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「昔々、アナトリアで」 捜査を背景に描くそれぞれの人生

Amazon Prime特典で見つけて、長い間ウォッチリストで温めていた映画ですが、このところ見ていたカンヌつながりで、やっと見てみることにしました。トルコ映画自体見るのが久しぶりです。とてもいい印象は持っているのですが…。2011年のトルコ・ボスニアヘルツェゴビナ合作で、監督は後に雪の轍でパルム・ドールを受賞することになる、ヌリ・ビルゲ・ジェイランです。

あらすじ
ある日の夜、アナトリアの草原を走る3台の車。乗っているのは、殺人事件の容疑者ケナン(フィラット・タニシュ)とその弟ラマザン(バーハン・ユルディズ)を実況見分のため連れてきた警部(ユルマズ・エルドアン)や検事(タネル・ビルセル)、監察医(ムハンメト・ウズネル)、軍警察たちでした。彼らは、ケナンが埋めたという遺体を捜索していましたが、曖昧な供述のため、場所を転々とさせられ、それでも見つけられず、いらいらが募ります。その最中、監察医と語り合っているうちに、彼に離婚歴があることを知った検事は、友人の妻が5ヶ月後のこの日に死ぬと言って、出産後に言葉通りに死んだことを打ち明けました。

捜査が進まず、一行は近くの村の村長(アルジャン・ケサル)の自宅で休憩を取ることになり、村長は一家総出でもてなしました。村長の娘(カンス・デミルジ)の美しさに心を奪われたケナンは、警部に自供を始め、被害者ヤシャルの息子は実は自分の子であると告白しました。一方、監察医は、検事に友人の妻の死について再度尋ね、検事は検死をせず心臓発作ということになったと答えますが、監察医は薬の副作用の可能性も示唆します。翌朝、ケナンの供述により手足を縛られたヤシャルの遺体が発見され、町の病院に運び込みますが、そこに人々が詰め寄り、ケナンに罵声を浴びせました。その中にはヤシャルの妻(ニーハン・オクツク)と息子がおり、息子はケナンに対して石を投げつけました。

ヤシャルの検死を担当することになった監察医は自分の部屋で離婚した妻の写真に目をやります。検死の前に訪ねてきた検事と監察医は再び死んだ友人の妻について語り合い、監察医は、友人の妻は自殺した可能性があると話し、検事は自身の浮気が発覚した時の様子を語りました。監察医は、ほとんどの自殺が人を罰するためではないか、と応え、涙を堪える検事の姿がありました。検死解剖が始まり、監察医は、ヤシャルが生きたまま埋められた可能性があることに気づきますが、それはもみ消してしまいます。そして、監察医が窓の外に目をやると、二人で帰っていくヤシャルの妻と息子の姿を見たのでした。




昔々、アナトリアで


トルコ映画、ずいぶん久しぶりです。なんでこれほど長い間見なかったか不思議でした。記憶の中では、「路」を公開時に見て以来で、あれは30年以上前のことではないですか!と、それはさておき、この映画は、話の場面や展開の割には、上映時間が長いです。かといって、飽きるとかいうことではありません。それなりに画面に引き付けられます。遺体捜索の一行の話が第一部。場面は捜索中と、村長の家と、発見の場面。そして、町に遺体が搬入され、病院でのシーンが第2部。搬入時の様子、町の情景、解剖と続きます。

物語の展開としては単純ですが、描かれる内容は、この捜査にかかわる人と容疑者の心情を描くドラマ。事件にかかわるというのではなく、いままでの人生の中での苦悩です。ある意味群像劇的で、語られるのは容疑者と被害者の妻子、そして容疑者の弟の微妙な関係。これはストーリーの骨格をなす部分でありながら、本人の口から語られることなく、伝聞や態度で描かれるのみ。わずかな手掛かりと演技から、事件の経過を想像するのみとなります。被害者の妻の描き方など見事な語り口です。あとは、警部、検事、医師の3人の過去と苦悩が、会話の中から語られていく形でした。

しかし、このヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、カンヌの超常連なんですね。なんと8つも賞を受賞しているではないですか。そのうち、パルムドール1、グランプリ2、監督賞1。他にベルリンは昔ありますが、ヴェネツィアはありません。カンヌが彼にとって主戦場のようです。この作風からもなんとなく頷けます。この物語は、犯罪捜査をモチーフとした、男女と夫婦の愛憎を描く作品。容疑者と被害者の妻の心情を背景に、メインで語られているのは、検事とその妻の話。検事はここで初めて気づいたのか、それとも長年思っていたことを、医師との会話で再確認したかったのか。戒律の厳しい世界の中で、女性の恐ろしいまでの愛憎の深さを感じました。

2020.2.25 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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