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「カメラを止めるな!」 今年の話題作。大変楽しめたひと時でした。

今年の最大の話題作ではないでしょうか。もちろんカンヌを勝ち得た「万引き家族」もありましたが、全く商業的な製作とはかけ離れたところからスタートした映画が、あれよあれよと広まって爆発的ヒット。世界各国のいろいろ映画祭での受賞。社会現象とまでなってしまいました。そんな映画ですから、機会あれば必見という感じで、機内鑑賞です。2017年製作です。

あらすじ
山奥の廃墟に、ゾンビ映画撮影のため集まったクルー。監督は本物の恐怖を求めてなかなかOKを出さないうちに、ついに、本物のゾンビが現れ撮影隊に襲いかかる。そして映画はエンディングを迎えるが、実はこの映画は、ワンシーン・ワンカットでゾンビ映画を撮るという企画のもとに製作されたものだった…。



山奥の廃墟の施設で、自主映画クルーがゾンビ映画を撮影していました。監督は中々OKを出さず、俳優をダメ出し切れる始末。ところが休憩中に突如クルーがゾンビ化してしまい、残った主役の男優と女優たちは逃げ惑いますが、監督は意に介せず撮影を続行。最後はゾンビともみあいになり、女優はすべてのクルーを斃し、血糊で描かれた五芒星の真ん中に立ち尽くします。そして、カメラが上空から女優を映し出すところで、この映画「ONE CUT OF THE DEAD」は幕を閉じました。

さて、撮影の1ヶ月前に遡ります。「速い・安い・質はそこそこ」をモットーに再現ドラマなどの監督をしている日暮(濱津隆之)はプロデューサーの古沢(大沢真一郎)に、ワンカットのゾンビ映画を30分間生放送という企画を持ち込まれました。無謀だと断った日暮ですが、娘の真央(真魚)が若手俳優の神谷(長屋和彰)のファンで、この企画の主演男優に決まっていたこともあり、引き受けてしまいます。数日後、台本読み合わせを開始しましたが、癖のあるメンバーとハプニング続出で、喧騒の中スムーズにいかない始末。不安を抱えたままのスタートとなりました。

さて、生本番当日、もともと主演男優と女優の我儘などで、頭を悩ませていた日暮ですが、当日交通事故で一部の俳優が到着せず、自分と、元女優で家で台本を読んでいた妻の晴美(しゅはまはるみ)が急遽出演。しかし、俳優の腹痛や泥酔とトラブル続出、日暮やスタッフは、なんとかアドリブで繋ぎながら撮影を続けていきます。さすがの古沢たちも撮影の中断を考えましたが、元々映画監督を志望していた真央がまとめ上げ、なんとか続行。ところがついに、役に入り込みすぎた晴美がカメラクレーンを壊してしまい…。

カメラを止めるな!

確かに、面白かったです。前半がお題で、後半が謎解きのような構造です。あの場面はどうなっているんだろうという興味より、場面場面でどんな面白いオチを見せてくれるかというところがポイントでした。ゲロは事務所がちょっと…と断っていた女優に対して見事にヒットするところは、正直笑えました。実際の映画の為のカットと、後半の謎解きのカットは、同じ演技を異なる方向から撮っているというのもあるのかな?あるいはすべて別々?ちょっと興味が湧いてきます。

後半には、監督の家族が登場して大活躍しています。母親も娘も相当のめりこむタイプのようですね。まぁ、監督自身もかなり、入れ込んでいますが…。監督も俳優もよく知りません。初めて見る人ばかりと思います。そして、この映画未だに各国の映画祭を転戦しているようです。もちろんコンペティションだけではないと思います…。今月も、私が住んでいるHo Chi Minh Cityで、Japanese Film Festivalというのがあって上映されていたようです。(そういう映画祭があることを知らなかったのですが)。

というわけで最後まで楽しめました。そういう映画なので、伏線もきっちり回収していくのも見事。最後の人間ピラミッドは、まさにクライマックスで、チームプレイの達成感を最高潮に持ってくる技ですね。いろんな意味でよくできています。しかし、このプロデューサーですが、ちょっといい加減ですかね。生放送を途中で辞める決断をして、どうやって穴埋めしようとしたのでしょうか。とかいいつつ、面白い映画を見させていただきました。

2018.11.25 JL759 機内にて鑑賞
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「くちづけ」 増村保造監督のイタリア帰りのデビュー作

増村保造監督のデビュー作です。やはり、ファンとしてはこれは外せないということで、かなり期待をもって見ました。イタリアでの修行から帰ってきての、監督第一作ということで、いろいろと思い切り作っていることと思います。さて、どうでしょうか。1957年の映画で、大映の作品です。

あらすじ
父(小沢栄太郎)の面会に拘置所に行った欽一(川口浩)は、同じく面会に来ていた章子(野添ひとみ)と出会う。意気投合した2人はオートバイで湘南に行くが、章子の仕事先の息子大沢(吉井莞象)と出会い乱闘になる。一方、欽一も章子も父の保釈金を工面しなくてはいけないという状況にあり、おまけに章子は母(村瀬幸子)の入院費も得なければならなかった。欽一は別居中の母(三益愛子)から保釈金を工面できたが、保釈はかなわず、一方章子は借金を大沢の息子に頼み込むが、彼の狙いは章子の体であった…。



欽一は父との面会のために拘置所を訪れます。父は選挙違反で勾留されていて、罪の意識が無く不遜な態度をとりますが、別れ際に保釈金を10万用意して欲しいと頼みました。欽一は帰り際に、章子が父の食費の支払いに困っているのを見て、金を置いて立ち去りますが、章子は追いかけてきてお金を返したいと言い、そのお金で車券を買って大穴を的中。お互いに住所を交換しました。そして、二人はパッと遊ぶことにして、欽一の友人の修理工場でバイクを借り、江ノ島の海に向かいました。

江ノ島の海で遊んでいると、欽一はしばらく別れて暮らしている母を見かけます。章子を待たせて母と会う欽一。その間に、章子は仕事で付き合いのある大沢から声をかけられますが、傲慢な誘いを章子は断ります。欽一は母に父の保釈金の工面をお願いしますが、もう離婚した夫に愛は無いということでこれも断られます。その夜、ダンスホールに行った2人は大沢に絡まれ、欽一と喧嘩になってしまい、その後の飲み屋で愛を確かめる章子ですが、欽一は素直に答えませんでした。すねた章子は欽一とは別に帰ると言い、欽一も行きがかり上、章子を置いて帰ってしまいました。

章子は母の見舞いに行くと、父の保険が下りず、入院費用が上がることを知らされます。母は夫が拘置所にいることを知らず、不安になっており、章子は来週父を連れてくると約束します。欽一は母を探し当て、返せなかったら自分が母と住むという条件で10万円を借り、弁護士を訪ねますが、すぐに保釈される見込みはないとの返事。一方章子は、両親を合わせるため、父の保釈の為の10万円を大沢に求めます。その夜章子に家に10万円を持ってきた来た大沢は、強引に章子に迫ろうとします。そこに、使い道の無くなった10万円を渡すために欽一が現れ、大沢と乱闘に。欽一の気迫に押された大沢は立ち去りました。

章子は、「なぜ私にくれるのか」と迫り、欽一は「理由がなければ受け取れないのか」と強引にキスをします。欽一は「これで理由ができただろう」と言うと、章子は思い切り欽一にビンタをし、泣きながら「愛してると言ってほしかった」と訴えました。欽一は、章子に「好きだよ。大好きだ」と答え、泣き崩れる章子を抱きしめるのでした。そして、拘置所から保釈されて出て来た章子と父、それを車の中から見守る欽一と母はその様子を見届けていました。欽一の母はその様子に納得し、車を出して二人を追いかけると、章子と父を車に乗せたのでした。

くちづけ

冒頭、川口浩のかなりつっけんどんな演技で、多少違和感を覚えました。これは、徐々に気にならなくなりましたが、ストレートにこの役柄を表現していると思います。目を見張るのは、バイクで湘南に向けて疾走するシーン。この映画の名場面の一つですね。当時のイタリア映画らしさを感じましたから、きっと増村監督がイタリアから帰ったばかりという事も影響しているのでしょうか。野添ひとみも積極的な女性を演じていて、川口浩との相乗効果で若々しさを感じます。

章子に10万円をわたしてからのラブシーンは良かったです。この映画のクライマックスですね。古今のラブシーンでも思い出に残るものの一つと思いました。この映画は当時は評判にならず、大映幹部からも不評だったとのこと。市川崑監督は認めていらしたようですが。しかし、いかにも増村監督らしい、人物描写を前面に出した気合の入った一本と思いました。イタリア修行帰りの初監督作品という事からしても、相当な思い入れがあったことと思います。

川口浩と母親役の三益愛子は実際の母と長男であり、野添ひとみは、3年後に川口浩の妻となる人ですので、この映画川口ファミリーでできています。この当時は、母子出演という事でした。実際の母子が、役柄も同じで共演するというのはどんな感じだったのでしょうか。興味は尽きません。そして、増村監督のデビュー作のこの映画もお気に入りの一本として、まだ見ていない他の作品も見つけ次第見ていきたいと思いました。

2018.11.19 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「忍ぶ川」 幸せになれる純愛ラブストーリー

日本に一時帰国中に見た映画です。いつも帰っても、せわしなくバタバタしていて時間が結局取れないということが多いのですが、今回はしっかり計画して見に行きました。それも新作ではなく、かなりレトロな作品。最近ずっと古い邦画を見てきているので、その延長でもあります。1972年の映画で、東宝配給。熊井啓監督。この年のキネ旬ベストテンでは、本選も読者選出も1位を獲得しています。

あらすじ
大学生の哲郎(加藤剛)と、料亭忍ぶ川の住み込みの看板娘志乃(栗原小巻)は、哲郎の学生寮の送別会の日に、忍ぶ川で知り合った。お互いに惹かれるもののあった二人は、東京の思い出の地を巡り、自分の過去を語る。必ずしも恵まれた境遇とは言えない二人であったが、哲郎はその境遇にとらわれ世間を避けていた。一方、志乃は現状を受け入れ戦っていた。そんな二人は出会いを重ねるたびに、お互いの秘密を知りつつ愛を深めていくが、ある日哲郎は志乃に男がいると友人から知らされる…。



路面電車の中のいい雰囲気の哲郎と志乃の場面から。2人は、学生寮の送別会の夜に、みんなでなだれ込んだ料亭忍ぶ川で知り合い、その夜の約束通り翌日哲郎は店を訪れます。哲郎は、6人兄弟の末っ子でしたが、次女の自殺を期にそれに触発された格好で、長男長女も自殺。次男もいずこかへ逃走。故郷では目の不自由な姉と父母が残り、哲郎はその様な血が自分に流れていると世間を避けたような暮らしをしていました。デートの約束をした二人はお互いの思い出の地を訪れることにします。哲郎は木場で自分の過去を語り、志乃は遊郭のある洲崎での子供の頃の生活を語ります。そして、戦中に志乃一家は栃木に疎開したのでした。

ある日、故郷に帰ることになった学生から、志乃に婚約者がいると知らされます。いてもたってもいられなくなった哲郎は忍ぶ川に駆け付け、志乃を連れ出し問いただすと、志乃を見染めたお客さんとの望まぬ結婚との事。志乃の父も反対していることから、婚約を破断にし、二人が結婚することを約束します。そして時は過ぎ、志乃の父親の容体が急変。志乃は哲郎に父に自分の夫になる人を一目見せたいと哲郎に同行を頼み、哲郎も父の臨終の場に立ち会い、身内だけの葬儀に参加しました。住むところもなくなってしまった志乃の兄弟たちは散り散りになり、志乃は哲郎と共に暮らすことになりました。

そして、哲郎は志乃を連れて3人の住む雪深い郷里へと向かいます。哲郎の実家は、年老いた父母と、精神の不安定な盲目の姉の3人の家。ついぞ笑いや団らんの途絶えた家でしたが、その家で家族だけの結婚。哲郎の家族に久しぶりに家族らしい笑いが訪れました。そして、初夜。雪の夜ぎこちない二人と外の馬ぞりの音。夜が明ければ、緊張していた二人も打ち解け、普通に愛し合います。そして、新婚旅行への車窓から見える哲郎の家を見て、志乃は「見える、見える、あたしのうち!」とまわりの乗客にも冷やかされながら、はしゃぐのでした。

忍ぶ川

あまりにも濃厚な純愛ラブストーリーを、二枚目の加藤剛と、美女の栗原小巻で熱烈に演じきった映画でした。この濃厚さは、韓流ラブストーリーを思わせるくらいですが、手紙で伝える愛情、日本的でもあります。それに、この映画汚い場面や諍いの場面が一切カットされているというのも徹底してます。ストーリーをたどれば、自殺はもちろん、婚約者に別れを通告するところなど、若干修羅場になりかねない部分ですが、全く出てきません。いつの間にか終わっています。いいところばかりを。濃縮しています。

栗原小巻の演じる志乃。理想的な女性ですね。木場の桟橋で兄が消えてしまった話を聞いて恋人の前で静かに合掌する。これで、性格を決定づけていますが、こんないい人っていないですよ普通。いたら、誰もほっておかないです。結婚式で父が高砂やを歌い、久しぶりに酒が回ったであろう父に、家族が諫めるところなど、久しく笑顔の無かった家に訪れた幸せです。そして、最後に窓から自分の家だとはしゃぐ志乃。洲崎を離れて11歳の頃から自分の家が無かったという境遇を考えると、泣けてくるくらいの幸福感です。とにかく、純愛と幸福が詰まっています。

初夜のシーンはこの映画の白眉で、ぎこちない導入から、すっかり打ち解けた翌朝まで、おなか一杯という感じでした。なんだか思い切り美しいものを見せて貰ったような、そんな映画でした。さて、いろいろと鉄道が出てきますが、9600形の牽引する普通列車で、下車駅の西米沢駅は米坂線ですね。イメージはもっと北の方かと思ったのですが、米沢あたりとは少々意外でした。帰郷する時の客車は61系で、ニス塗りの木の内装が懐かしい。栃木に行くのは浅草発の東武の準急電車。あとは都電が多数出現。と、あまぁ、いずれにしても懐かしい時代の美しく、濃厚なラブストーリーで満足でした。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品

2018.11.24 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホールにて

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「噂の女」 1954年作品 廓の物語から普遍的な人間性を追求

最近、古めの日本映画が気になって立て続けに見ていますが、昭和40-60年代の日本映画が多く、その時代の風物を楽しみながら、その時代に思いをはせております。今回は、1954年溝口健二監督の「噂の女」。京都の置屋の風物から、当時の社会情勢がうかがわれる作品でした。54年(昭和29年)大映製作です。

あらすじ
京都島原にある廓の、太夫の置屋とお茶屋を兼ねた井筒屋の女将初子(田中絹代)のもとに、東京の音楽学校にいた一人娘の雪子(久我美子)が、傷心からの自殺未遂で帰ってくる。初子は通いの医師である的場(大谷友右衛門)に雪子の診察を頼んだが、彼女は頑なにそれを拒むのだった。雪子は、母の商売が自分の恋の破局の原因であると考え、廓の中で孤立していたが、ある日、太夫の一人が病に伏すと、献身的に看病をし始める。一方、初子は的場に思いをよせ、的場のために財産もすべて掲げようとしていたが、的場はいつしかその娘の雪子に思いを寄せるようになってしまう…。



女たちが夜の仕事の準備を始める頃、井筒屋で忙しげに動き回る女将初子。そこに、夫亡き後彼女が育て上げた一人娘の雪子が帰ってきます。廓の和装の女たちの中に、洋装で帰ってくる雪子は、物憂げでしたが美しく、異彩を放っていました。雪子は東京の学校に通っていましたが、傷心の末自殺未遂を起こし実家に帰ってきたとの事で、初子は通いの医者の的場に問診を頼みました。的場も雪子の美しさに目を奪われた様子。彼女を落ち着かせようと熱心に話しかけます。しかし、雪子は頑なで、自殺の原因となった別離はここの母の商売が原因であったことから、この廓を忌み嫌っている様子でした。

その夜、太夫の一人が病に倒れ、大夫たちの前では冷たい女のように振舞っていた雪子は、病床の大夫を優しく看病し、他の大夫たちも雪子の優しい姿を見て打ち解けていきます。一方で初子は的場に思いを寄せており、店も財産も投げうって開業医になるよう、資金を出そうと申し出ます。的場は言い寄る初子に対し、つかず離れずの返事。そんな中で、的場の心は雪子に傾いていき、関係を深めていこうとします。初子は店を抵当に入れてまで借金をして、的場に渡そうとしますが、すでに雪子と将来の約束までこぎつけた的場は、初子につらく当たり、初子はその金だけを渡して身を引こうとしました。

そんな母と的場の現場を見てしまった雪子は、的場の性根を知り、的場に絶交を言い渡し、母の金も取り返して的場を追い出してしまいます。母の初子は的場を失ったショックから病床に伏してしまい、雪子は看病しながらお茶屋を切り回す決心をします。そして、母の心配もよそに、雪子は大夫たちの信頼も得て、元気よく店の中を仕切り始め、一方で、廓から出勤していく大夫が、姉をここで病気で亡くし、代わりに自分が働き始めた妹を見て、この商売はいつになったら無いようになるんだろう。と語る言葉で結ばれるのでした

噂の女

主なストーリーは、田中絹代と久我美子の母娘の恋の確執というところでしょうか。その間で母から娘に乗り換えてしまう的場の軽薄な打算。この話を軸に映画は進んでいきました。そしてその中で描かれるのは、この時代の社会と廓の存在。久我美子の口から語られる、この商売の汚さを卑下する言葉は、最初は東京に出ていったインテリの理想主義的な言葉でした。そして、大夫の病気と死。田舎から姉を引き取りに来た妹との会話から、徐々に世の中のことを理解していく様子が描かれています。

最初は好青年風に見えた的場は、だんだん女性に対して目移りしていく様子や、田中絹代に対するつれない態度。物語が進行するに従って馬脚を現し、ただの軽薄で自己中な男になっていきます。そして、廓の社会のことについては、ある意味現状を受け入れつつ、そこで働かざるを得ない境遇を嘆く言葉で結ばれます。出てくる男は、ただ遊び惚けている姿か、身勝手で都合よく女性をものにしたい人たち、それに対して女性は境遇を受け入れ、あるいはその中で逞しく生きていく姿として描かれていました。

島原の廓にまつわるいろいろな人々を描きながら、それぞれの視線で見た登場人物の言動として、廓と彼らの人間性が語られていきますが、それは物語の中で変化もし、成長もしという感じです。内容的には大変普遍的なこととして描き出され、いかにも人情味にかけるような言葉も、さりげなく語られ、人間性を追求していくところは見事だと思いました。見ているうちは、身勝手なセリフや上から目線など失笑したくなるところもあるのですが、考えてみれば故意に言わせているようにも思えてきて、最終的にはうまく作っているなと思い至ります。あくまでもさりげなく積み重ねられていき、作品全体を通してまとまり、立派な高みに達しているような気がしました。

2018.11.11 HCMC自宅にて、パソコン鑑賞

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「黒の試走車」 60年代のエンターティンメントに惹きつけられる

最近、立て続けに古めの邦画を見ています。続けて見ていると、次々に興味がわく映画が広がってきてしまうので、ついつい嵌ってしまいました。まぁ、これはいつものことなんですが。今回は久しぶり(といっても3ケ月くらいですが)の増村保造監督の映画です。「黒」シリーズの初回作品となった1962年の映画で、大映製作です。

あらすじ
テスト中の覆面車が横転して炎に包まれる。翌日、自動車業界紙は、「タイガー試作車炎上」のスクープ記事が上がった。タイガー自動車では、競争相手のヤマトに試作テスト情報が洩れ、写真まで撮られたことが問題となった。小野田企画部長(高松英郎)はこのスポーツカー「パイオニア」にすべてを賭け、朝比奈部員(田宮二郎)とともに、あの手この手の諜報戦を展開するが、立ちはだかるのは関東軍出身のヤマトの馬渡企画本部長(菅井一郎)。そしてヤマトもタイガーの情報をいち早く入手し、入手したタイガーのデザインを流用し、同時期にスポーツカーを上市しようと極秘裏にテストを重ねていた…。



公道を加速する覆面のテストカーがカーブで横転、その姿はしっかり写真に撮られ業界紙にすっぱ抜かれてしまいます。タイガー自動車では、テストの情報が事前に漏れたことが問題になりましたが、スポーツカーの上市に熱意を燃やす小野田企画部長は、これに怯まず開発を続けることを主張し、成功の鍵を握るライバルのヤマト自動車との駆け引きを推進していくことになりました。相手と目するところは、ヤマトの馬渡企画部長で、小野田の腹心の朝比奈部員とともに、新スポーツカー「パイオニア」を大衆車に見せかける作戦にでますが、すべて関東軍特務部隊出身の馬渡に見破られていました。

馬渡がバー「パンドラ」の常連と知ると、朝比奈に彼の恋人の昌子(叶順子)をホステスとして働かせ、馬渡の身辺を探っていきます。その結果、ヤマトでも秘密裡にスポーツ・カーを製作中であり、しかもタイガーが高額を費やしてイタリアのデザイナーに作らせたデザインまで盗まれていることが判明。虚々実々の駆け引きの中で、ついに朝比奈は昌子に馬渡と寝るように説得。昌子は渋々承知し、朝比奈に決定的な情報をもたらしますが、二人の間に破局が訪れました。そして、迎えた発売日。昌子の得た情報により、タイガー自動車は勝利を勝ち取りますが、それもつかの間、新車で納入された車が当日に故障が原因で列車との衝突事故を起こし、形勢は一気に逆転されてしまいました。

事故をヤマトのヤラセだと睨んだ小野田は、徹底的に情報漏洩ルートを洗い出し、社内外の数々の関与者を摘発。そしてついに小野田の同期の企画部員である平木(船越英二)をスパイの黒幕と突きとめ、彼をオフィスに閉じ込めて糾弾。平木は小野田から追い詰められ、小野田の目の前で飛び降り自殺をしてしまいました。平木を追い詰める一部始終を見ていた朝比奈は、小野田の非人道的なやり方を責め、小野田と袂を別ち退社します。一方、すべての証拠をつかんだタイガー自動車は、ヤマトを告発、馬渡も辞任に追い込まれ、タイガーの完勝となります。そして、誰もいない砂浜に佇む二人。朝比奈と昌子は、昔の自分たちに戻って仲直りし、お互いの愛を確認。そして道路に出た二人の横を、今や二人にとって穢れた車となったパイオニアが乱暴にすり抜けていくのでした…。

黒の試走車

これは、面白かったです。さすが増村保造監督、ストーリーもよかったと思うのですが、画面に引き付けられていました。産業スパイの話で、タイガー自動車の社員のとる行動には、それほど違和感を感じさせません。でも、やっていいというわけではありません。生き馬の目を抜く世界で生きる愛社精神旺盛なサラリーマンなら、頭の中で考えてみることはあるだろうというような展開。あくまでも妄想の世界としてです。それに対するヤマト自動車はその世界の悪役。関東軍出身というおまけ付きで、悪役ぶりを高めています。その間で二重スパイを実行していた的場(上田吉二郎)たち。いろいろとネタは揃っています。

一方で、最も普通の人らしい朝比奈は、恋人を抱かせて情報を得ようとします。勿論これは異常な行動ですが、それを一番まともだと思わせるほど、周囲の状況が濃いのです。さすがに昌子は、一般の女性というわけではなく、客商売経験のある女性。そのあたりが、エクスキューズになって、若干の良心を保ちますが、だからと言ってこれでいいというものではありません。逆に、いろいろと経験豊富な女性であることから、別れ方もキッパリしています。そして、ふと正常に戻った朝比奈は反省し、よりを戻します。結局都合のいいラストになってしまったのですが、見ている方としてはある意味爽やかなハッピーエンドです。

そういう訳で、フィクションの世界で構築された産業スパイ映画、重ねてなかなか楽しかったです。それをうまく娯楽として見せてくれた、監督スタッフに感謝です。私の増村保造監督の同時代体験は、「スチュワーデス物語」と「少女に何が起こったか」であって、逆に、この二つが抜きんでていて、これ以外のドラマは、今ではそれほど印象に残っていないくらいなのですから、きっとエンターティンメントの世界では、私にとってたぶん一番相性がいいんでしょうね。今になって色々見てみて、なんとなくそんな感じがします。まだ見ていない増村監督の映画、もっと見てみます。

2018.11.11 NCMC 自宅にてパソコンで鑑賞

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「影なき声」 影なき声に盛り上がる恐怖感と往年のスターたち

最近「8時間の恐怖」を見たので、その流れで見つけたこの映画が気になって見てしまいました。あちらでは、清太郎のクレジットでしたが、今回は鈴木清順のクレジットになっています。1年の間のことなので、57年から58年の間のことですので、この間に変わったようです。1958年映画で、日活スコープの映像です。

あらすじ
毎朝新聞の交換手朝子(南田洋子)は、偶然電話の向こうの殺人犯の声を聴いてしまう。しかし、その事件は迷宮入りし3年を経たある日、その偶然のきっかけともなった、毎朝新聞の事件記者の石川(二谷英明)は、ある日結婚して退社し、所帯じみた朝子を、街中で見かけた。朝子は、小谷(高原駿雄)と結婚したが、小谷は小心者で、浜崎(宍戸錠)の経営する広告店の付き合いということで、自分の部屋を毎日得意先との麻雀に使わせていたのだ。ある日浜崎が来るのが遅いので、朝子に電話をかけさせたところ、その声に朝子に三年前の記憶が蘇り、浜崎の印象が悪夢の様に彼女の頭から離れなくなる…。



毎朝新聞の電話交換手朝子は、職業柄300人の声を聴き分けられるという特技を持っていました。ある晩、事件記者石川の依頼で繋いだ先から、奇妙な高笑いを聞いてしまいます。そして、その先とはまさに殺人現場だったのでした。このことが公になった朝子は、検証のためたくさんの容疑者の声を聴かされることになりましたが、事件は迷宮入り、新聞社も結婚退職して、小谷という小心だが優しい男と暮らしているのでした。3年後のある日、石川はたまたま路上で朝子を見つけ、朝子の住むさびれたアパートに時の流れを感じます。そして、その頃小谷の上司の浜崎は、小谷に川井(金子信雄)という新しい客が見つかったから、麻雀の為部屋を貸すようにと命令します。

この日から小谷の部屋では、小谷、薬局を経営する川井、ビリヤード店経営の村岡(芦田伸介)、上司の浜崎の4人で、毎日麻雀が続けられることになります。ある日浜崎が来るのが遅いので、朝子は小谷に頼まれ浜崎に電話すると、朝子の頭に3年前の声が蘇りました。生では解らなかった声が、受話器を通じることによって蘇ってきたのです。そして、朝子は浜崎を見るたびに怯え、妄想を抱くようになります。数日後、小谷は浜崎と喧嘩をして血だらけで帰ってきます。そして、その翌日浜崎は小平で死体として発見され、小谷は容疑者として拘留されてしまいました。事件記者として気になり始めた石川は、朝子を訪ねて事情を聞き、この事件の本格的な調査に乗り出しました。

石川はまず川井を訪ね、川井は浜崎から恐喝されており、小谷に浜崎と手を切ることを勧めたと証言します。そして、犯行時間はずっとバーで飲んでいたというアリバイがありました。村岡を訪ねた石川は村岡の子分の明(野呂圭介)から、村岡の家は浜崎が発見された現場近くに住んでいることを聞き出します。村岡には、犯行時間帯付近で、ちょうど20分のアリバイが無いことを発見、彼への疑いを強めますが、浜崎の服についていた石炭などから、殺人現場は田端駅近くの貯炭場であり、村岡のいた小平からは20分で往復できる場所ではないという事実が立ちふさがります。そのうちに警察の尋問に朦朧となった小谷が犯行を認めてしまいますが、朝子は夫の無実を信じ、石川は朝子に友達以上のものを感じながら、二人で更に調査を進めていくことになりました…。

影なき声

暗い夜の場面が多く、かつ白黒映画ですので、パソコンの画面で見るのがちょっと辛かったという印象がありましたが、なかなか見せ場のあるサスペンスでした。特に前半、導入で不審な男の声を聴いてから、自宅に毎日麻雀をしに来る浜崎が3年前の声の主とわかるまでの、雰囲気の盛り上げ方や、南田洋子の恐怖に怯える姿など、緊張感があって素晴らしいと思います。犯行現場は小平市と田端操車場。小平市の朝もやの中の田園風景などは、なかなかいい絵になっていました。

殺人事件が起こってからの謎解きは、主に警察の捜査からの観点ではなく、事件記者石川の調査で進んでいきます。後半は、石川の行動が主になっていく中で、石川とかつての同僚の朝子の関係が微妙に揺れていきます。もっとも朝子の方は常に夫の小谷のことを一心に思い続けていたようです。揺れているのは石川の方でした。記者仲間から、あなたの捜査は枕の匂いがするとまで言われているところからすると、こういう揺らぎは周りにも解ってしまうものなのですね。気を付けないといけません(笑)。謎解きは、最後に一気に語られるスタイルで、あれよあれよと解き明かされてしまい、しかも複雑で解りづらかったので、松本清張原作の謎解き自体は立派なのですが、映画としてはもっと工夫が欲しいと思いました。

出ている俳優さんは、子供の頃お茶の間のテレビでなじんだ人が多く、それが若いころの姿で出ているので不思議な感じです。テレビでは、ほぼ40代の姿になじんでいるので、彼らを一目見て誰かと言い当てることはできませんでした。宍戸錠南田洋子芦田伸介二谷英明、この辺りが良く見ていたテレビのスターかな?そして、野呂圭介は「どっきりカメラ」ですね!やはり、この映画の映像とはなかなか結び付きません。しかし、そういった部分もいろいろな楽しみがあったので、なかなか良かったと思います。

2018.11.10 HCMC 自宅にてパソコン鑑賞

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「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」 小市民映画に見る至上の幸福感

ネットを見ていて、戦前の小津作品があったので、さっそく視聴しました。あまり詳しくないのですが、一定の人気を保つ作品のようです。私にとっては、なじみのない無声映画なのですが、どういった映画なのでしょう。第9回キネマ旬報ベスト・テン第1位、1932年松竹(蒲田)の作品です。

あらすじ
2人兄弟(菅原秀雄、突貫小僧)と両親は、家族4人で専務の岩崎(阪本武)の近くに引っ越してきた。転校した2人は、早速地元の悪ガキグループにいじめられ、小学校をずる休みする。そのうち、悪ガキ仲間となったが、その中には岩崎の子供(加藤清一)もいた。ある日、皆で「うちの父ちゃん」自慢の話になったが、兄弟も自分の父親(斎藤達雄)が一番偉いと信じて疑わなかった。そして、岩崎家の映写会に行った2人は、自分の父が、岩崎のご機嫌取りに道化役で映っているのを見る。失望して怒った二人は食事も取らず抗議するが、母(吉川満子)のとりなしで食事をとり、父と仲直り。そして何時もの様に父と学校に向かうのだった。



良一、啓二の2人は父と家財道具を載せたトラックで、東京郊外に引っ越してきました。父は、重役の岩崎の近くに引っ越して出世のチャンスを伺っているところです。そして、引っ越し早々、近所の悪ガキグループに目を付けられ、喧嘩した揚句いじめられます。そんな悪ガキグループがいる学校には行く気になれず、2人は小学校をずる休みし、学校の課題の習字を外で書き上げ、いい点数をつけて家に持って帰りますが、結局担任からの連絡で、学校に行っていないことが父に知られ、大目玉を食らってしまいました。

ある日、2人は酒屋の小僧(小藤田正一)に頼み、悪ガキグループのボスを泣かせます。そして、彼にとって代わりグループを仕切っていくようになりました。そして、その中に岩崎家の息子もいました。ある日、みんなは自分のお父ちゃん自慢をして、その特技や持ち物を各々自慢しますが、2人は自分の父が一番偉いと信じて疑わない様子です。岩崎家で映写会があるというので、岩崎の息子に頼んで連れて行ってもらうと、そこには父や会社の部下たちも来ていました。そして、その映像に移っているのは、専務の岩崎のご機嫌を取るために、変顔をして道化ている父の姿。すっかり2人の前では厳格な父の滑稽な姿を見て失望し、父に怒りが湧いてきます。

早々に家に戻った2人は癇癪を爆発させ父に抗議しますが、父の怒りにふれ徹底的に怒られてしまいます。子供たちをこっぴどく叱った父は、反省し疲れて眠る2人の床に行き、夫婦で寝顔を見ながら子供たちの将来を思い、複雑な気持ちで微笑みます。翌朝、まだハンストを続ける2人に、母はとりなし、父も語りかけ、やっとご飯を食べて仲直りした2人と父は、何時もの様に学校に向かいました。途中で専務の車に同乗する父を見送った2人は、専務の息子とともに、学校に向かうのでした。

大人の見る繪本 生れてはみたけれど

いわゆる、松竹蒲田の小市民映画です。なんだか、小市民映画というと卑下したような響きに聞こえますが、庶民の日常生活に題材を求めた、今でいうホームドラマといったところでしょう。戦後の小津安二郎の作品でも、脈々とこの雰囲気が生き続けています。そして、この映画はまさに、「小市民映画」の響きがぴったり合うような典型的な作品。内容も充実していました。自分の父が偉いと信じて疑わない兄弟。それが、上役にこびへつらう姿を見た時の失望と怒り。純粋な子供たちの世界と、打算的な大人の世界の間にある葛藤を見事に描いていると思いました。

寝静まった2人を見る父母の姿が、至上の幸福感を出しています。これがまさに「小市民」の幸福感ということなんでしょう。あまりに微笑ましくて、ノックアウトされました。「こいつらも一生侘しく爪をかんで暮らすのか」という言葉に込められた父の優しさや、翌日の「お前たち大きくなってお父さんより偉くなればいいじゃないの」という母の言葉。大人からしてみれば、あまりにも幸せな風景で、いかにも小市民的に心にしみるてくる訳です。確かに「大人の見る繪本」とは、言いえて妙という気がしました。日常の何気ない機微を切り取ってみせた小津安二郎の素晴らしい世界でした。

公開は、昭和7年ですが、その後の歴史を知っている我々としては、ちょうどこの子供たちが成人するころの世界を考えてしまい、ちょっと侘しくなります。しかし、それは言っても詮無い事。ここは名演技の4人家族を愛でましょう。中でも吉川満子が、いかにも母という役割を演じてとても感動的でした。頻繫に走る電車は池上線(池上電気鉄道)とのこと。何か構図が面白く、スピード感を感じます。日本が活気があって輝いていた時代の映画。この時代の映画を観るたびに、ますます興味が湧いてくるのです。

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「宇宙人東京に現わる」 自虐的で他力本願であることを感じてしまう

楽しそうな題名だったので、思わず見てしまいました。日本の1956年のカラーSF映画。まだまだ日本ではこの分野の作品も多くはなく、SF自体が黎明期という頃のこと、どんな作品が作られていたのか興味津々なのです。

あらすじ
世界中で謎の飛行物体が目撃され、科学者はその正体を巡って盛んに議論をしていた。さらに、日本ではヒトデ形の宇宙人が出現。彼らは、地球の原水爆開発に警告を発するために友好目的で来訪した宇宙人だという。彼らは、日本の科学者たちに新天体 Rの地球への接近を警告、日本の科学者たちは世界に対策を求めるが相手にされず、ついに新天体Rの接近が確認され、その影響で地球上に天変地異が起こり始めるが…。



とある私鉄駅前の居酒屋で晩酌をする小村博士(見明凡太朗)は、天文台に勤務していました。その夜、娘の多恵子(永井ミエ子)の恋人であり、同じく天文台に勤務する磯辺徹(川崎敬三)が訪ねて来て言うことには、世間の話題になっている謎の飛行物体を、望遠鏡がとらえたという話でした。そして、この飛行物体は世界中の天文台でとらえられていて、その正体を巡って議論が沸騰します。さらに東京にはヒトデ型の宇宙人が出没するようになり、人々はその姿を見て恐れおののくのでした。その頃飛行物体の中では、自らを「パイラ人」と呼ぶ宇宙人たちが議論していました。彼らは、地球の原水爆開発を警告するために友好目的で来訪したとのこと。そしてなんとか意図を伝えるために、トップスター青空ひかり(苅田とよみ)の姿に変身して、地球に再び向かうことにします。

記憶喪失の美女銀子として降り立ったパイラ人は、松田博士(山形勲)の家に住むようになります。銀子は、松田博士が原水爆以上の破壊力をもつ元素「ウリウム101」を研究しているのを知り、その危険性から研究の停止を訴えます。その頃、新天体Rが地球に衝突する軌道に入っており、パイラ人はこのままだと近く衝突してしまうことを伝えました。日本の科学者たちは世界に核兵器の提供を求め、これを発射して軌道をそらすことを提案しますが、全く相手にされずさらに松田博士はウリウム101の情報を狙うスパイに拉致監禁されてしまいます。

そしてついにRの接近が望遠鏡で確認され、その影響で地球上では天変地異に見舞われ始めました。人々は都市から避難しますが最終的にはなすすべのない中で、監禁された松田博士も危機に陥いっていきます。ようやく危機感を持った核保有国は核ミサイルを次々と新天体Rへ撃ち込みますが、全く効果は無く、これで地球も終わりかと思われたころ、パイラ人は松田博士から聞き出した方程式を元に製造したウリウム101の爆弾を、新天体Rに向け発射。すると新天体 Rは木っ端みじんに四散し、ついに地球は救われるのでした。そして、人類は核兵器の無い世界で、新しい生活を始めることとなったのでした。

宇宙人東京に現わる

ストーリーは、この通りで、娯楽系のSFになっています。見た感想として、ストレートにストーリーを追った展開であり、原水爆禁止をテーマにしていて、それ以外の感興に乏しいのが残念と思いました。まだ、SFが成熟していない、あるいはこういうスタイルの娯楽が成熟していない時期だったのでしょうね。いろいろなものを盛り込んで、それをなぞっているのですが、あまりにも突っ込みどころが多いのと、まぁ、それは目をつむるにしても、奇抜なストーリーをつくって、奇抜なものをカラーで見せましたという感じで、それ以上のものがありませんでした。それが、当時の日本のSFの実力とは思いたくないですけれども…。

SFの本家の英米では、現代のSFという意味では、1940年代からハインラインやクラークが活躍していて、映画としても50年代にいろいろと名作が作られていたのですが、日本のSFはやはり充実したのは60年代以降かな?そんなことを改めて感じてしまいました。ただ、パイラ人やいろいろな仕掛けは、それほど悪くもないと思います。というかほのぼのしていていいくらいです。そして、「宇宙軒」の雰囲気は大変良かったです。この映画の中で、一番いいのは、ここかもしれません。

ストーリーを見れば、この映画かなり自虐的ですね。ハリウッド映画であれば、「ディープ・インパクト」とか、「インデペンデンス・デイ」みたいの、ヒーローが現れて撃退するのですが、日本のこの映画は、あまりに他力本願ではありませんか。こういう思想で戦後が支配されていたので、この映画ができたのでしょうか。大国にお願いして、ダメだったのであとは死を待つのみと思っていたら、パイラ人が助けてくれて、理想の世界が訪れましたという骨格。そう単純に類型化して片付けることもできないことですが、主題はそんな感じがします。いや、そう思わせるのも、この映画が人間を描いていない結果かもしれません…。

2018.11.6 HCMC 自宅にて パソコンで鑑賞

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「8時間の恐怖」 峠道のバス内に当時の日本を世相を凝縮

昔のサスペンスものを、ちょっと気になって観てみました。1957年の映画で、日活製作。鈴木清太郎(後の鈴木清順)監督の作品です。鈴木清順監督の映画はあまり今まで見る機会が無かったので、ちょっと楽しみ。実は初めてだったりします。「ツィゴイネルワイゼン」とか、昔盛んに宣伝していた記憶がありますが…。さて、どんな映画でしょう。

あらすじ
駅に停まっている列車は、災害でこの先運行の見込みが立たない様子。待合室には、足止めを食った乗客が駅員に盛んに苦情を申し立てていた。一同はバスで別の駅へ出ることになるが、行手は激しい峠道。その上、出発を前に、この辺りに二千万円を強奪したギャングが潜伏しているとの情報が入る。それでも行くという乗客を乗せ、老朽化したバスは一路夜間の峠道に入っていくが…。



昔の国鉄の駅です。駅のホームには、C5835の牽引する客車列車が停車していますが、災害のために立ち往生で、車内ではいつ動くともわからない列車に文句をいう乗客たちがいました。そして、待合室では、それぞれの事情を声高らかに叫び、駅員をやり込める人々がいました。駅の手配で、山を越えた駅までバスを出すことになりましたが、暗い夜道を走り、明日の昼に着く行程で、そしていざバスが着いてみるとちょうどその時、銀行強盗のギャングがこのあたりに潜伏しているという情報が入ります。それに恐れをなした乗客が脱落する中、残った14人が夜道の林道のバスの乗客となりました。

以後の話は、この15人を中心に展開することとなります。会社社長夫婦(深見泰三、三鈴恵以子)、愛人と遊びに来た2号さん(志摩桂子、中原啓七)、学生運動家(二谷英明香月美奈子)、幼女を抱えた母(南寿美子と赤ん坊)、オンリー(利根はる恵)、女優志望の娘(福田文子)、農夫の夫婦(永井柳太郎、原ひさ子)、護送中の殺人犯と刑事(金子信雄、成田裕)、下着セールスマン(柳谷寛)。そして、バスの運転手(山田禅二)。これで全部です。魑魅魍魎におびえながらの夜の道中を経て夜が明けますが前途多難。崩れそうな橋、自殺騒ぎ、身の上の暴露などいろいろなことがあって、ついにギャングと遭遇します。

ギャング2人(植村謙二郎、近藤宏)は拳銃を手に一気にバスをジャックします。刑事はすぐに身分がばれて斃されてしまい、ギャングに怯え、敵対し、連携し、あるいは仲間割れをしながらの道中になりました。そして、バスが泥にはまった時、オンリーの夏子の機転で子分を斃し、もう一人も置き去りにしますが、途中のがけ崩れ現場で追いつかれ絶体絶命に。しかし警察の出現の報に驚いたギャングと乗客は乱闘になり、ギャングは銃を奪われ、バスを奪って逃亡。しかし、運転を誤り崖下に転落します。そして、やっと現れた警察のトラックに揺られる乗客たちの眼下に、バスの元々の目的地あたりを走行する列車が見えてくるのでした…。

8時間の恐怖

サスペンス・アクションものの娯楽作として、ストーリーは堅実なものだと思います。導入部で不安感を含めた雰囲気を作り、15人の密室状態を構築。夜の峠道という恐ろしさと、銀行ギャングのアクション。スムーズに進行しました。また、この映画の中には、当時の世相を表すというか、社会風刺的なところも込められていました。待合室での議論。学生運動家の熱弁や、国鉄労働問題。オンリーへの視線。戦地から帰還した軍医と妻の不義。西部劇にあこがれる少女。そして会社社長や、2号さんまで、何でも盛りだくさんでした。バスの車内を当時の日本の縮図にしたかったのでしょうか。

この映画のロケ地はどこなんでしょう??橋本駅までという地名からは神奈川の丹沢なんかを思い出しますが、バスの社名は、「静中乗合自動車」。列車のサボは、〇川行。〇が解りません。物語の中の地名は、架空のもののようです。災害区間は田井~金子間となっています。金子といえば八高線ですが、物語からして、そういう雰囲気では無さそうでしたが…。駅の運賃表から類推するに、東海地方静岡以西のどこか。ここまでのヒントで思いつくのは二俣線のどこか。列車は掛川行。これでどうでしょうか?C5835が当時運用されていたのがどこかで推定できるかもしれません。そして、この雄大な林道はいいですね。当時の日本の峠越えの林道風景を見られてのは良かったです。しかもバスが走っている林道風景!

いろいろな役者さんが出ていますが、私はあまりなじみがありませんでした。ちょっとオーバーアクションで、興ざめするような部分もありますが、それぞれ面白い役を演じています。運転手の山田禅二、殺人犯の金子信雄、赤ん坊の母の南寿美子あたりが印象に残りました。運転手が、オンリーとして蔑まれる利根はる恵に、こっち来て座りなっていうセリフはいい感じです。シーンとしては、ギャングを罠にはめる一連のシーンが面白かったですが、ちょっと間違えると自分がはまりそう。そういう意味では、利根はる恵と、金子信雄が一番活躍しているんですね。振り返っても、なかなか興味の尽きない盛りだくさんの映画でした。

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「ナンバー・ワン・ガール」 頭を空っぽにして見るビデオシネマ

これは、大量購入DVDの中にあった1枚。きっとこういう機会でもなければ絶対見ることのなかった種類の映画だと思います。まったく知識なしで通して見ましたが、まぁ、なんというか、時間を返せの部類に近い映画でした。ひと時の愉しみにはいいかもしれませんが、同じ時間を消費するのであれば、きっともっといい過ごし方があるはず…と思わせるような映画です。でもまぁ、面白いところもありますので、良しとしましょう、

あらすじ
元空手世界チャンピオンでハリウッドスターのジョーイ・スカリーニ(トニー・スキエーナ)は、友人でマフィアのボス・ドラゴス(ヴィニー・ジョーンズ)が主催するミスコンの審査員を務めるためにロンドンに向かう。ところが、彼はドラゴスの最大のお気に入りの候補者と恋に落ちてしまい…。



冒頭から、類型的なアクションシーンがあり、それは実はスカリーニの映画の撮影だったという導入でスタートします。そして、ドラゴスの本業のマフィアとしての所業の場面があり、次にドラゴスの主催するミスコンに審査員としてロンドンに向かうスカリーニの場面です。どうやら、ドラゴスは彼にいつも美女をいっぱい当てがってくれるので、それを楽しみにしているようです。ドラゴス家に到着し、家族ぐるみの歓迎を受けたスカリーニですが、屋敷の中にいる一人の美女タチアナ(Lisa McAllister)に目を奪われます。しかし、タチアナはドラゴス一番のお気に入り。ドラゴスは生活苦にあえぐ美女を発掘し、屋敷に住まわせているのでした。そして、ベスト4の4人に対しては、誰であっても手を出すのはご法度。死が待っています。

ドラゴスは、スカリーニがタチアナにちょっかいを出すのを見て、不信感を感じ始める中で、やがてミスコンがスタート。タチアナは予選をトップで通過、最終決勝の水着審査に移ります。決勝戦のイベントのダンスでタチアナと情熱的なダンスを踊ってしまうスカリーニ。それをじっと見ているドラゴス。ついに切れて主催者のドラゴスは発砲し、ドラゴスの部下たちがスカリーニに襲い掛かりますが、さすが世界空手チャンピオンということで、敵をなぎ倒し、ラスボスのドラゴスもやっつけて終了。そしてオチはこれも映画の撮影でした…ということです。

ナンバー・ワン・ガール

ストーリーについては語る価値も無いでしょう。とってつけたような劇中劇になっていますが、だからと言ってなるほどと思う訳でもないのです。5分で済むストーリーを85分にしています。で、見どころは美女とアクションシーンのみ。それを見るだけでしたら、何も考える必要なし。なまじ考えると、楽しくなくなるので頭を空っぽにして見ないといけません。美女はそれほどインパクトは無いので、良かったのはダンスシーンと最後のアクションシーンくらいかな…。

トニー・スキエーナは正直アクションだけです。主演でずっと演技していますが、脳天気な女好きのスターを脳天気に演じているだけなので、特に感心するところは無し。一方で、ヴィニー・ジョーンズは安定の演技でした。そして、「ベスト・キッド」のパット・モリタが出ています。スカリーニの空手の師匠という事の様です。まぁ、そのあたりはご愛嬌ですかね。 ヒロインのLisa McAllisterは初めて見ますが、なにか往年の名女優に似た雰囲気がありました。ただし、往年のという感じで、貫禄が備わらないと、今ではちょっと陳腐に感じてしまうかなという感じでした。

という訳ですので、高い評価は致しかねますし、ダメ映画的な愛着がわくかというと、そうでもないので、さらっと流して消費するだけの映画となりました。見ようによって良かったと思えるのは、ヴィニー・ジョーンズとパット・モリタが見られたというところですかね。それと、Lisa McAllisterのダンスシーンですか。あとは、こういう機会でもないと見るこのない映画を観たという希少価値でしょうか。ビデオムービーではあるのですが…。でもまぁ、これも映画鑑賞の一つなので、それなりには楽しんでいるのですけどね…。

2018.11.04 HCMC 自宅にてDVDをパソコンで鑑賞

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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