FC2ブログ

「怒りの葡萄」 1930年代アメリカの流民の貧困と希望

スタインベックの小説としても有名なこの映画、オスカーでは作品賞は逃しましたが、7部門にノミネートされ、監督賞と助演女優賞(ジェーン・ダーウェル)を受賞しました。ジョン・フォード監督の名作で、1940年の映画です。

あらすじ
仮釈放となったトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は、故郷のオクラホマの農村地帯に戻ってきました。家の近くで元説教師のケーシー(ジョン・キャラダイン)と出会い、二人は砂塵の中をジョード家へと歩いていきます。ところが、家は空き家となっていて、物陰に隣人のミューリー(ジョン・クォーレン)が潜んでいました。彼を問い詰めると、ジョード一家は、一帯の砂塵の為に農業ができなくなり、土地を所有する資本家による機械化の波に追われ、移住の為ひとまず伯父の家に移ったことを知らされます。伯父の家でトムは4年ぶりに母(ジェーン・ダーウェル)と出会い、翌朝ジョード一家とケーシーは中古トラックに家財道具を載せてカリフォルニアへと出発しました。

今にも壊れそうなトラックは、大勢の家族を乗せて、国道66号線を西へ西へと走り続けました。旅の途中で、祖父が亡くなり、身内で埋葬します。そして、カリフォルニアへの砂漠越で祖母もなくなりました。長い旅を経て夢の国カリフォルニアに着いた一行は、移民キャンプにひとまず入りますが、キャンプにいる人々の悲惨さに愕然とします。翌日、賃金をピンハネをするブローカーを労働者が糾弾すると争いが起こり、トムとケーシーは労働者をうまく逃がしますが、ケーシーが罪をかぶり連行されていきました。そして、キャンプ場焼き討ちの噂を聞いたジョード一家は、キャンプ場を離れ、桃の農場に誘われて働くことになりました。

その農場の周囲では警官隊と労働者の睨み合いが続いていました。その理由を探ろうとしたトムは、周囲でテントを張っていたケーシーと出会います。ここではストライキが起こっており、ケーシーは首謀者と思われていたのでした。そして乱闘が始まるとケーシーは殺され、トムは相手を殺してしまい追われる身になります。やむなくジョード一家は農園を脱出し、農務省の国営キャンプに入りました。そこでは安価で設備も整い、娯楽も充実してつかの間の安息を味わいます。ある日、敵対する地域のボスの差し金でキャンプ場で騒動を起こすことが計画されていることを知ったトムは、自治会の人々とともに計画を未然に防ぎました。しかし、トムは追手が迫っていることを悟り、一人で家族を離れ立ち去ります。翌朝ジョード一家は新たな仕事を得てフレスノに出発。残ったジョード一家は、母を中心に来るべき未来を信じて走り続けるのでした。



怒りの葡萄

名作文学であり、名画でもある「怒りの葡萄」は、映画は1940年の公開。原作の小説が出版されたのが1939年ですから、出版後僅か1年後の映画化となります。時代設定は1930年代のアメリカで、当時としては極めて身近な題材による小説の映画化という事でした。今からすれば古い映画なのですが、当時からすればすべてが新しい、現実の社会問題を題材にした最新の映画なのです。背景は、世界恐慌の30年代、資本主義農業の進展と、中西部で深刻化したダストボウル(開墾によって発生した砂嵐)により、土地が耕作不能となり、流民となる農民が続出したという社会問題を扱っています。

物語の進行に、説教師が重要な役割を果たすなど、当時の宗教感が色濃く入った映画のようです。「葡萄」とは、神の怒りにより踏み潰される「人間」のことを意味するということで、 怒りの葡萄という表現も当時は良く知られたものであったそうです。実際見ていると、それほど宗教色は感じませんが、それは登場人物の行動の中に自然に溶け込んでいるからでしょう。もしろ、プロレタリア映画的な部分を感じるぐらいですが、そういった共産主義的な主張を映画の中では題材として登場させながらも、全体としては未来への希望の為の、ヒューマニズムや正義を訴える映画であると考えられます。

オクラホマからルート66の旅は確かに苦難が続きますが、実際の苦難はカリフォルニアに着いてから襲ってきました。働く場所がない中で、迫害や搾取、夫の逃亡、濡ぎぬ等々が家族や隣人を襲います。キャンプ場の表現はまさにスラムそのもの。そして、カリフォルニアの人々の彼らを見る目にも、両者の段違いの格差を感じさせます。その中を、主にトムと母親の機転でなんとか切り抜けて少しづつ基盤を作っていきます。ラストのジェーン・ダーウェルの演じる母親の宣言が力強く、家族の未来に希望を感じさせました。そして、国営キャンプ場のような設備が、数は少なくともしっかり運営されていることは、アメリカの力や理想を感じるところでもありました。

2020.6.14 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「肉弾鬼中隊(1934)」 砂漠の中のシュールな戦場ドラマ

ジョン・フォード監督の戦争映画ということで、鑑賞してみました。ジョン・フォードの戦争映画は、有名作品はあまり見ていないので、イメージがある訳ではありません。この作品は、1934年の映画で、オスカーでは、作曲賞にノミネートされていました。
原題:The Lost Patrol (1934)

あらすじ
第一次大戦中のメソポタミヤ砂漠の中で、英軍の一中尉の率いる騎兵偵察隊が進軍していました。その時、何処からともなく飛んできた銃弾に撃たれて中尉は即死。軍曹(ヴィクター・マクラグレン)が代わって指揮をとりますが、軍曹は隊の使命も、目的地も、本隊の所在地も知らされていませんでした。熱砂の中の進軍に苦労しつつ、部隊はオアシスを発見し、一夜をあかすことにします。その夜、若い志願兵が歩哨中に銃撃さ、馬もすべて奪われてしまい、そして、最古参の伍長も撃たれて重症で動きが取れなくなり、部隊はこれ以上の行軍を中止し、オアシスに籠って救援を待たざるを得なくなりました。

遠望を得て敵情を把握しようと、椰子の樹に登った兵士も狙撃され、いつどこから飛んでくるかもわからない銃弾に、全く身動きが取れない中、軍曹は、決死隊を募って本隊と連絡を取ろうとしますが、便りを待つ間にも、部隊は絶望に覆われていき、精神が錯乱して砂漠にさまよい出て銃丸に倒れたりと、一人一人減っていきます。そして、連絡に出た兵士も、惨殺され馬に乗せられて帰ってきてしまいました。その夜ブラウン(レジナルド・デニー)という比較的元気だった兵士は、仇を打ちたいとメモを残して消えてしまい、軍曹とモレリ(ウォーレス・フォード)、サンダース(ボリス・カーロフ)の二名の部下だけが残されます。サンダースはかねてよりの狂信者で、今や精神的に参ってしまっていたのでした。

最後の頼みの綱である、自軍の飛行機の飛来を見た三人は、歓喜の声を上げて、位置を知らせようと手を振りますが、パイロットは着陸と同時に射殺され、軍曹は飛行機に向かうと、機銃を取り外し、狼煙として機体を燃やします。サンダースは本当に発狂し、手製の十字架を背負い、丘に登ると、止めようとして駆けだしたモレリともども敵弾に倒れ、軍曹は遂に一人になりました。軍曹はもはやこれまでと最後の迎撃の準備を整えた時、アラブ兵が初めて姿を現し、軍曹は最後の力を振り絞って、機銃掃射ですべてを倒すと、部下の墓場に向かって、半ば狂ったように勝利の鬨の声を上げます。そして、飛行機の狼煙によって舞台に気づいた援軍が到着し、軍曹一人合流することができたのでした。



肉弾鬼中隊(1934)

前半は、見ながら、なんという緩い部隊だろうと思っていました。砂漠の中を進軍していますが、使命もわからず、目的地も解らないまま、合流しようと進軍している部隊。そして、自らの位置も解らず、アラブ兵から時々狙撃されます。そんな砂漠の中の行軍で、馬や兵士は疲弊して倒れていく展開で、なんとなく締まらない感じです。敵のアラブ兵を見つけて交戦しようという意欲もないようで、砂漠の渇きに耐えるのみ。そして、オアシスにたどり着き一息つくと、見習のような若い志願兵を歩哨に立たせてしまいます。時代性もあるとは思いますが、どうも軍隊の映画としては緩すぎる展開です。

兵力を失いながら、オアシスで籠城するうちに、ボリス・カーロフの演じるサンダースの発言が波紋を投げかけます。徐々に映画の雰囲気が変わっていくような感じです。一人の兵士が、女性の武勇伝を滔々と話しているのを聞きつけ、やってきて信仰を持てと説教します。それに対して、なぜ?と単純に答えます。このくだりはしばらく続きますが、面白い印象を残します。サンダースは最後は十字架を背負って丘を登り、銃撃されます。何かを象徴するような、シュールな場面。この映画は、ハリウッドスタイルの娯楽作のような雰囲気で始まっていくのですが、プロットや会話など、何から何までシュールでアバンギャルドだったのです。

ラストは、アラブ兵を撃ちとりますが、一瞬、幻覚を見て自軍を撃ったのかと思いました。それほど、異常な感覚になっています。そして、援軍が来て、戦場の現実に戻ります。この映画で映されたこの時間がどういう意義を持つのか、不思議な映画です。無目的となった行軍により全滅する部隊ということで、多少反戦的なイメージも入っているようには思いますが、そればかりでは無く、サンダースにまつわる宗教感。信仰と狂信の戯画も重要なポイントかもしれません。広大な砂漠に囲まれた、小さな公園のようなオアシス。姿を見せない敵、一人一人死んでいく兵士、そして個々の兵士の語りや狂信者が織り成すシチュエーション。どう考えても、シュールな作品だと思いました。

2020.5.24 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「メッセンジャー(2017)」 かつてのB級SFを彷彿させる

宇宙を舞台にしたSFの雰囲気が良さそうなので、鑑賞して見ました。いささか語りつくされた感じのある分野ですが、どういった趣向があるのかが楽しみという事で。監督はロブ・ヨーク2017年の映画で、アメリカ・オーストラリア合作です。
原題:Magellan (2017)

あらすじ
NASAは、土星の衛星タイタンから発せられた電波を受信しました。さらに類似の電波が海王星周辺からも発信されていることを確認。そして、発信されている3つの電波を組み合わせると、和音となることが発見されます。これを、宇宙の未知の知性が作り出したものであると考えた国防省は、ロジャー・ネルソン大尉(ブランドン・レイ・オリーヴ)に調査を命じました。工程は、タイタンから海王星の衛星トリトン。そして、準惑星エリスを巡り、発信源を回収して帰還するという、10年にも及ぶもので、妻のアビゲイル(ホイットニー・パーマー)も夫の熱意を尊重して同意し、人類史上最初の地球外生命体との接触に意気込むロジャーはし、AIで管理された宇宙船で出発しました。

地球を出発すると、ロジャーはすぐに催眠状態に入ります。そして、542日目、ついに最初の目的地タイタンへ到着。荒れた気象条件の中、ロジャーは発信源であるクリスタルの球体を回収しました。ロジャーはついその球体を手だ触ると、即座に反応し彼の脳内に、不思議な音と映像が発生します。しかし、この行動規定に外れた接触は地球から注意を受け、地球の本部や妻との交信が、だんだんぎくしゃくしたものになっていきました。さらに睡眠に入り、まもなくトリトンに到着。二つ目の球体を入手したロジャーは欲求を抑えきれず、再び手で触ると、様々な映像がロジャーの頭脳に送り込まれました。

その頃地球では、このプロジェクトが国防問題に拡大。友人や妻との交信む難しくなってきていました。そして、妻との交信は中国側にハッキングされ、宇宙船のAIにまで干渉してきます。そして、睡眠を経て準惑星エリスに到着。そこでは球体以外に、ネバネバした物体を発見。宇宙船に戻って解析させると、DNAを持つ生物であることが判明します。ロジャーは友人たちに直接報告すると、3つの球体を取り出し、接触を開始。音と映像は共鳴し、AIは宇宙を飛び交ってきた交信であると解析し、ロジャーは最も近い発信源までの到達することに決めます。そこまでは38年。友人や妻に帰らないとメッセージを送ると、旅を続ける準備を整えるのでした。



メッセンジャー(2017)

正統派のSF映画でした。基本は2001年宇宙の旅をなぞっていく雰囲気で、違うところは、比較的判りやすく、また低予算であるということ。宇宙船の内部など、小さな事務所のような風情でした。ストーリー的には、きわめてシンプルで、一個ずつ球を拾っていくお話。探索行動を実行する毎に若干のスリルが楽しめます。そして、3つそろえれば宇宙中と交信されます。そして、生命体らしきものまで発見しました。最後は神秘を求めて永遠の旅へ。まぁSFとしては悪くは無いと思います。

本人は、ほとんど寝て過ごしているので、この時間の体感はほんと数日なんでしょう。実際は地球ではかなり長い時間が流れています。このあたりの感覚は大変面白いのですが、その地球からのメッセージが、けっこう酷いものでした。宇宙にいる人に対し、これほどあからさまに苦言を呈することはないなと思います。それもかなりもったいぶった表現で。

こういったタイプのお話は、やはり過去に偉大な作品がありますので、新しい味を出していくのはなかなか難しいとは思いますが、低予算ながら、雰囲気はかなりいい線を行っているのではないかと思いました。宇宙レベルの長い時間に思いを馳せることもできましたし、まぁ、見たかいはあったと思います。実際本人にとってみれば、次の日起きたらという感覚なのでしょうが。睡眠状態で38年経過した時、老化はどれぐらい進むものだろうと、ふと考えてしまいました。

2929.4.16 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「スタークラッシュ」 往年のスぺオペへのオマージュに溢れ

何やら、往年のSFファンの心をくすぐるような作品を発見したので、見てみました。製作されたのはスターウォーズの頃ですが、内容は、いやはや昔のスぺオペ展開です。楽しい…。1978年の映画で、監督はルイジ・コッツィ。アメリカ・イタリア合作作品です。
原題:Starcrash (1978)

あらすじ
銀河の遥かかなた。宇宙船が邪悪なザース・アーンの追跡中していました。ある惑星に近づくと、乗組員を混乱させる武器で攻撃され、乗員は3つの脱出艇で離脱し、宇宙船は破壊されてしまいます。その頃、密輸業者のステラ・スター(キャロライン・マンロー)とアクトン(マージョー・ゴートナー)は、宇宙警察に追われ、ハイパースペースを使って逃げ込み、出現したところで脱出艇を発見。一人の生存者を見つけますが、二人は追跡してきた警察によって捕らえられました。有罪判決を受けた二人ですが、脱出して再会すると、ホログラフの皇帝から、生存者を救出したことを感謝され、ザース・アーンの秘密兵器の探索を命じられます。さらに、皇帝の一人息子の乗船する他の脱出艇の捜索も依頼されました。

最初の脱出艇には生存者はおらず、ステラはアマゾンの戦士族に捕えられました。ザース・アーンの仲間である、アマゾンの女王コレリアの前に連れて行かれますが、ステラはなんとか脱出し、女王の差し向けたロボットの追跡を振り切ってアクトンと合流します。宇宙船の墜落現場でも生存者は発見できず、船に戻るとザース・アーンの一味のトールに待ち伏せされ、極寒の地域に幽閉されますが、アクトンの活躍で再び脱出に成功しました。そして、もう一つの脱出艇のある場所に近づくと、冒頭の兵器から攻撃を受けますが、宇宙船を操って乗り切り、脱出艇を調べてみると、皇帝の息子のサイモン王子を発見します。しかし、穴居人に襲われ、アクトンはレーザー剣を使って撃退。その惑星自体が兵器化されていることを確認しました。

惑星の地下実験室で3人は捕らえられ、現れたザース・アーンは、3人を餌に皇帝をおびき寄せ、もろとも惑星を破壊する計画であることを告げます。彼はその場を去ると、ロボットゴーレムに3人を監視させ、アクトンはレーザー剣の決闘でなんとか倒しますが、致命傷を負ってしまいます。皇帝は惑星に到着し、旗艦から3分間の「時間停止」光線を発射して爆発に備えると、皇帝軍と、ザース・アーン軍の決戦が始まりました。皇帝の兵士がザース・アーンの宇宙ステーションを襲撃しますが撃退され、ザース・アーンは爆破の準備を整えていきます。手詰まりとなった皇帝は巨大な宇宙ステーションをザース・アーンの宇宙ステーションに突っ込ませることにし、ステラたちが見事衝突させると、ついに勝利を得たのでした。ステラたちはサイモン王子に迎えられ、皇帝は勝利を宣言するのでした。



スタークラッシュ

昔々楽しんだ、スぺオペの想い出を思い起こさせる楽しい作品でした。冒頭からマレー・ラインスターとか、ブラッドベリとか、いきなり懐かしい名前が出てきて、あの時代のSFファンとしては、見事心をつかまれます。ストーリーはまぁ、脈絡が無いような感じで、どんどん展開していってしまいますし、ちょうどこの映画の頃に、流行っていたスターウォーズもふんだんに使われちゃっています。C3POらしき役回りが大活躍です。最後には、ライトセーバーも振り回されました。

SFXは思いっきりB級感に振り切れてます。ストーリーは往年のスぺオペをパロディにしたような進行だと思いますが、作られた年代に見ると、よりパロディ感が湧くのではないかと思いました。今、40年経過してから見ると、懐かしさの方が勝ります。あぁ…もう40年もたっているのか!というのも驚くべきところでした。背景の星なんかが繁華街のネオンなのも、凄い表現だと思いました。あまりにチープ…。

伝統的なスぺオペをモチーフにした映画なので、思わずスぺオペの歴史を思い返してみました。穴居人とか笑っちゃいます。今の技術で、60年代にたくさん書かれたスぺオペをガチで映像化するとどうなるだろうと想像してしまいます。いや、是非やってほしいです。大真面目に。できれば、ノースウエストスミスシリーズか、ジェイムスン教授がいいです!二つとも大好きなシリーズでした。百歩譲ってもキャプテン・フューチャーで…。

2019.11.9 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「オペラの怪人(1943)」 ユニバーサル・モンスターズの一作

ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」の映画化の一つ。1925版のリメイクであり、その後何度も映画化されています。そして、私の見たことがある、数少ないミュージカルの一つでもあるのでした。ということで、見てみることにしたのですが、この映画はユニバーサル・モンスターズの1作なのですね。初めて気が付きました…(笑)。1943年の映画で、監督はアーサー・ルビン。オスカーでは、美術賞・撮影賞受賞、他2ノミネートでした。

あらすじ
エリック・クロウデン(クロード・レインズ)は、ベテランのオペラ座のヴァイオリン奏者でしたが、引退を勧告されてしまいました。これまでクロウデンは、ひそかに資金をソプラノ歌手のクリスティーヌ(スザンナ・フォスター)のレッスンつぎ込んでいたため、手元に全く資金が残っていません。そこでクロウデンは自身が作曲した渾身の協奏曲を出版社に持ち込みますが、門前払いとなります。すると、隣室からその曲の演奏が聞こえたため、クロウデンは曲が盗まれ他と考え、出版社のオーナーともみあいになり、アシスタントに酸を顔に掛けられてしまいました。

クロウデンは、オペラ座の地下の下水道に逃げ込み、クリスティーヌを気に掛け続けます。その頃、クリスティーヌには、しきりにモーションを掛けている警官のラウル(エドガー・バリア)と、やはり同じように心を勝ち取りたいと考えている歌手のアナトール(ネルソン・エディ)の二人の取り巻きがいました。ある日クリスティーヌは、クロウデンが、主演のビアンカロリ(ジェーン・ファラー)に毒を盛ったため、代役で大成功を収めます。ビアンカロリはアナトールとクリスティーヌの仕業と疑い、ラウルに逮捕を迫りますが、証拠がなく聞き入れません。ビアンカロリはクリスティーヌの成功をなかったことにするよう要求しましたが、その夜、クロウデンはビアンカロリとメイドを殺害してしまい、以後の公演は休演となりました。

オペラ座のオーナーたちは、再会する為に犯人に罠を掛けます。他の主役を起用して、クロウデンをおびき寄せ、さらに上演後に、彼の協奏曲を演奏するというもの。クロウデンは公演中に、オペラ座の屋根から大きなシャンデリアを落下させ、会場を混乱させると、クリスティーヌをさらって地下へ向かい、クロウデンはクリスティーヌに愛を伝え、ずっと一緒にいようにと語ります。ラウルとアナトールも、地下へと向かうと、会場で演奏され始めた協奏曲に合わせて、クロウデンがピアノを弾く音が聞こえてきました。クリスティーヌは音楽に集中するクロウデンのマスクを奪い、同時にラウルとアナトールが到着。ラウルが発砲した衝撃で地下室が崩れ始め、クロウデンは下敷きになり、ラウルとアナトールはクリスティーヌを連れて脱出しました。

後日、公演後ラウルとアナトールは、クリスティーヌを夕食に誘いますが、クリスティーヌはどちらも選ばないまま、大勢の熱狂的なファンに囲まれてしまい、二人は仕方なく、お互いを同情して食事に向かうのでした。



オペラの怪人(1943)

この映画は、ユニバーサル・モンスターズの1作であり、代表的な作品の一つという事です。そしてこのシリーズの中では、唯一のアカデミー賞受賞作品(撮影賞・美術賞)とのこと。ユニバーサル・モンスターズとしてみれば、他の作品とずいぶん雰囲気が違いますが、それはミュージカル仕立てであったり、鮮明なカラー映像であったりするからでしょうか。あまり、オペラの怪人にしても、モンスター感が薄い感じです。物語自体は他の作品やミュージカルと共通するものと思いますが、原作は読んでおらず、ミュージカルを見たのも遠い昔なので、細部までは覚えていませんでした。

導入部はふんだんに部隊の映像を見せてくれます。それはそれで楽しいのですが、本題に入るまでちょっと長く感じました。舞台が終わり、舞台裏の出来事に移っていくと、話が進んでいきます。動機や行動などがちょっと現実離れしている上にじっくり進むので、ちょっと気持ちが入っていかないなという感じはありますが、ラストに近づくにつれて盛り上がっていきました。そして、チャイコフスキーの交響曲第4番をオペラ仕立てにした舞台は圧巻です。おなじみの盛り上がっていくメロディなので、大変面白くもあり、迫力のあるシーンが展開しました。ここだけ取り出してでも、また見てみたいと思います。

俳優陣では、やはり主役のクロード・レインズが面白いと思いました。なにか微妙な感情を湛えたような顔つきが、えも言われない感じです。語彙力が乏しいですが…。図らずも見てしまったユニバーサル・モンスターズ。長期にわたって製作されている為、まだ見ぬ作品も大変多く、次回見ることを楽しみにしています。また、この時期になるとカラーの映画も出てきますが、カラーのユニバーサル・モンスターズも始めて見ました。なんとなく、このシリーズは白黒が似合う感じですので、やはりちょっと特異な作品なのかなと思いました。

2020.6.27 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「フランケンシュタインの花嫁」続編では2体目の怪物を創造

ユニバーサル・モンスターズの人気作品、「フランケンシュタイン」の続編にあたります。実は怪物は生きており、あらたな物語が展開。今回はどうなりますでしょうか。1935年の映画で、監督はジェイムズ・ホエール。オスカーでは録音賞にノミネートされました。

あらすじ
ある夜バイロン卿(ギャヴィン・ゴードン )は、シェリー夫人(エルザ・ランチェスター)に、小説「フランケンシュタイン」を称賛しています。そして、シェリー夫人は物語の続きを語り始めました。

風車小屋が焼け落ちたのを見届けた村人たちは、怪物(ボリス・カーロフ)が死んだと考え、風車小屋から投げ出されたヘンリー・フランケンシュタイン(コリン・クライヴ)を運んでフランケンシュタイン家に向かいました。その頃、焼け跡の奥深くでは怪物が生存していて、這い出てきます。ヘンリーの婚約者エリザベス(ヴァレリー・ホブソン)は、ヘンリーの死を嘆いていましたが、ヘンリーが目を覚まし屋敷は歓喜に包まれました。そこに、怪物が生きていたという知らせが入りました。

ある日、回復したヘンリーの元に、プレトリアス博士(アーネスト・セジガー)が現れます。プレトリアスも生命の創造を研究しており、研究室にヘンリーを招いて自身の作品を見せると、彼に新たな怪物の創造の協力を求めますが、ヘンリーは拒否しました。その頃、森の中を彷徨う怪物を、再び村人たちが追い始め、一旦は確保し警察の地下牢に監禁しますが、すぐに鎖を千切り脱走しました。怪物は盲目の老人が住む小屋に逃げ込み、老人は怪物を友として受け入れ、怪物は初めて自分を受け入れてくれた人間に出会い、老人から言葉や、友達と善悪の概念を教えてもらいました。

しかし、怪物は再び村人たちに発見され、墓地の地下に逃げ込むと、そこにはプレトリアスが、新たな人間を創造するため、少女の遺体を探していました。怪物と出会ったプレトリアスは、花嫁を作ってやると持ち掛け、怪物を味方にしてエリザベスを誘拐し、ヘンリーを無理やり引き込みます。山奥の塔で花嫁の創造を行うヘンリーとプレトリアスは、前回同様、雷光を利用して創造に成功し、怪物は心待ちにしていた仲間の誕生を喜びますが、花嫁は怪物の姿を見て絶叫して彼を拒絶。怪物は絶望して、エリザベスとヘンリーを脱出させると、プレトリアスと花嫁を道連れに塔を爆破したのでした。



フランケンシュタインの花嫁

ユニバーサル・モンスターズの1935年の作品という事で、前作のフランケンシュタインの続編となります。冒頭、シェリー夫人の登場から始めり、前作がレビューされ、その最後の場面から物語がスタートするという、あまりにも続編っぽいスタートで、少々驚きましたが、ある意味おさらいができて良かったとも思いました。今回は、怪物に花嫁を作ろうというお話で、マッド・サイエンティストのたくらみと並行して、怪物が精神的に成長していく場面が描かれています。

ヴァイオリンを弾く、目の見えない老人との邂逅がこの物語の核心をなす名場面。友達と善悪の概念を覚えるところが、ストーリーのポイントでした。友達が欲しくて、新しい花嫁の誕生を心待ちにする怪物が、花嫁から拒絶され失望するところが悲哀を漂わせています。その後、館を崩壊させ、マッドサイエンティストや、自分も含めた2体の怪物を瓦礫に埋めるのですが、ここの動機は、友達を得られなかったことへの失望ですね。本人にとってはここに善悪の要素は入らないと思うので。

この映画では、冒頭のシェリー夫人と、最後の花嫁が、エルザ・ランチェスターの2役ですね。花嫁は登場時間は少ないのですが、なかなか強烈な印象を残したと思います。あとは、メイドのミニー役のユーナ・オコナーが、大変目立っていて、物語を面白くしています。さて、ボリス・カーロフの怪物は、また4年後に復活します。この映画も、埋もれただけで、その後の処置はされていませんので、何度でも登場しますよという事でした。次作も楽しみなので、見つけたら速攻見たいと思います。

2020.6.6 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ダークフィアー/逃亡者」 楽しめると言えば楽しめるSF

確か、もうすぐ配信終了ということで、これといった動機もなく、手ごろそうなので見たという感じの鑑賞。たまにはいいものです。地雷だといやですが…。ということで、2015年の映画で、監督はIqbal Ahmedという人。この作品が唯一のフィーチャーのようです。
原題:The Answer (2015)

あらすじ
証券会社内で、社員に郵便物を配達をしているブリッド(オースティン・エベール)は、平凡な男でしたが、ある日、友人社員のトレント(アダム・シャビロ)のデスクで、チャートを見ていて急に動体視力と頭脳が発達してしまい、自然にPCを操作し、大きな利益を得ます。そんな時に、ブリッドに届いた郵便が、なんと20年前に死んだ母親からのもの。入っていたのは、小さなゲーム機で、これですべてが判るという母からのメモがありました。会社で動体視力のおかげでシャーロット(アレクシス・カラ)を助けたブリッドは彼女と仲良くなり、デートの後で彼女を自宅に連れ帰ると、自宅は荒らされ、上司の死体が転がっていました。そして部屋に潜んでいた男に襲われそうになり、二人は逃げ出しました。

ブリッドとシャーロットは殺人犯として指名手配され、ブリッドは頼みの綱として、母から送られてきた端末を取り出します。ブリッドは、驚異的な動体視力で楽々ゲームをクリアしてしまうと、緯度経度と、謎の数字が表示されました。そこは図書館で、数字の示す分類番号の場所には、大き目の端末が隠されていました。起動すると、行方不明になった父親が画面に現れ、自分は異星人と名乗り、母親と恋に落ちたことを告白。ブリッドは異星人との混血であることを知らされます。そこで再び男に襲われ、動体視力が作動して反撃。その場を逃げ出しました。2人は空き家に忍び込むと、事件を解析し、異星人のアジトを突き止め、警察を異星人のアジトへ誘導しようと考えました。

ところが、二人が喧嘩をしてしまい、その間に異星人が襲来。シャーロットを連れ去ってしまいます。ブリッドは覚悟を決め、異星人たちのアジトへ潜入。いったんは捕らえられてしまいますが、反撃にうつります。異星人は、地球では自立呼吸が出来ず、そのために地球人をさらって研究をしていたのでした。そして、「混血」であるブリッドの体を調べて、解決策を編み出そうとしていたのです。ブリッドはシャーロットと連携し、ブリッドに能力をも活かして異星人たちを撃退。シャーロットも自分が妊娠していることが判明し、ブリッドにそっと打ち明けるのでした。



ダークフィアー/逃亡者

自分が実は特殊能力を持った宇宙人とのハーフということが判明。悪事を繰り返し、地球侵略を試みる宇宙人をやっつけるというストーリーでした。ちょっとギャグみたいなプロットですが、映画は大まじめです。主人公はその境遇に悩み抜き、意を決して戦いに向かいます。この悩み抜くところが強調されすぎ…。宇宙人とのハーフという事で、動体視力が桁違いという特殊能力を持っているのが特徴です。そして能力発揮のタイミングで目が光ります。ただどうも、いつもうまく使えている訳ではなく、溜めて溜めて、いざという時に使えるというイメージです。

そういう簡単なプロットで、ストーリーも単純なものですので、見どころは自分が宇宙人と知った主人公が、犯罪を犯して逃走中のガールフレンドに煽られて悩むというところですが、そこですか?という感じで、緩い話になってしまいました。それに、相手のボスは戦いの途中では、あるはずの能力をあまり発揮できていないようで、ちょっと迫力がありません。と、いろいろ書きましたが、平たく言えば、楽しめはしますが、あまり内容が無いかな。という映画でありました。

地雷映画というほどではなく、ヒロインがカッコいいのと、動体視力で手錠のパスコードを覚えていたというのが見どころでした。ピンポイントですが…(笑)。

2020.4.19 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「散り行く花(1919)」 D・W・グリフィスの抒情的な秀作

サイレント時代の巨匠D・W・グリフィスの作品です。「国民の創生」とか有名で、壮大な作品のイメージがあるのですが、これはまた違った雰囲気がありそうです。1919年の映画で、ユナイテッド・アーティスツの第一回配給映画となりました。
原題: Broken Blossoms or The Yellow Man and the Girl

あらすじ
東洋の玄関口である中国の港。中国人の青年(リチャード・バーセルメス)は、仏教を広めるため、ロンドンに渡ります。しかし、厳しい現実に直面し、貧民街で店番をしながら阿片を吸うような生活を送らざるを得ませんでした。同じ貧民街に、妻に逃げられたボクサーのバロウズ(ドナルド・クリスプ)が、娘のルーシー(リリアン・ギッシュ)とともに住んでいました。バロウズは乱暴な性格で、ルーシーを日常的に虐待していました。そんなルーシーが街に買い物に出た時、青年はルーシーを見て、気になり始めます。

ある日、父親からひどく鞭打たれたルーシーは、末に彷徨い出て、青年に助けられ、彼の部屋で穏やかな時間を過ごします。しかし、青年の店に来た客が、そこにルーシーがいることを知ると、さっそくバロウズに報せに行き、怒り狂ったバロウズは青年が不在の間に、部屋から彼女を連れ帰り、ひどく虐待し、ルーシーを死なせてしまいました。ルーシーがいないことに気が付いた青年は、バロウズの家に行き、争いになると持ってきた拳銃でバロウズを射殺。ルーシーの亡骸を家に運びベッドに寝かせます。そして、警察が捜査に動き始めた頃、青年はルーシーの亡骸の傍らで自ら命を絶つのでした。



散り行く花

グリフィスの映画を見たのは初めてなのですが、「国民の創生」や「イントレランス」という壮大な映画のイメージの一方で、「国民の創生」における、人種差別のイメージもありました。この映画は、中国人が主役。といっても、イエローフェイスですので、本物ではありません。若者の名前も、The Yellow Manなのでした。そんな感じなので、人種差別的な先入観を持ちつつ、この中国人役が主役の映画を見始めました。黄色人種の場合は、白人・黒人のはっきりした対立観念ではなく、「いない存在」なのかもしれません。内容も素直で、差別的要素はあまり見られませんでしたが、字幕は名前ではなく、悉くThe Yello Manと表現されています。

ストーリー自体は非常に単純で、数行で表せるようなもの。その内容を、イエローマンと、ルーシーが、喜怒哀楽のいろいろな表情をつけながら、叙情的に演じているスタイルでした。そして、後半ラストに向けて、物語が一気に展開していきます、このあたりは、衝撃的で目が離せません。特に発砲には驚きました。叙情的にゆったり描きながら、全体の流れが緩みなく、見るものを引き付けていく映画で、さすが「映画の父」と称されるゆえんだと思いました。

この映画は、ユナイテッド・アーティスツの第一回配給映画とのこと。ユナイテッド・アーティスツの発起人の一人である、チャップリンの第一回作品が、巴里の女性で、比較してしまうと、公開年に4年の差がありますが、巴里の女性の方が演技などより新しい雰囲気があって、この映画はいかにもサイレント時代の演技という感じがしました。この映画は叙情性や芸術性、展開や構築など素晴らしいと思います。無理やり指で笑顔を作るところなど、象徴的でもあり、大変切ない感じを受ける見事な表現でした。

2020.6.3 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「素晴らしき哉、人生!」 絆で繋がるクリスマスの奇跡

アメリカの映画の中でも、名画と言われているこの映画を、同年に製作されたオスカー作品賞の「我等の生涯の最高の年」に続けて見てみました。アメリカの古いドラマはそれほど見ているわけではないのですが、このあたりが本丸かなぁと思っております。1946年の映画で、フランク・キャプラ監督の作品。オスカーでは5つのノミネートでした。
原題:It's a Wonderful Life

あらすじ
1945年のクリスマスイブに、ジョージ・ベイリー(ジェームズ・スチュアート)は、自らの命を絶とうとしていました。そして、天国からその自殺を思いとどまらせるために、二級天使のクラレンス(ヘンリー・トラヴァース)が派遣されることになります。その準備ためにクラレンスは、それまでのジョージの人生を見せられるのでした。

1919年。ジョージが12歳の頃、弟のハリーが極寒の池に落ちて溺れているのを救いますが、この時片耳の聴力を失います。ジョージは薬局でバイト中に、店主が息子の死によって気が動転し、子供用の調剤を誤ったことに気づき、事故を未然に防ぎました。1928年、ジョージは幼馴染のメアリー(ドナ・リード)とパーティーで再会。二人は良い雰囲気になりますが、父の危篤の知らせが入り、急遽デートを中断して変える羽目に。そして、父の死後、町を牛耳る富豪のポッター(ライオネル・バリモア)の圧力で、父の住宅金融組合は潰されそうになり、ジョージは進学や建築家になる夢も諦め、父の仕事を継ぐことに決め、代わりにハリーを大学へ通わせます。そして、弟の卒業を待つも、ハリーは工場主の娘と結婚し、町に帰ってきませんでした。

幼馴染のメアリーが町に帰ってきたと聞いたジョージは、彼女の家に向かい、そこでジョージはメアリーの想いに気づくと二人は結婚します。そして、ハネムーンに向かおうとした時、二人は銀行の取付け騒ぎを目撃し、これがポッターによる罠だと悟ったベイリー夫婦は、ハネムーンの費用を銀行が再開するまでの資金援助として、資金を引き出しに来た町の人々に貸し出しました。そしてジョージは、貧しい人々のために宅地開発を行い、ポッターの法外な値段の賃貸住宅から次々と住人が移ってきます。ポッターはジョージを高給で自分の助手として雇うと提案しますが、ジョージは断りました。

1945年のクリスマスイブの日、町は軍功をあげたハリーの歓迎準備をしていました。ところが、叔父のビリーはポッターの銀行に向かい、預金しに行った多額の現金を紛失し、見つけたポッターはこれを隠してしまいます。ビリーはそのことをジョージに伝えると、このままでは金融監査官に見せる帳簿に穴があき、横領で刑務所行きになってしまいます。ポッターに借金を頼みにいきますが、彼は断ったうえ、横領でジョージを告発。ジョージは家族へ八当たりをし、バーでは飲んだくれたうえで、自殺をして保険金を手にいれることを考えました。そこでクラレンスと出会います。自らを守護天使と語るクラレンスですが、ジョージは信じません。

「生まれなければよかった」というジョージに、クラレンスは、ジョージが生まれなかった場合の世の中を見せました。町はポッターズビルという名の物騒な町に変わっていて、人々心は荒んでいます。ショックを受けたジョージは、自分の人生は素晴らしいと気づき、クラレンスに、元の世界に戻してもらいました。家へ帰ると、メアリーの呼びかけで町民たちが寄付に集まり、紛失した金額は無事回収できました。ハリーも戻ってきて、家の中で町民たちは祝いの歌を歌い、そしてクラレンスの「友ある者は決して失敗しない。」というメッセージを見つけるのでした。



素晴らしき哉、人生!

アメリカでは、いつの頃からかクリスマスに上映される映画となっているとのこと。これは、クリスマスイヴの物語で、天使が男に幻想を見せ改心させるのは、クリスマス・キャロルと同じ構造でした。ジョージはスクルージではないので、改心する必要はありませんが、ここでは、自分を含め、一人一人の人生の大事さと、人とのつながりの大事さを改めて気付かされるという、ドラマとしても王道的であり、普遍的な人生物語です。「我等の生涯の最高の年」が当時の世相に大ヒットしたの対比すると、こちらは、いつの時代にも受け入れられる映画になっていました。

監督のフランク・キャプラが、戦後の世相に対して製作した渾身のクリスマス作品なのですが、興行的に失敗して大いに自信を喪失してしまいました。彼の元に天使は現れず、もし、「素晴らしき哉、人生!」が無かったら、どういう世界になっているのかを教えてくれ無かったのでしょうか。とはいっても、それは難しいので、せめて、この映画が将来にわたってアメリカでどれだけ楽しまれているかを見せてあげれば、自身を喪失しなくても良かったでしょうに…。ということですね。

フランク・キャプラ、ウィリアム・ワイラー、ジョージ・スティーブンスが協力して設立したリバティ・ピクチャーズの第1号作品ということで、ここにウィリアム・ワイラーも入っているところは、何か皮肉な感じもしますが、それぞれに戦争体験を経て、一般の映画製作に復帰したフランク・キャプラからの回答は、この映画でした。オチとしては、「情けは人の為ならず」なのですが、何と言いますか、明るいですね。人生を応援してくれる映画だと思います。ちょっと気取った感じの慣れ親しんだ邦題ですが、今となっては、「It's a Wonderful Life」が、最も映画の内容にしっくり来ている様な気がします。

2020.6.19 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「我等の生涯の最良の年」 復員兵を迎えるアメリカの社会

オスカーでは、特別賞や記念賞を含めた9つの賞を受賞。アカデミー作品賞にも輝きました。1946年の映画で、ウィリアム・ワイラーの作品です。当時、この映画は戦後の世相も反映し、大ヒットを記録しました。
原題:The Best Years of Our Lives

あらすじ
第二次大戦が終わり、ブーンシティ出身の三人の復員兵、アル・スティーブンソン(フレドリック・マーチ)、フレッド・デリー(ダナ・アンドリュース)、ホーマー・パリッシュ(ハロルド・ラッセル)は、同じ軍用機に乗り合わせ、故郷に帰ってきます。水兵のホーマーは両手を失い義手を使用。家族と恋人のウィルマ(キャシー・オドネル)の歓迎を受けますが、義手に対し哀れみの目も伺えました。陸軍軍曹のアルは、妻のミリー(マーナ・ロイ)と成長した娘ペギー(テレサ・ライト)、息子ロブの歓迎を受けます。美しく成長したペギーの男性関係を案じつつ、すぐには家庭に溶け込めないアルは、気分直しにミリーとペギーを連れて夜の街に繰り出しました。空軍大尉のフレッドは、質素な実家に帰宅すると、妻のマリー(ヴァージニア・メイヨ)は、ナイトクラブで働きながら一人暮らしをしていると聞き、街に出ますが見つかりません。3人はその夜、思い思いに訪ねてきた、ホーマーの叔父ブッチ(ホーギー・カーマイケル)のバーで再会。アルとフレッドは酔い潰れ、ミリーとペギーが二人を連れ帰りました。フレッドがマリーと再会したのは翌日でした。

アルは以前勤めていた銀行に、副頭取として復職。ホーマーは義手をジョークのタネにし、陽気にふるまいますが、内心引け目を感じ、ウィルマの愛情も哀れみと受け取っていました。フレッドはドラッグストアに復職しますが、安月給で以前の部下が上司という環境、他に仕事も見つからないまま貯金を使い果たしてしまいます。ある日、ドラッグストアに買い物に来たペギーを昼食に誘い、別れ際に彼女に強引にキス。ペギーも妻帯者のフレッドを愛し始めてしまい、マリーが収入が激減したフレッドに愛想を尽かしていることに気づくと、家に帰り、両親に二人を別れさせると宣言しました。驚いたアルはフレッドを呼び出し、娘から手を引けと迫ります。フレッドは折れて、ぺギーに別れの電話を掛けることになりました。

ドラッグストアで起きた、ホーマーと客のいざこざに巻き込まれたフレッドは退職。その時ホーマーに、ウィルマに結婚を申し込むよう諭します。ウィルマは、自分がホーマーの重荷になっているので、両親が離れさせようとしていると告げ、ホーマーはいかに障碍者と生活を共にするのが大変かを示しますが、ウィルマは愛で乗り越えられると答え、二人は固く抱き合いました。ある日、フレッドが帰宅すると、マリーが見知らぬ復員兵といるのを目撃し、マリーは悪びれもせず、離婚を言い渡して出ていきます。フレッドは町を出ることにし、飛行場へ向かうと、そこには夥しい数の解体中の軍用機ががありました。機体に上っているところを呼び止められたフレッドは、解体作業員として雇ってくれと頼み込みます。ホーマーとウィルマの結婚式の日、アルの一家やフレッドもホーマーの家に集まりました。ホーマーとウィルマが誓いの言葉を述べ、皆に祝福されている中で、フレッドとペギーは離れたところから見つめ合い、やがて歩み寄ると、二人も抱き合って将来を誓うのでした。



我等の生涯の最良の年

1946年のアカデミー賞を席巻した名作です。3時間近い長さの映画ですが、まったく飽きることなく、最後まで楽しめました。それぞれの人物描写がはっきりしており、演技も撮影も素晴らしい映画だと思います。当時のアメリカの雰囲気も良くわかりました。インパクトがあったのは、たくさんの解体する飛行機が並んでいるところ。平和になればお役御免となり、維持もできないので解体して、民生用の鉄に再生されます。復員兵の立ち場を象徴しています。その機体に自分の姿を重ね合わせ、平和の世の中に貢献する決意をするフレッド。この映画の名場面だと思います。

同じ年に、「素晴らしき哉人生!」が公開されましたが、興行的には失敗し、アカデミー賞でも無冠に終わっています。今ではむしろ評価が逆転しているくらいと思いますが、この映画はやはり当時の世相に受けたのではないかと思います。あくまで、戦争で苦労をした復員兵を讃える映画で、反戦的な思想は時々表現されますが、叩きのめされています。復員兵を前に言う言葉じゃないということはわかりますが、ワイラー監督はどういう立場だったのでしょう。敢えて入れて少しでも主張したかったのか、あるいは叩きのめしたかったのか?このあと、すぐに朝鮮戦争、ベトナム戦争と続いていくベースに、この映画が受けたという世相があったのではとも思いました。

3つの家族の中でも波乱の展開だったフレッドの家族ですが、この女優たちの中では、実はヴァージニア・メイヨが気になっていて、フレッドがなかなか探し当てないので、出現が待ち遠しかったのです。「白熱」で見た彼女が結構好きだったので、再会を楽しみにしていたのでした。部屋は散らかし放題で、あっさり離婚してしまうという遊び人の人妻でしたが、まぁヴァージニア・メイヨはこういうキャラですからねぇ。しかし、私生活では離婚歴のない女優さんで、ハリウッドで珍しいタイプなのですが。という訳で、名作を堪能しつつ、当時の世相を感じた3時間でした。

2020.6/17 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR