にて、Amazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「キューポラのある街」 みんなで成長していく時代だった

名作として名前だけは聞いたことある映画だったのですが、見る機会がありませんでした。この映画が製作されたのは、ちょうど私が生まれた年のあたりで、当時の情景もいろいろと楽しみです。1962年の浦山桐郎監督の作品。日活の製作です。実はこの映画は、カンヌ映画祭に出品され、最高賞のノミネートだったのですね。

あらすじ
埼玉の川口市は鋳物工場が多くある街でした。ある日辰五郎(東野英治郎)の勤める工場が買収され、職人気質の辰五郎は解雇されてしまいます。辰五郎には妻のトミ(杉山徳子)と娘のジュン(吉永小百合)、二人の息子タカユキ(市川好郎)とテツハル(岩城亨)が暮らす5人家族で、ちょうどその日に、トミは4人目の子供を出産したのでした。同僚だった塚本(浜田光夫)は、集めた餞別を渡し、労働組合にかけあうと言いますが、昔気質の辰五郎は組合を忌避し、餞別も返してしまいます。そして酒におぼれ始め、やがてタカユキは喧嘩して家出してしまいます。

タカユキは、子分で朝鮮人のサンキチ(森坂秀樹)の家に世話になり、ジュンも修学旅行と高校進学のために、サンキチの姉ヨシエ(鈴木光子)の紹介でパチンコ屋でアルバイトを始めます。そして、ジュンは同級生のノブコ(日吉順子)に勉強を教えていましたが、そのノブコの父親のコネで辰五郎の再就職が決まります。喜ぶ家族でしたが、オートメーション化された鋳物工場で居場所が無く、半月ももたず辞めてしまい、一家は再びどん底に落とされ、母も飲み屋で働くようになっていました。修学旅行の旅費はなんとか学校から借りたものの、ジュンは当日の汽車に乗らず、町で母が飲み屋で男たちに酒を注ぎながら騒いでいる姿を見てしまい、ショックを受けてしまいました。

サンキチは、父と姉と一緒に朝鮮へ帰ることになり、ジュンや塚本も見送ります。そして、ジュンは工場に就職し、定時制に通うことにしました。その時塚本が辰五郎が古巣に戻る話を持ってきて、ジュンに普通高校への進学を勧めますが、ジュンは一度決めたことだと言って定時制に通うことを通します。朝鮮に帰ったはずのサンキチが一人で母(菅井きん)に会いたくて戻ってきましたが、母はすでに再婚していなくなっており、辰五郎の一家に笑顔が戻り、母にも会えず、朝鮮に帰る決心がついたサンキチが乗る汽車を、ジュンとタカユキが跨線橋から見送るのでした。



キューポラのある街

高度成長時代。みんなで成長していく時代という言葉が、この時代の雰囲気を伺わせます。吉永小百合は当時17歳ですか。年相応の役ですが、着ている服の為か、幼児体型に見えます。東野のお父さんも熱演。昔気質だが、時代についていけず不甲斐ない役です。でもこれは、時代が変わる中で精いっぱい生きているということと思いました。朝鮮人の帰国事業も、その後の歴史を考えると寂しい限り。その後この人たちはどうなったのかと思ってしまいました。それにしても、菅井きんは変わり身早すぎです。

鉄道がすごいと思いました。飛んで埼玉の導入を思わせるスタートですが、東北本線の列車が手を変え品を変え次々と現れます。客車急行、80系の電車準急、最新鋭のキハ58系の気動車急行、貨物列車、団体列車などなど。いろいろな車両が映し出されました。さすが、川口という立地です。そして、極めつけはラスト近くで、長~い貨物列車の最後尾に連結された、キハ58系2両の回送が映し出されていました。これは偶然なのでしょうか。しかも吉永小百合の背景です!

さて、世相もいろいろ、組合も成長している時代でしょう。定時制高校は、この頃は昼間に職を持つ生徒の需要が旺盛だった時代と思います。中卒は金の卵と言われていました、まさに、みんなが成長を目指しているという時代背景が良く解ります。いろいろ盛りだくさんで、全体が綺麗にまとまりすぎといった感じもありますが、それぞれのエピソードが真摯で素晴らしく、飲み屋で働くことや、修学旅行のことなど、皆が貧困から抜け出し成長を目指す時代の息吹が詰まっていると思いました。そして、そういう時代を過ごしてきたんだと改めて感じます。演出、演技も素晴らしい名作だと思ますいます。

2019.12.14 自宅にてNHKBS Premiumよりの録画鑑賞

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「ボーダー 二つの世界」 充実し意外な展開のファンタジー

日本に帰った時、新しい映画を見ようと思って決めたのがこれ。ちょうど時間の都合が良かったということもあります。カンヌのある視点部門グランプリ。なかなか面白い映画でした。2018年製作。イラン系スウェーデン人の、アリ・アッバシ監督による作品で、スウェーデン・デンマークの合作になります。カンヌでの上述の受賞のほか、オスカーではノミネートが一つ。その他多数の映画祭での受賞があります。

あらすじ
スウェーデンの税関職員ティーナ(エヴァ・メランデル)は、人の感情を嗅ぎ分け、違反者を摘発する能力がありました。しかし、人とは違う容姿のせいで、孤独や疎外感も抱えています。ティーナは森の中の自然に囲まれた家で暮らし、森を裸足で彷徨うのが日課。同居中のローランド(ヨルゲン・トーソン)は、犬の調教に夢中で、ティーナに養われながら浮気をしたりと、怠惰な日々でした。ある日、ティーナは男の荷物を確認して児童ポルノ動画を摘発、また、みすぼらしい服の男(エーロ・ミロノフ)を呼び止めますが、今度は何も発見できず解放しました。しかし、ティーナは、彼に何かを感じていたのです。休日には老人ホームの父(ステーン・ユンググレーン)を訪ねたりもします。

ティーナは、警官のアグネータ(アン・ペトレン)から、児童ポルノ作成者摘発の協力要請を受けます。後日、みすぼらしい服の男が再び入国。荷物検査では何も発見できず、身体検査で彼には女性器があり、腰に傷跡があるとの事でした。ティーナは自分も傷跡があることから不思議に思いつつ、男性に検査させたことを詫びると、彼は、自分はヴォーレで、虫を採集しており、ティーナの家の近くに泊まる予定だと話しました。その日、ティーナは隣人の産気づいた妻を病院まで送り、家ではローランドに求められますが、できないと跳ねのけます。自宅近くでヴォーレに出会った彼女は勧められて虫を食べ、離れを貸すことにします。そして、夜に一人で森に入ったヴォーレは横たわるとうめき声を上げ始め、股間から何かを産み落としたのでした。

ティーナは児童ポルノの捜査に同行し、アパートの一室から赤ん坊への性的虐待動画の入ったビデオカメラを発見します。また、ティーナとヴォーレは、隣人の生まれたての赤ん坊を見せられますが、大泣きされてしまいます。そして、ローランドの留守中、二人は森の中で激しく求め合うと、ティーナの股間から伸びた男性器をヴォーレの女性器に挿入されました。混乱するティーナに、ヴォーレは、自分たちはトロールだと答え、腰の傷跡は、尻尾を切除したあとだと説明します。トロールはフィンランドで放浪生活を営んでいるとのことです。両親たちは人間に捕まり実験材料にされ、子供たちは施設に入れられたとのこと。翌日老人ホームを訪れたティーナは、父親に問い質し口論になってしまいます。ある日ティーナは、ヴォーレの部屋の冷蔵庫から生きた赤ん坊を発見。冷蔵庫の中でも生きており、か細い声を発していたのでした。

赤ん坊への虐待で逮捕された男は、護送中に引きずり降ろされ殺されます。ヴォーレの仕業だと気づいたティーナは、冷蔵庫について問いただすと、自分の未受精卵のもので短命だと説明。未受精児を人間の赤ん坊とすり替え、児童ポルノブローカーに売っていたのでした。人間への復讐と語るヴォーレに、ティーナは激怒します。ティーナは、隣人の赤ん坊もすり替えられたことに気づき、ヴォーレを探すと、フェリーで待つと置手紙を残して姿を消していました。そして、フェリーで警官がヴォーレを追い詰めますが、彼は海へ飛び込み姿を消してしまいます。ある日ティーナが自宅へ戻ると、大きな木箱が送られてきました。中には尻尾がついた赤ん坊のトロールと、フィンランドのコミュニティーからの絵ハガキがあり、ティーナはむずかる赤ん坊にコオロギを食べさせると、機嫌を直して笑顔になり、それを見たティーナも思わず笑顔になるのでした。



ボーダー 二つの世界

上映時間帯が、ちょうど都合が良かったので見に行きました。もちろん、カンヌのある視点部門グランプリということで期待しての鑑賞です。最初は、国境の税関を舞台にした、外見が良くないけれど、特殊な能力を持った女性のサスペンスドラマかと思いましたが、いやはや意外な展開に…。かなり意表を突かれました。これは、ファンタジーだったのですね。そのあたりの展開が一段落して、二人の事情が分かってなんとなく終息感を迎えると、さらにもう一展開して山場が訪れました。

なるほど…。という感じで、ストーリーとしても大変面白かったですし、その上、トロールのメイクも凄い。久しぶりに面白い映画を見たという感じがしました。トロールといえば、自分の最初のイメージはやはりドラゴンクエストで、HPが高く魔法を使わない、体力勝負のモンスターというイメージです。この映画でも、かなり力は強そうな感じでした。そして、不純な物を感知する、特殊能力を持っていました。

全体として、サプライズなファンタジーという形をとりながらも、ボーダーという表題と併せていろいろと示唆するものも多く、善悪の境界や、人と妖精の境界、親子の問題、児童ポルノ、異形の人と周囲の反応などなど、いろいろと思い起こさせるものの多い映画です。ある視点と言わず、様々な視点で見られる映画だと思いました。今年見た映画の中でも傑作の一つです。

2019.11.24 ヒューマントラストシネマ有楽町にて

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「ヴァーサス・ゾンビ 時空を越えた生ける屍」 カニがそうカニ..と言った。ガハハハハ…というノリです

ゾンビ映画鑑賞でした。ギリシャのゾンビ映画で、邦題が「ギリシャ・ゾンビ」という、そのものずばりの映画がありましたが、これは同じ監督が製作したその続編にあたります。支持不支持の別れる映画のようですが、怖いもの見たさで見てしまいました。2009年のヨルゴス・ノウシアス監督による作品です。

あらすじ
古代ギリシャで、焚火を囲む人々のうち一人がゾンビ化して暴れだします。そして、現在。運転手のアルギリス(アルギリス・タナソウラス)がパイプに突き刺さり、一緒にいた4人は襲ってきたゾンビを倒しながら車で逃げ出しますが、ビルの屋上から狙うマンハント集団の銃撃に襲われました。そこにいた兵士のヴァルキルジス(アンドレアス・コントプーロス)がライフルで応戦し、なんとかみんなで自分たちのアジトに逃げ帰ります。そして、その頃から数千年前の黒装束の男(ビリー・ゼイン)が現れるようになります。

ネットニュースでゾンビ撲滅のためにアテネに化学兵器を投下するというニュースが流れ、生き残った人間も巻き添えになる為脱出しなければならなくなります。そこに死んだはずのアルギリスが生きて帰ってきます。黒装束の男が現れ、アルギリスに「選ばれし勇者」だといい、2500年前にも同じことが起こったが、勇者が現れて退治したと告げます。アルギリスは自覚すると自らリーダーとなり、外に出て光の噴出している地点に向かいます。ゾンビたちに囲まれますが、アルギリスの力で襲ってこず、光の噴出する地点でアルギリスが念じると光は収束しゾンビたちは人間に戻りました。そして、歓喜に沸く人々の頭上で化学兵器の弾頭が投下されていくのでした。



ヴァーサス・ゾンビ 時空を越えた生ける屍

ギリシャのゾンビ映画で、日本でDVD発売された、「ギリシャ・ゾンビ」の続編らしいですが、前作は見ていないので、関連性はよく解りません。古代のゾンビ出現のシーンから始まり、ゾンビに対峙する勇者が時空を超えて甦るという構造のようです。ただし、そのあたりのストーリーはちょっとわかりにくい感じです。ていうか、そもそもストーリーなど、ど~でもよくて、とりあえず見て楽しみましょう!という感じでは無いかと思いました。

個別のシーンとして、いろいろと名作のパロディ的なギャグが埋め込まれています。弾丸より速く走ったり、目玉焼きを見事に受けたりなど、小ネタは満載。ゾンビ退治は爽快にどんどん首チョンパしていき、でも調子に乗っているとすぐ噛みつかれてゲームオーバーになってしまうという感じでした。これに、残った人間狩りを楽しむマンハント集団が加わって、そちらさんとの対決アクションも発生するという賑やかさでした。

登場人物もそれぞれ癖があって面白いの出すが、まぁそればかりですと、だんだん退屈にもなって来るというもの。そしてラストは、よく解らないような、すっきりしない、ありがちなものでした。という訳で、やりたい放題といった感じではありましたが、こういうのは、嫌いではありませんです。「ギリシャ・ゾンビ」の方も、一度見てみたくなりましたよ…(笑)。

2019.10.1 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「バイオ・アマゾネス」 二人のエロチック女優の吸血ホラー

B級ホラー映画かなと思って見始めましたが、どちらかというとエロティックという分類に入る映画かなと思いました。チリに調査に行って、吸血鬼菌に感染するという、あやしげな映画で、これはビデオムービーのようです。2002年のアメリカ映画で、原題はDemon's Kiss。監督はブラッド・サイクスという方です。

あらすじ
ポール(ジェフ・マルケレッタ)は、カメラマンで恋人のテレサ(マデリーン・リンドレー)、考古学者のルビー(エミー・スミス)、助手のミシェル(ビヴァリー・リン)を連れて、チリの遺跡探索に向かいました。そして、奥地に進む休憩中に、原住民の女が駆けていくのを見たテレサは、それを追いかけて洞窟の中に入り込みます。そこでテレサは何者かに殴られ、気づいた時にはロサンゼルスの病院のベッドの上でした。肩に噛まれた跡があり、それがなぜ出来たのかは、記憶にありませんでした。

テレサは元気を取り戻して退院しますが、時々倒れたり、気が付いたら血を舐めたりしていたので、ルビーに相談に行きます。そこでルビーはテレサに催眠術をかけ、当時の様子を思い出させますが、その情景に驚いたテレサは、錯乱して夜道に一人で出ていきました。そしてレイプされそうになったテレサは、男の血を吸って殺してしまいます。その現場に残されたポールの名前の入った伝票から、ハマー刑事(ギャレット・クランシー)がポールを訪ね、ポールもテレサの行動を不審に思うようになります。そして、助手のミシェルに誘われ彼女のベッドに入ったポールですが、途中で思い直して部屋から出ていくと、入れ替わりに訪ねてきたテレサは彼女を噛み殺してしまいました。

ルビーは滅びたチリ原住民の秘密を探り、ポールに伝えます。その原住民は血を吸って生き続けるようになり、それは噛まれることによって女性だけに伝染するというものでした。テレサは、元カレのニック(ジョン・デヴィッド・シェパード)やルビーを襲い次々と犠牲にしていきます。ポールとハマー刑事はテレサを探しあて、ついに凶暴化したテレサがポールを襲ったところで、ハマー刑事はテレサを射殺。そこにルビーが現れ、倒れたテレサを見ますが、すでに息絶えていました。そして振り返ったルビーの目は既に感染の兆候が表れていたのでした。



バイオ・アマゾネス

見る前は、B級以下ホラーかと思っていましたが、お楽しみはエロスなのでした。開始早々、というか物語に本格的に入る前にいきなりセックスシーン登場です。それも、マデリーン・リンドレー(マデリーン・ウェイド)が超爆乳なので、目が点。その後も絡みのシーンは定期的に表れ、〇分に一度の絡みと、短めの尺という典型的ポルノ映画パターンでした、それはそれで幸せです。主人公のマデリーンの爆乳は何度も登場しますが、一度だけ絡みのあるビヴァリー・リンの方が、スタイルのバランスが取れていて、美人タイプでもあり好きです。

ビヴァリー・リンはポルノ女優と紹介されていて、2001年頃から映画に出ていますので、この映画はまだ初期で29歳の頃のようです。その後も、たくさんのビデオやTV映画に出演し現在も活躍中45歳。円熟の彼女にもちょっと興味があったりします。本作もVideo Movieということで、劇場公開作品はあまり多くないようです。日本でも沢山のVideo MovieがDVD化されています。

さて、ストーリーはおまけみたいではありますが、ジャングルでの「ありえない」、というかお決まりの突飛な単独行動で吸血鬼にかまれたテレサが、帰国後徐々に変貌し、吸血鬼となっていくというお話。惨劇はどんどんエスカレートしていきます。追跡するのはスポーツカーに乗ったハマー刑事です(笑)。

ストーリーはともあれ、楽しませていただきました。

2019.9.23 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「クリスマス・キャロル(1938)」 アットホームなクリスマス

今日は、12月25日。クリスマスの日ですので、大変ポピュラーなクリスマス・キャロルのお話です。映画化されたことは何回あるのでしょうか。Wiki(英)のリストには20作ありますが、翻案なども含め実数はもっと多いのでは?と推測できます。この作品は、1938年のアメリカ(MGM)映画で、監督はエドウィン・L・マリン。スクルージは、レジナルド・オーウェンが演じています。

あらすじ
19世紀のロンドンのクリスマスイヴの日。フレッド(バリー・マッケイ)は凍てついた道を、伯父のエベネーザ・スクルージ(レジナルド・オーウェン)をクリスマスディナーに誘いに事務所を訪れましたが断られます。そして、スクルージは寄付を求めてきた慈善団体の紳士も追い返し、書記のボブ・クラチット(ジーン・ロックハート)のクリスマス休暇を渋々承諾しますが、翌日の早出を要求しました。その後ボブは誤ってスクルージの帽子を雪球で叩き落してしまい、スクルージはボブに首を宣告。家族のクリスマスのために有り金を使い果たしていたボブに、帽子代として給与も保留すると宣言しました。そして、その夜スクルージは家に戻ると、かつてのパートナーのジェイコブ・マーレイ(レオ・G・キャロル)の亡霊が現れ、考えを改めないと三人の亡霊に取りつかれると言われてしまいます。

夜中の1時になると、過去の精霊(アン・ラザフォード)が現れ、スクルージを幼いころに連れていきました。休暇中の学校に一人残された時の寂しさや、クリスマスに姉が彼を家に連れ帰ってくれた時の喜びを体験し、また精霊は貸金業者の従業員としてスタートした時のことを思い出させました。2時になると現在の精霊(ライオネル・ブラーム)が現れ、今の人々の様子を見せます。甥のフレッドと婚約者のベス(リン・カーヴァ)は愛し合っていますが、フレッドに結婚資金が無く結婚できずにいます。このままでは、二人の愛は実らないかもしれません。クラチット家では、家族の前で陽気にふるまうボブは、解雇されたことを言えずにいます。精霊は末の息子のティムは体が弱く、このままでは1年後には亡くなるかもしれないと知らせます。

3時になると、未来の精霊(ダルシー・コリガン)が静かにマントを纏う姿で現れ、このまま過ごした時の、スクルージの未来を見せ始めます。ティムが死んでしまい嘆き悲しむクラチットの家族や、自身の死にあたって誰も追悼しない様子を見せ、彼は悔い改めることを約束します。そして、次の日の朝目覚めると、スクルージはすっかり変わっていました。彼は少年にクラチット家の為の七面鳥を買いに行かせると、慈善団体に多額の寄付を行い、フレッドの家を訪れ、彼を新しいビジネスパートナーとし、クラチット家でボブの解雇を取り消し、賃金も引き上げるのでした。



クリスマス・キャロル(1938)

よく知られた、クリスマス・キャロルの物語。何度も映画されていると思いますが、これはその初期の部類に入るのではないでしょうか。ストーリーは、守銭奴で人間との付き合いに意味を見出せないスクルージに、過去・現在・未来の精霊が現れて解らせるという、旧知の物ですが、やはり最後に改心し和解する場面は感動的でした。クリスマスの夜に、再び家族や仲間との信頼を取り戻し、温かく迎えられ、人の優しさに気づくというストーリーは感動的にならないはずがないというものです。

今回のスクルージはレジナルド・オーウェン氏。今まであまり注目したことがありませんでしたが、主役はあまりありませんが、相当たくさんの映画に出ていらっしゃるようです。共演した有名女優も数知れずということで、名脇役という感じでしょうか。代表作は何なのでしょうか?メリー・ポピンズの大砲を毎日ぶっ放す、ブーム提督??そして、この映画の主役も、ライオネル・バリモアの代役として土壇場で決定したようです。見事にスクルージを演じていますが、最初の頃は背中が曲がった嫌なお爺さんを演じていましたが、後半になると、背筋が伸びているような気がしましたが気のせい?

そして、ジーン・ロックハートと妻のキャスリーン・ロックハートが共演、そして娘のジューン・ロックハートの映画デビューという家族で出演の映画でもあります。アットホームなクリスマスらしいキャスティングです。ただし、ジューンはノンクレジットのようです。感動的なクリスマスファンタジーで、たくさん映画化されていますから、いろいろと見てみたいと思いました。それも毎年クリスマスの日に…。とか、いいですね。それでは、Merry Christmas!

2019.6.30 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「妖精たちの森」 ジェームズの”ねじの回転”に秘められた話

この映画は、ヘンリー・ジェームズのねじの回転をベースにした物語です。ただし、ねじの回転は新しく家庭教師に来た女性の不思議な体験が主なストーリーと思いますが、こちらは、その不思議な体験(幽霊)の原因となった物語になります。1971年のマイケル・ウイナー監督によるイギリスの映画です。

あらすじ
ある日ブライ邸では、ロンドンに向かう後見人が家政婦のミセス・グロース(ソーラ・ハード)に、指示を与えていました。このブライ邸の持ち主亡きあと、残された幼い姉弟、フローラ(ベロナ・ハーベイ)とマイルズ(クリストファー・エリス)の面倒をみることについて、家庭教師のジェスル(ステファニー・ビーチャム)、下男のピーター・クィント(マーロン・ブランド)とミセス・グロースに任せ、後見人は何かが起きない限りタッチしないというものでした。クィントは粗野で無知な男でしたが、幼い子供たちにとっては彼の占める地位は大きく、外での遊びはすべてクィントに教えら、実生活面でも彼の言うことを信じて行動していました。

このことは、ミセス・グロースを困惑させていましたが、それだけではなくクィントは家庭教師のジェスルと肉体関係があり、彼女は夜ごとの来訪を拒まず、かつ行為は暴力的かつ倒錯的なものでした。二人の様子を覗き見たマイルズは、姉のフローラとそれを真似するようになります。やがて、クィントとジェスルの関係がミセス・グロースに知られることになり、彼女はクィントの屋敷内への出入りを禁じます。そして、ジェスルもこの屋敷を去る決心をしました。

そんな彼女のもとに、クィントからの別れる前に一度会いたいという手紙が届くと、これが子供たちの計略とも知らず、池のボートを漕ぎ始めますが、ボートは穴があけられていたため沈んでしまいジェスルは溺死します。クィントも子供たちに誘われジェスルを発見しますが、マイルズの放った矢に倒れました。子供たちのこれらの行動も、クイントから学んだものだったのでした。



妖精たちの森

新潮文庫でよく見る「ねじの回転」ですが、これはまだ原作を読んでいませんでした。ただ、この映画は原作そのままではなく、原作で起こる現象の幽霊譚の原因となった前日譚を描いています。原作に則って製作された、デボラ・カー主演の「回転(1961)」は、予告編だけ見ましたが、立派なホラーの様子でした。それに対し、この映画はなんと表現したらいいのでしょう。どういう意図でと図りかねるところがありました。

一つのエピソードではありますが、全体の物語からすると部分でもありますので、一つの映画にしてしまうと冗長感が否めず、またこのエピソードは、馬丁と家庭教師の倒錯愛と、真に受けてしまう感受性の強い子供というテーマになりますが、残念ながら倒錯愛の演技にほぼ愛が感じられず、したがってその影響を受ける子供についてもその必然性が感じられないという、残念ながらちょっと困ったことになってしまいました。

まぁ、出だしの2人の子供をマーロン・ブランドがドタドタ追いかけるシーンから、なんとなく締まりがなくていやな予感がしていました。意外性のようなものか、純真な子供の染まりやすさのようなものを表したかったのかもしれないのですが、もう少し、ストーリーやテーマに沿った演技や演出であれば、面白く見れたのではと思います。ねじの回転を見るには本家の「回転」の方を見るべきではないかと思いました。

2019.9.22 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「天国と地獄」 87分署シリーズ翻案の黒澤明のサスペンス

黒澤明監督の天国と地獄は、エド・マクベインの小説である、87分署シリーズの「キングの身代金」を原作として製作されました。87分署シリーズは大好きだったので、この映画も一度高校生くらいの時に見た記憶があります。今回、BSで放映されていましたので、改めて録画視聴してみました。1963年の映画です。

あらすじ
ナショナル・シューズの権藤専務(三船敏郎)は、社内の権力闘争に勝ち残るための資金を用意し行動に出ようとしたその時、息子を誘拐したという電話が飛び込んできました。ところが息子は帰宅、誘拐されたのは運転手の息子進一(島津雅彦)でした。権藤は進一のために、自身の将来を左右する資金を流用することを決断。権藤邸に張りこんだ戸倉警部(仲代達矢)も、権藤の立場を知り、犯人への憎しみを倍加させます。そして、犯人から指定された、第二こだまに乗り込みました。

身代金は犯人に奪われましたが、進一は無事に戻りました。しかし、権藤は会社を追われ、かき集めた資金の債権者が殺到、邸宅も差し押さえられます。警察は進一の書いた絵から、監禁された場所を江の島附近と断定、捜査を続けついに監禁場所を特定。そこには、急に純度の高い麻薬を用いたことによってショック死した、男女の死体がありました。一方、戸倉警部は、権藤邸から遠くない病院の焼却煙突から、現金受け渡しの鞄に仕込んだ薬品による牡丹色の煙があがるのを発見。その鞄を燃やした男はインターンの竹内(山崎努)と判明します。

警察は、竹内の犯罪を確定的なものにするため、竹内が殺害したはずの二人の共犯者の手紙を偽装し誘い出すことにします。警察は竹内を尾行し、2人の死体が発見された家にも網をはりました。竹内は横浜で麻薬を買い、高純度のヘロインを伊勢崎町の麻薬中毒の売春婦でテストすると、彼女はすぐにショック死してしまいます。そして、竹内は二人の中毒者を住まわせておいた家に向かいますが、そこには戸倉警部以下が待ち構えていたのでした。



天国と地獄

天国と地獄と言えば、オッフェンバックのオペレッタ…もとい、エド・マクベインの「キングの身代金」の映画化ということになります。ただ、自分の印象としては、キングの身代金の設定である、運転手の子供を間違えて誘拐してしまったという構成をうまく利用した、黒澤明の映画であるというイメージです。87分署のイメージは、やはり「セブン」のような濃厚なイメージなので、この映画でも黄金町あたりでの麻薬中毒者がたむろしている情景などが描かれ、原作の雰囲気に迫っていると思いますが、どうも日本での映画化にちょっと違和感をもってしまいます。

見ながら、面白いなぁと思ったのは、権藤邸での張り込みのシーン。シネスコの画面が端から端までうまく使われ、大きな舞台を見ているような感じで、それぞれの行動が上手く表現されていると思います。その俳優の動きから、心情までもうまく表現され、芸術的ともいえる効果を出していると思いました。この映画はかつてテレビでも見たと思うのですが、当時のテレビではカットされてうまく映されなかったのではないかと思います。大画面のテレビが普及して、今では自宅でもこの雰囲気を味わえるようになりました。

ストーリー展開は申し分なく、緊張感に満ちたものです。やはり権藤邸でのシーンがとても引き締まった雰囲気でいいと思います。後半はちょっとゴチャゴチャするのですが、謎解きと犯人の行動を追うサスペンスアクションです。パートカラーで一気に決着をつけるのも印象的でした。医学生と言えば上流のイメージがあり、もう少し犯行に至る背景が語られればとも思いました。この映画は、当時の誘拐に対する刑の軽さを批判することも製作動機となっていて、警察が刑を盛っていくような行動をするのも、その為のようです。いずれにしても、日本のサスペンス映画の中でも屈指の名作と思います。

2019.11.24 自宅にてNHKBS Premiumの録画鑑賞

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「メメント」 注意力と記憶力を試されるパズルを解く

2000年製作のクリストファー・ノーラン監督の第2作。アメリカに渡っての作品です。当時ヒットし、オスカーも2部門ノミネートされています。有名な映画ということは何となく聞き知っていたのですが、今まで見る機会がありませんでした。名作であることは保証されていますので、どんな映画だろうと期待して鑑賞しました。

あらすじ
映画の構成ですが、短い区切りで現在から過去に向かって映画が進みます。一方で、過去の記憶に関しては、過去から現在に向けて話が進みます。この手法が謎解きのように効果的で、観客を楽しませるわけですが、あらすじにならないので、普通の時系列にもどしたあらすじにします。

レナード(ガイ・ピアース)は就寝中の自宅に強盗が押し入り、起きてみると最愛の妻(ジョージャ・フォックス)がレイプされていました。彼は、強盗の一人を射殺しましたが、転倒し、頭部を強打したため、昔のことは思い出せても、事故以降のことは10分間しかもたないという記憶障害になってしまいます。レナードは犯人が2人いたと記憶しており、これは事故の前のものなので確信しています。そして、覚えているべきと思ったことは、メモやポラロイド、重要事項は刺青を利用し、復讐のため犯人を追い始めました。

記憶障害のレナードが重要事項を執拗に記録するのは、サミー(スティーブン・トボロウスキー)という人物を反面教師としていたからでした。サミーは記憶が2分しかもたない男で、妻は記憶以外は正常な夫が障害を偽装しているのではないかと疑い賭けに出ました。しかし、糖尿病の彼女は2分おきにサミーにインスリン注射を要求すると、サミーは何の疑念もなく指示通りに行ったため、彼女は死亡してしまったのでした。

友人の警官・テディ(ジョー・パントリアーノ)の協力で、レナードは重要事項をポラロイドや刺青に残し、犯人を追いっていたのですが、実はこの復讐は、すでに果たされていました。しかしレナードは復讐したことを忘れてしまい、テディはこれを利用して、新たな「ジョン・G」を作り上げては殺させ、第三者から金を取るようになっていました。実は、サミーとはレナード自身のことで、インスリンで死亡したのはレナード自身の妻であり、妻はレイプ事件で死んだのではなかったのです。何度目かの殺しで、既に復讐を果たしていることを知ったレナードは、テディの写真の「やつのウソを信じるな」と書きこみ、資料を破棄したうえ、テディの車のナンバーを刺青に彫り込みます。そして、レナードは殺したジミーの服と車を使い始め、まずいと思ったテディはやめさせようとしますが、事実を既に忘れているレナードは、写真に書いた「やつのウソを信じるな」を見て暴走し始めます。

ジミーの服のポケットにあった連絡先からバーでジミーの恋人のナタリー(キャリー・アン・モス)に出合い、彼女はレナードの記憶障害を知り、これを利用して、麻薬密売人のドッドを殺させようとします。テディはナタリーの部屋の前で待ち伏せ、「ナタリーを信用するな」と言いますが、テディの写真に「やつのウソは信じるな」とあるので、レナードは無視します。レナードはドッドを拘束し、一旦部屋に閉じ込めますが、それも忘れたレナードは、呼び出しでやってきたテディとドッドを町の外に運び、ナタリーにドッドのことを尋ねます。ナタリーは自分の恋人を殺した男で、レナードに助けてもらったお礼に、協力すると申し出て、彼女は車検局の友人に頼み、レナードの刺青にある車のナンバーを調べると、持ち主は「ジョン・ギャメル」であり、その写真はテディのものでした。レナードはテディの写真に「犯人だ、殺せ」と書き足すと、郊外の小屋でテディと待ち合わせし、レナードは、テディを射殺してしまったのでした。



Memento

評判の高い映画で、記憶が長くもたない男の話ということだけの知識で見始めましたが、この逆回しの構造に気づくまで少し時間がかかりました。そして、内容を理解しようと努める訳ですが、話は単純ではなく、並行して作り上げられたサミーの話が挿入され、ますます頭が混乱します。見ている方も直前の記憶の正確性を試されるという状況にあり、年をとって少々ボケ気味の頭をフル回転させることになりますが、かなりつらいものがありました。そうそう、人間の記憶はこれほどあてにならないものかと思い知らされる訳です。

結局話の筋を追っていくのが精いっぱいで、その中に散りばめられた細かい仕掛けは、よほど注意力と記憶力の素晴らしい人でない限りは、初見ではかなり見逃してしまうと思います。一発で全部わかる人は、問題を一定時間見てその後記憶だけで答えていくようなパズルが超得意な人だと思いました。最終的に解ってしまえば連鎖的に理解できていくのですが、回答のキーは、言葉で表されていくものではなく、映像や動きやさりげない会話の中に散りばめられています。全体が難解なパズルになっているようです。

とは言いつつ、大変面白い体験でした。やはり楽しめるのは、抜けが無くしっかりしているからで、それは素晴らしいと思います。突っ込みどころがあると台無しですので。この映画はきっと何度も見た人が多いのではないかとも思いました。そうでなければ、プログラムを買って理解するかです。商業的にもうまくいったのではないでしょうか。クリストファー・ノーランは、これが第2作。以降の成功がすでに約束されていたような、凄い才能であったということが良く解ります。楽しませていただきました。

2019.12.7 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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プロフィール

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Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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