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「見知らぬ医師」 前半は良かったのに…

この映画は、アルゼンチンで、2013年に数々の賞を受賞した作品です。カンヌ映画祭では、ある視点部門ノミネートとなっています。日本では、ラテンビート映画祭で上映され、一般公開は有りませんでした。この映画は、いろいろな映画祭に出品されているようですが、受賞はアルゼンチンに固まっているような感じがします。はて?

あらすじ
1960年。パタゴニアにひとりのドイツ人医師が訪れ、目にとめた未発達の少女リリスに興味を持ち、その家族のロッジに逗留する。その医師は、潜伏逃亡中のアウシュビッツの医師メンゲレ。彼は自分の興味を実現するため、巧みに家族に取り入っていく…。



メンゲレは偽名で潜伏中のパタゴニアで、発育不良の少女リリスに目を留めます。そしてその家族に近づき、家族が経営するロッジの長期滞在の客となります。このあたりの話の進み方は、いかにもストーカーっぽくて、うさん臭さがプンプンします。やがて彼は、発育を促進させる処方を母親とリリスに持ち掛けます。母もリリスも学校で小さいということでいじめにあっている状況で、すんなりと受け入れてしまいました。

また、母も双子を懐妊したことから、アウシュビッツ時代に双子を人体実験の道具にしてきたメンゲレの目を引き、母親にも投薬を始めます。メンゲレはその様子をデータ化し、克明に記録していました。

一方で、潜入しているモサドのノラは、メンゲレ発見の報告をしますが、モサドはアイヒマン確保を優先し、今は動かないという伝達を送ってきます。父の人形職人であるエンゾは、メンゲレを胡散臭げに思いながらも、メンゲレの支援を受けてきましたが、母子に副作用が出始めてメンゲレの行動を知り、彼を遠ざけようとします。そこで、アイヒマン逮捕のニュースが入ると同時に、双子の出産。しかし、赤ちゃんの様子が思わしくなく、メンゲレは実験体を手放したくないのか、医師として応急治療にあたりつつ、逃亡を準備しました。そしてモサドが踏み込んで来ると入れ替わりに、再び逃亡するところで映画は終わります。

見知らぬ医師

メンゲレがアウシュビッツで行ったことは、彼の名をここに書くことすらおぞましく思えるようなことですが、その迫りくる恐怖を静かに表現していて、このあたりは非常によく出来ていると思いました。ストーカー的に登場してくるところも、なかなかのもの。執拗に近づき、入り込んできます。そして、いかにも善人のように家族を助け、人形の量産の出資までする。手の込んだことをやってきます。そして、実験体である家族の、投薬後の様子を克明にデータと挿絵で記録している。ぞっとするような解剖図です。

一方で、最後まで見て違和感を覚えました。後日談の部。メンゲレが逃亡を続け、ブラジルで溺死した。これは事実だからいいのです。逃亡中も実験を続けていた。まぁ、これはよく知りませんが、多少なりとも事実かもしれません。その翌日モサドのノラが殺された。これは要らないでしょう。これで一気に話の焦点がずれてしまいます。

映画の中でも度々伺えますが、メンゲレの周りには彼を幇助する集団がいて、組織だった活動をしているようです。この一言によって、そちらの方がクローズアップされてしまい、話の焦点がナチス残党対イスラエルのスパイ集団の闘いにもっていかれてしまいます。せっかく積み上げてきた、メンゲレの恐怖が台無しです。そちらを描きたいのなら、メンゲレの一時の滞在を切り取ったようなストーリーでは無理があると思いますし、そこに至る伏線も不十分です。

そうしてみれば、実話に基づくと言いながらも、実話を利用した焦点の定まらないフィクションに思えてしまいました。目の前を飛行艇で華々しく脱出して、翌日スパイが死体で発見されたって、別に007を見ている訳じゃないのですから。いつの間にか消えていて、ノートが残されていたでいいと思います。今まで見せてきたストーリーは何だったのという印象が残ってしまいました。結局この映画は何だったのだろうという印象で終わってしまいました。
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「ブエノスアイレス恋愛事情」 アートでセンスの良い、恋愛コメディ

毎度のように、GAYO!の新着から選択。このところ続けて見ていたアルゼンチン映画とうこともあり、今度はラブロマンス、そしていくつかの映画祭出品と、ベルリン国際映画祭出品、ブラジルのグラマード映画祭で、作品賞・監督賞・観客賞受賞ということで、期待がもてます。2011年政策のアルゼンチン映画です。

あらすじ
発展を続ける大都会ブエノスアイレス。マンションでひとり暮らしをするウェブデザイナーの男性マルティンと、近くのマンションに住む独身女性のショーウィンドーディスプレーデザイナー、マリアナ。2人とも最近付き合ったきた恋人から別れ、大都会で孤独な生活を送っていた。マルティンとマリアナは道ですれ違うことはあっても、意識をすることもなく、それぞれ異なる相手と出会い重ねていたが…



この映画はブエノスアイレスの街の風景で始まりますが、通常の市井の風景ではなく、いろんな建築物が映し出されます。ブエノスアイレスには種々雑多なビルが無秩序に立ち並び、それぞれが設計思想をもって、そこに住む人間の階層を決定づけているというもの。いろいろなタイプの建築物をいろんな角度から撮影した情景が続きますが、なかなかアートで面白いと思いました。そしてまた、物語は、秋・冬・春の三章。それぞれの冒頭で、建造物のいろいろな側面が描かれ、いいアクセントとなっています。

ストーリーはマルティンとマリアナの2人を中心に進んでいきます。マルティンは、付き合っていた恋人が飼い犬を残してアメリカに去ってしまい、一人の生活を送っています。自宅でウェブデザイナーの仕事をする傍ら、ネットの中の世界に生き、外出する機会は多くないようです。それも徒歩で行ける範囲で、交通機関は使いません。その中で、犬を預かるのが仕事の女性や、数か国語を話さずにはいられない女性などと付き合いますが、相当変わった性格を持っているようで長続きしません。

一方、マリアナも街で会った男性と付き合いますが、気になる欠陥がいろいろあるようで、全く長続きせず、家で泣きぬれて悶々と日々を送っています。ショーウィンドーデザイナーという仕事の性格上、マネキン人形が家に数体ありますが、好みの男のマネキンが一体あるようで、それを抱いて上に乗ったイする始末。寂しさがにじみ出ます。マリアナは子供のころからウォーリーを探せが愛読書ですが、浜辺などいろいろな場面では探し出せているものの、街角の絵では、今までかかって探し出せていません。これが、街角では意中の人を見つけられないというマリアナを暗示しています。

ブエノスアイレス恋愛事情

ブエノスアイレスのビルは側壁が窓のないただの面になっているケースが多く、そこは広告等に使われているようですが、違法に穴をあけ窓を作ることも行われているようです。壁に穴をあける問題は、最近見た「ル・コルビュジエの家」でテーマとして語られていましたが、ブエノスアイレスでは重要な問題の一つの様です。2人は奇しくも同時期に心機一転、穴をあけ、窓を作ります。これで部屋は一気に明るくなり、マルティンは未開封でとっておいた鉄腕アトムのフィギュアを開封、マリアナは部屋のお気に入りのマネキンを処分しました。なんとなく明るくなった2人。そんな時、マリアナが窓からある物を見て、大急ぎで外に飛び出していきます…

で、粋なラストを迎えます。

そんなお話でした。

まずは、とてもアートが美しいし、細かいところも凝っているし、音楽もなかなかセンスが良い。アニメを入れたりとか、ウディ・アレンの映画を挿入したりとか、細部が凝っていて、なかなか楽しめました。2人の話は短い時間で、次々と交替していくので、それほど大きな進展や盛り上がりがなくても、ストレスなく進んでいきます。この映画は会話の場面が少なく、それぞれの思考を言葉で吐露している場面が多くなります。人との接触が少ないのでそうならざるを得ないのでしょう。

この映画の主人公は、マルティンとマリアナと、ブエノスアイレスの街なみ(建造物)。発展する大都会の一コマ一コマを切り取ったような映像集のようでもあり、2人の成長の物語でもありました。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ハゲ鷹と女医」 痛い破滅へのスパイラル

GAYO!にあった無料動画から、またまたアルゼンチン映画を見つけて鑑賞。あらすじからもサスペンスフルな感じがプンプンしていて、ラテンアメリカの生々しく熱い世界が覗けそうな予感。アルゼンチン映画批評家協会賞受賞、カンヌ「ある視点」部門ノミネートと、それなりの箔のついた作品です。2010年の映画で、監督はパブロ・トラペロです。

あらすじ
年間の交通事故死が8000人、負傷者が12万人というアルゼンチン。保険金をめぐる闇社会に住むソーサは、交通事故専門の弁護士。病院や警察から現場に向かいクライアント探しに走り回る日々だが、彼の法律事務所は被害者へ斡旋した保険金・示談金をピンハネしている悪徳組織であった。そんなある日、事故現場で若き女性医師ルハンと出会う。懸命に人命救助に励んでいる彼女に会い、今の状況を変えたいと思うようになるソーサ。が、彼を辞めさせたくない事務所はルハンに圧力をかけ始めるのだった・・・



しっかりと交通事故の場面からスタートします。痛々しい怪我人を救出する救急救命医ルハン(マルティナ・グスマン)。その戦場のような世界に、リーク情報を元にピッタリと駆けつける悪徳弁護士ソーサ(リカルド・ダリン)。しかし、ソーサはいかにも悪徳という感じではなく、どちらかと言えば知性派・人情派のような描かれ方です。そして、病院で度々言葉を交わす毎に2人は接近し・・・
接近してからベッドインまでちょっと早くありませんか??但し、彼女が寝てしまって事には至らないのですが。そのあたりは過酷な職場がそうさせるのかな?とも考えてしまいました。

ハゲ鷹と女医

親密にはなったものの、ソーサは保険金目当ての偽装事故を演出したところ、これが死亡事故となってしまい、ルハンにその汚い仕事が発覚して、一旦二人は険悪な関係に。そして、ソーサは彼女への愛から、全うに生きるべく、汚い仕事から足を洗おうとし、ルハンは過酷な仕事に疲れ、薬に頼るようになって行きます。そして、ルハンは大事故に遭った家族の生活を少しでも救うべく助けようとし、ソーサはこれに応え、悪徳弁護士から家族を守るように動いていきますが、彼の事務所はこの大きな金のなる木を逃すつもりは毛頭無く、ソーサとルハンを暴力的に脅迫し始めました。

ソーサは事故当事者全員の委任状を集め、この事故の交渉権を独占することに成功しますが、事務所側はルハンを脅迫して暴行を加えます。ルハンを痛めつけられたソーサは復讐に燃えて、事務所の元同僚を滅多打ちにして殺してしまい、警察とグルになった事務所長は、これと引き換えにソーサを脅迫してソーサが勝ち取った保険金を自分のものにしようとしますが・・・

そして、ここから怒涛のラストへと向うことになります。

前半のルハンは凛としてテキパキ活動する、若き救急救命医なのですが、疲労が重なり薬物に頼るようになると、加速度的に物事がうまくいかなくなり、不幸を背負っていくように見えます。ソーサは抜けようともがけばもがくほど周りから痛めつけられ、ますます深みにはまっていきます。映像では、交通事故や怪我人の場面が多く、互いの暴行もあって、血の出でいる場面が絶えません。痛々しく、荒々しく、暑苦しく、生々しい演出で疾走していく感じです。人物像もさることながら、このとてつもなく濃い感じがいいです。

ハリウッドでリメイクされるとのこと。南米の映画の持つ毒気のようなものが魅力なのですが、なんか綺麗な映画になりはしないかと心配です。それはそれで別の映画として魅力のある作品になるかもしれないのですが。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ル・コルビュジエの家」 普通でない2人。軍配は?

ル・コルビュジエの家・・・言いづらい。有名な建築家ということですが、この方面まったく知らないので、なじみがなく、題名が覚えられないのです。多分明日忘れている。原題は、「El hombre de al lado」で、訳すと「隣の男」。これでいいではないか!覚えやすいから。
邦題は芸術的な気取った題だが、原題は平凡な題名。邦題は家が主人公で、原題は人が主人公。ちょっと着目する点が違いますね。ともかく、GAYO!の無料動画にあったので、シュールそうな内容に惹かれて観ることにしました。たくさんの賞をとった映画のようですが、予備知識はありませんです。2009年製作のアルゼンチンの映画です。

あらすじ
世界的に有名になった工業デザイナーのレオナルドは、ラプラタにあるクルチェット邸に、妻のアナ、娘のローラと暮らしている。ある朝、レオナルドは大きな打撃音で目を覚ます。隣家の住人ヴィクトルが自宅に向かって、部屋に窓を開けようとハンマーで壁に穴をあけていたのだ。ヴィクトルは、レオナルドが違法だと指摘しても動じない。それでも、心配する妻や娘の前で強気に出たレオナルドは、ビニールで覆い穴を塞ぐよう、なんとか約束させる。しかし、ハンマーの音は時間に関係なく響いてきて、仕事にも手が着かなくなる。・・・



あらすじを読むと、はた迷惑な隣人に翻弄される善良な市民を描いたように見えますが、実はそうではないところがポイントです。さっそくネタバレですが、ストーリーを要約すると、隣の家の壁に穴が空き、プライバシーが保てなくなる。これを閉ざさせようとするが、話は平行線を辿り、収拾がつかなくなっていくという話で、隣人はその穴から見ていたおかげで、デザーナーの家に強盗が入ったことを知り撃退に向うが、返り討ちにあって死亡してしまう。と単純に書けばそういうストーリーです。あとはやりとりとエピソードの積み重ねです。興味深いのは登場人物の描写です。これが素晴らしくて面白い。

工業デザイナー:レオナルド
・世界的に有名な建築物に住み、デザインした椅子で世界的なデザイナーになった成功した人物。
・妻にはほぼ逆らえない。
・子供からは無視されている。
・弱い者には高圧的な態度をとる。(ヴィクトルの伯父、好きではない生徒 など)
・ヴィクトルを上から目線で見る。
・自分の言葉で話さず、人の言ったことにして言い訳する。(誰々がこう言っている など)
・短気で神経質である。
・生徒を口説いてあっさり撃退される、自意識過剰の勘違い男である。

ル・コルビュジエの家

隣の男:ヴィクトル
・窓のない暗い部屋に少しでも太陽の光が欲しい。
・話し方が恫喝しているように聞こえる。あるいは、その気になれば本気で恫喝する。
・マッチョで、ちょいワルオヤジタイプである。
・女性の意をとらえるのがうまく、遊び人タイプである。それだけに話術もうまい。
・情報通であり、観察が鋭い。
・レオナルドとは隣人として友好的に付き合いたいと願っている。レオナルドに贈り物を何回かしている。
・レオナルドの妻アナにも花を贈るが、レオナルドに捨てられる。
・指人形劇がうまく、これでローラを楽しませている。
・エロチックでアヴァンギャルドな美術品を製作する。
・弱いものを助けたくなる。あるいは弱いものをいじめているのを見ると懲らしめたくなる。
・最後は、隣家の押し込み強盗を単独で撃退するが、返り討ちにあってしまう。

そのほか、アナは、ヴィクトルを恐れてか、見下してか、全く相手にせず、汚物のように嫌っている。夫にはなにかあればキスしてといい、愛されていることを確かめないと気が済まない。しかし、ヴィクトルから、夫が人の名前を使って、引き合いに出して交渉していたことを聞いて、夫が信じられなくなる。
ローラは基本的に父親は無視で、話しかけられても、イヤホンを聞きながらダンスをしている。しかし、ヴィクトルの人形劇を見て2人は打ち解けあっている。

まぁ、この2人を比べると、恫喝調の強面なところとか、与えようとするものが妙に面白くずれているところを除けば、人間的魅力はあきらかにヴィクトルの勝ちで、市井のヒーローと、性格的に欠陥のある上司あるいは役人タイプの対比になってしまいます。

ラストの場面、虫の息のヴィクトルが倒れているところで、レオポルドは、救急車を呼ぶからと妻と子を現場から遠ざけ、そのまま電話をしません。ヴィクトルが、死んでしまえばすべてが丸く収まるという考えがよぎったのでしょうか。娘を命がけで助けてくれた恩人に対してなので、これが決定的な場面です。誰も見ていないので、いくらでも言い訳ができるシチュエーションです。(その場を離れてしまう家族も家族ですが)

この映画は冒頭で、壁に穴をハンマーで穴を空けていく場面が裏と表からの画像を並べて描かれて始まります。最後は、穴が煉瓦で閉ざされ暗闇になっておわります。殻を破って暗闇から出てきたちょっと変わった才能が、狡猾な良識のある人々に葬り去られ暗闇に閉ざされたという風にも見えます。やはり、家が主人公ではなく、人が主人公です。

そして、エンドロールでイノシシのマリネのつくり方を見て、良心に救われたようで、なんだかほっとするのでした。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「殺しの後にタンゴを」南米らしさと愛と心理的緊張感

原題は、「Naranjo En Flor」邦題では、「花咲くオレンジの木」という1940年代のタンゴの名曲らしいです。
これもGAYO!のちょっぴり過激な映画セレクションからの一品です。やっぱり映画は刺激がなくっちゃ!ということで鑑賞です。南米の映画はあまりお目にかかりませんが、ちょっと暑苦しい雰囲気がなんとなく好きです。ちなみにマカロニウエスタンも好きです。

あらすじ
女性精神分析医のマレーナは帰宅途中、娼婦が男に襲われている場面に出くわし、助けようとして男を殺してしまう。マレーナと娼婦は男の死体を隠し、誰にも口外しないと約束する。テレビで、男が刑事で妻と娘が残されていることを知ったマレーナは、遺族の様子を見に行き、真相を隠したまま男の妻と友人になっていく。



導入部は女性の診察室からで、カウンセリングの情景から言葉で多くが語られています。ちょっと言葉の多い映画かなと思いましたが、結果そうでも無かったです。語りは人生が変わってしまったあの事件へと導入されドラマが始まります。

静かな週末を過ごそうと、金曜日の夜家路を急ぐ清楚な雰囲気の女性。たまたま目にした娼婦が男に襲われている光景に、助けようと思わず頭を強打して男は死んでしまいました。その娼婦といっしょに死体をさびれた工場に隠しますが、その後罪の意識に苛まれていきます。それを払拭しようと、思い切って清楚な雰囲気から派手な雰囲気に転身。テレビで見た行方不明の刑事の捜索のニュースとその家族の映像に、殺したのが刑事であることを知りました。

ここから話は展開し、その行方不明の刑事の奥さんと接触。なぜあえてそうするか?と思いますが、このあたり、罪の意識のある犯人は現場に帰ってくるという話を思い出しました。奥さんと、楽しい女同志の遊び友達となり、その夫の刑事がどうしようもない暴君でDBに悩まされており、死んでいて欲しいが、死体が見つからないと保険がおりないので困ると打ち明けられます。一方で、その刑事の同僚が、刑事殺しは必ず犯人をあげて見せると真摯に捜索しており、奥さんに状況報告をしにやってきた時、居合わせた彼女に興味を持ちます。

殺しの後にタンゴを

そして、この映画の最大の見どころである心理戦がずっと続きます。刑事は彼女に興味を持ったのが、女としてか、容疑者候補としてか、微妙な感じで描かれます。彼女の方も、この男と関係をもって安全圏に入っていこうと下心がありつつ、どうやらいつしか刑事を愛するようになっていくようです。この微妙な関係が、その後のいろんなエピソードを積み重ねつつ、緊張感をほぼラスト近くまでひきずっていくのは見事でした。

一方この刑事は、殺された刑事が追っていた事件を同時に捜索していきます。これは、微妙な緊張感の傍らでの添え物のような印象を受けるのであまり印象に残りません。どうも主眼が男女の微妙な関係の方にいってしまうのです。そして、死体が発見されないのにしびれを切らした奥さんは、彼女と相談して情報を警察にリークし死体を発見させることになるのですが....

そうなんです。最後は思いもよらぬ展開に。参りました。

この映画、B級っぽくて見ていて楽しいとか美しいとか、そういう感じはないのですが、ストーリー展開と見せ方、緊張感の持続が見事でした。意味ありげな伏線もちゃんと回収されます。難をいえば、ラストがあまりに早口にあっけなく終わるので、何?何?何?と思っているうちに終わってしまうことですが、まぁ良しとしましょう。

エピソードにもいろいろと秘められたものがあり、バスク地方の話。アルゼンチンでのバスク人の見下され方。(実はアルゼンチンではバスク人の比率は高く、歴代大統領も相当輩出しているようです)カウンセリングで語られる人生訓等々、いろいろと面白いものも詰まっています。決して万人受けはしないと思いますが、南米の雰囲気が好きとか、タンゴの雰囲気が好きとか、B級映画が好きとかであれば、ちょっとした掘り出し物的に楽しめると思います。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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