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私の好きな100本の映画⑫ 世界地図を眺めながら

私の好きな100本の映画第12回

さて今回は、世界地図を眺めながらということで、日本でも欧米の映画の主要な制作国でもない国々の映画から、5本選択してみました。かといって、そうマイナーな地域でもなく、マイナーな映画でもないのですが。5本選んでみると、そのいくつかは世界各地で起こる紛争を題材にしたものが、入っています。そういった映画は強い印象を残すので、広く公開されたり、選択に入ってきてると思います。それではご笑覧ください。



56.少林サッカー (少林足球)
  2001年 香港 監督:チャウ・シンチー 出演:チャウ・シンチー ヴィッキー・チャオ

あまり普段見に行かないタイプの映画だったので、なぜ見に行ったかは記憶が定かでないのですが、一回見て大変気に入りました。バカバカしいと言えばそうでしょうが、とにかくノンストップで面白かったということでした。次々と現れるギャグが、テンポが良くて息つく暇もありませんという感じです。結局チャウ・シンチーはこれ以後もいろいろと作っていますけど、結局はこれしか見たことがありません。でも、これ一作で私にとっては強烈な印象が残っています。香港映画は見るといつも面白いと思うのですが、深く突っ込んでみたことが無いので、これからの課題です。



57.イノセント・ボイス 12歳の戦場 (Voces Inocentes)
  2004年 メキシコ 監督:ルイス・マンドーキ 出演:カルロス・パディジャ レオノア・ヴァレラ

こちらは地域の紛争を題材とした一本。強い印象を残す映画です。無防備に見るとトラウマになるくらいのものです。エルサルバドルは元々この地域を代表する工業国でありながら、長年の内戦が続いた国。日本とも関係が深いのですが、内戦にはアメリカなど諸国の思惑も入っていたと言われています。そして、この映画で描かれる内容は、政府軍とゲリラの戦いとその犠牲となる一般市民が描かれますが、それは小学生の子供たちも犠牲者となり、加害者ともされるものです。とてもこのような状況下では生きられないと思うような映画で、平和とは全くの対極にある状況が確かに実在したことが描かれています。



58.路 (Yol)
  1982年 トルコ 監督:シェリフ・ギュレン (ユルマズ・ギュネイ) 出演:タールク・アカン シェリフ・セゼル

これも地域紛争というより、地域のかかえる問題が忠実に描かれている映画でした。クルドに関する問題は今で続いていますが、これは当時のトルコにおける状況を描いたもの。クルドの人々が収容所から決められた日数の外出許可を与えられ、その間に遠く離れた故郷の家族に会いに行く群像劇です。彼らは、家族との再会を果たせたものもいますが、離れている間に残された家族の事情も過去とは変わってしまうことが多く、また厳しい戒律を守る人たちの中で、いろいろな問題が発生していることが忠実に描かれています。ユルマズ・ギュネイの多数の作品と同様に、獄中からの指示により制作した作品です。第35回カンヌのパルムドールです。

路



59.ドッグヴィル (Dogville)
  2003年 デンマーク 監督:ラース・フォン・トリアー 出演:ニコール・キッドマン ポール・ベタニー

ラース・フォン・トリアー監督はかなりメジャーな監督ですが、内容はかなり特異な映画を製作しています。どれも印象を強く残すもので、いろいろなところで評価され受賞しています。出演者もハリウッドスター級の俳優が多くなっています。彼の映画は過激であり、病的であり、性描写も多いものです。この映画は特異な表現手法を取っており、閉鎖社会の非寛容や、人間の本性とそれを隠そうとする道徳観念の無意味さを表現した作品となっています。かなり観念的な作品なので難しいのですが、一方でニコール・キッドマンがいっぱい見られるというのが、私にとってはポイントアップです。



60.尻に憑かれた男 (O Cheiro do Ralo)
  2007年 ブラジル 監督:エイトール・ダーリア 出演:ロウレンソ・ムタレリ パウラ・ブラウン

南米の映画は、ひところよく見たのですが、熱くて面白い映画が多いので結構好きでもありました。その中ででてきたこの映画は、まぁ変な映画です。らしいと言えばらしいのですが、これを南米代表というのはちょっと?という感じもしなくもないのですが…。まぁ面白いので。終始、ロウレンソ・ムタレリの変な役を見る羽目になるのですが、ここまで変な人も珍しいし、この骨董屋に集まる有象無象も、どれも性格が面白いので、ある意味徹底している映画だと思いました。ということで、好きな映画に入れております。ブラジルやアルゼンチンの映画って、情熱的だけど、一風変わった凝った映画が多く、見ていると楽しいと思います。



さて、私の好きな100本の映画。第12回の5本は、普段あまり見ない国々の映画を選んでみました。他にもタイ映画とか、特徴があって面白いのですが、また機会があればと思います。そんなに語れるほどの本数を見ている訳ではないので…。また、これから次回の5本を選びにかかります。100本は、見たことのある映画に対して数が多かったかな?とやはり感じていますが…。

テーマ : お気に入り映画
ジャンル : 映画

「スモールタウン マーダー ソングズ」 カナダの小さな町の出来事

上映時間が短いので、気軽に見ようと見始めました。圧倒的な緊迫感が支配するクライムサスペンスという紹介文にも惹かれるものがありました。この紹介は当たっているような、いないような感じですが、ちょっと変わった雰囲気の映画で楽しめました。GYAO!の無料配信からの鑑賞です。

あらすじ
敬虔なメノナイト教徒が暮らす小さな村で、身元不明の若い女性の全裸死体が湖畔で発見された。地元警察のウォルター(ピーター・ストーメア)は、捜査するうちに、通報してきたのが別れた恋人のリタ(ジル・ヘネシー)だと知る。彼には過度の暴力行為でトラブルを起こした過去があり、それが原因でリタとも別れたのだ。ウォルターは改心し、やり直そうとしていたが、やがてリタの新しい恋人スティーブ(ステファン・エリック・マッキンタイア)が容疑者として浮かび上がり、彼をかばうリタを問い詰めようとするうちに、ウォルターの心に、封印したはずの凶暴性が目覚め始める…。



一風変わったロックなどの音楽が冒頭部を支配します。ウォルターの暴行を見つめるリタの場面ですが、暴行の場面が移されている訳ではなく、最初はそうと解りません。そして、敬虔に教会に通う良き警察官のウォルターと、カナダの田舎の光景。そして、スティーブの登場とウォルターの確執の場面があり、女性の遺体発見の場面に映ります。

事件の捜査は、本署のワシントン警部(アリ・コーエン)が当たりますが、実際に活動するのは地元警察のウォルターたち。彼らは事件の通報の録音を聞きながら、それがリタの声だと突き止め、スティーブとリタを警察に連行し尋問します。しかし、明らかに彼らの発言は怪しいのですが、決め手がなく一旦帰されることに。この場面でも、ウォルターは尋問にあたらず、すれ違う彼らとの確執が見られます。

町では、殺人犯が野放しにされていると報道され、警察への批判が出始める中で、ウォルターの心に怒りが湧き始めました。彼らは小さな町によそ者が来る場としてストリップバーに目を付け聞き込みをすると、被害者はその店の踊り子で、事件当日にスティーブと会っていたことを突き止め、リタの証言が嘘だという疑いが深くなってきます。ウォルターは単独でリタに会いに行きますが、暴行事件で別れた二人はそもそも近寄ってはならない関係となっており、スティーブとリタに追い返され、警察にも通報されました。

この行動で、ウォルターは事件の捜査を外されますが、いよいよ捜査の進展に対する町の噂話を聞くと堪えられなくなり、凶暴な心がもたげるのに任せ、再び単独でリタの家を訪れ、スティーブと乱闘になります。ウォルターは心を抑え、暴力を思いとどまり、殴られるに任せますが、この一件でリタが警察に偽証を認め、スティーブは逮捕されました。そしてそこには再び平穏な心に戻ったウォルターがいました。

スモールタウン マーダー ソングズ

サスペンスというには非常に単純なストーリーでした。この映画の特徴はむしろ短い時間に凝縮された一風変わった雰囲気にあります。なかなか書きづらいのですが、いろいろとアンバランスなものが組み合わさりバランスを取っているような感じです。音楽は比較的うるさいような感じです。土俗的な感じのロックのリズム。かなり刺激的な音も入ります。映像はいたって静か。田園風景や美しく、一方でけたたましい音の中で、スローモーションのように動く警察の捜査。少なくとの導入部の光景は、プロモーションビデオのような雰囲気さえ卍ます。

出てくる人物は、敬虔なメノナイト教徒という設定で、不道徳なものに対し大きな拒否反応を見せる一方で、発言が妙に過激だったりして、このあたりのバランスも奇妙なところがありますが、これは宗教感に疎い自分が見て思うことなのかもしれません。いろいろな人の心の動きが出てきますが、それは解るのですが、どうもそれがしっくりこないような雰囲気の人々です。普通の人らしくないというか…。

ということで、ストーリーのメインはウォルターの悩みや心の動きをじっくりと追っていく話なのですが、雰囲気としては、ちょっと一風変わったサスペンスというより、ドラマでした。ある一定の価値基準で構成されているように思えますが、どうも普通の感覚では無いような独特の感じがして、面白い作りだと思います。メノナイトの人々で構成された、小さま町で起こった事件という設定で、浮世離れした雰囲気を演出しているということなのでしょうか。独特の音楽やスローモーションの映像、そして宗教感を押し出した興味深い作品でした。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「青空娘」 なんという美しく清々しい映画なのでしょう

またまた、増村保造監督の大映作品です。今回は、1957年の映画で、「青空娘」。若尾文子主演の青春ストーリー。去年だったか、日本で若尾文子特集を、どこぞやでやっていた時のパンフレットが、この映画のワンカットだったと記憶しています。そういう意味では、彼女の代表作の一つなのでしょうか。

あらすじ
高校を卒業した小野有子(若尾文子)は、東京の父母(信欣三・沢村貞子)の許に帰ることになっていた。だが小さい頃から育ててくれたお婆さん(滝花久子)に臨終の際に、本当の母は他にいることを聞かされる。小野家につくと、待遇は女中扱い。妾の娘であることで、父親への分も含めて、一身に恨みを請け負うことになる。しかし、彼女は「青空のように明るく生きる」ことを教えてくれた二見先生(菅原謙二)の教えのもと、明るく過ごしていた。そんなある日、ついに小野家にいられなくなって田舎に帰って見ると、少し前に実の母(三宅邦子)が訪ねてきたことを知る…。



海のある田舎町で暮らす有子は、卒業後両親のいる東京で暮らすことになっていました。そんな時に、祖母が急死。息を引き取る前に、祖母は有子は父親と愛人の子どもだと伝えます。有子は一人海岸で佇み悩んでいましたが、慕っていた教師の二見が現れ、青空に希望を託し、別れの言葉を叫ぶのでした。上京した有子を待っていたのは、父母の家での女中扱いの生活でした。母、兄(品川隆二)、姉(穂高のり子)から疎外され、物置に住まわされ、先輩女中の八重(ミヤコ蝶々)と、有子の明るさに引かれた弟の弘志(岩垂幸彦)だけが味方でした。そんなある日、照子の婿選びパーティーが小野家で開催され、照子が思いを寄せる広岡(川崎敬三)の心を捕らえてしまいます。

出張から帰った父は、有子との再会に喜びながらも、妻の達子に有子の待遇の悪さを改善するよう要求しますが、達子は頑として受け入れません。仕方なく父は、有子を外に連れ出し、母町子の思い出を語ります。押し付けられた妻は最初から愛してはいない。本当に愛しているのは、有子の母の町子だと。有子は父から町子の写真をもらい受けました。しかしその写真は、姉の照子が盗み出し、広岡を有子に取られたことと、そして父まで有子に取られそうな事に腹を立て、母の写真を有子の目の前で破ってしまいます。怒った有子は照子を組み伏せ、家を出ざるを得なくなりました。

家を出た有子は、田舎に戻りますが、彼女を驚かせたのは、実母の町子が三日前に訪ねてきたという知らせでした。母は東京に住んでいるとのことで、母を探すため、再び上京を決意します。東京に戻った町子は、二見と広岡の協力を得て、母を探し始めます。一方小野家では、父の栄一が有子の家出が原因で病に臥してしまい、弘志が有子を見つけて呼びに来ますが、有子は達子以下の家族のことを思い、断っていました。その頃、二見と広岡は町子を見つけ出し、有子との再開をセットします。そこに弘志と女中の八重が父の重態を伝えに現れ、意を決して有子は小野家に向かい、父に対し今までの身勝手さについて、厳しい言葉を投げつけます。この言葉は、小野家の人々にも同時に影響を与えるものでした。そして、有子は小野家一人ひとりに挨拶を済ませ、二度と帰らないと言いおいて、母と広岡との新しい生活を始めようと、田舎の海岸の青空の下で誓うのでした。

青空娘

なんという美しい映画なのでしょう。ベタな感想ですが、こんな清々しい映画を見たのは久しぶりです。前の日に見た「盲獣」とは同じ監督と思えない作品。青空のような有子の姿が素晴らしいし、カラー映像も美しいです。その素直な有子の姿を見ているだけで感動します。大変美しくてかわいいだけに、怒った顔はすごく怖い。照子に掴みかかった時の顔は大変怖い。病床の父親を叱る場面は、厳しい言葉の中に優しさがあふれていました。

思えばこの9年後、「氷点」では全く逆の役を演じていました。純真な安田道代をいじめる若尾文子。あの安田道代と、この若尾文子の純真さがダブってきます。とは言っても、50年代から60年代にかけて夥しい作品に出演されているので、数々の名演技があるのではないかと思います。いまさらではございますが、もっとたくさんの若尾文子を見てみたいと思いました。

1950年代の邦画は、まだカラー映画の黎明期ですので、この年代の若尾文子が美しいカラー映像で見られるというのも大変有難いことだと思いました。青空の色と、青空娘の若尾文子と、幸せな組み合わせでした。そして、若干趣味的ではありますが、1950年代の東海道本線(と思いますが)の映像が何度かでてきます。電車も登場していた時代とは言え、カラーで見る旧型電気機関車の牽引する客車と東海道本線の取り合わせは、いち早く電車化が進んだ本線だけに、ちょっと楽しさを感じてしまいました。

という訳で、公衆電話の並ぶ列や、東京駅周辺や銀座の当時の光景など、いろんな意味で面白かったです。もっと、楽しい映画を見たいと思わせる、いい作品だったと思います。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「盲獣」 監禁状態での異常性愛で当時の風俗を慮る

増村保造監督の「盲獣」は、非常に個性的な作品として語り継がれているようです。たぶん、好きな部類に入ると思うので、休日の午後に見てみました。いや、なかなか、こういうドラマって、今ではいろんな意味で見られないでしょう…という作品でした。けっこう衝撃的です。1969年の映画です。

あらすじ
モデルの島アキ(緑魔子)は、自分のヌード写真が展示してある個展会場で、アキをモデルにした石膏裸像を丹念に撫で廻している男(船越英二)を目撃する。数日後、アキが呼んだマッサージ師は、なんと例の個展会場にいた男だった。アキはクロロホルムを嗅され、彼の彫刻のアトリエに連れ去られてしまう。彼にとっては、外界を知るには触覚が最高であり、特に女性の体が最高に素晴らしく、理想の女性でるアキをモデルに作品を作りたいという。早く監禁状態から解放されたいアキは、いろいろな策を講じていくが…。



この映画は、モデルであるアキの独白から始まります。まず、自身の芸術的ヌード写真が次々と出てきて、その個展会場へ。早い時間に会場に着いた時に客は一人。しかしその客は、アキをモデルにした裸像を舐めるように撫でていました。そして数日後、撮影旅行から帰ったアキは疲れを取るためにマッサージ師を呼びますが、来た男はあの個展会場の男でした。そして、その執拗な撫で方に気味悪さを感じたアキは、彼を返そうとしますが、クロロホルムをかがされて、人里離れた倉庫のような建物の中に拉致されてしまいました。

連れ去られた場所は、壁に人体のパーツの彫刻がたくさん埋め込まれ、中央に大きな女性の石膏裸像のある部屋でした。連れ去った男は盲人で、彼にとって、この世で一番素晴らしいものは女体であり、その彫刻を制作しつつ理想の女性としてアキを連れ去ったのでした。視覚の不自由な彼にとって、最も重要なのは触覚であり、その研ぎ澄まされた感覚を彫刻に実現しているとのこと。彼は、この密室でモデルになることを要求します。抵抗して一夜を過ごしたアキですが、翌日にはモデルになることを受諾、ポーズを取りますが、お腹が痛いので薬を買いに行って欲しいと頼み、その隙に逃げようとしますが、母親(千石規子)につかまってしまいます。

再び、製作に戻った男をアキは誘惑し、母親と男の関係を破壊して、それを利用しようとします。ついに母親は、アキを追い出そうとしますが、今度はこれが男に見つかり、もみ合いになって母親は亡くなってしまいました。男は母を死に至らしめたのはアキだとして、復讐のようにアキを犯しますが、そんな日が続くうちにわずかながら愛が生まれてくるようになります。そして、地下に埋められた母親が腐り始めるころ、暗い密室で甘美な触覚だけの世界に過ごすようになった二人は、より強い刺激を求めて、お互いを噛み合い、傷つけ合い、SMの世界に没入。二人は徐々に衰弱して行き、満足に動けなくなった二人は、死を意識します。そして、アキは、最後の快楽として男に手足の切断を頼み、男はアキの四肢を切断したあと、自らの胸に包丁を突き立てました。

触覚の世界の快楽の先にあったのは、暗い死の世界でした。

盲獣

なかなか評価しづらい作品でした。

耽美的といえばそうであり、背徳的といえばそうであり、猟奇的でもあり、ちょっと表現が難しいですが、昭和44年頃、こういうストーリーが、どうとらえられたのかな?と考えてしまいます。こういった内容は過去から古今東西脈々と存在し、日本では「奇譚クラブ」が昭和の後半の長きにわたって刊行を続けているので、風俗の中では確かに存在していました。一方で、アダルトビデオが氾濫するほど、解放された現在において、逆にタブーになってしまった物もたくさんあります。この時代に普通に公に存在するもので、今では持っているだけでも手が後ろに回る物もありますし、この映画の中で話されている言葉も使用できないものが沢山あります。

という事ですので、同時代の常識的観点からこの映画を見るという事はとても出来ないのですが、こういった分野において芸術的、普遍的な価値を求めたものという事ではないかと思います。緑魔子さん自身が脱ぐのは厭わないが、芸術的嗜好が強かったというキャラクターだったらしいので、それがこの映画の熱演になって現れているのかもしれません。冒頭から、ヌード写真の芸術や、触覚でつくる芸術、人間のパーツの彫刻で埋め尽くされた部屋など、かなり芸術を意識した造りになっている映画でした。

船越英二の演技は、素晴らしいと思いました。よくこんな雰囲気を出せたと感心してしまいます。この映画の登場人物は僅か3人。それぞれが強烈な個性を放っており、異常な人間の心理の一面を良く表現していると思います。そういった意味で、この映画自体は演技や表現など、素晴らしい作品と思います。そして、そういう嗜好もあるということを、公然と耽美的に描いたものとして理解しました。一方で、四肢切断までをここまで芸術的に高めるというのも、今の感覚だと、ちょっとやりすぎでは無かろうかとも思ってしまう次第です。アングラな物や、そういう映画だと思ってみれば、気にせず見てしまうのですが…。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「スロベニアの娼婦」 発展途上の社会での、ある女子大生の姿

GYAO!の無料配信で、久しぶりにヨーロッパの雰囲気が味わえそうな映画を見つけたので、さっそく鑑賞して見ました。もちろんエロス的要素も重要ですが、基本的にほぼヌードはありませんので、これはお断りしておきます(笑)。2009年の、スロベニア ドイツ セルビア クロアチア ボスニア・ヘルツェゴビナ合作作品(一昔前なら、ユーゴスラビア ドイツ合作) 。主役のニーナ・イヴァニシさんは、この映画で2つほど主演女優賞を取っていますね。

あらすじ
田舎町からリュブリャナに出てきた学生のサーシャ(ニーナ・イヴァニシ)は、都会のセレブな生活に憧れ、リュブリャナの一等地にマンションを購入するが、これは彼女が自営の娼婦として稼いだ金によるものだった。ところが、彼女の周りで事件や横やりなど様々なトラブルが発生し、娼婦を続けづらくなる中で、稼がなければローンが払えないというジレンマに陥ってしまうが…。



冒頭は、スロベニアがEU議長国になったという紹介から。見る前は解りませんが、それによって引き起こされた事件であったということでした。女子大生であるサーシャは大学で英語の講義を受けながら、都会でセレブな生活をしたいという思いから、マンションを購入するために体を売る毎日でした。ところが、客のいるホテルの部屋に入ると、客が(たぶんバイアグラによる)心臓発作に苦しんでおり、彼女はフロントに救助の依頼をして客の財布から金をとりその場を立ち去ります。この客はドイツ政府関係者で、彼女は英語を武器にEUの会議に来る各国の要人を相手にしていた模様。しかし、この事件で現場にスロベニカという名前の娼婦がいたことが報道され、彼女は警察に追われる存在になってしまいます。

彼女は新しく一等地に購入したマンションに引っ越し、ローン返済のため売春を続けますが、ある日客の部屋に行くと、勝手に商売をしていると目を付けたやくざに拘束され、彼らの配下で客を取ることを強要されます。そこはなんとか逃げ出しますが、以後、今まで通りに客が取れなくなってしまいました。しかし、銀行の返済は待ってくれず、仕方なく新聞広告を出し再び客を取り始めますが、何人目かの客は、なんと父(ピーター・ムセフスキ)の親友(プリモス・ピルナット)。彼は父に黙っているという条件で、ただで彼女を抱いてしまいました。

いろいろと嫌気がさした彼女は、銀行への返済も難しくなり、周囲にも事実がバレ始めたため、マンションの売却を決意、リュブリャナからも引っ越し、父の棲む田舎に帰っていくことを決意し、先行きは不安ながら新しい生活を始めようとするのでした。

スロベニアの娼婦

と、メインストーリーだけ追ってしまうと、身も蓋もない話です。しかし、この物語を彩るのは、これに付随するいろいろなエピソード。彼女の父は、母と離婚して一人暮らし。娘を信じ、またいつも心配しています。また父は昔バンドをやっていたようで、この物語の初めの方でバンドを再結成。最後に彼女が田舎に戻ってたどり着いたのは、父のバンドの演奏会。また、その中には自分をただで抱いたドラマーがいる。このあたりも先行き不安です。また彼女は、彼女の為に家庭を捨てた男にストーキングされています。やくざに追い詰められて、一時的に避けていたこの男に助けを求めますが、その夜彼女が売春していたことがバレてしまいます。彼女の為に人生を棒に振った男は、最後に彼女に捨て台詞を残し、これも彼女が田舎に帰る決心に一役買ったようです。

いろいろな彼女の行動を見ていると、事件を収束させず、それでも次から次へと新たな問題の種を撒いていく様は、明らかに世の中を舐めていると思わずにはいられません。しかし、田舎から都会へ出てきて、いい生活をしたいという女性が、自分を武器に切り開いていくのは、まさに発展途上の社会では、ありがちな光景。一部に金持ちが出てきて、また先進国の外国人が流入してくる。スロベニアがEUの議長国になった時代というのは、そういう時代だったということが伺い知れます。繰り返し出てくる、要人を護衛する警察車のけたたましい行列は、まさにその象徴でもあるのでしょう。

描き方があっさりしているので、主張があまり前面に出てきてはいませんが、そういった社会の状況、田舎に戻っていく彼女、故郷では、固有の狭い人間関係の濃密さと、優しさ。それらのスロベニアがユーゴスラビアから脱して、ヨーロッパの先進国に入っていく中でのいろいろな社会の現象や苦悩が静かに描かれていると思いました。そして、主役のニーナ・イヴァニシさんはいいですね!可愛さと美人を兼ね備えています。この映画ではツンデレ系で、かなり場当たり的に生きている女子大生の感じを良く出していると思いました。日本では公開されている映画は無いですが、スロベニアではいくつか作品があるようですので、注目しておきたいと思います。

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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