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「レディ・バード」 JKから大人への女子の日常を普通に描く佳作

久しぶりの映画館での鑑賞。海外ですので英語での鑑賞です。この映画は、会話がかなり重要なウエイトを占めると思うので、英語だけで見るのは相当なハンデですが、頑張ってみます。2017年公開の中でも有名な作品だけに、その世界に少しでも触れておこうということです。CGVのゴールデンシートでのゆったりした贅沢なひと時でした。

あらすじ
閉塞感漂うサクラメントでカトリック系の女子高に通い、自らを「レディ・バード」と呼ぶ17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)。彼女はこの町から抜け出し、東海岸の大学に通う事を夢見ていたが、両親からは厳しい反対にあっていた。そんな高校最後の年に起こる出来事を通じ、友人やボーイフレンド、家族との触れ合いと葛藤、そして自分の将来について悩んでいく様子を、ユーモアを交えて描いていく…。



母(ローリー・メトカーフ)が運転する車の中で、母と娘の会話からスタート。クリスティンは、今の生活に閉塞感を感じ、高校卒業後東海岸に進学したい様子でした。そして、母親との意見が対立し、走行中の車の助手席のドアを開けて飛び降りてしまいます。物語がここから始まります。

カトリック系の高校に通っていたクリスティンは、自分のことを「レディ・バード」と呼んでいました。レディ・バードか親友ジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)とともに、授業の一環で演劇のオーディションを受け、そこでダニー(ルーカス・ヘッジズ)という名前の青年と出会います。レディ・バードとダニーは急速に親密になり、家族との交流も始めますが、演劇の発表会での打ち上げで、女子トイレが混んでいたために、ジュリーと共に男子トイレへ入ったところ、偶然ダニーがトイレの個室で男とキスをしている様子を目撃。レディ・バードは、すぐに別れを切り出します。そして、レディ・バードはコーヒーショップで働くことになり、そこで、彼女はミュージシャンのカイル(ティモシー・シャラメ)と知り合いました。

そんなある日、クラスメートのジェンナ(オデイア・ラッシュ)は、スカートの丈が短く、担任の修道女(サラ・ジョーン)から叱責されます。ジェンナはその仕返しに担任の自動車にいたずらをし、それにレディ・バードが加わったことがきっかけで、2人は仲良くなりました。逆にジュリーとは、ジェンナと仲良くするにつれて疎遠になっていきましたが、ジェンナに住所を尋ねられたレディ・バードは引け目を感じ、ダニーの祖母の住所を教えました。そんなこんなで、いつの間にか、演劇の授業にも出席しなくなったレディ・バードでした。

ある日、ダニーがレディ・バードの働くコーヒーショップに来て、ダニーから、自身が同性愛者であるがカミング・アウトできないことへの苦悩を聞かされます。その後、レディ・バードは「自分は童貞なんだ」と嘘をついたカイルを信じ、処女を捧げますが、騙されたレディ・バードはモヤモヤしたままで、さらにジェンナからも、嘘の住所を教えられたことを責められ、新しい友達ともなかなかうまくいかない状況に。プロムの日、ジェンナやカイルと一緒に車で向かっている時、レディ・バードは、自分はかつての親友のジュリーと行くべきだと悟り、車を降りてジュリーと仲直りをし、2人でプロムに参加しました。

しかし、東海岸の大学への入学手続きがついに母親に気づかれてしまい…。

レディ・バード

アカデミー賞も来週となりましたが、この作品はいろいろとノミネートされている作品の一つです。英語で鑑賞したので、残念ながらコメディ的な部分が大変よく解ったとは言えませんでした(とはいえ、こういう要素は英語がわかる人が見れば、訳を読むよりもストレートに伝わるものと思いますが…)。で、見た印象は、普通の日常の雰囲気で、しっかりとまとまっている、穴のない映画という印象。その普通感がとても心地よいというところでしょうか。

まずは、冒頭のレディ・バードが車から落ちた時の母の反応(悲鳴)から、ああ、普通の家庭の物語なんだなと、少し安心します。壊れた反応をしないので。ということです。これは、その後を見るにも非常に大切なことと思います。そして、比較的穏やかなカトリック系の学校の雰囲気と、17歳から18歳への一コマ。卒業までの日々で起こる、友達や父母との葛藤と、成長。周囲もみな、悩み多き世代で、再びレディ・バードからクリスティンへ戻って行く。まぁ、有り体に言えば青春グラフィティということで。

シアーシャ・ローナンを見るのは「ブルックリン」以来。あの時も、地方から都会へという役柄でしたが、今回も都会を夢見る役柄。何となくそういう雰囲気が会っているのですかね。そして、母親役のローリー・メトカーフも、なかなかの熱演でいい味を出しています。もう一人の主役ということで、助演女優賞候補にもなっていることから期待大です。ということで、駆け込み気味ながら候補作をいくつか前もって見ておくと、アカデミー賞の発表も楽しみというもの。来週を待ちましょう。

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「命をつなぐバイオリン」 <WUNDERKINDER>とセンス無い邦題

ネットで検索しつつ、見ることのできた戦争ドラマ。題名を見る限りはそれほど興味をそそられるものではなかったのですが、こういう映画もしばらく見てないなと思い、見始めました。現在でも毎年のように作られ続けている、ナチスのホロコーストに関連するドラマです。これは、映画鑑賞一時中断直前の昨年11月の鑑賞です。

あらすじ
1941年、ソ連の支配下のウクライナに、神童と呼ばれた二人のユダヤ人の子供がいた。アブラ―シャ(エリン・コレフ)はバイオリン、ラリッサ(イーモゲン・ブレル)はピアノで人々を魅了。ソ連の幹部たちは二人の演奏を、党の体制の賜物と宣伝する。同じ町に住むドイツ人少女ハンナ(マティルダ・アダミック)もバイオリンの才能に恵まれ、アブラ―シャやラリッサと一緒にレッスンを受けたいと、二人の音楽教師でユダヤ人のイリーナ(グドルン・ランドグレーベ)の元で一緒にレッスンを始め、3人は固い友情で結ばれていく。やがて、ドイツ軍のソ連侵攻が開始、ナチスのシュヴァルトウ大佐(コンスタンティン・ヴェッカー)は、完璧な演奏を行えば、アブラ―シャとラリッサを特別待遇として強制収容所送りを免除してやると2人に伝えるが…。



冒頭は、現在の情景から。コンサート会場で演奏を終えたヴァイオリニストに突然に来客が現れます。それは、かつて彼女と固い友情で結ばれていた男性でした。そして、時代は1941年のウクライナに戻りました。

1941年、ソ連支配下のウクライナのポルタヴァのコンサート会場。アブラ―シャとラリッサは、素晴らしい演奏を披露し、観客の中には素晴らしい演奏に目を輝かせている幼いハンナがいました。演奏会では2人の素晴らしい演奏のあと、ソ連の幹部たちが登場し、二人が完璧な演奏をすることができるのは、自分たちの党の体制のおかげだと、宣伝を披露します。ハンナは国や民族など意に介さず、しきりに2人に近づきたがるようになりました。裕福なハンナ一家と、貧しい2人の間には大きな壁がありましたが、ハンナの積極的なアタックにお互いに友情が芽生え、やがて、3人は同じ教師の元でレッスンを受けるようになります。

ハンナ一家は、ドイツから入植し、工場を経営していました。当時ソ連とドイツは不可侵条約を結んで友好関係にあり、ウクライナはソ連支配下で、地元のウクライナ人はソ連の命令に従いつつ、ハンナ一家も優遇していました。しかし、ドイツが条約を破棄して宣戦布告したことから情勢は一変。いろいろと世話をやいてくれた、ウクライナの政府からもハンナ一家は手のひらを返したように攻撃を受けるようになり、家をも追われた一家は、アブラ―シャたちユダヤ人のコミュニティーに助けられ、身を隠すことになります。そこへドイツの占領軍が到着。ハンナ一家の待遇は再び一変しますが、今度は彼らを助けてくれたユダヤ人のコミュニティー、そして固い友情で結ばれた2人に次々と危機が訪れ、目につく者は皆収容所に送られるという事態となってしまいました。

固い絆で結ばれた、アブラ―シャ、ラリッサ、ハンナの3人は、友情の曲を作曲、大人たちとは無関係だと誓い合いますが、ナチスのユダヤ人狩りの手は、2人にも向かってきます。ハンナ一家は、二人が神童であり、対象から外すよう、この地を取り仕切るシュヴァルトウ大佐(コンスタンティン・ヴェッカー)に要請しますが、彼は、ヒムラーの誕生祝賀会で完璧な演奏を行えば、アブラ―シャとラリッサを特別待遇として強制収容所送りを免除してやると答え、ついに運命のコンサートの幕が上がりました…。

命をつなぐバイオリン

かなり重厚な、ホロコースト関連の映画でした。情勢や戦況が変わる中で、二転三転するハンナ一家の運命を追うと、この時代におけるウクライナと、そこに住む人々の立場のむつかしさや、処世術が前面に出てきて、厚みのある歴史ドラマになっていると思います。いろいろな人々に助けられながら生き抜いていた、入植したドイツ人の話は、これで一つの大きな主題であり、良く語られていると思いました。

そして、この物語の最大のテーマは、アブラ―シャとラリッサ、そしてユダヤ人コミュニティの運命でした。混乱する大人の世界の中で、音楽の神童として苦悩し生き抜いていく。そして、それを身を挺して助ける教師のイリーナ。戦禍の中でも固い絆で結ばれる、ハンナとの友情。そういったことが骨太でかつ丁寧に語られていきます。原題の通り、これは神童たちの物語であり、また、ナチス侵攻前後のウクライナの情勢を描いた歴史ドラマでした。

残念ながら、邦題の「命をつなぐバイオリン」という題名からは、この映画にとっては、ちょっとずれた期待を持って映画を見せてしまうような気がします。主題をそこだと絞ってみる形になってしまうと、ラストがどうなるかという興味が先に立ってしまい、丁寧に語られる歴史劇もまどろっこしく感じてしまいました。前半を大きな背景として歴史を見せて、重厚な物語にしているのに、興味は命をつなぐかどうかの、演奏会のみに向かってしまう。それに題名にバイオリンしか出てこないというのは、、ある意味ネタバレをしているようなもの。そういう意味でこの題名は内容を表してはいますが、映画の意図を消し去ってしまうという残念なものだと思いました。まぁ、題名に影響されずに見ろと言われるとそれまでですが、それはちょっと難しいですよね。

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「サバービコン 仮面を被った街」 コーエン兄弟によるレトロなクライムコメディ

飛行機の中の鑑賞の3本目。ついつい時間があったので見てしまいました。冬の東南アジアへの西行きの便は飛行時間がちょっと長くなるので、余裕で見れてしまうのです。選択時点で全く知識のない、日本未公開映画ということで、何が出てくるかという楽しみもあります。

あらすじ
1959年、白人だけが暮らす町サバービコンは閑静な住宅街として知られており、住民たちは幸福な生活を送っていたが、ある日サバービコンに、アフリカ系アメリカ人の一家が引っ越してきことから、不穏な空気が流れ始める。そんなある夜、2人の強盗がロッジ家に押し入り、強盗は全員を薬品で気絶させて縛り上げたが、妻のローズ(ジュリアン・ムーア)が過剰摂取で死亡。その後、ローズの双子の妹であるマーガレット(ジュリアン・ムーア二役)が子供ニッキー(ノア・ジュペ)の面倒をみるためにサバービコンにやってきた。マーガレットは、全くローズと同じ格好をして、ローズの夫であったガードナー(マット・デイモン)とも夜を過ごすようになっていった…。



冒頭は、50年代の住宅案内広告から。レトロな雰囲気で、楽園のようなコミュニティーのサバービコンを宣伝します。そして、閑静な白人だけが住む街に引っ越してきたアフリカ系アメリカ人の一家を見た住民は、ざわつき始めました。ロッジ家は、その家の隣にあり、引っ越してきた隣人を見ても特に異常反応を見せるでもなく、妻のローズはニッキーに、隣に越してきたあの子と遊んできなさいと勧めるほど。一方で、街の人々は会議を開いて、彼らへの対応について意見が分かれ紛糾する始末でした。

ある夜、ロッジ家に2人組の強盗が押し入り、一家全員をクロロホルムで気絶させて縛り上げますが、強盗が去った後妻のローズがクロロホルムの過剰摂取で亡くなってしまいます。ローズの代わりにニッキーの面倒を見るためにやってきた、双子の妹マーガレットは、自分の髪をローズと同じ色に染め、ローズの夫ガードナーと夜を過ごすなど、異様な振る舞いを始め、ニッキーはそれを見て不信感を募らせていました。

アフリカ系一家を取り巻く緊張状態が日に日に高まる中、ガードナーの留守中に、保険の調査員(オスカー・アイザック)がマーガレットの元にやってきます。調査員はマーガレットに違和感を覚え始め、ひっかけ質問をしマーガレットを問い詰めたところ、彼はたたき出されてしまいました。一方、ローズを殺した強盗も警察に身柄を確保されていましたが、面通しをしたガードナーとマーガレットは、「強盗はこの人たちではない」と証言。つまり計画殺人だったのです。そして、調査員、強盗、ロッジ家の保険金の争奪戦、隣家の緊張、事実を知って命を狙われるニッキーと、二重三重のクライマックスへ…。

サバービコン

見ていて、普通に楽しめたクライムコメディーでした。というか、こういう雰囲気の作品は大好きです。まずは、冒頭のレトロな不動産広告の雰囲気のいかにもという感じのコミュニティーの紹介。このコミュニティーや登場人物のいかにもちょっとずれたコメディですよという雰囲気。期せずして面白い映画を見ることができたと思います。

一方で、期待したけれども、あまり関連性を持たないまま終わってしまった、隣家のアフリカ系アメリカ人のエピソードは、何だったんだろうという感想が残りました。若干の交錯はありますが、大規模に盛り上がっておきながらも、メインストーリーとは関係なく、背後の情景程度の扱いになっているようです。ネットで見ると、このあたりがどうもこの映画があまり高く評価されていない一因の様です。確かに不満が残るのは事実です。冒頭の情景から、「ステップフォード・ワイフ」を思い出しましたが、せっかくなので、街の人がもっと事件に交錯していくと良かったのかな?

このストーリーはコーエン兄弟が80年代に書いてお蔵入りしていたものとのこと。確かに、コーエン兄弟らしい雰囲気のストーリーでした。やはり、ラストに向かう二重三重の負のスパイラルで盛り上がっていくあたり、なかなか面白いと思います。保険調査員の変わり身とかも、独特の一貫したセンスを持っています。ジュリアン・ムーアは、一人二役だったのですね。そう言われてみれば…。見ている時は解りませんでした(笑)。そして、全体的に見れば、この映画はやはりマット・デイモンの活躍が素晴らしいですね。良くも悪くも圧倒的な主役で、彼の活躍に尽きると思います。

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「オリエント急行殺人事件」 古今の名優と芳醇な物語を堪能

さて、2ヶ月ぶりに禁を破って見た映画は、この映画でした。2017年、ケネス・ブラナー監督主演の「オリエント急行殺人事件」。もちろん周知のごとく推理小説の名作で、何度か読んだ作品。最後に読んだのは、古いハヤカワ・ミステリを買ってきて、往年のミステリーの雰囲気を感じつつ読んだ時かな??いずれにしても、あのお話がどう映像化されているか、楽しみであったのです。

あらすじ
ヨーロッパの各地を結んで横断する豪華列車のオリエント急行。この列車がイスタンブールを発ってロンドンへ向かってしばらくして、ポワロに護衛をしてくれと訴えていた美術商のラチェット(ジョニー・デップ)が、客室で刺殺される事件が発生する。この列車に乗り合わせていた世界的名探偵エルキュール・ポワロ(ケネス・ブラナー)は、事件の真相に挑むことになるが…。



あまりにも有名な話なので、あらすじを書くのも何ですが…。それに、有名とはいえ推理小説のなので、オチを書かないのがマナー。取りあえず、さわりだけです。

エルサレムで盗難事件を、僅かな手掛かりから名推理で解決したポワロは、事件発生の知らせを受けロンドンに向かうべく、船でイスタンブールに渡ります。そして、イスタンブールで再開した旧知のブーク(トム・ベイトマン)は、国際列車の社員としてポワロの為に、季節外れの満席の列車に無理やり座席を手配し、2人はカレーに向かうオリエント急行に乗り込みました。満席の一等車にはポワロの他に、様々な職業、国の出身者が乗り合わせていました。列車はロンドンへの連絡のある、カレーに向けて走り出し、乗客の交流も進みましたが、その中の1人で、美術品を商売にしている狡猾そうな男ラチェットがポワロの同乗を知り、話しかけてきます。彼によれば、脅迫状を受け取っており、身の危険を感じているので、護衛を頼みたいとのこと。しかしポワロはラチェットの怪しい商売をしていて、狡猾な態度が気に入らず、これを断わりました。

ある夜、ポワロは隣室のラチェットの部屋での物音に気付き、車掌が確認しようとしますが、中からラチェットと思われる声がしたので、追及しませんでした。そして、山間部を走る列車が、吹き溜まりに突っ込み立ち往生した翌朝、起きてこないラチェットの部屋に踏み込むと、寝台の上でめった刺しにされている彼を発見。ブークは会社としてポワロに捜査を依頼します。

ポワロは、立ち往生した列車が動き出すまでの間にと、現場から発見された燃やされた脅迫状の言葉を手掛かりに、身分も職業も国籍も全くバラバラの乗客たちに聞き取りを始め、犯人と殺人事件の背景にあるものの解明に、推理を始めるのでした…。

オリエント急行殺人事件

さて、謎解きは置いておいて、まずキャストが豪華ですね。ジュディ・デンチが出てくると、それだけで大物感が漂いますし、ケネス・ブラナー はもちろん、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー…。いやはやなんとも、という感じでした。古今の名優たちに出会うのも、それは価値があるというものです。

勿論、ストーリーは解っている訳ですが、普通に本で読んでいると、サラッとしたミステリーとして読んでしまうのですけども、この映画で見ると謎解きはまぁ、そういう訳ですので、それよりもこの古典文学をいかに映画として演出するかというところが、楽しみとなっています。そういう意味では、この映画を見ていて感じるのは、アームストロングの悲劇の物語を、過不足なく、つまりやリ過ぎることなく描いていて、よくまとまっていましたと感じました。それによって、この物語の今や芳醇とでも形容したい香りが引き立ってくる。そういう映画でしょうか。

この映画が撮影されたのは、撮影場所の中に無いので、実際の事件の起こった、クロアチア・ボスニア国境ではないと思いますが、(あるいはCGで制作?)この列車の走る映像はなかなか美しく。今は無きオリエント急行のルートを、一部区間でいいので乗ってみたいなと思いました。当初オリエント急行は、ミュンヘン・ウィーン経由だったのですが、この映画の中の構内放送では、ミラノ・ヴェネチア経由の、後年のオリエント急行のルートになっていますね。

オリエント急行の映画って、以前白黒で見たことあるな?と思いつつ、この映画を見ていたのですが、そんなものは無く、すっかり「バルカン超特急」と混同していました(笑)。初歩的な勘違いです。事件の場所も季節も近所なのですね。

久しぶりに映画を見て、何かこう、往年のと形容されるようなものに触れられて、大満足でした。

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「スリー・ビルボード」 漂う閉塞感と個々の出演者の演技が見もの

映画鑑賞から2ヶ月ほど全く遠ざかっていました。何となく疲れたな…から、あえて休もうと思うようになると、そのまま2ヶ月が過ぎてしまったということ。多少は気になることも無かった訳ではないのですが、まぁ、そういうことでした。何か見てみたいなと思い始めた頃、機内でスイッチを入れてみると、立て続けに3本鑑賞(笑)。そのうちの一本です。いつの間にか、アカデミー賞の噂が飛び交う季節になっていました。

あらすじ
車のあまり通らない道路脇に設置された3枚の寂れた広告看板。それを見つけたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、レイプの上殺された娘の無念を晴らすべく、いまだ犯人を捕まえられない警察へのメッセージを掲載する。その標的にされた、警察署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、街では人望の厚い署長だった。その署長を敬愛する部下のディクソン(サム・ロックウェル)や、町の人々に取り下げるよう脅されても、ミルドレッドは一歩も引かない。そして、署長自身も問題を抱え、悩んでいた。そして、彼らの間で、次々と不穏な事件が起こり始めていく…。



ミズーリ州の田舎町でティーンエイジャーがレイプされた後に殺害されるという事件から7ヶ月。母親のミルドレッドは娘を奪われた無念と、犯人の手掛かりを何一つ発見できない警察に不信感を抱くようになっていました。ミルドレッドは郊外に3枚の連続した広告板を発見、それを借り受け、「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」という広告メッセージを貼りだすことにする。

ウィロビー署長は、市民や部下から敬愛されている人物でした。そして、差別主義者として悪名高い、部下のディクソンはミルドレッドを脅し、住民たちもやがて嫌がらせを始めますが、ミルドレッドはそれらを意に介しませんでした。ウィロビーは広告板の撤去を求め、自身は膵臓癌で余命僅かなことも告げますが、彼女はそれも承知の上と返します。ディクソンは、ミルドレッドの友人をでっち上げで逮捕し、保釈にも応じないなど、徹底抗戦の構えです。

そんな中、ミルドレッドは歯の治療中、ウィロビーと親しい歯科医から報復されそうになるが、逆にドリルで撃退。この件で、ウィロビーが彼女を尋問中突然吐血し、そのまま病院へと搬送されてしまいました。そして、死期の近いと悟ったウィロビーは、退院後に妻と2人の娘と郊外の湖で楽しい1日を設けたあと、その夜自殺してしまいます。この件によって、市民のミルドレッドへの嫌がらせは、さらに激しくなっていくのでした…。

スリー・ビルボード

全編を通じ、重苦しい雰囲気の流れる映画でした。前半は、ミルドレッドの行動は、ある程度納得感のあるもので、田舎の閉鎖的な社会という環境の中で、一人で戦う姿は共感が持てますし、これに対する悪役ともいえるディクソンは、極端ではありますが、この地域の根底に流れる考え方を代弁しているようにも見えます。しかし、この映画は冒頭のそうした善悪の対峙の構図から、だんだんと、登場人物の深い悩みが前面に出てきて、それは表向きには出さずとも、すべて平等に心に重荷を背負っており、どれも深くやりきれないものだという感じになってきました。そして、その葛藤が主題となっていきます。

そして中盤、緊張の堰が切れたように、明らかにやりすぎという感じで爆発しました。ディクソンが広告代理店の男を窓から投げ飛ばし、ミルドレッドは火炎瓶を投げる。ディクソンの行動は流れから納得感はありますが、火炎瓶はちょっと必然性という意味で浮いているような気がします。そこに現れる、新任の黒人署長。これでもかと、渦中にいろいろな要素がつぎ込まれてきて、それが物語に、いろいろな影響を与えていきました。そして、ラストは何となく救われた感じがするものと言ってよいと思いました。とりあえずの閉塞感からの脱出が、登場人物により良い影響を与えることを期待させます。

さて、出演した俳優さんたち、皆さんいい演技をしているなと感服しました。勿論、ミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドは、素晴らしいし、ディクソン役のサム・ロックウェルも、所作にいろいろな工夫が見られて、なるほどと思うところも多かったです。その上、あまり出演時間の少ない中で、チャーリーの憎たらしさや、チャーリーの情婦の徹底した脳天気さなど、かなり細かなところまで、よく演技されていると思います。ストーリー的にも水準以上とは思いますが、細かい演技にまでこだわっているという点で、なかなかの力作であると思います。まもなく発表されるアカデミー賞候補ということで、作品賞は内容的にちょっと難しいのかな?という気がしますが、主演女優賞と言われれば納得できる演技だと思いました。

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