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「とうもろこしの島」ある年戦場の川の中州で営まれた出来事

ジョージアとアブハジアの紛争の一コマを描く2014年の映画。ジョージア・ドイツ・フランス・チェコ・カザフスタン・ハンガリー合作の作品です。監督は、ジョージアのギオルギ・オヴァシュヴィリで、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でグランプリ受賞。同年、東京国際映画祭のワールド・フォーカスで上映されました。

あらすじ
アブハジアとジョージアの紛争は1992年に発生。この二つの地域を分かつコーカサスから黒海に注ぐエングリ川は、毎年春の雪解け水が運ぶ土砂で、肥沃な中州を作ります。そして、農家は毎年この新くできた中洲を見つけ、春から秋にかけてとうもろこしを栽培し、越冬の準備をするのでした。

アブハジアでとうもろこしを育てて暮らす老人(イリアス・サルマン)は、舟で新たな中州に辿り着きました。土の感触を確かめると、老人は小舟で木材を運び、更に孫娘(マリアム・ブトゥリシュヴィリ)を連れてやってきて、二人で中州に小屋を建て、土を耕しとうもろこしの種をまきます。時折行きかう船は、ジョージア兵が乗った警備ボート。孫に「ここは彼らの土地?」と問われた老人は、「ここは耕す者の土地だ」と答えました。二人は自給自足の生活を続けていき、時折川岸の方から響き渡る銃声にも、老人は何事もなかったように作業を続けていくのでした。

とうもろこしが成長し、背丈ほどになってきた時、兵士が畑の中に入り込み、とうもろこしを踏みつけられているのを発見します。それから、老人と少女は布団を運び込み、小屋で寝泊まりするようになりました。ある日の朝、畑の中に負傷したジョージア兵(イラクリ・サムシア)が倒れているのを発見し、二人は小屋の中に運び込むと、敵兵を探しに来たアブハジア兵には知らないフリをしながら、兵士の手当てを始めます。徐々に回復した兵士に、少女は「あなたって素敵ね」と語りかけました。二人でじゃれ合い始めたのを見た老人は、少女を家に戻しました。老人を怪しんでいたアブハジア兵が再び現れたため、ジョージア兵は咄嗟に隠れます。老人はアブハジア兵をそつなくもてなすと、アブハジア兵は去っていきましたが、危険を察したジョージア兵は姿を消してしまいました。

やがて収穫の時期を迎え、老人と少女はとうもろこしを刈り取っていると、例年より早く急に激しい雨が降り出してしまいました。川は一気に増水し中州を浸食しはじめます。二人は大急ぎで収穫済みのとうもろこしを小舟に運びますが、水の威力はますます強くなり、少女ととうもろこしを舟に乗せた老人は、必死に小屋の柱にしがみつきますが、すぐに小屋も倒れ川に飲み込まれてしまいました。

春になって、小さな中洲に、新たな土地を探している男が降り立ちます。土を確かめた男は、古びた人形を見つけました。それは少女が小屋に残したもので、男は持ち主を想い空を見上げるのでした。


とうもろこしの島

前日もジョージアの紛争の映画を観たばかりで、続けての鑑賞です。やはり、紛争地帯の映画は悲劇と隣り合わせなので、どういう悲劇がどういう形で訪れるのか、かなり心配しながら見ることになりました。ここは、川の中州の小さなとうもろこし畑。川魚を獲り、とうもろこしを育てる老人と孫娘。時折鳴り響く戦火の銃声にも動じす、日々の営みを続ける二人が美しい映像で描かれています。アートフィルムとでも申しましょうか。「草原の実験」の雰囲気にも近いものがありました。そして、悲劇は意外なところからやってきました。

なかなか、唸ってしまうラストでした。悲劇にいいも悪いもないと思いますが、何かこの超越した感じが雄大な自然の中の営みと重なり、神々しさを感じてしまいます。戦争を超越した大自然の力を見せつけるようなラスト。そして、再び時は流れていきます。素晴らしい映像だと思いました。老人と孫娘の二人の演技も素晴らしいものでした。孫娘役の、マリアム・ブトゥリシュヴィリの少女から大人へと変わる時期の初々しい雰囲気が大変良かったと思います。ジョージア兵にいたずらする時に赤い服を着て小屋の陰に立つところとか、芸術的な美しい場面です。背景の干した魚も良いです。長く記憶にとどめたい映画だと思いました。

さて、この映画は数々の映画祭の賞を獲得していますが、FIAPF公認のコンペティションで唯一受賞したのが、チェコで行われるカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭です。この映画祭、長らく共産主義政権の統制下にあり、受賞作はソ連東欧等、旧共産圏の映画がほとんどを占めていました。その中で1958年に日本映画の「異母兄弟」がグランプリを受賞したのが異彩を放っています。とはいっても家城巳代治による独立プロダクション作品です。20世紀も終わりになると、新体制となり2001年の「アメリ」など、幅広い作品が受賞するようになりました。そして、この映画は2014年のグランプリ作品となったのでした。

2020.3.26 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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