FC2ブログ

「アルカナ ARCANA」 なかなか気合の入ったB級ホラー?

休日の午後、何となく見てしまった「アルカナ」。和製B級ホラーかな?ということで普段はあまり見ないジャンルではありますが、土屋太鳳や谷村美月の名前につられて鑑賞しました。土屋太鳳は、朝ドラの「まれ」より前の作品。このころはロングヘアで、ちょっと雰囲気が違いますね。

あらすじ
連続殺人事件捜査担当の村上刑事(中河内雅貴)は、現場で少女・マキ(土屋太鳳)と出会う。マキの言動は不安定で、被害者である死者たちの声に導かれて現場にいたと主張するが、容疑者扱いをされていた。村上だけは、自分も幼い頃から霊が見えていた経験からマキの言葉を信じはじめた時、オカルトを研究し未解決事件を追う、通称お宮係りの者たちが、分裂したもう一人の分身が本体の人間を襲う現象が起きており、一連の事件には、この分身が関わっているらしいことを告げる。事件を追う村上ともう一人のマキの出現、そして、人間と分身の壮絶な戦いが始まった…。



冒頭から、凄惨な大量殺人事件の現場や、そこで心臓を持って立っている少女、そして出現する霊など、かなりグロい場面が連続します。これは先が大変だぞと覚悟をすることになります。結果的には、タイトルが出るまでのこのモザイクのように積み重ねられたエピソードが、全体の背景説明になっているようです。

村上たちはマキ(この時点では名前不詳)の少女を拘留しますが、現場に割って入ってきたのは、お宮係の橋(岸谷五朗)たち一行。なにやら怪しげな装置で霊の存在の探知をしているようで、おかしな雰囲気でした。

村上は、マキの尋問を続けるうちに、放棄された教習所跡に死体が埋まっているというマキの主張に導かれて、マキをつれてそこを訪ねると、別件の殺人犯グループを発見。銃撃戦の上確保しますが、容疑者をみだりに連れ出したということで、休暇を言い渡されました。その間にお宮係の部隊はマキのもう一人の分身長瀬サツキを発見し、警察に連れ戻っていました。

橋たちお宮係は、村上たちに拘留している他の分身たちを見せ、分身たちが一連の事件の犯人であり、マキを渡すように要求しますが、マキの優しい性格に彼女を信じ、守ろうとする行動をとり始めていた村上は拒否します。しかし、そこに人間に恨みを持ち、本体の心臓を食べてパワーアップした分身たちが集結。分身たちを奪いに現れ、警察署の中で壮絶な戦いが始まり、警察の面々に瀕死の重傷を負わせ、マキとサツキは分身たちに拉致されてしまいました。

そして、村上も動くのがやっとの重傷を負いましたが、署員に激励されマキの奪還と、悪意を持つ分身たちと決戦を行うべく、分身たちのアジトに向かいますが…。

アルカナ

B級ホラーと思って、心して見始めたのですが、けっこう役者さんが豪華でした。それに、冒頭の事件の場面が終われば、内容はグロくはなく、オカルト系で荒唐無稽な話ではあるものの、それなりに気合が入っています。まぁ、気合が入り過ぎて、おかしなことを大真面目に主張するところなど、笑ってしまいます。「人間は分裂してはいけないんだっ!」と力を込めて言う岸谷五朗とか最高なんですが。

人間が分裂する原因は、臨死体験をしたときに分裂してしまうというもので、性格も正反対になって現れるらしい。そういえば、冒頭でマキ(いやサツキ)の飛び降り自殺のシーンがありました。なるほどなるほど…。

話としては、意外と複雑で、分身もいろいろ出てくるのですが、それぞれの背景が語られていないので、行動の必然性がわかりにくい部分があります。村上の部下である田口がなぜマキに悶絶させられたのか?中林はなぜ分身にやられてしまったのか?などなど、最後まで見て回収されていない部分も、ままあったりと、最終的にはスッキリしない部分もいろいろとあるのが残念なところ。しかし、予想した以上に面白かったというのが印象でした。

さて、土屋太鳳さんなんですが、気にして見始めたのはそんなに昔ではないので、このころの印象があまりありません。見ていたとしたら、花子とアンくらい。最近は髪の毛が短くて、顔全体を出しているので、どうしても顔が大きく見えてしまうのですが、このころはちょっと雰囲気が違ったかなとう印象でした。で、ネットで土屋太鳳を検索していろいろな髪形のいろいろな時期のものを並べてみると、七変化みたいにそれぞれ印象がかなり違っていて、なんか、いろんな女優に似ているなぁと思いました。とりあえず思いついたのは、吉高由里子、三吉彩花(ちょっと小顔ですが)、髪形によっては広瀬すずに近いのもあったりして…。いや、あまり賛同は得られませんですかね…。
スポンサーサイト



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ダンケルク」 (2017) 映像の迫力で迫る戦争の現実

久しぶりの、ホーチミン市での映画鑑賞。今回は最近封切られた「ダンケルク」です。最近見た中では、インターステラーが印象的な、クリストファー・ノーラン監督の作品で、セリフが極端に少なく、映像で勝負的な映画という予備知識です。そうであれば、英語で見ても何とかなるだろうという感じで見に行きました。予告編も迫力がありましたし…。 

あらすじ
1940年5月。フランス北端の港町ダンケルクに追いつめられた英仏40万の兵士たち。この兵士たちの救出のため、ドーバー海峡にいる船舶を軍艦、民間問わず総動員した撤退作戦が決行された。そこに撤退を阻止するべく、ドイツ空軍が襲い掛かる。兵士たちは、生還できるのか―。



静かな街並みに響く銃声。ドイツ軍に包囲されたダンケルクの街はひっそりと静まり返り、連合軍側の兵士トミー(フィオン・ホワイトヘッド)は、ほかの数人の兵士と共にドイツ軍に銃撃され、ただ一人ダンケルクのビーチにたどり着きました。そこには撤退を待つ大勢の兵士が列をなしていますが、そこにドイツ軍の戦闘機が容赦なく襲い掛かっていました。冒頭は、そういった容赦ないシーンで始まり、三つの脱出劇画並行して進みます。

1.冒頭のトミーの物語
ビーチで出会った兵士とともに、トミーは見つけた怪我人を担架に乗せて、すでに満員で出港間近の病院船に紛れ込もうとしますが、船から降ろされてしまい、二人は諦めず防波堤下の柱に隠れ、次の船を待つことにしました。すると、その病院船もドイツ空軍に沈没させられてしまいます。混乱の中で、別の輸送船になんとか乗り込めたのですが、これも夜間に魚雷攻撃にあい、あえなく撃沈。船から脱出した二人は、ボートに引かれて再びダンケルクのビーチに戻りますが…。

2.民間人のボートの物語
民間の船やボートに救助要請が出ると、ドーソン(マーク・ライランス)は息子とジョージ(バリー・コーガン)を乗せて、自らダンケルクに向けて救助に向かいます。ダンケルクに向かう途中で、憔悴した兵士を海から救助した彼らは、危険なので戻るように懇願されますが、ドーソンたちはダンケルクに向かうと告げると、兵士ともみあいになり、ジョージが転倒。昏睡状態に…。

3.イギリス空軍のパイロットたちの物語
イギリス空軍のスピットファイアー3機が脱出の援護の為にダンケルク上空に向かいますが、1機、2機と撃ち落されていきました。残ったファリアー(トム・ハーディ)は、燃料が底をつくリスクがある中で、一機でドイツ空軍に立ち向かうこととなりました…。

この3つのストーリーを軸にダンケルクの撤退が描かれていきました。

ダンケルク

冒頭から、終始緊張感をもった映像と音楽の連続でした。まさに、息詰まる緊張感という言葉がピッタリです。本当に息苦しくなるくらい。少し、人間ドラマ的な部分がそれぞれのエピソードに入っていますが、それほどウエイトは高くないと思います。とにかくセリフは少なく、生還の物語を映像を中心に押している感じです。

この映画では、輸送船や病院船はことごとく撃沈され、民間のボートが活躍した格好になっていますが、実際は40万人規模ですから、大型の軍艦もかなり撤退に参加していたはずです。この映画を見てると、大型船は次々とドイツ空軍の標的にされ、小型のボートが脱出の主役になったような感じを受けます。そのあたりは、多分に誇張があって、国民総出で兵士を救出したということがクローズアップされ、後の国威発揚に繋がり、語り継がれることになっていったのでしょう。

戦場にいる個々の登場人物には、戦い全体を俯瞰することは当然できませんので、それぞれの目線で、実際にどういうことであったのかが描かれているという形になっています。何が何でも脱出する、あるいはさせるという、強い意思で行動していることがよく描かれており、それを表現した、画面の迫力が素晴らしいと思いました。また、撤退している兵士は、攻撃している訳ではないので、命を落とす場合は、たまたま場所が悪かったといったような運次第になってしまいますが、そのような兵士が次々と斃されていくあたり、まさに、戦場の非情さを終始見せつけられるような映画になっていました。

最後に、セリフが少ないので英語で鑑賞してもなんとかなるだろう、というのはとんだ見当違いで、イギリス英語が英語でない外国語のように感じられ、ダンケルクという場所柄、英語以外の言語も入っている感じがして、頭の中がたいそう混乱した次第です。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「夜の道」 美しい西部の情景が堪能できる映画

久しぶりに、買い置きのDVDを見るシリーズ。今日は「夜の道」を取り出してみました。ジェームズ・スチュアート主演のウェスタン。1957年の映画です。監督はジェームズ・ニールソン。正直あまりよく知りません。とりあえずジェームズ・スチュアート主演ということで、一定の水準と、人情派的な雰囲気が期待できます。

あらすじ
奥地での鉄道敷設現場に戻ってきたマクレーン(ジェームズ・スチュアート)。以前鉄道会社に勤めていたが、強盗の一味である、ユチカ・キッド(オーディ・マーフィ)を逃がしたことで、首になって5年。今はアコーディオンで音楽を聞かせながら、糊口をしのぐ毎日であった。この作業隊では、給金列車がホワイティ(ダン・デュリエ)を首領とする強盗団に襲われ、給金の支払いが滞り爆発寸前。工事会社の支配人キンブルは給金輸送をマクレーンに依頼することを思いつく。彼は作業員たちの給金1万ドルを持って列車に乗車するが、車中でお約束の強盗団に襲われる。マクレーンは途中で助けた子供ジョーイに金を渡し、その場を逃れるが、強盗団は、キンブルの妻ヴァーナ(エレイン・スチュワート)と少年を人質に荒れ果てた町ペイロードへと去る。マクレーンは単身ペイロードへ向かい、身分を隠して強盗団と接触。自分の弟であったユチカ・キッドを外へ連出し、足を洗うよう説得したが受け入れられない。そこへ、内通者が現れ、マクレーンが給金を輸送していることをばらしてしまうと、射ち合いが始った。キッドは金を持つ少年と逃走、それを追うマクレーンとヴァーナたち。そして、強盗団の一味。廃工場跡での決戦が始まり、キッドは思い直して兄マクレーンとともに戦うが、倒されてしまう。最後にホワイティを倒したマクレーンはキッドを丁重に葬ったあと、無事給金を現場に届けたのだった。



ストーリー的にはあらすじ通りですが、この映画情景描写がとてもきれいで素晴らしいのですが、人物描写が浅く、筋書き通りに話が進みますという感じで、あまり感情移入できないところがあります。敵も味方もなんとなく同じように見えてしまうところが残念でした。兄弟愛や男女の愛を言葉で表現しますが、なんとなくおざなりな感じで、必然性があまり感じられませんでした。

最初の鉄道建設現場のシーンは、突然彼らがコメディタッチに男女入り乱れた乱闘騒ぎを起こしますが、そうなる必然性が感じられず唐突な感じ。山奥の現場の荒くれた様子や、給金滞納への不満を表していることとは思いますが、あまりに唐突です。マクレーンに現金輸送を依頼する場面も、疑心暗鬼で金を渡すのですが、セリフから心情や性格が判断しづらい。

そうこうしながら話は進み、強盗団一味の内部事情が移されますが、細かいエピソードをつなぎますが、それで強盗団の人物の性格描写ができているかというと、ちょっと中途半端。

いろんな登場人物や、細かなエピソードをたくさん詰め込み過ぎて、結果として満足に描き切れていないという感じがしました。

夜の道

これとは対照的に素晴らしいのが情景描写。圧巻は鉄道が山越えをしていく場面です。これには多くの時間が割かれています。美しい青空の中で、森林地帯を抜け、岩山を縫って付けられた鉄路を、カーブを重ねながら超えていく情景は最高です。そして、短いですがキッドの埋葬のシーンも名画のように大変美しく絵になっていました。これはきっと、人物のドラマを見るというよりは、西部の美しい風景や、当時のいろいろな人の人情を感じる映画だったのかなと思いました。

映画の中に、エピソードがたくさん詰め込まれていて、筋立ても面白いので、情景描写が勝った形で終わってしまって大変残念。もっといい作品になったのではという気持ちになる映画でもありました。

ジェームズ・スチュアートはここでも人情派ぶりを発揮して、よく語ってくれます。この感じは、彼の出演するどの西部劇を見ても安定していますね。強烈なガンマンにはならない、実際は強いのですが、普通の人のような風情で登場し、まずは一回叩きのめされて、最後でなんとか苦労して勝利を収めるという図式も健在です。このあたり、安心して見られます。

やはり、50年代のカラーの映画は、まるで絵画のような色使いで美しく、それが新しい技術で復刻されより鮮明に見られることができる。そういう意味で、50年代から60年代の映画を今DVDで見直すことができるのは大変幸せなことだと、改めて思い直す映画でもありました。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「テーブル19(原題)」 それぞれの事情が集まった19番テーブル


ベトナム航空での機内エンターテインメント。気軽に見られそうで、予備知識もないという、新鮮な気持ちで見られる一本を選んでみました。どういう映画かほとんどわからずに見始めたわけですが、さていかがなものでしょうか?

あらすじ
結婚披露宴の19番テーブルに集まった人々。エロイ―ズ(アナ・ケンドリック)は、元彼の妹に、彼女の披露宴に招待される。しかし、エロイーズは、一方的にメールで別れを告げた元カレにわだかまりがあり、悩みに悩む。最終的に行くことに決めたが、その席は、まとめることのできない、寄せ集めのテーブル19だった。そこに集まった個性的な人々の様々な行動によって、エロイーズは人生を見つめなおすことになる…。



いろいろな人に届けられる披露宴の招待状。エロイーズの場合は、少々憤慨するような表情で悩んだ挙句火をつけて燃やそうとしましたが、思い直して出席にて返送。そして、最終的に19番テーブルに集まるメンバーそれぞれへの招待状の配達と返送の場面へと続きます。

テーブルに集まったのは、新婦の友人で、新婦の兄の元カノのエロイーズ。最近別れたばかりで、複雑な事情がありそうです。親戚筋にあたるレンゾ少年は、母から出逢いを求めに行くようにと半ば強制的に出席させられました。これも親戚筋にあたるウォルターは、詐欺で仮釈放中の身。そして、父兄の友人のケップ夫妻と、新婦の最初のナニーのジョー。それぞれ友人、同僚その他どのテーブルにも入れられなかった寄せ集めの彼らが、まずは満面の作り笑いで自己紹介を始めるのでした。

エロイーズの元カレのテディは、エロイーズを見るや否や拒否反応を示し、「式をぶち壊しに来たのか?帰ってくれ」とつれない反応です。エロイーズは、突然メールで別れを告げられたという理不尽な別れに納得がいっていません。波乱含みのテーブル19で、自己紹介が始まりますが、それぞれの事情での少し奇妙な発言で妙な雰囲気に。その中で、エロイーズとテディの関係を中心に、テーブル19の面々のおかしな行動も絡まっていき、やがて、それぞれの抱える事情がお互いに判ってきます。親密になっていく彼らは、少しづつ結束が強まり、話は思わぬ展開へ…。

テーブル19

最初は、とんでもなくひどい奴だという印象のテディが、不器用なだけのいい奴に変わってくるところがこの話のミソであり、大いなるネタバレとなる訳ですが、それぞれの事情が分かっていき、それぞれの幸せへと向かっていくあたり、切なくもあり面白くもありで、結果としてなかなかよくできたコメディでした。90分の気軽な映画と思っていたのですが、なかなか凝った内容でした。

前半は、ひどい?あるいは変な奴ばかりの、とんでもないクライ映画だ、しまった…、と思っていたのですが、見ているうちに立派なラブコメになっていきます。前半と後半の落差がかなり大きい感じです。で、見終わって面白かったという感じになりました。この手の映画にしては、ちょっと稀有な体験で新鮮でした。

主演のアナ・ケンドリックさん。あまりよく知りませんが、どこかで見たことあると思ってフィルモグラフィーを見てみると、最近「ウェディング・フィーバー ゲスな男女のハワイ旅行」という、DVDスルーの映画で拝見したことが判明。なるほど、ちょっと記憶に残っています。これも機内エンタメで見ました。他は、知らない人が多いような。リサ・クドローはかつて、少し見たことがあるかな?という程度。

2017年公開の新しい映画ですが、日本ではDVDスルーかな?という感じですかね。アナ・ケンドリックさん、日本ではDVDスルー率が高いような感じですし。実際見てみると、気軽に見られて、けっこう楽しめますよ。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ありがとう、トニ・エルドマン」 サンドラ・ヒューラーがお目当てで

サンドラ・ヒューラーの映画を立て続けに最近見ていましたが、最新作の「ありがとう、トニ・エルドマン」、実は彼女の初の日本公開作品。気になっていた女優さんだけに一度見てみたいと思っていました。上映中の映画を見ていると、まだやっていることを発見。これは一度は見ておきたいということで、さっそく見に行ってみました。

あらすじ
悪ふざけが好きな父ヴィンフリート(ペーター・シモニシェック)と、コンサルタント会社で働く娘イネス(ザンドラ・ヒューラー)。性格も異なる二人は、たまに会っても、親密に話すことができなかった。ある日、娘を心配した父は愛犬の死をきっかけに、彼女が働くブカレストへ向かう。父の突然の訪問に戸惑うイネスだが、何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰って行った。ところが、父は戻ったのではなく、トニ・エルドマンという別人になって終始彼女の周りを付きまとう。神出鬼没のトニ・エルドマンにイネスのイライラも募っていくが、二人が衝突すればするほどお互いの仲は縮まっていくのだった…。



一人二役で宅配の配達員をからかうヴィンフリート。しかし、ピアノの生徒も去り、母や愛犬ヴィリーも元気がない様子でした。母に娘のイネスを連れてくるといったものの、たまに帰ってきているイネスは携帯で仕事の電話ばかりで会話もままなりません。キャリアウーマンのイネスはブカレストの勤務先に帰ってしまい、愛犬ヴィリーもついに最期の時を迎えると、ヴィンフリートはサプライズで娘の働くブカレストのロビーに現れました。

イネスはちょうど重要な顧客との商談の真っ最中で、近々プレゼンを控えている様子。その顧客の重役も参加するパーティの日でしたが、父をほおっておく訳にもいかず、いっしょにパーティーへ行くことになりました。ビジネスの世界には程遠い生活を送っている父に気が気ではないイネスですが、自分も肝心の顧客との会話で失敗してしまいました。翌日いつになくカリカリしている娘に、「ここにいて幸せか?」と思わず問いかける父ですが、顧客の家族からの呼び出しで話は中断、父は一人でショッピングモールを徘徊する羽目に。満足に話もできずドイツに帰る日、出がけによく眠っている娘を起こしますが、実は寝坊して顧客との約束に大幅に遅刻している状況。思わず「なぜ起こしてくれなかったの切れるイネス。そのまま父は帰っていますが、イネスはなぜか溢れる涙を抑えきれませんでした。

とりあえず、顧客へのプレゼンを終え、結論を持ち越したその夜、女子会で父が突然現れたことを愚痴るイネスの背後に父が出現。戸惑うイネスに父は名乗らず、トニ・エルドマンという別人を装います。それからトニ・エルドマンは、娘の勤務先やパーティー、そして取引先の訪問まで神出鬼没。娘の夜の乱れた生活にも居合わせ、困惑するイネスでした。そしてイネスの誕生日、チームの結束のため、イネスは自宅で誕生パーティーを主催し準備をしていましたがうまくいかず、完全に切れてしまい大爆発、大変なことに…。

ありがとう、トニ・エルドマン

ストーリーとしては、そういったキャリアウーマンの娘と、心配する父の絆の物語。ひやひやするようなコメディタッチの中に、徐々に深まっていく絆が見事に描かれていると思います。重責を負って、上を目指すイネスに、邪魔ばかりしている父のように見えますが、娘に対する愛情にあふれたトニ・エルドマンの行動が、絶妙に抑制されて流れている素晴らしい映画でした。これ以上やるとやり過ぎだし、ツボは押さえている。さすが自称「人生コンサルタント」でした。この役を絶妙に演じているペーター・シモニシェックさんもさすがです。

めったに日本で映画を見られない中で、あえてこの映画を選んだのは、お目当ての「サンドラ・ヒューラー」を見たかったからです。これが日本での劇場初公開なのですが、DVDでは「裸の診察室」を見ることができます。「レクイエム ミカエラの肖像」は、探せばなんとか見られるかもしれません。ベルリン国際映画祭で主演女優賞を取っている女優さんではありますが、寂しい限りです。今まで見た2作で、無表情の表情が雄弁な女優さんだなぁと思っておりました。もちろん表情は豊かなのではありますが…。

この映画のラストもそうですが、あまり表情を変えないで、長回しで映し続けるシーンがとても印象的なのです。「裸の診察室」など、いろんな表情ではありますが、それぞれ表情を大きく変えずじっと何かを見つめる、あるいは何かを考えているようなシーンが多く見られました。それですべてを語ってしまう。何か、表情含めて全身からにじみ出てくるような演技力を持っている女優さんだと思います。こちらは、それに吸い込まれるように見てしまいます。(そして、時々切れますが、その落差が強烈です)

ということで、ストーリーはコメディタッチで幾分大げさではありますが、実際のテーマに対しては抑制されて描くべきところを描いた素晴らしい作品であり、それを演じた俳優さんたちも素晴らしい映画でした。もう少し、サンドラ・ヒューラーさんの映画を追ってみたくなりました。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」 文字通りのノンストップコメディ

前回の帰国時に、ヒューマントラストシネマ有楽町で予告編を見て、タイミングがあえば見たいと思っていたこの映画。奇しくもちょうどタイミングが合ったので、さっそく見に行きました。日本にほとんどいないのに、テアトルシネマだけは前回会員カードを更新しています。すぐに元がとれますからねぇ…。

あらすじ
夏休みが始まった!初日から、父トム(ジョゼ・ガルシア)、臨月の母ジュリア(カロリーヌ・ヴィニョ)、娘リゾン(ジョゼフィーヌ・キャリーズ)と、息子ノエ(スティラノ・ルカイエ)の一家4人は、トムが独断で呼んだ祖父ベン(アンドレ・デュソリエ)と共に、 バカンスに出発。最新システムを搭載した真っ赤な新車のミニバンで出発するが、間もなく何をしようがクルーズコントロールが解除できなくなり、一家の車は時速160kmで高速道路を暴走し始めた。パニック状態の中、家族の秘密が次々に露見。並走する白バイ警官や、車を壊された恨みで追跡してくる男も巻き込み、突き進む車の向かう先には、渋滞が待ち受けていた…。



夏休みの最初の日に目覚ましが鳴って起きるトム。いきなり肘うちのギャグが入り、快調な出だしです。いやいやながらの皆を起こし、さっそく準備して家族旅行の準備。そこに訪ねてくるビルですが、これにジュリアが不満。「なぜ呼んだの!」とひと悶着ありました。それでも、無事に車に乗り込んだのですが、また、忘れ物などの、ひと悶着あって、やっとトムの自慢の新車でスタートです。

途中、給油に立ち寄ったサービスエリアで,、ビルはさっそくワイパーを破壊したうえに、ヌーディストビーチに向う女性をこっそり同乗させます。そして再び出発、オートクルーズを設定すると、もう車は止まりません。ここからは最後までノンストップのギャグと、家族の秘密暴露エピソードの連発なので、さしてストーリーを書くこともないのですが、追跡する執念深い男や、不真面目な警官たちも入り乱れてのチェイスです。渋滞まであと何キロという表示がだんだん短くなり、いかにして対処できるのか?

最後はお見事でした。爆走の収拾も、ストーリーの収拾もちゃんと落ちましたので、めでたしめでたしです。面白かった!

ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走

いやぁ、楽しかったです。こういうノンストップコメディって、妙にくどくなったり、やり過ぎだろうという感じがあったりすることが多いのですが、今回はそういう感じもなく、罪もないというか、いや、罪はあるんですが、うまく雰囲気で包まれているという感じで、変に気にならず楽しめました。そもそも、こういうコメディ劇場でみるのも久しぶりかもしれない。たいていテレビとかDVDで見てしまいがちなので。そういう意味で、劇場で見れば世界に没入できるし、劇場内の笑いの効果もありで、楽しさ倍増ですね。

どういうギャグかは、無粋なので書きません。ベタもあり、お色気もあり、汚いのもありで様々です。伏線やフラグもどこかで回収されているので、安心です。ラストの趣向も、おっ!という感じで、うまく、まとまりました。

それだけと言えば、それだけなので、これ以上書くことも無くなってしまうのですが、個人的に嵌りましたし、満足しましたので、好きな映画として記憶に残しておきます。

楽しかった…

ヒャッハー!

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ア・ユナイテッド・キングダム(原題)」 今、改めて語る史実

JAL国際線の機内エンタメ。今回は予めチェックして、見ると決めていた「ア・ユナイテッド・キングダム(原題)」を搭乗後、間も無く視聴開始です。夜行便なので寝る時間が無くなるのも困るので…。アフリカ南部のボツワナ建国に至る物語。「ゴーンガール」で素晴らしかった、ロザムンド・パイクがヒロインというのも、大いに期待です。

あらすじ
1947年のロンドン。ボツワナ王子のセレツェ(デイヴィッド・オイェロウォ)と、ルース(ロザムンド・パイク)は、パーティーで出逢い、一目で惹かれあった2人は周囲の反対を押し切って結婚します。2人はセレシュの故郷ボツワナに向いますが、ボツワナは当時イギリスが統治しており、この結婚は、部族のルールとアパルトヘイト路線を歩む南アフリカの強硬な抵抗にあい、当時の世間の風潮からも歓迎されず、セレシュは国外追放となってしまいました。ボツワナで彼を待つルースは、出産後、帰ってこれないリスクを承知でセレシュの滞在するロンドンに戻りますが…



舞台は1947年のロンドン。ボツワナ王子のセレツェと、オフィスで働くルースは、ある夜友人に誘われたダンスパーティーで出逢いました。一目で惹かれあった2人はその後も逢瀬を重ねますが、セレツェが自分の事情、やがて王としてボツワナに帰らないといけない事を告げます。しかしルースの愛は変わらず、ルースの家族の反対を押し切って結婚することに決めました。

しかし、ボツワナ王子としての彼の立場には、単純には結婚できない事情がありました。一つは王位を継承して妻を選ぶためには、部族の決められたルールがあり、従わなければ部族から受け入れられないこと。そして、その頃イギリス政府としては、戦後の窮乏の中で、さらに東側陣営に対処する為には資金が乏しく、南アフリカの富に頼らざるを得ない事情がありました。2人の結婚はアパルトヘイト政策を推進する隣国の南アフリカにとって、極めて不都合であり、イギリス政府は南アフリカを懐柔せざるを得ず、2人の結婚は到底受け入れることができなかったのです。

結婚を決めてからは、家族の反対はもとより、マスコミには書き立てられ、街では売春婦と呼ばれたりと、苦難の日々でしたが、それを乗り越えて教会で結婚式を挙げ、ボツワナに向かいます。ところが予期した通り、ここでも歓待を受けるという訳にはいきませんでした。セレツェは、育ての親であり、イギリス政府と融和しながら国を守ってきた叔父と対立することになってしまいます。セレツェは、それを押しのけて人心を得、王として国民から承認され、ルースも国の一員としての認められるようになってきますが、今度は、事態を憂慮するイギリス政府はロンドンにセレツェを召喚し、そのまま国外追放の処置を取ってしまいました。ボツワナに残されたルースは、一人で女児を出産。その後別離に耐えきれない2人はロンドンで合流しますが、ボツワナには二度と帰れなくなってしまいます。

セレツェはこの時、ボツワナでダイヤモンドが産出したという情報を先行して得ており、これを隠したまま鉱物資源が出た場合の所有権はボツワナの王と国民のものという言質をとることに成功します。残務整理の名目で1週間の許可をもらい、ルースとともに帰国。叔父との関係を整理、王権を放棄し、市民としてダイヤモンドの採掘権も掌握、イギリス政府もこれには逆らうわけには行かず、最終的に独立を果たし、選挙で選ばれた初代大統領として、夫婦共同で善政を敷き国の発展に勤めました。今は第4代大統領として、2人の息子が統治しているということです。

A United Kingdom

ということで、現代史の一部分をかなり程度忠実に描いた映画として、いい映画だったと思います。ボツワナは当時世界最貧国の一つでありながら、現在ではいわゆる中進国の扱い。これは、ダイヤモンドとその収益を利用したセレツェの徹底したインフラや教育の整備、そして、隣国のアパルトヘイトとは一線を画した治安のいい社会を建設していった功績が極めて大きかったということです。日本ではあまり知られていない、南アフリカの国の建国の物語。大変新鮮でした。

こういった途上国の発展に寄与した女性の物語というと、私が一番印象に残っているのは「エビータ」ですが、この映画はそれほどの派手さはありません。また、長い発展の歴史の中で、描くべきいい部分を抽出した形になっているとも思います。ボツワナは独立から発展まで、全て武力を介さず話し合いで事が成し遂げられた、いわば理想的なパターンです。背景にはイギリスの民主主義の素地など、いい方に出たということもあるかと思います。国民から愛されたイギリス女性であるルースの存在も大きかった事でしょう。あまり話題になっていない映画ですが、是非日本でも公開して欲しい映画だと思いました。

出演した俳優陣も素晴らしかったと思います。ロザムンド・パイクはもちろん、ルースの苦難と人柄を見事に演じていると思います。そして、セレツェ役の、デイヴィッド・オイェロウォをはじめとして、ヴジー・クネーネ、テリー・ペトなど、ボツワナのセレツェの一族を演じた俳優たちが素晴らしい。イギリス側もジャック・ダベンポートをはじめとして、堅実な演技を見せてくれています。このあたりの水準は極めて高いと思います。そして、ロザムンド・パイクが1940~50年代の衣装を着て登場しますが、さすがにどれもキマっています。

改めて、現在のボツワナは、ダイヤモンドに頼った経済も限界を迎え、エイズ患者対策にも多額の出費を要する状況で、決して楽な状態ではないようです。外資の導入と、新たな産業の勃興に力を入れているとのことですが、今のセレツェの息子の大統領は、独裁の気もあるようで、ちょっと心配されています。北朝鮮と断交するなどパフォーマンスを見せていますが、セレツェの作り上げた膨大な信用と遺産を使って、再興してもらいたいと思います。その為にも、この映画改めて当時を再認識し、応援する意味で、今、そこにふり返るべき歴史があるということを世界に発信出来たのではないでしょうか。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「高校生ブルース」 おとなの大映祭その3

今日は、おとなの大映祭の3本目です。「高校生ブルース」は、関根恵子のデビュー作。1970年の作品です。大映は、この頃経営危機に陥っており、荒廃していたということです。その中で、製作された「高校生ブルース」ですが、集客を狙った「ジュニア・セックス・シリーズ」。エロ路線に走っています。

あらすじ
高校生の北原美子(関根恵子) は、恋人の優等生、加藤昇(内田喜郎)と、体育倉庫で関係をもつ。やがて、美子は体調の変化を感じるようになり、ある日、体育の時間に倒れてしまい、自分が妊娠していることは間違いないと悟った。これを美子から聞かされた昇は狼狽し、美子に堕胎すべきだと説得しつつ、友人に相談したり、産婦人科に確認に行ったりして、なんとか堕胎の方向を探る。美子は当初は堕胎を進める昇に対し、愛が無くなったのかと抵抗していたが、母と叔父の若いころの写真を発見し、自分の出生について疑惑を持つにいたり、堕胎の方向に考えを変えていく。昇が、牛乳配達のアルバイトで貯めた中絶費用を美子に渡そうとするがこれを拒み、腹を思いきり踏みつけてるように頼む。昇は混乱しつつも、美子の下腹部を何度も踏みつけ、結果、流産させてしまい、その後元気を取りもどした美子は、自分の過去に別れを告げると、学校で昇にこれからは自分の青春が始まると告げるのだった。



高校生活の一場面。カメラは体育の授業を受ける女子高生の胸をクローズアップしたり、ブルマを中心に下半身をクローズアップしたりと、品の無い場面が続きます。一応、スケベな男子高校生目線として表現されていますが、この見せ方は品が無いですね。なんとなく、観客に媚びるだけで、後の日活ロマンポルノの格調には及ばないと思います。昇役の内田喜郎ですが、これもあまりぱっとしません。よく、美子をものにできたなと…。何を考えているかわからない、陰険かつ優柔不断な優等生という感じです。

さて、美子が倒れ、昇は妊娠を告げられますが、どうしようもない対応。堕ろせという言葉にも説得力がなく、難しい役どころだとは思いますが、なんかもっと演じようがありませんか?という感じ。

美子は、母と叔父の過去を思い返し、写真を見つけて破りますが、これも唐突な感じ。なんかいろいろ繋がりの悪い映画です。そのころから、美子は堕胎の方向に気持ちが向いていきます。

そして、物語はラストに向かい、硫酸の盗難。美子は、最終的に使いはしますが、何の目的で盗んだのか、最後まで分からずじまい。自分の腹を踏ませるのは、昇への復讐と当てつけですか?自分で手を下させて、流産させることで、昇に生涯責任を感じさせるということですか?そして動物愛護団体が抗議しそうな金魚の虐殺と、最後の捨て台詞。で終了です。

高校生ブルース

ということで、ジュニア・セックス・シリーズ。エロス的に楽しめるものかと思っていましたが、これは根性の曲がった人間を並べ立てたような映画で、あまり感心しませんでした。導入と内容のバランスも良くないですね。いやまぁ、妊娠させてしまった動揺は解るのですが、それに対してどう反応するかは、もっと描きようがあるんではないですかね。普通の高校生の話にしては、あまりに歪んでます。それを青春物のように、大真面目に映画にしているので、なおさらタチの悪さを感じました。

あお、この映画、音楽がしつこい。単調なフレーズが繰り返されるだけですが、いつも同じなので、妙に耳に残ってしつこく感じられてきました。

と言う事ばかり書いても、暗くなるので、良かったを並べます。

まず、牛乳配達のシーン。炭塵ですが、直線で頑張って走って、坂道を登っていくシーン。なかなかいい場面、というか撮り方だと思いました。あとは、蒸気機関車のレコードをかけて、腕で蒸気機関車の動輪を表現するシーン。こういう動作って昔よくあったなぁと思って、思わずニヤリとしてしまいます。関根恵子さんの演技は、初めて映画ながら好演だったと思います。硫酸の瓶を持って部屋の中を歩く時の表情など、いいと思いました。

さて、おとなの大映祭ですが、大人路線=エロス路線だと考えると、大映の末期の断末魔を上げている時代になるのですね。そういう意味で、こういった映画が多くなってくるのでしょうか。日活の方は、この後、ロマンポルノに徹して成功を収めていましたが、大映の方は、こういった作品を連続して見ると、滅びの美学を感じそうです。もっとも、それが美であればいいのですが。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「サンドイッチの年」 CINE VIVANT 中期のチョイスの1本

1988年のフランス映画、「サンドイッチの年」。たまたま見つけてきた映画ですが、今となっては、話題に上ることはあまり無い映画の様です。当時は、六本木のシネヴィヴァンで公開されたようです。いろいろといい映画を公開していました。日本ではVHSは出ましたが、DVDは未発売です。さっそく、当時のヨーロッパ映画の雰囲気を味わいたくて、見てみました。

あらすじ
1947年、少年ヴィクトール(トマ・ラングマン)は、両親がナチスに連れ去られて以来、初めてパリに戻ってきた。地理に不案内な彼は地下鉄構内で、伯父さんの仕事を手伝うためにパリに到着したばかりのフェリックス(ニコラ・ジロディ)と出会う。親切に対応するフェリックスに地下鉄の乗り継ぎや、連絡先を教わり、かつて住んでいたアパートを訪ねたが、すでに彼の知る人は誰も住んでいなかった。ヴィクトールは、街を彷徨い歩いているうちに古物商の求人広告を見つけ訪ねると、店主のマックス(ヴォイツェフ・プショニャック)は、屋根裏部屋に住込みで働くことを許される。ユーモラスだが、偏屈物のマックスの元で働きながら、休日にはフェリックスとの友情を温める日々となったが、ある日闇取引をしている少年ブブル(クローヴィス・コルニヤック)と接し、その取引のおかげで、フェリックスが大怪我を負ってしまったことにより、フェリックスの家族から交際を禁じられてしまった。すっかり落ち込んでしまうヴィクトールに、マックスは穏やかに、だれの人生にも、人生の中で最も中味の濃い時期がある。今ちょうどその時なのだと慰めるのだった。



ヴィクトール・ラビンスキーの店が襲われ、その報道を見てヴィクトールから贈られた本を取り出し回想するフェリックス。その場面のあと、舞台は1947年のパリに戻ります。人の流れの中で、目的地に行こうと地下鉄の駅を彷徨うヴィクトールですが、不案内なパリで、行動を起こせない様子です。そこに現れたフェリックスが何かと世話をやき、目的地の近くまで同行してくれることになりました。自分のことを尋ねられても、説明したくない様子のフェリックスですが、お互い読書好きということで意気投合。フェリックスから愛読書と電話番号をもらい、2人は別れます。

ヴィクトールはかつて父母と暮らした家を訪ねますが、住んでいる人も、管理人も、近所の人も昔を知る人はなく、行く当てもない彼は途方にくれます。そんな中で見つけた古物商の求人の看板を見て、主人に声を掛けました。口が悪いが根がよさそうな人情派の主人は、ヴィクトールを見ると色々と境遇を訪ねます。父母がナチスに連れていかれたことや、予めかくまわれた家から、さらに遠く離れた家で年月を過ごしたことなど。主人のマックスもユダヤ人であることを告白し、ヴィクトールは住み込みで古物商で働くこととなりました。

マックスとの生活が落ち着いてくると、ヴィクトールはフェリックスに電話し、日曜日の午後2人は映画を見るなど友情を温めていきます。ある日、腰を痛めてしまい、ベッドから離れられなくなったマックスに変わって、闇取引をしているブブルの手伝いをしていた時、凶悪な相手をみたブブルは、彼らは絶対夜になったら盗みにやってくると見極め、ブブルとヴィクトールは撃退の準備を始めました。そこにフェリックスも参加し、撃退には成功しましたが、フェリックスは足を骨折してしまいます。そんなことをしているとは知らない、フェリックスの一族は、彼を連れて帰り、ヴィクトールとの交際を禁じてしまいました。

失意の中で、ヴィクトールは涙にくれますが、マックスが慰めます。親2人を収容所に連行されたヴィクトールと、妻子をすべて戦争で失い、自分も収容所に入っていたマックスは、お互いの家族の写真を並べ、親子のようにいたわりあい、マックスはヴィクトールに、「人生はサンドイッチのようなもの。パンの間の薄いハムのような年があり、その時は最後まで全部噛みしめないといけない。今がまさにその年だ。」と話し、二人の絆が深まるのでした。

後日談。現在のフェリックスは、ヴィクトールの事件と消息を知ったが、もう彼には助けは要らないはずだと、訪ねて行くことはなかったと…

サンドイッチの年

見終わって、普通にいいお話でした。見ながら、マックスとヴィクトールの2人に、「鉄道員」の親子のイメージが少し重なりました。それで、普通にいいお話ですが、逆に、それほど大きな捻りもないので、佳作というイメージで終わってしまったかとも思います。物語の背景は、重い事実があるのですが、でも、こういう映画なので、それはそれで、いいのかなとも思いました。終戦後のパリの日常を切り取ったような映画でした。

とりあえず、鉄道員を思い出したぐらいですから、1988年製作としては、ちょっと内容が古めかしく、50~60年代の映画と言われても、そうかねと納得してしまうようなところもあると思います。それも郷愁のようなものが感じられていいのですが。

この映画が公開されたのは、シネ・ヴィヴァン六本木。私にとっては、「ミツバチのささやき」とともにある懐かしい映画館です。できてしばらくして東京を離れてしまったので、この映画が公開されるころは見に行くことは無かったということになりますが、ミニシアターが華やかなりしころの公開作です。今考えても、シネ・ヴィヴァンで公開されていた映画は素晴らしい物が多かったので、未見の作品は、この機会に一度おさらいしておきたいと思った次第。(というと、ほとんどになりますが)

そう思って、当時のミニシアターの雰囲気などを思い出してみると、このように過激な展開にもならず、人情劇的ないい話で、軽く機知に富んだ会話で終わるような映画は、確かに、ある意味当時の日本のミニシアターのイメージに当てはまっていたのかもしれないな…。と回想するところでもありました。


テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「愛の果実」 きわどい設定と、30代での青春回帰

以前、ダウンロードしていたこの映画、なんとなく見てみる気になって、日曜の午後まったりと見ていました。レジェンド・ピクチャーズ 制作、小規模に劇場公開された一本です。監督の金田敬は、愛染恭子の引退作を撮ってますね。ラブストーリーズのシリーズで、お色気系Vシネマ的な感じだと思います。

あらすじ
学生時代からの交際を実らせた真理子(嘉門洋子)と孝治(吉岡睦雄)。クリーニング店を営んでいるが、孝治は事業にも金策にも失敗を繰り返し、膨大な借金を抱えていた。そんなある日、真理子は雑誌で、同級生・安西(河合龍之介)のインタビュー記事を目にする。成功者として活躍する安西を訪ねると、金は用意するが、真理子を三ヶ月間貸し出すことを交換条件として提示、真理子は孝治の元を離れ、安西と暮らすうち、安西の孤独な一面を知り、同時に自分の人生も見つめ直すようになる。二人は、お互いに心に開いた穴を埋めるかのように体を重ね、そして約束の日が近づいてくる…。



クリーニング屋で働く真理子の元に、孝治がカブトムシの養殖セットを持って帰ってきます。新たな小銭を稼ぐ手段のようですが、見るからにショボい手段。しかし、真理子は怒るでもなく、仲のいい夫婦のようです。二人は孝治のずさんな経営で膨大な借金を抱えており、クリーニング屋の傍ら、真理子は夜も交通整理のアルバイト。そんなある日、週刊誌で真理子は同級生が成功者としてインタビューされているのを見て、2人で客からの預かり物の服を借用し、金の無心に出かけました。

安西と秘書は、孝治・真理子夫婦に、5千万の現金を見せ、交換条件として真理子を3ケ月間、自分のものにするということを提示します。最初ははねつけた孝治でしたが、現状を打破するには承諾するしかないと思いなおし、真理子を残して帰りました。

安西と真理子も同じ高校時代の同級生。安西は、自分は誰の記憶にも残らないような人間だと悩み、真理子は少女漫画のようなハッピーエンドがただ一つの幸福ではない。自分は違う幸福を見つけるのだという考えに囚われていました。2人は当時お互いに悩み、自殺まで何度も試みたことを話しながら、青春時代のフラッシュバックのような二人の時間を過ごし始めます。どんどん二人はひかれていき、月に一度の面会に訪れた孝治にも、つれない態度を見せる真理子。そして、ふとしたことから体を重ねあい、ますます関係は深くなっていきます。

2度目の面会で、安西の前で啖呵を切る孝治を見て、真理子は改めて考えることがあったようでした。秘書から、安西の言葉として、真理子の心がどちらを取るか決まっているのであれば、3ケ月をまたず決めてもらっていいと告げられます。秘書は、安西のことをいつも思っていて尽くしていますが、仕事柄告白できないという立場にあったようです。そんな秘書を真理子はプールに誘いそれとなくアドバイス。そして、真理子はこの3ケ月間の思い出の場所を彷徨し、最後に孝治の元に帰ってきました。やはり、たった一つの幸せしか見つけられなかったと…。

愛の果実

基本プロットとしては、妻を3ヶ月貸し出したらというものです。ある種の動画にはありがちなプロットで、3ヶ月したらすっかり調教されて変わり果てていました…、というのはAVやその類の世界でありがちな結末。まぁ、この設定(要求)自体が尋常ではないので、まじめに付き合うのもどうかとは思いますが、少なくともこの映画ではそういう結果ではありませんでした。

ということで、テーマは高校生時代に付き合っていた安西と真理子が、再会によって現在の喪失感を取り戻し、今の夫孝治との関係とどちらを選ぶかということでしょう。安西は成功者だし、妻を3ヶ月貸し出せという非人道的な要求を出したこと以外は、普通です。というか、真理子との再会によって普通の自分を取り戻したということでしょうか。再開によって埋められた喪失感は、別れによってふたたび傷口を広げるのか?これは秘書との関係によって埋められると思いましょう。安西の悩みは、「誰も自分のことなんか記憶にとどめない」ですから、身近に思ってくれている人がいることに気づいて埋められるはずです。

真理子の、少女マンガみたいな、愛至上の一通りしかない幸せ以外のものを見つけたいというのは、難しい注文です。たくさんの幸せが欲しいのであれば、何を幸せと思うかですし、ほかの幸せを目指すのは目標を何に置くかですから。求めるような、複数の至上の幸せを両立するのは難しいので、一つを軸にして、他の幸せをたくさん付加していくのがいいのでは?

ということで、物語の主題について考えるところは、こんな感じでした。映画としては、設定と画面がアダルトである以外は、まぁほどほどというか、問題なくまとまっていると思いました。取り立てて何か素晴らしいとか特筆するようなものは無かったと思います。安西を映じた河合龍之介は、D坂の殺人事件で見たことがありましたが、こちら方がずっと良かった。

最後に、嘉門洋子さん、この時点で33歳ですか。素晴らしいプロポーションを保っておられますね。これは大変気に入りました。この映画以降、消息が聞かれないのですが、いろいろと噂があった人だけに、その後が気になるところです。また新作を期待したいのですが…。

【リスト】 ① 裸のエロスを見る作品

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR