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「ニッポン無責任野郎」 気楽に楽しみながら思い出に浸る

BSで放送された映画がたくさんHDに納まっていて、なかなか見きれないのですが、今回はその中の一本を消化です。といっても、植木等の映画は素直に楽しめるので、期待して見ました。1962年の映画で、東宝の制作、監督は古沢憲吾です。

あらすじ
無責任男源等(植木等)は、街角で知り合った明音楽器営業部長の長谷川(ハナ肇)から会社の派閥争いの話を聞き、さっそく取り入って入社。そこで、同僚の丸山英子(団令子)の預金を見つけた彼は、大ぼらを吹いて結婚を申しこみ、これも成功。両派閥を巧みに渡り歩き、未収金取り立て係に廻されると、会社の金を使って取り立てて回り、自分名義で預金してしまう。今度は、アメリカのスミス楽器の御曹子(ジェリー伊藤)が技術提携をしたいとでっち上げ、これに乗せられた派閥の頭の専務(犬塚弘)と常務(人見明)はまんまと乗せられ、リベート合戦を展開。すべては等の懐絵はいっていくが、結局すっかりばれて首になってしまう。それでも負けない等は再び復活してくるのだった…。



東急の5000系がホームに到着、自由が丘駅のシーンでこの映画は始まります。駅前で源等はいろいろやらかしつつ、長谷川に出会い、調子よく長谷川の懇意なマダム静子(草笛光子)のいる店へ。そこでいろいろと話を聞き出し、面白そうだと思うとすぐに行動開始しました。まずは、次期社長を巡って専務派常務派が対立する明音楽器への入社から。等は病気ということで入院している現社長・宮前(由利徹)を訪ね、見舞いの果物籠をもらってくると、それを常務のところに社長就任祝いとして届け、口から出まかせを言いながら様子を探り、翌日、明音楽器を訪ね、うまくはぐらかして自らの入社を認めさせてしまいました。

営業部の丸山英子の預金通帳を確認すると、さっそく英子をデートに誘い、大ボラを吹きながらついに結婚にこぎつけます。そして、英子のルームメイトの石沢厚子(藤山陽子)に、会社の中込晴夫(谷啓)が想いを寄せているのを知り、相談にのると見せかけてそのまま中込家の下宿人になってしまいました。英子はちゃっかりしていて、のせられて結婚したものの、食事も生活費も割り勘。そして、中込家の母・中込うめ(浦辺粂子)は、等たちの提案で、庭を駐車場にしてしまい、うめも働き甲斐を見つけて活き活きとしてくるのでした。

その後、等はサックス吹きのゲーリー(ジェリー伊藤)を、技術提携をしたいアメリカ・スミス楽器の御曹子に仕立て上げ、次期社長を狙う専務・常務両派からそれぞれリベートを取ります。これはばれてしまい、等は会社を解雇されてしまいました。しかし、明音楽器次期社長は結局、専務・常務どちらも選ばれず、北海物産から平均が社長としてやってきて、秘書は源等、ということでこの映画は幕を閉じました。

ニッポン無責任野郎

という訳で、あらすじはだいぶん端折っていますが、まぁこんなもんでしょう。ほかにいろいろとエピソードや小ネタが満載です。どこをとっても笑える映画なので、気軽に見るにはいいと思いました。やることは現実離れしていますが、それを通用させてしまうのが、植木等ならではということでしょう。これに付き合う団令子もなかなか負けてはいません。銀行のただのお茶でデートとか、新婚旅行は、近くの遊園地とか(船橋ヘルスセンター)、考えられないような冷遇ですが、そもそも現実派なので、そこは大きなマイナスポイントにはならなかったようです。

もう一つの無責任映画、日本無責任時代は、ラストで平均が北海物産の社長になるので、ここで源等が秘書になり、2つの話が繋がるのですが、無責任のお話はこれでおしまい。あと無責任の名のついた映画が一つありますが、あちらは花のお江戸の話なので、これとは繋がらないようです。これ以降、植木等の映画としては、日本一シリーズがたくさん作られていきます。いずれにしても、ネタが満載で、コントを見るような雰囲気もあり、楽しめるものだと思います。

この時代の映画のもう一つの愉しみである、かつての風物を見てノスタルジーに浸るという点ですが、やはり一番は東急5000系。私が東京に出た時はすでに東横線からは撤退していて、目蒲線で乗った記憶があります。地方に譲渡されたものは、いくつか乗ったことがあると思うのですが、上田交通とか、松本電鉄とかは記憶に残っています。もう一つは船橋ヘルスセンターなのですが、私が東京に出た時はすでにららぽーとでした。近くに谷津遊園はかろうじて残っていましたが、これもすぐになくなってしまいました。ちょっとした昔語りです。

2018.11.23 BSプレミアムの録画を自宅にて鑑賞
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「山の讃歌 燃ゆる若者たち」 劔岳に立った日のことを思い出しつつ

最近でこそ、仕事やその他の関係上山に足が向かなくなってしまいましたが、実は30代、40代はかなりの時間を山の中で過ごしました。中高年の登山ブームが訪れるちょっと前の時代。今ほど山は華やかでもなく、にぎわってもいなかったと思います。そんな山の情景も楽しめる映画を見てみました。1962年の映画で、松竹の製作。監督は篠田正浩です。

あらすじ
官僚の広岡(山村聡)は三人の息子があったが、長男の省一(山内明)は冬山の単独行で遭難。次男の進吾(田村高廣)はエリートコースを歩み商社に勤め、三男の栄介(早川保)は一浪で受験勉強の最中であった。広岡は出世が遅れ、その原因が妻のたか(山田五十鈴)と恋愛結婚をしたためだと思い、その屈辱感を息子たちには味わわせないようにと、出世第一主義を息子達に押しつけていた。広岡は、進吾に省一の婚約者であった、同期で出世頭の高橋の娘美沙(岩下志麻)を押し付けるが、当人たちはこれに抵抗し話を断っていた。そんなある日、進吾は劒岳ジャンダルムの登攀に挑戦するが、失敗し右足切断という結果になってしまう。一方、栄介は大学に合格後、偶然見つけた省一の日記から、出世主義の中で歪められてゆく自分を、人間らしく復活させたいという思いから山に向かったことを知る。そして両親の激しい反対を押し切り、登山道具を買って山に向かう。そして、絶望の淵にいた進吾も栄介の姿に自分を取り戻し、新宿駅に見送りに向かうのだった。



雪原を行く単独行者の映像から。そして雪崩の映像と捜索隊。捜索に参加した父親と弟たちに捜索中止の悲報が入ります。そしてタイトルバックに雪を纏う劔岳の雄姿。こうして物語は始まりました。

広岡は万年課長で、同期の高橋(清水将夫)とは大きく差をつけられ、高橋からは広岡が妻のたかと恋愛結婚したためだと言われています。高橋は次官の娘と結婚し、今や出世コースを登り詰めているのです。一方妻のたかは突然長男を失い茫然自失の状態が続いていました。そのような中で、出世頭の省一を失った広岡は次男進吾と三男の栄介に山に行くことをきつく禁じますが、すでに登山家となっていた進吾は抵抗します。

広岡は、元々省一の婚約者であった高橋の娘美沙を進吾にあてがうよう高橋に掛け合い了解を得ますが、その話を聞いた美沙は抵抗し、進吾に突然激しく断わりを入れにいき、進吾も親たちの勝手な行動に憤慨します。そんな中栄介が念願の大学に合格、その夜進吾は山岳会のミーティングで親の禁止にも関わらず劔岳ジャンダルムの登攀を決定しました。

広岡家に省一の」遺体が出たという連絡が入り、再び広岡家は悲嘆に包まれます。そして進吾は家族や会社に無断で登山を決行、失敗し右足切断の怪我を負いました。再び悲嘆にくれる広岡は、高橋に進吾と美沙との婚約の話を取り消し、栄介に期待をかけるようになっていきます。栄介は偶然兄の部屋で省一の日記を発見。そこには出世競争や家族の重圧から、人間性を取り返そうと山に向かった省一の心情が書かれていました。そして現れた父にただ一人満足な息子として残ってしまった栄介は出世コースに乗ることを託されますが、栄介は抵抗します。

栄介の恋人の節子(倍賞千恵子)は登山用品店で働いていました。二人で富山の病院に入院している進吾を見舞いに行きましたが、そこには美沙が来ていました。美沙は足を失ってしまった進吾に対し、いつしか恋心を抱いていましたが、足を失って屈折した心情の進吾は追い返してしまいます。それを知った栄介と節子を応援しようと決め、二人を結び付けようと世話を焼き始めます。そして、栄介は雪を纏う山々を見て登山を目指そうという意識が湧き始めました。

栄介は、父から入学祝として祝金をもらうと、登山用品を買い求めます。一方、屈折したままの進吾に、正気に戻って美沙に心を開くよう説得します。美沙も家出までして進吾のもとに向かおうとしますが、親に見つかり止められてしまいます。節子も閉じこもってしまった美沙を説得、栄介は厳しく制止する両親を押し切って、山に向かう決意を固めました。母のたかは、節子に頼んで栄介の山行を止めてもらうように頼みに行きますが、きっぱり断られてしまいます。そして、出発の新宿駅、そこにはやっと自分を取り戻した進吾も現れ、その後美沙も現れて二人は見つめ合うのでした。そして、家に残された広岡とたかは若者たちの行動をみて、人間的な生き方に思いをはせるのでした。

山の讃歌 燃ゆる若者たち

別山乗越の方向からみた、劔岳の雄姿を貼り付けてみました。定番の構図ではありますが、いつ見ても美しい劔岳の様子です。さて、あらすじを長々と書いてしまいましらが、この物語は実に締まっていると思います。非常に典型的な話ですが、このごく普通に展開する、素直な物語を力強く映像化した映画。そんな感想を持ちました。ちょっと照れてしまって恥ずかしくて言えないようなことを、それぞれの役で、堂々と言っている。そんな感じです。

さて、1960年代といえば、日本隊によるマナスル登頂のあと、登山ブームに沸き返る時代だったと聞いています。そして、新しいルート、より難しいルートへの登攀競争で、著名な山岳会はしのぎを削っていた時代です。それだけに遭難者も続出したのですが、しかし、当時の遭難はより厳しい山への挑戦に敗退した遭難がクローズアップされるのに対し、現在は登山も一般化し、多様化した中で、道迷いを中心に中高年の遭難が最も多いという事の様です。時代は変わりました。

そういった訳で、劔岳の映像を中心に、楽しく見てしまいました。私が登ったのは別山尾根からの一般ルートを一度だけという、ごく普通のものですが、それでも印象に残っている山です。そして、この映画の安心できるしっかりと構築されたストーリ-を楽しませていただきました。岩下志麻が凛として美しく素敵でした。この映画に出てくる好日山荘は、いかにも当時の山道具屋という感じ、今や、アウトドアブームの中で、あちこちに店舗のある大チェーン店になっています。やはり、いろいろ感慨深いです。

2019.12.25 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「空飛ぶタイヤ」 記憶の中のリコール隠し事件、会社でも話題でした

三菱自動車リコール隠し事件を扱った、池井戸潤の小説の映画化です。この事件は、同時代に東京で中堅サラリーマン生活をしていたため、身近な事件として興味深く見ていたのですが、この映画を見て久しぶりに当時の状況を思い出した次第です。現在では、コンプライアンス遵守が叫ばれ、事件は減っていることと思いますが、人間のやることですので、再び発生する可能性は大きく、教訓として見ておきたい映画でもあります。2018年の映画で松竹配給、監督は本木克英です。

あらすじ
晴れた日の午後、トラックが起こした事故で歩行中の主婦が死亡。運送会社社長の赤松徳郎(長瀬智也)は、走行中のトラックから突然タイヤが外れたことによる事故だと警察から聞かされる。整備不良を疑われ、マスコミからバッシングを受ける日々のなか、赤松はトラック自体に欠陥があった可能性を追求、メーカーであるホープ自動車販売課長・沢田悠太(ディーン・フジオカ)へ調査を要求する。同じ頃、ホープ銀行本店営業本部・井崎(高橋一生)は、ホープ自動車の経営計画に疑問を抱き、独自調査を開始していた。赤松は自ら事故のあったいくつかの運送会社に足を運び調査を始めるが、大企業が画策する隠ぺいの壁が立ちはだかる…。



中小のトラック会社、赤松運輸の社長赤松徳郎(長瀬智也)のもとに、自社のトラックのタイヤが走行中に突然外れ、歩行者の母子を直撃し、母親が即死したという連絡が届きました。警察からは整備不調を問われ、若手整備士の門田(阿部顕嵐)が疑われますが、彼は真摯に細かいチェックをしていたことを知ると、他の原因はなかったかと探し始め、製造元のホープ自動車の営業課長沢田悠太(ディーン・フジオカ)に面会を求めます。沢田は、赤松の要求に当初応えませんでしたが、同僚の小牧(ムロツヨシ)から社内の品質保証部の一連の異常な行動の情報を得ました。

ホープ自動車の公式な検査結果は赤松運輸の整備不良という結論でしたが、警察の捜査では整備不良の証拠が出ず、そんな中で時間が過ぎていき、赤松運送はバッシングに会い、顧客からの取引も断られ、会社が立ち行かなくなっていきます。ホープ自動車がまともに取り合ってくれないと感じた赤松は、自ら過去の事故を調査し、情報収集を積み重ねていきます。そして、赤松はホープ自動車のリコール隠しの噂をあちこちで聞くようになりました。一方、ホープ自動車に融資しているホープ銀行の井崎(高橋一生)も、上層部の癒着をはねのけ、独自調査を進めていきます。そして、沢田も社内権力闘争を視野に、内部告発を行いました。

ホープ自動車の上層部は、一連の事象を担当者レベルの話として甘く見ていました。そんな中で、赤松運送は資金繰りに詰まり、沢田も冷遇を受けます。赤松は最後の手段として、独自調査結果を警察に送り、同時期に沢田も状況を逆転すべく、リコール隠しの証拠となるPCを警察に提出しました。そして、この証拠をもとに、警察はホープ自動車上層部の関与人物を逮捕。ホープ自動車は経営難に陥り、ホープ銀行主導の改革を受け入れるしかありませんでした。これにより、沢田は一線に復帰するとともに、赤松も会社としての信用を取り戻し、赤松運送は立ち直ります。そして一年後、事故現場で花を手向ける赤松のもとに、同じく供花を持つ沢田が歩み寄ってきました。

空飛ぶタイヤ

あらすじをたどってみれば、ニュースのようなストーリーになりますが、実際のストーリーはいろいろなエピソードを積み重ねた重厚なものになっていると思います。赤松社長とその周辺にしても、それぞれの従業員たち、疑われた整備工、番頭、などなどそれぞれにしっかりした性格を持たせています。そして、それに対峙する形になる警察、また被害者の家族、そして、赤松社長がヒアリングしてまわる、各地の運送会社の責任者たち。きっちりと描き分けられて立派だと思いました。最後の方で、決め手となっている北陸の準大手の運送会社の整備責任者など、描き方がうまいと思います。それぞれの業務にあたる人、立場にいる人の行動様式が、さらに、その人の歴史をも表して、良く研究され、練られている感じがしました。

さて、企業ぐるみの組織犯罪ということですが、大企業であればあるほど、責任の所在が不明確で、ストレートに勧善懲悪を描くのが難しいと思います。勿論現実の世界でも同じだと思います。結局は、組織風土、社風ということでしょうから、会社自体がおとりつぶしにならないと、どうしようもなくなります。個人や中小企業であれば、誰だということが明確になりますが、大企業の場合は会社そのもので、社会的制裁という形で会社が葬り去られ、救済合併みたいな事例が時々ありますが、それしかないのでしょう。また、新入社員からそういう社風で育ってしまうと、なかなか習慣が抜けないと思います。

そういったところで、いろいろと考えるところのある映画だったと思います。原作を読みたいなと思っていたところなのですが、映画を先に見ることになってしまいました。俳優陣は誰がということが無いですが、男の俳優さんたちが目立つ映画ですね。主役級のたくさんの俳優さんたちの中で、笹野高史岸部一徳さんも光っています。女優では、深田恭子さんも久しぶりに見ましたが、小池栄子さんがいい役でした。いずれにしても、なかなか気合の入った映画だと思いました。

2018.11.25 JAL759 にて機内鑑賞

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「徳川女刑罰史」 今やカルトとなった東映の異常性愛路線で

なにかと、日本のB級映画史の中で出てくる映画です。怖いもの見たさというか、エロいもの見たさというか、そんな感じで見てみました。日活ロマンポルノと同時代、あるいは少し先行して東映ポルノと言われたエログロ路線の中で語られる作品。東映のふんだんにある、衣装や装置を使用しての、エログロ映画ということです。今やカルトとなっております。1968年の映画で、監督は石井輝男です。

あらすじ
時は徳川時代の女性が絡む事件の刑罰3話。人間的な与力・吉岡頼母と虐待を好む与力・南原一之進を中心に、徳川時代の想像を絶する苛酷な刑罰を再現する、オムニバス映画。



第一話
美しいと町で評判のみつ(橘ますみ)の兄新三(吉田輝雄)が仕事中に重傷を負ってしまいます。みつを妾にと狙っていた呉服屋の巳之吉(上田吉二郎)は、ここぞと治療代を立替え、多額の治療代に途方に暮れる兄妹は、悲しみの中でお互いを求めあい、畜生道に落ちてしまいました。そして、みつは新三の目の前で巳之助に犯され、新三はこれを苦にして自殺をはかりますが死にきれず、みつが見かねてとどめをさしました。みつは、兄の殺害容疑および近親相姦の罪で捕われ、南原一之進(渡辺文雄)の拷問にも口を割らず、容疑を不信に思った与力吉岡頼母(吉田輝雄・二役)に、真実は思えないがと優しく問われると、新三と吉岡の顔が重なったみつは、一部始終を自白。水礫の刑に処せられるのでした。

第二話
珠光院の玲宝(賀川雪絵)は、お付きの尼僧の燐徳(白石奈緒美)と夜な夜なレスビアンの関係にありました。ある日玲宝は、尼僧妙心(尾花ミキ)が本寺の僧春海(林真一郎)と密会しているのを発見し、玲宝は、春海を滝にうたせ、妙心には拷問を加えます。玲宝は春海にすっかり夢中になり、妙心を責めながら、春海に自分に靡くよう詰め寄りますが、春海は頑として受け入れず、玲宝に首をかき落されてしまいました。そして、玲宝は春海の首を愛撫しながら自害し、妙心と春海の拷問に関わった尼僧は、自害した玲宝も含め、磔刑に処せられるのでした。

第三話
江戸一番の彫師である彫丁(小池朝雄)の手による、芸者君蝶(沢たまき)の背に彫られた地獄絵図が、大いに評判になっていました。しかし、これを見た南原は真の苦悶が描けていないと貶し、教えを乞う彫丁を長崎の拷問現場に連れていきます。彫丁は一世一代の彫りものの為に、土台になる美しい肌のお花(三笠礼子)を拉致し、南原らの拷問を前に、お花の肌に地獄絵図を彫っていきました。しかし、地獄の邏卒の顔が描けなかった彫丁は、南原に教えを請うと見せて、これを刺し、断末魔の表情をお花の体に写し取ります。その頃、吉岡らが牢に踏み込んできましたが、牢は炎に包まれていきました。

徳川女刑罰史

タイトルバックに、ドキュメンタリータッチでショッキングな処刑場面がいくつか。どれも、スプラッター的で激しいものですが、遠景でもあり、あまり現実感がありませんでした。しかし、食人族の串刺し画像のようなインパクトもあり、こけおどし的には十分でしょう。そして、本編に入れば、タイトルと比較すればぐっと現実的になり、女性が絡む犯罪と処刑が続きます。ストーリー的にそれほど凝ったものではなく、見せ場は拷問であったり、裸であったりと、いわば猟奇的な映像。しかし、こういったお話は、映像インパクトと相まってストーリー性も趣向を掻き立てるのには重要な役割を果たすということで、なかなかいい線を行っているのではないでしょうか。

お目当ての露出度は、第一話はあまりありません。第二話はそこそこ、第三話が一番多いかな?女湯や白人女の拷問シーンが多いので。感興面では、第一話は、橘ますみの拷問シーンが色っぽいです。第二話は拷問が一番猟奇的。第三話は露出度が多いが、インパクトは別のところにあったりします。中では、橘ますみが露出は無くても一番輝いています。その次は、賀川雪絵の壊れっぷりが面白い。j女優陣で目立つのはこの二人でしょうか。

そんな女優陣に対して、今見てみると、男優陣の方も、一癖も二癖もあってなかなか面白いと思いました。やはり、小池朝雄渡辺文雄の怪演が目を見張ります。なかなか脂ぎったというか、濃い演技でした。あとは、第一話に出てくる、巳之助とその取り巻きは、嫌な奴を如実に演じているので、これまた臭い芝居が面白い、という感じです。こう見てみると、この映画って、いろいろなところに底力があって、見どころが多いのではないかと思います。映画史に咲いたあだ花のような扱いなのですが、見てみて妙に感心してしまったのでした。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品

2019,12,07 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「彼女がその名を知らない鳥たち」 蒼井優の熱演を楽しんで…

ちょっと前に、iTuneでレンタルしましたが、見ていなかったのに気が付いたのは期限切れギリギリでした。よくあることなのですが、とりあえずもったいないので、時間のある時に見てみようということで。2017年の映画で、蒼井優が、キネ旬ベスト・テン主演女優賞を受賞しました。監督は白石和彌です。

あらすじ
十和子は陣治と暮らしていたが、付き合い始める前に別れた黒崎が忘れられなかった。下品で金もない陣治を毛嫌いしながら、自分は働かず彼の稼ぎで自堕落な日々。ある日、デパートに勤務する水島と関係を持った十和子は、妻子がある彼との関係に溺れていく。そんな時、家に突如やってきた警察から、黒崎が行方不明になったことを知らされ、失踪と執拗に十和子に執着する陣治の関与を疑い始めた十和子は、水島にまで危険が及ぶのではと危ぶみ始める…。



マンションの一室で、下品で汚らしい陣治(阿部サダヲ)の稼ぎで、十和子(蒼井優)は仕事もせず暮らしていました。陣治は十和子に徹底的に尽くしていましたが、十和子の態度は冷たいものでした。十和子は時計の修理の件で、デパートに激しくクレームを入れ、また、陣治から電話には冷たくあしらいます。十和子は今でもかつての恋人の黒崎(竹野内豊)の事が忘れられないのです。ある日、クレームを入れたデパートの主任である水島(松坂桃李)が、十和子にお詫びに来ます。そして、水島との関係は進展し、水島が選んだという時計をプレゼントされると、十和子は、水島には妻子がいる事を知りながら、男女の関係を深めていくのでした。

翌日、十和子の帰りが遅い事を心配した陣治からの連絡で、十和子の姉の美鈴(赤澤ムック)が訪ねてきます。美鈴は、十和子が黒崎に会っているのではと疑いますが、陣治は真っ向から否定します。そして、だんだん十和子は、時々垣間見る陣治の異常な行動に、恐怖を感じはじめ、黒崎殺害をも疑うようになりました。そして、いつしか陣治は水島との関係についても干渉してくるようになっていました。ある日、十和子は、水島から妻への嫌がらせや書類の紛失の連絡を受け、陣治を疑い、しばらく会わない方が良いと提案されます。水島に会いたい気持ちが抑えられない十和子は、水島の働くデパートへ出かけますが、そこで見たのは、別の女性と楽しくデートをしている水島でした。そして、水島から送られた時計は、安物だった事を発見してしまいました。

陣治が黒崎を殺害した事を調べる為に、十和子は黒崎の妻、国枝カヨ(村川絵梨)を訪れます。そこにカヨの叔父、国枝(中嶋しゅう)が現れ、「お前の事は忘れない」と近付く国枝から、十和子は逃げ出します。十和子はかつて、黒崎の為に、国枝と強制的に夜の相手をさせられた過去がありました。黒崎は、その後十和子を裏切り、カヨと結婚。その上、十和子に暴力を振るい一方的に別れを告げたのでした。十和子は帰り道に陣治に遭遇、陣治が黒崎を殺したと認めます。次の日、十和子は包丁を購入し、水島と会う約束を取り付けます。そのデートの時、十和子は水島の態度に逆上し、水島を包丁で刺してしまいます。そこに現れた陣治が二人に割って入ると、水島に「刺したのは俺だと警察に伝えろ」と叫び、それを聞いた十和子は、黒崎を殺したのは自分だったと思い出すのでした…。

彼女がその名を知らない鳥たち

物語の展開は、一応ここまで、そしてその後、黒崎を殺したときの事情説明と、それを思い出してしまった十和子と、陣治の会話と行動と続きますが、そのあたりは、今、映画を思い返してみても、自分的にはまぁ書くほどでもないかなということで…。たぶんこの物語的には、ラストの部分は一つの感動というか、考えさせられるポイントではないかと思いますが、私的には、残念ながら、ああそうなの。というぐらいにしか思わなかったので、ここで止めておきましょう。

この映画、前半はクレーマーのような十和子を中心とした、ちょっと変わった痛い女性の物語なのかなと思っていたのですが、だんだんとミステリー性を帯びてきます。そして、徐々に暴かれていく仮面をかぶった登場人物の過去の行状といった風情です。そのあたりのじわじわした盛り上げ方と、陣治のほのかな異常性を畳みかけていく描き方はなかなか面白かったです。しかし、映画ですから虚構とは言え、この話に出てくる人々の精神世界まで虚構に思えてきて、さすがに心に入ってきませんでした。まぁ、平たく言うと感情移入できない人々ということでしょうが、それ以上にものの考え方が虚構のお遊び感がぬぐえないなと思いました。

加えて、ミステリーの解法で、記憶喪失でしたというのはあまり好きではありません。都合が良すぎで…。今回は、白石監督の作品、蒼井優主演。それもキネ旬主演女優賞という肩書付きでずいぶん期待してみましたが、それほどでもという感じが残りました。たぶん、原作の問題でしょう。きっと小説で読んでも同じだったと思います。ただ、蒼井優さんの演技は安定していて、非常に良かったです。さすがにこういう役柄は板についていますね。そこはいつもの蒼井優で、見て良かったと思いました。

2018.12.09 HCMC自宅にて、iTune レンタルをパソコンで鑑賞

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「団地・七つの大罪」 東宝名優による、世相を映す艶笑コメディ

気軽なコメディではないか?ということで鑑賞した、「団地・七つの大罪」は、1964年の映画で東宝配給の作品です。7つの短編のオムニパスとなっていますが、最後の短編で一堂に会するスタイルでした。さて、この時代の新しい文化としての団地ですが、どのようなものだったのでしょうか。監督は、千葉泰樹筧正典です。

あらすじ
今や文明の象徴となった団地住まい。新しく開発された黄金ヶ丘団地に集った夫婦と家族たちの、あこがれの団地住まいに起こるハプニングをつづった七つの物語。東宝名優総出演。



第一話:虚栄の罪
中村太郎・花子夫婦(小林桂樹司葉子)は、団地に当選し、意気揚々と団地生活を始めました。いままで6畳一間のアパートではいろいろと障害のあった夜の生活も、ここなら大丈夫と大はしゃぎで、ダブルベッドを買うことになりましたが、となりの家に先を越され、これを知った花子は、マネをしたと言われたくないと、夫が注文したベッドを返品させてしまいます。

第二話:覗きの罪
花井正男(高島忠夫)は双眼鏡で各家庭を覗き見するのを楽しみにしていました。ところが、妻のみどり(団令子)は、覗くばかりで実行しない夫に大不満の様子。ニンニク料理攻勢をかけています。そんなある日正男は同じ団地に住む友人の部屋から覗きをしていると、なんと、みどりが知人の高木(船戸順)とラブ・シーンの真最中。正男はショックを受け、見るものでなくやるものだと思いなおしたのでした。

第三話:己が罪
松田(益田喜頓)は妻の信江(千石規子)が大天地教のお告げにより、上京を伸ばしている間に、同じ団地のゆかり(浜美枝)と契約し、連日情事にふけってしました。ところが神様のお告げで信江が幼子を連れて突然上京、ゆかりと鉢合わせしてしまいます。二人の女は静かに目線をお互いに飛ばしますが、ゆかりは身を引き、信江は神様のお告げで幼子を残して去ってしまいました。残された松田は、幼子をかかえて右往左往することとなりました。

第四話:やりくりの罪
碁好きな三谷一郎(加東大介)の大切な碁盤が、ある日無くなってしまいます。合理的生活を目標にする妻の洋子(東郷晴子)にバザーに出されてしまったのでした。そして息子の積み木までなくなっていました。二つの品物は同じ棟の友人佐藤(佐田豊)の家におさまっていて、訪ねて行ってこれを発見した息子は佐藤の息子と大喧嘩になります。やりすぎを妻にクレームする一郎ですが、結局洋子に、あなたのお給料じゃやっていけないと一蹴されてしまいます。

第五話:過淫の罪
川島弘二(児玉清)と由美子(北あけみ)夫婦は1DKに住んでいますが、周囲の部屋の水洗トイレの音が大きく、不満を抱えています。子供ができれば2DKに移れる為、由美子は夫に毎日プレッシャーをかけていますが、弘二は疲れ果て逃げ回っていました。そして、疲れ果てた弘二は遂にめまいで倒れダウンしてしまいました。

第六話:嫉妬の罪
木村宗平(三橋達也)と青野すみ子(草笛光子)が乗ったエレベーターが故障でストップし、二人は閉じ込められてしまいました。非常電話から管理事務所経由で修理を手配しましたが、事故を知った宗平の妻和子(八千草薫)も、すみ子の夫青野(藤木悠)も、二人が密室で何をしているかと心配で仕方がない様子です。一方、エレベーターの中の二人は、長い滞在に尿意をもよおし歯をくいしばっていました…。

第七話:文明の罪
団地婦人部会の提唱で、セルフの洗濯機が設置されますが、実際に洗濯をするのは夫たちの役目となってしまいます。洗濯場で集合する夫たちは、わが身の不幸に団結し、王政復古萬歳!と鬨の声を上げるのでした。

団地・七つの大罪

長々と書きましたが、普通に面白かったです。艶笑コメディとでもいいましょうか、ネタについてはお色気ネタがほとんどで、それもたわいもないものから、結構深刻なものまでありました。その後、映画で団地といえば団地妻という時代が来てしまいますが、ここでは新しい住居形態の団地での、いろいろな夫婦で構成されたオムニパス構成です。それにこの書き方って、当時のコメディ的な短編小説を読んでいる感じもあってちょっと懐かしい感じです。

7つのうち、最後の一つは総出演のカーテンコールとして、印象に残ったのは、第1話、第2話、第6話あたりでしょうか。第1話は導入ということで、この映画全体を暗示するしっかしとした作り、第2話は深刻な割に軽い結末で、あとの余韻を残す話。第6話はエレベーターの中の演技が秀逸で、笑ってしまいます。どれも長さが手ごろで、次々話が出てきますので、飽きませんでした。

そして、当時の名優がたくさん出演しているのも見ものでした。気に入ったのは、小悪魔的な役の、団令子浜美枝、怖い、千石規子、美しい八千草薫と色っぽい草笛光子の対比など、男性では、小林桂樹三橋達也が怪演で楽しく、益田喜頓の狼狽ぶりも板についた感じで楽しかったと思います。当時の情景がしのばれて、肩の凝らない楽しい映画でした。

2018.12.09 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」 いいひと時を過ごす

この日搭乗した、JL759便は、台風の接近で目的地であるホーチミン市上空で少し待機した後、バンコクに一旦着陸し戻ってくることになりました。これにかかる所要時間は4時間ほど。これまで3本映画を見終わっていたのですが、さらにもう一本見ることにしました。ちなみに5本目も流しはしましたが、流石に疲れて真剣に見ることはありませんでした。2018年、KADOKAWA配給によるものです。

あらすじ
バツイチを経て結婚3年目になるサラリーマンのじゅん(安田顕)が、ある日帰宅すると、妻のちえ(榮倉奈々)が血を流して倒れていた。じゅんはあわてて介抱するが、ちえは死んだふりをしていただけだった。そして、ちえは理由は言わずただ笑うだけであった。それ以来、毎日いろいろなシチュエーションで死んだふりをする妻に、じゅんは妻の意図が解らず、徐々に不安になり、同僚のの佐野(大谷亮平)に相談するが…。



じゅんとちえはもうすぐ結婚3年目になる夫婦で、今日までいたって普通に暮らしていました。実は2人はじゅんの離婚の経験から、3年目に今後夫婦を続けるかどうか見直すことにしていたのですが、今その時期が近付きつつあったのです。そんなある日、じゅんが家に帰ると、ちえが口から血を流してリビングに倒れていたのです。驚いてじゅんは駆け寄りますが、実はそれは死んだふりだったのでした。そして、次の日も、その次の日も、ちえはいろいろと趣向を変えて死んだふりを続けるのです。最初は面白がっていたじゅんも、意味不明の行動に悩まされ、妻の言いたいことが解らず、何か不満があるのか訝しむようになりました。

じゅんは、会社の同僚の佐野に相談すると、今夜、佐野夫妻と4人で食事を誘われます。ちえはそこで佐野の妻の由美子(野々すみ花)と友達になり、時々遊ぶようになりましたが、ある日由美子は、子供ができないと悩みをうちあけました。ちえの方の死んだふりは相変わらず続き、「月がきれいですね」とか、意味不明の言葉を言ったりするようになります。じゅんはちえの気を紛らわせようと、クリーニング屋のパートの仕事を紹介し、ちえはパートを始めます。そして、そんな時、静岡で一人で寿司屋を営む、ちえの父親(蛍雪次郎)が倒れたという連絡が入りました。

二人は病院へ駆けつけ、じゅんは父親と二人の時に、父親からちえの子供の頃の話を聞きます。それは、母親が亡くなって、寂しさに沈んでいるある夜、父が家に帰るとちえがいず、家中を捜し回るとタンスの上に隠れていたちえが飛び出してきました。ちえは「お父さん、私は探せば必ず見つかるよ!」といいました。それから毎晩、ちえはかくれんぼをするようになり、父は、それにつき合ううちに寂しさを忘れるようになったとことです。私はずっとここにいると言いたかったのでしょうか。

ある日、じゅんたちは佐野夫妻を招いてホームパーティーをします。和気あいあいに楽しんでいましたが、突然由美子が取り乱して佐野は食って掛かかってしまい、その場は収まりましたが、結局は、子供が出来ないことが理由の一つで、佐野夫妻は離婚することになります。ちえの死んだふりは芝居の形で続いていました。キーワードは、「月がきれいですね」です。そしてじゅんは、ちえの本から偶然見つけた「月がきれいですね」という言葉が「愛しています」の意味だと知り、ちえの謎の行動の意味をやっと理解したのです。じゅんは、ちえを誘って二人の思い出の場所に行き、お互いの愛を確認しあうのでした。 

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

いいですねぇ。こういう夫婦愛のほのぼのするようなお話は好きです。単純に乗せられてしまいます。榮倉奈々も可愛いし、安田顕もいい夫を演じています。すごく傑作と思う訳ではないのですが、見て良かったひと時という感じでした。内容はかなり女性目線が入っているような気がします。もともとYAHOO知恵袋から出た話との事、そういう意味ではある程度世相を反映していると言えなくもないのでしょうか。

正直、この「月がきれいですね」と「死んでもいいわ」については、この映画を見るまで知りませんでした。夏目漱石訳というのは俗説ということで、事実かどうかは不明らしいのですが、なるほどと思わせるものでした。うまく使っていると思います。通じなければ何にもならないのですが、言い続けて、聞き続けてやっと対応できたということでしょう。一笑に付してしまうと、関係が壊れそうな言葉ですが、このあたりがじゅんの性格だったということですね。

まぁ、そこだけで、あとは極めて単純。ちょっと、いろいろなことをオブラートに包んだ感じで、いろいろなエピソードを見せていく。非常に常識的な内容で、それぞれのエピソードに安心感があります。そういう意味で、ただただほんわかとした、けれども飽きない時間を過ごさせていきました。飛行機がバンコクに行ってしまって、大変疲れましたが、おかげでこの映画が見られたと思うと、まぁ良かったのではないかと思いました。

2018.11.25 JAL750 成田→HCMC 機内にて

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「大阪の宿」 サラリーマン生活を続けた身として複雑な感慨を覚える

古い日本の映画を見ていますが、今回は「大阪の宿」。1954年の映画で、五所平之助監督、新東宝制作の映画になります。当時のサラリーマンを主人公に据えた大阪の物語ですが、どんなお話でしょう。これは、全く予備知識なしで鑑賞です。

あらすじ
重役を殴ったことにより、大阪に左遷された三田は、旅館酔月荘を宿とし新生活をスタートする。いわばエリート社員の三田は、周囲の生活苦にあえぐ人々と一線を画した生活をしているが、徐々になじんでいく。そんな中で街角で見染めた気になる女性が、親友の友人の娘と判明、ひそかに想いを寄せるが、三田の会社の取り立てにより、彼女の父親が自殺してしまう…。



保険会社に勤める三田(佐野周二)は、重役を殴った為左遷されて大阪に転勤してきました。大阪では親友の田原(細川俊夫)と歓談しながら下宿探し。偶然探し当てた酔月荘は、周囲の旅館が次々と連れ込み宿に鞍替えする中で、亡き夫の信念を曲げず守っている女将が経営しており、おりか(水戸光子)、おつぎ(川崎弘子)、お米(左幸子)という三人の女中が働いていました。三田は大阪の店に出勤しますが、重役を殴った件でいろいろと嫌味を言われるので、少々居づらい感じで、田原との懇談や芸者うわばみ(乙羽信子)とのやり取りなどで気を紛らわせています。しかし、三田自身も大阪の下町の生活になじんでいるわけではなく、孤高の暮らしをしているようでした。

三田の周囲では、それほど裕福でない人たちの暮らしから発生する、いろいろな事件が起きます。親の病気の為、金が必要になり、酔月荘の客に体を売ってしまった洋裁屋の娘。甲斐性のない亭主を持つ女中のおりかは同宿の人の金を盗んだことがばれ、酔月荘を追われ、同じく女中のおつぎは忙しく使われて子供にも会いに行けず、ついに女将に反旗を翻す。お米はしきりに独身の三田を誘惑する。などなど。そんな中で、芸者のうわばみは、三田にすっかり惚れてしまい、時々酒を抱えて酔月荘にやってくるようになりました。

三田は実は街角でかねてから心惹かれている女性がいました。彼女は、井元貴美子(恵ミチ子)といって、田原の先輩で大洋々行を経営する井元(北沢彪)の娘ということがわかりましたが、その後、井本は三田の上司に借金を取り立てられて自殺。貴美子の消息も分からなくなってしまいます。三田は上司に酒席に誘われますが、席上でも厳しい顔を崩さす、そこに登場したうわばみも同調して、宴席で支店長以下を糾弾してしまいます。これがもとで三田は東京に追い出されることになりました。酔月荘も経営難に勝てず、連れ込み宿に転向、おつぎも追い出されました。そして、三田の送別会には、おつぎ、おりか、うわばみたちが集まり、三田は感慨深く大阪を去るのでした。

大阪の宿

情緒のあるドラマでした。東京から来たエリート社員が、大阪の下宿で始める新生活。その中での出会いと別れというストーリーです。原作の水上瀧太郎は、戦前の小説家ですが、三田文学を主宰しながら、本業では明治生命の役員に上り詰めた人物。この物語は大阪に赴任した時代の体験をもとに書かれたものでした。いろいろな苦労を背負った人々と交流する東京のエリート社員という構図ですが、現在でも通ずる普遍的な課題でもあります。

当時のこの格差感は、一億総中流と言われた時代を経た現在とはだいぶニュアンスが違うと思いますが、いろいろな意味で根強く存在していると思います。東南アジアに赴任している身としては、やはり同じようなことを考えさせられます。むしろこの映画の感覚に、より近いかもしれません。三田のいわば上から目線の考え方。普段は態度に出す訳ではありませんが、生活は周囲の人々と一線を画しており、また、周囲から見れば別格の存在の為、困った時の相談相手になってしまうという感じでした。

乙羽信子が素晴らしいと思いました。三田の「君と僕では住む世界が違う」という、極めつけの上から目線のセリフに対し、「私は同じだと思っていた」と返す場面や、井元を自殺に追い込んだ支店長の前で啖呵を切る場面など、なかなか雰囲気が出て、爽快でもあります。この映画、基本的に三田は味わいの乏しい性格なので、乙羽信子が主人公サイドで一番カラーを出していると思います。そして、最後の送別会、いかにも東京から転勤してきたサラリーマンが帰っていくという雰囲気が大変よく出ていて、幾度も経験してきた身としても、妙に感慨深いものがあったのでした。

2018.11.18 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「お琴と佐助」 抑制された様式美で描く春琴抄

これも国内線の移動のお供に、iPadに入れて持っていった動画です。選択した理由は特にありません。たまたまあったというだけでした。これは、谷崎潤一郎の「春琴抄」の物語。この小説自体は読んだことがあると思うのですが、谷崎文学の映画化であれば外れは無いであろうというのも期待です。1961年大映制作。衣笠貞之助監督によるものです。

あらすじ
薬問屋の娘お琴は九歳の時に失明し、それ以降丁稚の佐助が遊び相手として、生活のサポートをしていた。お琴は勝気な性格で気丈にふるまい、一方で習い事の琴の腕前も、大阪中に知れ渡るものとなっていた。お琴は子を身籠るが父親を明かさず里子に出し、師匠亡き後は、自分が師匠として独立する。お琴を見染めた金持ちの息子利太郎は、お琴に接近するために入門するが、袖にされ顔を気付つけられてしまう。ある日何者かが忍び込み、お琴の顔に熱湯をかけると、火傷をした顔を佐助に見せることを拒み、佐助は自ら自分の目をつぶし、お琴と同じ世界に生きることと決断。お琴は佐助の愛の深さを知るのだった。



基本、春琴抄の物語に忠実なので、ここは簡単にいきたいと思います。

大阪の薬問屋に生れたお琴(山本富士子)は、九歳の時に失明しました。そして琴の道を志し、今や同門でも他の追随を許さないほどの腕前になっています。そして、彼女のサポートをしているのは丁稚の佐助(本郷功次郎)で、忠実に師匠のもとまでお琴の手を引いて通わせていました。佐助も、師匠のところでお琴を待つ間にすっかり曲を覚え、三味線を入手し、夜になり人々が寝静まった頃、一人で稽古を始めるようになっていました。家人は使用人の佐助が三味線を練習することを快く思いませんでしたが、佐助の熱意や、気位の高いお琴の遊び相手として認められ、お琴から教わることになりますが、その稽古は厳しいものでした。

ある日お琴の妊娠が発覚、この子の親をお琴は一切口にせず、生れた子は他所に里子に出されます。そして、師匠が無き人となり、お琴は師匠として独立しましたが、その稽古の厳しいことから弟子も少なく、暴力的なことに対しクレームを受けるありさまでした。そんな中で、お琴の美貌が目当てで弟子になっていた名家の息子利太郎(川崎敬三)が、お琴を梅見に誘って口説こうとしますが、お琴は袖にしたあげく、顔に怪我をさせてしまいます。そして、しばらくして、何者かがお琴の部屋に忍び込み、お琴の顔に熱湯を浴びせ火傷を負わせてしまいました。

その後。火傷は回復していきましたが、お琴は佐助には変わった顔をかくして見せようとせず、繃帯をとらねばならない日になって、お琴は拒みましたが、お琴のことを思う佐助は、縫針で自らの眼をつぶし、お琴は佐助の深い愛情を知り、初めて二人は同じ世界に住み、二人で生きていくことを誓うのでした。

お琴と佐助

比較的、原作に忠実に作られた映画だと思います。また、衣笠貞之助の作品で、「地獄門」のような様式美も見られたと思います。従って、抑制された日本情緒の中で、美しく撮られた映画だなと思いました。ラストシーンとかもいかにも日本的な映像で、古典芸能を見ているような雰囲気もありました。

さて、とはいっては見ても、谷崎潤一郎の文学らしい耽美的な表現かというと、どんなんでしょう。受け取りようなので、大変難しいところですが、ちょっと毒気を抜かれたような気がしないでもない。といった気もします。淡々と描くところが、かえってその異常性を表現するという見方もあるかもしれませんが、パターンに嵌り過ぎてちょっと物足りなかったような感じもしました。

さて、春琴抄の物語、お琴は歴代大女優が演じてきました。田中絹代、京マチ子、山本富士子、山口百恵と三浦友和のコンビなど。他は見たことが無いので何とも言えないのですが、どんなバリエーションがあるのかなというのも興味が湧くところです。機会があれば是非みてみたいです。

2018.11.14 ハノイ→HCMC機内でiPadで鑑賞

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「団鬼六 生贄姉妹」 久々に団鬼六もののロマンポルノを鑑賞

随分長い間、日活の団鬼六ものを見ていないなぁと思い、数年ぶりの鑑賞です。古めの作品の方が情緒があるかもと思いつつも、今回はかなり末期の生贄姉妹を選びました。1987年制作、西村昭五郎監督になるものです。ヒロインは小川美那子になります。すでにAVの時代になっている最後期にあっても、団鬼六ものは人気だったようです。

あらすじ
老舗旅館の主人亡き後、使用人の三郎と直江は、盲目の娘雪路を幽閉し、旅館を我が物にしようとする。彼らはヤクザの岡田社長と結託し、旅館に帰ってきた長女雅子と雪路姉妹を商品化するべく徹底的に調教。三郎は、旅館の権利書を岡田に売却し、直江と悠々自適の生活をすることを計画するが…。



老舗の高級旅館の庭園を前に琴を弾く雪路(松本美幸)は盲目のようです。そして、その主人の臨終の席。主人は使用人の三郎(下元史朗)に旅館のすべてを任せて世を去ってしまいます。数日後、雪路の部屋ですべてを任されたからと突然雪路を襲う三郎ですが、雪路が大きな声を出したので女中の直江(水木薫)が来てしまいます。逃げ出す雪路。残された三郎と直江は、実はこの旅館の全財産を狙っているようでした。夜になると、直江は風呂が壊れたからと別の部屋に雪路を誘導します。しかし、そこは地下の調教部屋で、雪路は檻の中に閉じ込められてしまいました。

旅館の客として宴会場で興じる岡田社長(港雄一)以下の面々は、堅気ではないようです。そこに帰ってきた雪路の姉の雅子(小川美那子)は、旅館の変わりように不審をいだき直江を問い詰めますが、つれない返事。岡田社長は三郎の案内で雪路を犯し、そのあと、雅子は直江のあとをつけて地下室へ。そこでは雪路が縛られ、宴会場の面々が取り巻いていました。雅子は妹の身代わりにということで裸になりますが、結局二人とも犯されてしまいます。そして、監禁の日々が始まりました。ある日雅子は宴会場に連れ出されて浣腸されますが、その後雅子は、宴会も終わって抜け駆けで調教部屋に降りてきた、太鼓持ちの下山(橘家二三蔵)を陥れ脱走を企てます。しかし、これはすぐに捕まってしまい、さらなる調教の日々が始まりました。岡田社長たちは、完全に調教して二人を売り飛ばそうという算段です。

すべての準備が整い、権利書と金の受け渡しが三郎と岡田社長の間で取り交わされます。しかし、三郎が出ていったあとに現れた直江は、実は岡田社長と結託して全部2人のものにしようと話をつけていたようです。それを知らず最後の別れにと、雅子・雪路を犯しに降りてきた三郎は、行為の最中に岡田の部下に刺されてしまいます。すべてを手に入れ、有頂天で逃走する岡田や直江とその部下たち、しかしそこには警察の非常線が張られていました。三郎が虫の息で警察に通報したようです。警察の検分でトラックの荷台の梱包が開かれると、そこにはすっかり調教され、檻の中でお互いを求めあう雅子と雪路がいました。

団鬼六 生贄姉妹

それほど、普通の演技をする場面は多くは無いのですが、冒頭からちょっと演技がたどたどしい感じ。まぁ、この時期仕方がないかなと思いつつ見ていましたら、だんだん慣れてきました。後半の調教は、ある意味パターンですが、結構既視感ありです。それほど見ている訳ではないですが、思い出すのは「花と蛇 究極縄調教」かな?あれも調教部屋にシーソーみたいなのがありました。構造は違いますが…。最後にすっかり調教されてしまうのも、お決まりのパターンで。まぁ、そういう意味では安定感はあります。

出演者の中で、現時点でも活躍中なのは、下元史朗と水木薫ですかね。小川美那子はむしろ文才ありで、文芸賞をとったりしてますので、俳優業だけでなくいろいろな方面で活躍されたようです。あとは、港雄一が怪演というか、頑張っております。橘家二三蔵も個性的な役で太鼓持ちぶりが面白い。その他クレジットされている出演者は、梵天金剛 天津良 門脇三郎ですが、どの人か良く解りません。松本美幸は新人という事ですが、他に出演作があるのでしょうか。

プレイで印象的なのは、排泄のシーンですか。二色の水が流れております。妙に感心しました。で、結局一番色っぽいのは、最後の警察が開封してからの2人のキスですかね。SM路線では、見慣れたパターンではありますが…。また気が向いたらこの路線も見てみたいと思いますが、団鬼六ものはこの時期になっても、昔の名残を感じますが、やはり少し前の時代の作品の方が、優雅でいいかなとも思いました。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品

2018.12.2 HCMC自宅にて Amazon Prime Video からのパソコン鑑賞

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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