FC2ブログ

「グルーモフの日記」 モンタージュ技法を確立するエイゼンシュテインの第1作

何かネタになりそうな映像はということで見つけ出してきた、5分あまりのショートフィルム。これはエイゼンシュテインの第1作ということにもなるのですが、実際映画として単独上映されるための物では無いようです。しかし、映画撮影という目的で映像技法を盛り込んだものには間違いありません。1923年の作品になります。

あらすじ
ピエロたちの変顔のオンパレードで味まり、前半は高い尖塔に登る男を撮影、そして後半はトリック映像によるピエロの変身映像となる…。



オストロフスキーの戯曲による劇の劇中に、挿入される目的で作成された映像です。

ピエロたちの変顔が次々と現れる映像でスタートします。そして高度間のある尖塔に、ロープを使って攀じ登る男の映像に移ります。その登る描写が、いろいろと角度を変えて映し出されていき、登りついた男はジャンプ。飛行機の映像の後、車の座席に飛んできて収まります。
後半は、ピエロたちの道化芝居となり、トリック撮影技術を使用して、ピエロが赤ん坊に変身したり、ロバに変身したりという映像が続きます。

この映像は、失われたと思われていましたが、後年、ジガ・ヴェルトフの「キノ・プラウダ」のフィルムに混じって発見されたとの事。実際、この映画の撮影にあたり、エイゼンシュテインは、ジガ・ヴェルトフから指導を受けていたとのことです。

グルーモフの日記

エイゼンシュテインの映画については、初期の革命を題材にした作品をいくつか若いころに見ました。ストライキ、戦艦ポチョムキン、十月と続き、名声を確立していった訳ですが、モンタージュ技法というトピックもさることながら、当時の思想を窺う上でも貴重な映像だと思います。さて、この映画はというと、それらの作品の前に取られた一本。5分ほどのショートムービーです。そして、劇場で鑑賞用に公開されるという目的ではなく、アレクサンドル・オストロフスキーの戯曲「どんな賢人にもぬかりはある」の上演に際し劇中に挿入された映像です。

そういった事情ですので、この短編だけをみても、まぁあまり意味が無いものという形になりますので、来歴など調べてみました。当時、エイゼンシュテインは、演出家メイエルホリドの元で助手として数々の演出を手掛けていましたが、これもその一つ。戯曲「賢人」の演出において、道化的グロテスクな演出を際立たせる中に挿入した効果の一つということになります。その表現手法は、ストーリー解釈よりも、観客への効果を重視し、アトラクションのモンタージュという技法で演出していくものだったとの事。以降、エイゼンシュテインは、映画監督に転向しモンタージュ技法を確立していく訳ですから、それは演劇時代から培っていたものということになります。

映画自体へのコメントはなかなかしづらいのですが、前半は尖塔の上に立つ緊張感が表現され、当時これをどうやって撮ったのだろうかと本当に考えさせられます。大変迫力のある映像です。そして後半、トリック映像的なものも多用されていきます。登場人物の大勢を占めるのは道化師で、道化芝居とトリックを多用した映像という意図があったということでしょう。そして、この作品は映像表現として当時いろいろな形で作られていた、アバンギャルド映画の要素を、色濃く持っている思いました。それは勿論、本編の演劇も併せてのことだと思います。

2019.6.15 HCMC 自宅にてパソコン鑑賞
スポンサーサイト



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「これがロシヤだ」 当時のドキュメンタリー撮影の見本市

「カメラを持った男」という邦題(原題直訳)でDVDが発売された、1929年製作のソ連のドキュメンタリー映画です。「これがロシヤだ」は、1930年代の日本公開時の邦題。映画の話の中にはよく登場するものなので、ここはひとつ勉強のつもりで見てみましたということで。監督はジガ・ヴェルトフです。

あらすじ
映画が上映される劇場。そこで映し出される映画は、カメラを持った男があらゆるところに出没し、最新技法でロシアの一日を切り取っていく…。



劇場の準備が整い、満員の観客が入場してきます。映写機が回され、オーケストラが音楽を開始すると、映像が映し出されていきました。

朝の風景、人はまだ眠りについています。カメラマンは朝から活動開始、線路の下にもぐって列車を写したりと、危険を省みず活動します。やがて人々が起きだし、出かける準備。少しづつ町が動き出します。路面電車なども一斉にスタート、だんだん活気を帯びてきます。カメラマンは相変わらず、鉄塔に登ったりと命がけの撮影です。工場の機械もどんどん稼働し、町は人であふれていきます。ここで、フィルム編集をしている場面が入ります。

カメラは、町のいろいろな人々の様子を映し出していきます。婚姻届けを出す人、離婚届を出す人、結婚式、葬式、出産の様子。町の風景もそこで働く人とともに、躍動的に映っていきます。現場に急行する消防車、事故現場での救急活動、美容院や理髪店の様子。そして工場、電話交換手などで働く労働者たち、カメラは溶鉱炉や、炭鉱の奥深くまで入っていきます。

仕事が無い時はリラックスの時間、リゾート地で海水浴を楽しみ、そして、いろいろなスポーツや遊園地のアトラクションを楽しむ人々。夜になれば音楽とビアホールやレストランでのひと時。そして、画面は劇場に戻り、カメラからの挨拶と、今までのフィルムを中心にいろいろな映像製作技術のお披露目です。

これがロシアだ

ストーリーは特にありませんが、当時のロシアの日常を活き活きと映し出した、ドキュメンタリー映画でした。従って、ストーリーよりも、いかに映像技術を駆使して日常を映し出すかというところにに力点があり、当時のジガ・ヴェルトフが使った最新技術が披露された形となっています。多重露光、ストップモーション、スローモーション、早回し、移動撮影等々詰め込みました。

映し出す対象も多岐にわたっていて、同じものを時間帯別に写したり、町、機械、人間といろいろな対象をクローズアップしていきます。人に関しては、家での様子、職場、商店、軽工業、重工業、炭鉱等のいろいろな労働を写し、また働く様子と、余暇を楽しむ様子を対比し、そして、結婚、離婚、葬式、出産と人生のイベントと。機械についても、静止状態や、動き出す様子、人が捜査している様子などなど。

加えて、カメラマンの危険を省みない撮影や、編集者の活動も挿入し、全体構成を劇場での情景として、観客の入場と、最後にアンコールのような、技術のお披露目的な映像が流しました。ということで、ストーリーはありませんが、ドキュメンタリーとして、ソフトや技術両面及び、その周辺の者まで、すべてを盛り込んだ見本市のような形で仕上げているように感じました。

2019..5.1 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR